シューゼと水蒸気の姫君 【完結済み】

誰時 邪無 - タレドキ ジャム -

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8 間違い

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 その家の風貌はまるで雪だるまのようで、大きな丸の上に小さな丸が乗っていた。

 さらに、上に載っている小さな丸の頭の先からは、天に向かって伸びていた。また、所々に大小さまざまなギアや鉄でできた水蒸気ポンプがついていた。

 貧民なら、誰もが知っている変人――――ポッポの家だ。

「すごくまん丸で、かわいらしいだね」

 一目見て、エリオが言った。
 確かに、小柄なポッポと同じようにどこかかわいらしいな、と、シューゼも思った。

 シューゼは、扉をノックしてみる。――――しかし、返事がない。
 今度は拳でドンドンと叩いてみる。――――しかし、返事はない。

「おやすみ? それとも出かけてる?」

 エリオが首を傾げた。が、シューゼは「じゃあ、こっちだ」と慣れたように言うと、もう1つの入り口である木製のシャッターに向かった。

 シャッターに備え付けられた開閉用のハンドルを掴んで、そのままぐるぐると回し始める。すると、シャッターが巨人のいびきのような重みのある音を立てながら上がっていった。

 シャッターが上がって見えたのは、なんとも立派な工房兼ガレージだった。

「うーん……。この魔石だと、3キロが限界か……? なら、飛び上がった後に……」

 その中心、モゾモゾ動く小さな影が1つ。それに、シューゼが声をかけた。

「おーい、来たよ。ポッポ」

「んあ?」

 すると、名前を呼ばれた影――――ポッポが、頭の鈴をリンッと鳴らして振り返った。

「おー、シューゼ! ……と、帽子のやつ! よく来たな。ま、上がれよ」

 浮かれた調子で、ポッポが言った。

「すごい……、また機械が増えてる」

 シャッターを閉めて、ガレージに簡単に置かれたテーブルセットに腰をかける。と、シューゼが呟いた。

「ああ、またガラクタ山から拾ってきたんだ」

 それに対して、奥の部屋からお盆を頭の上に乗せて出てきたポッポが自慢げに言った。

「あの、ガラクタ置き場って、そんなにいろんなものが置いてあるの? しかも、どれも壊れてはなさそうだし……」

 エリオが、並べられたものを見ながら尋ねる。と、ポッポはお茶を配りながら、

「そいつらは、俺が作ったんだ」

 と、教えた。

「作った!? 修理したってこと……?」

「のんのんのん! 俺は、発明家! 人呼んで、天才発明家“鈴鳴りのポッポ“様だ!」

 えっへんと胸を張る、ポッポ。その時、再び頭の鈴がリンッと揺れた。


「て、天才……?」

「ポッポは、もっとずっと子供の頃から機械をいじるのが得意でね。仲間内で、そう呼ばれていたんだ」

 シューゼが補足する。と、エリオはあたりをキョロキョロと見回し、興味津々といった感じで、

「それじゃあ発明家さん、何を作ったのか教えてよ」

 と、ポッポに言った。

「もちろんだ。うーん、そうだなぁ……。あ、これはどうだ!?」

 新鮮なエリオの反応に嬉しそうに吟味する、ポッポ。そうして取り出したのは、コードで繋がれた手に収まる程度の2つの丸い物体だった。

 それは、一方が渦を巻いて隙間が空いていて、もう一方はガラスでコーティングされた真っ黒な画面だった。

「……これは?」

 エリオが尋ねる。と、ポッポは、

「魔石探知機だ!」

 と、言った。

「金持ちになろうと思ってな。そのためには、魔石を掘り当てるのが1番早え」

「どう使うの?」

「渦巻きの方を壁や地面に当ててスイッチを押すと、コードで繋がれたもう一方の丸い画面にざっと周囲5メートルにどれくらい魔石が眠ってるかが表示されるんだ」

「すごい! そんな夢みたいな機会が……!」

 すると、その言葉を聞いてシューゼが驚きの声を上げる。そして、続けて手をポンッと打つ。

「だから、あれを――――」

 と、合点がいったというように言いかけた、その時。

「――――と、思うだろ?」

 しかし、ポッポは肩を落とすと、

「けど、これは失敗。実際は、ある程度の大きさを持つ生物を感知することしかできない」

 と、続けた。

「生物?」

 シューゼが首を傾げる。

「前にこれが反応するとこを掘ったらな、モグラが出てきたんだよ。あとはぶくぶく太ったネズミ。で、試しにダントンに向けてスイッチを押してみたら反応したってわけ。ダントンどころか、5メートル以内の人間全員の位置がな。つまりこいつは魔石に籠った魔力じゃなく、命に反応するってわけだ」

 ポッポはそう言ってエリオから魔石探知機・・・・・を受け取ると、エリオたちに渦巻きの部分を向けてスイッチを押した。

「ほらな」

「……本当だ」

 ポッポが、シューゼに画面を見せる。そこには、人と思われる反応が2ほど浮かび上がっていた。

「しかし、どうして魔石を探すはずが、そんな形に……」

「……俺にも分からん! でも、そういうこった!」

「――――じゃあ、これは?」

 すると、エリオがその傍で発明品の並べられた箱から、さらに小さな正方形の箱を取り出した。

「お、お目が高い! えっと……」

「エリオ」

「エリオ! それは、折りたたみ式送風機だ!」

「送風機?」

「いや、ほらお前も炭鉱にいたから分かるだろうけど、炭鉱っていくら空気の流れがあるとはいえ蒸れるし暑いだろ? だから、風を送って涼しくしようと思ったんだよ」

「へえ……」

 エリオはジロジロとその箱を眺め、

「……で、欠点は? ここにあるってことは、今は使ってないんでしょ?」

 と、聞いた。 

「それがよぉ、粉塵が舞うからやめろって速攻ぶん殴られてさ……」

 ポッポは悲しそうな声色でそう答える。

「それに……」

「それに?」

「……地面に置いて、てっぺんのスイッチ押してみ」

 ポッポの言葉に従って、エリオはスイッチを押してみる。と、それは自動で開かれ、目の前にはプロペラのついた送風機が姿を現した。

 エリオがしゃがむと、プロペラの足元には色別のスイッチが並んでいた。すると、ポッポが「赤を押してみろ」と言った。

 カチッ――――そんな音がして、数秒後。プロペラの前に立ったエリオの髪が、そよそよと風に揺れる。

「……ちゃんと送風機としての機能を果たしてはいる。けど、これはあまりにも……」

「微風、だろ?」

「……寝室に置けばいいかもね。静音性はバッチリだし」

「いる?」

「いらない」

「……」

 エリオが立ち上がって、再び箱を漁る。
 残されたポッポが1人、緑色のボタンを押すと送風機は折り畳まれ、元の立方体の形に戻った。

「これは?」

 エリオが次に手に取ったのは、両手でちょうど持てるくらいの大きな杖のようなものだった。

「何、これ? ステッキ? 柱にしては、ちょっと細いような……。それにダイアル……」

「それで言うと、ステッキが1番近いかな。ダイアルは出力調整。右が最大で、左が最小」

 ポッポの説明に耳を傾けながら、エリオは密かに左にダイアルを回す。

「スイッチを押すと、作動するんだけど――――」

 そして、スイッチを押した。しかし、その後に続いたのは、

「――――ものすごい勢いで中身が飛び出すから、絶対人に向けて使うなよ」

 という忠告だった。
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