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第2章 商い篇

第2話 第2段階

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side:桜井美智瑠



どれくらいの時間が経過しただろう

体感的には10分くらいの気がするけど、実際は20秒とか30秒も経っていないかな?


なっちゃんと抱き合い閉じていた目をそーっと開けると、そこは薄暗い木造の部屋だった

どう考えても私達が乗っていたフェリーにこんな部屋が存在するとは思えない

同じように目を開けて部屋を見回しているなっちゃんに駄目元で一応聞いてみる


「フェリーって木造の部屋があったりとかは」

「残念やけど無いね」


はぁ~、やっぱりまた異世界に連れて来られたんかなぁ?

落ち込んでいても仕方ないから改めて部屋を見ると、10畳くらいの広さの部屋に何かを陳列出来そうな棚が幾つも置かれていて、レジカウンターっぽい物まである

このままパン屋さんが出来そうな雰囲気があるけれど、今度はここで商売でもさせる気なんかな?


『ピロロロロン、ピロロロロン』


「えっ?電子音?!」


突然鳴り響く電子音にびっくりしたけど音の出所を探す


「みっちゃんスマホ!」

「あっ!」


私は普段スマホをサイレントモードにしてて着信しても光るだけやから、スマホの着信音なんてすっかり忘れてたよ(笑)


「みっちゃん!謎の観察者からのメールや(怒)」


やっぱり観察者の仕業やったかぁ~(泣)

ズボンのポケットに入れていたスマホを取り出して確認すると、私の方にも謎の観察者からメールが来ていたのでさっそくメールを開く



『第2段階開始のお知らせ』


アップデート作業が完了致しましたので、本日より第2段階開始となります。

尚、第1段階を優秀な成績で終えられましたので、スタートダッシュ特典を付与しました。

それらを活用して第2段階のミッションクリアを祈っております。





うーむ、やっぱり私達は謎の観察者の実験動物として使われてるんやろうなぁ


「なぁなぁみっちゃん、スマホに『異』って文字があるんやけど」

「・・・い?」


なっちゃんは急に何を言ってるんやろ、、、っていうかスマホにメールが来てるって事は電波があるやん!

再び急いでスマホを確認すると、、、

そうやんな、そんな旨い話は無いよな

だってスマホの電波が表示される場所にご丁寧に『異』の文字がハッキリと表示されてんねんから

これは異世界版のWi-Fiって意味なんかな?

とりあえず電話、メール、ネットが出来るか確認してみるけど

繋がったのは前回もお世話になった謎のネットショップだけだった

今回はスマホがあるからパソコンを立ち上げる手間が省けて効率は良くなってんねんけど

その辺がアップデートされた結果って事なんかな?

後でお金の代わりに使えるmpがどれくらいあるのか忘れず調べよう。



「今回は生活しながらお店を経営しろって事やと思うねんけど、なっちゃんはどう思う?」

「この部屋を見たらそうなんやろうなぁ、その前に奥の部屋見てみようや、多分そこが居住スペースになってるんとちゃうかな」


なっちゃんが言うようにレジカウンターらしき台の奥に扉が見えるから、その奥に居住スペースがあるのだろうと思う

ただし、前回は304号室と書かれたマンションかアパートの部屋だったのでかなり快適な生活が送れていたけど

今回は古びた木造の建物だ、日本のような快適な生活なんて期待出来無いと思う


1番の問題はトイレ

常識的に考えて電気や水道が通って無さそうな木造の建物にあるのは、ボットン便所とか汲み取り式と言われるトイレだろう

実物は見た事も使った事も無いけど、想像しただけで溜め息がでるよ(泣)


謎の観察者もどうせアップデートするなら、屋根にソーラーパネルが付いたオール電化の一軒家くらい用意しといてよ!


私は怒りをぶつけるようにレジカウンターの奥にある扉を乱暴に開ける


『ガチャ!』

「あっ?!」





つづく。

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