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第2話 大師の湯
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菜穂はヘルメットを被り相棒に跨がる。エンジンをかけると心地よい排気音が響き渡る。
道の駅を後にし再び海岸線を走る。朝日が海面を照らし、キラキラと輝いている。風が心地よく菜穂の頬を撫でる。
「四国と言えば八十八箇所巡りかぁ。相棒の御機嫌を伺う為に一気にここまで来たけれど、四国を一周するのも悪くないかもしれない。」
菜穂は遍路道を走る人々の姿を想像する。
白い装束に身を包み杖をつきながら歩く姿は、どこか神聖な雰囲気を漂わせている。
菜穂はその道程をバイクで辿ることに少しの戸惑いを覚える。歩いて巡礼する人々の苦労や信仰心とは全く違うものになるだろう。
それでも菜穂は四国を一周したいという気持ちになった。
だかしかし、菜穂はまだまだ何も考えず相棒のトライアンフTR6Rに乗って走りたい気持ちが強かったので、一気に八十八番札所である大窪寺を目指す事にした。
道中、いくつもの小さな集落を通り過ぎる。昔ながらの家並みが残り、どこか懐かしい雰囲気が漂っている。菜穂は相棒を停め、少し休憩することにした。
道端のベンチに腰を下ろし菜穂は持っていたペットボトルの水を飲む。喉が渇いていたため水が体に染み渡るように感じられる。
菜穂周囲の景色を眺める。遠くには山々が連なり美しい稜線を描いている。
菜穂ふいに近くにいたおばあさんに声をかけられた。
「お遍路さんですか?」
「いえ、バイクで四国を一周しようと思っているんです」
「そうなんですか。気をつけて行ってらっしゃい」
「ありがとうございます」
おばあさんの笑顔を見ていると心が温かくなるのを感じた。
菜穂再びバイクに跨がり大窪寺を目指すが、大窪寺まではまだまだ距離があるようだ。
一旦停車した菜穂は地図アプリを開くと
『大師の湯』という文字が目に入る。
「大師の湯、か。温泉でゆっくり疲れを癒すのも悪くないな」
菜穂はそう思いナビを開始した。
県道から国道へと入り、山間部を走る。道は狭くカーブが連続する。対向車に注意しながら慎重に相棒を走らせる。
しばらく走ると『ふれあいパークみの』の看板が見えてきた。
菜穂は相棒を駐車場に停め周囲を見渡す。広い敷地内には温泉施設(大師の湯)のほか、レストランや売店、キャンプ場などがあるようだ。
まずは気になっていた大師の湯に入ってみることにする。受付で入浴券を購入し暖簾をくぐる。脱衣所で服を脱ぎ温泉へ向かう。
湯船に浸かると熱いお湯が体に染み渡る。
菜穂は目を閉じ静かに息を吐く。
仕事のストレスやこれまでの疲れがお湯とともに流れ出ていくようだ。露天風呂からは山々の緑が見える。鳥のさえずりが聞こえ心が安らぐ。
温泉から上がり休憩所で一休みする。
冷たい麦茶を飲みながら今日の宿泊場所を考える。
キャンプ場が温泉のすぐ隣にあるようだ。
テントを張る手間はあるが自然の中でゆっくりと過ごせるのは魅力的だ。
受付でキャンプ場の利用状況を確認すると、まだ空きがあるとのこと。菜穂はキャンプ場を利用することに決めた。
テントを張り終え、菜穂は夕食の準備を始める。
持ってきたインスタントラーメンとおにぎりを食べることにする。質素な食事だが自然の中で食べるのは格別だ。
食後、菜穂は焚き火を囲みコーヒーを飲む。パチパチと薪が爆ぜる音を聞きながら、菜穂は空を見上げる。満天の星空が広がっている。
菜穂は今日一日の出来事を振り返る。
四国を一周することを決意し、大窪寺を目指してバイクを走らせ、温泉で疲れを癒し、キャンプ場で星空を眺める。
「明日も、良い一日になりますように」
菜穂はそう願い、テントの中へ入った。寝袋に潜り込むとすぐに眠りに落ちた。
つづく。
道の駅を後にし再び海岸線を走る。朝日が海面を照らし、キラキラと輝いている。風が心地よく菜穂の頬を撫でる。
「四国と言えば八十八箇所巡りかぁ。相棒の御機嫌を伺う為に一気にここまで来たけれど、四国を一周するのも悪くないかもしれない。」
菜穂は遍路道を走る人々の姿を想像する。
白い装束に身を包み杖をつきながら歩く姿は、どこか神聖な雰囲気を漂わせている。
菜穂はその道程をバイクで辿ることに少しの戸惑いを覚える。歩いて巡礼する人々の苦労や信仰心とは全く違うものになるだろう。
それでも菜穂は四国を一周したいという気持ちになった。
だかしかし、菜穂はまだまだ何も考えず相棒のトライアンフTR6Rに乗って走りたい気持ちが強かったので、一気に八十八番札所である大窪寺を目指す事にした。
道中、いくつもの小さな集落を通り過ぎる。昔ながらの家並みが残り、どこか懐かしい雰囲気が漂っている。菜穂は相棒を停め、少し休憩することにした。
道端のベンチに腰を下ろし菜穂は持っていたペットボトルの水を飲む。喉が渇いていたため水が体に染み渡るように感じられる。
菜穂周囲の景色を眺める。遠くには山々が連なり美しい稜線を描いている。
菜穂ふいに近くにいたおばあさんに声をかけられた。
「お遍路さんですか?」
「いえ、バイクで四国を一周しようと思っているんです」
「そうなんですか。気をつけて行ってらっしゃい」
「ありがとうございます」
おばあさんの笑顔を見ていると心が温かくなるのを感じた。
菜穂再びバイクに跨がり大窪寺を目指すが、大窪寺まではまだまだ距離があるようだ。
一旦停車した菜穂は地図アプリを開くと
『大師の湯』という文字が目に入る。
「大師の湯、か。温泉でゆっくり疲れを癒すのも悪くないな」
菜穂はそう思いナビを開始した。
県道から国道へと入り、山間部を走る。道は狭くカーブが連続する。対向車に注意しながら慎重に相棒を走らせる。
しばらく走ると『ふれあいパークみの』の看板が見えてきた。
菜穂は相棒を駐車場に停め周囲を見渡す。広い敷地内には温泉施設(大師の湯)のほか、レストランや売店、キャンプ場などがあるようだ。
まずは気になっていた大師の湯に入ってみることにする。受付で入浴券を購入し暖簾をくぐる。脱衣所で服を脱ぎ温泉へ向かう。
湯船に浸かると熱いお湯が体に染み渡る。
菜穂は目を閉じ静かに息を吐く。
仕事のストレスやこれまでの疲れがお湯とともに流れ出ていくようだ。露天風呂からは山々の緑が見える。鳥のさえずりが聞こえ心が安らぐ。
温泉から上がり休憩所で一休みする。
冷たい麦茶を飲みながら今日の宿泊場所を考える。
キャンプ場が温泉のすぐ隣にあるようだ。
テントを張る手間はあるが自然の中でゆっくりと過ごせるのは魅力的だ。
受付でキャンプ場の利用状況を確認すると、まだ空きがあるとのこと。菜穂はキャンプ場を利用することに決めた。
テントを張り終え、菜穂は夕食の準備を始める。
持ってきたインスタントラーメンとおにぎりを食べることにする。質素な食事だが自然の中で食べるのは格別だ。
食後、菜穂は焚き火を囲みコーヒーを飲む。パチパチと薪が爆ぜる音を聞きながら、菜穂は空を見上げる。満天の星空が広がっている。
菜穂は今日一日の出来事を振り返る。
四国を一周することを決意し、大窪寺を目指してバイクを走らせ、温泉で疲れを癒し、キャンプ場で星空を眺める。
「明日も、良い一日になりますように」
菜穂はそう願い、テントの中へ入った。寝袋に潜り込むとすぐに眠りに落ちた。
つづく。
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