【完結】結城菜穂の日本一周バイク旅

永倉伊織

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第7話 徳島市内→最御崎寺(高知県)

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翌朝

菜穂は目を覚ますと、まずスマートフォンを手に取り徳島ラーメンが朝食に食べられる場所はないかと検索し始める。

昨日の雨と阿波おどりの疲れが残っているが、徳島ラーメンへの期待がそれを上回る。

いくつかの店がヒットするが、開店時間が軒並み11時以降だ。朝早くから営業している店は残念ながら見当たらない。

ビジネスホテルに泊まっているので、ホテルの朝食バイキングを利用することも考えたが、やはりここは本場の徳島ラーメンを味わいたいという気持ちが強い。

ため息をつきながらも菜穂は諦めずに検索を続ける。

『徳島ラーメン 朝ラー』というキーワードで検索してみると、一件の店が目に留まる。

開店時間は午前7時。場所は少し離れているがバイクなら問題ない距離だ。

菜穂はすぐに身支度を済ませ、ホテルをチェックアウトする。

駐車場に停めてある相棒を簡単にだがタオルで拭いて綺麗にする。相棒に跨がりエンジンをかけると御機嫌なエンジン音を響かせてくれた。

目的のラーメン店へと出発する。早朝の徳島の街は静かで空気も澄んでいる。

相棒を走らせること約20分。目的のラーメン店に到着する。店の前にはすでに数人の客が並んでいて、期待に胸を膨らませながら菜穂も列に並ぶ。

しばらく待つと、ようやく店内へ案内される。

店内は活気があり、ラーメンの香りが食欲をそそる。菜穂は迷わず徳島ラーメンを注文した。

数分後

目の前に徳島ラーメンが運ばれてくる。

豚骨醤油ベースのスープに、甘辛く煮込まれた豚バラ肉、そして生卵がトッピングされている。

菜穂はまずスープを一口飲む。濃厚で奥深い味わいが、全身に染み渡る。麺は中細ストレート麺でスープとの相性も抜群だ。

豚バラ肉はとろけるように柔らかく、口の中で甘みが広がる。そして、生卵を割って麺に絡めて食べると、まろやかな味わいが加わり、まさに絶品!

菜穂あっという間にラーメンを完食した。

店を出ると朝日が眩しい。

菜穂は満足感に浸りながら、次の目的地へと相棒を走らせる。

 

朝食のラーメンを堪能し次なる目的地は、四国霊場第二十三番札所、薬王寺だ。

徳島市内から国道55号線を南下し海岸線沿いを走るルートを選ぶ。

朝の光を浴びながら感じる相棒の鼓動はとても心地良い。

風が頬を撫で、徳島市内の喧騒が遠ざかり、次第にのどかな風景が広がる。田んぼや畑が広がりその向こうには青い海が広がっている。

しばらく走ると薬王寺の案内標識が見えてくる。標識に従い、脇道に入ると、すぐに薬王寺の駐車場に到着する。バイクを止めヘルメットを脱ぎ境内へと向かう。

薬王寺、厄除けの寺として知られており、多くの参拝客が訪れている。本堂へと続く階段を上りお参りを済ませる。静寂な境内に身を置くと心が落ち着き安らぎを感じる。

薬王寺での休憩を終え次なる目的地は、室戸岬にある最御崎寺だ。薬王寺から室戸岬までは、約100キロの道のり

国道55号線をさらに南下し室戸岬を目指す。

海岸線沿いの道は、まさにバイクで走るには最高のロケーションだ。右手に広がる太平洋の雄大な景色を眺めながら菜穂はアクセルを開ける。

波の音が聞こえ、潮の香りが鼻をくすぐる。時折、漁村の風景が目に飛び込んでくる。

風を感じ景色を楽しみながら、室戸岬へとひた走る。


◇ ◇ ◇


美しい景色と御機嫌な相棒のお陰で、疲れを感じる事なくあっという間に最御崎寺に到着した。

駐車場に相棒を停めて、最御崎寺の境内に足を踏み入れる。   

目の前に広がるのは息をのむような絶景だ。紺碧の海と空がどこまでも広がり、その境界線は曖昧模糊としている。断崖絶壁の上に立つ寺からは地球の丸さを実感出来た。

境内には、本堂、大師堂、鐘楼などが静かに佇んでいる。まず本堂へと向かい、手を合わせる。心の中で旅の安全と無事を祈り静かに目を閉じる。

次に、大師堂へと足を運ぶ。弘法大師が修行したとされるこの場所は、ひっそりとしていながらも不思議な雰囲気をまとっている。しばしその場に立ち尽くし静かに瞑想する。

境内を散策していると鐘楼が見えて来た。自由に鐘を撞けるようになっており、菜穂は少し迷った後、鐘を撞いてみることにする。

ゴーン、ゴーン、、、重く、そして深みのある音が境内に響き渡る。その音は心に静かに染み渡っていくようだ。

展望台からは室戸岬の灯台や遠くに見える島々を一望できる。その景色をカメラに収めようとシャッターを切る。しかし、実際に目に映る景色は写真では決して表現できない美しさを持っている。

菜穂はベンチに腰掛け、持ってきたお茶を飲む。

温かいお茶が疲れた体を優しく癒してくれる。

潮風が頬を撫で、太陽が暖かく照りつける。菜穂はただぼんやりと景色を眺めながら、時間が過ぎるのを忘れる。

ふと気が付くと、すでに夕暮れが迫っていた。

名残惜しい気持ちを抱えながらも、最御崎寺を後にすることにする。

相棒に跨がり再び走り出す。相棒の御機嫌なエンジン音が、菜穂の背中を押してくれているようだ。





つづく。
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