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魔神を封印し、祈祷により封印をより強固に保つ
同時に神を信仰し、人々へ恵みを齎す
そんな彼らを、人々は教会と読んだ
その教会の中枢を担う、祈祷
神々に頼み、力を与えてもらうのだ
それを行うものを、聖者と聖女と呼ぶ
聖者は世界に1人だけ、同時に教会を統べる教皇となる
聖女は何人といる、適性が有るならば誰でもなれてしまうのだ
だが、そんな聖女の中で1人異質な彼女が居た
魔神とは人々の憎しみ恨み悔しみ、それら全ての怨念
それが集まって意志を持ったのが、魔神なのだ
幾ら神頼みで力を与えて貰い、封印を強めるだけでも
唯ならぬ怨念が、魔神の抵抗として祈祷する彼女らに降り注ぐ
数十分も祈祷をすれば忽ち人として壊れてしまうだろう
だが、彼女は数十分?
否、数十時間もの時間を祈祷し続けたのだ
疲弊した様子も無い、至って健康
唯ならぬ精神力と自己犠牲で他人を救おうとする、それは正に聖女
神でさえも、彼女を好いていた
かの神々の住まう神界と関係の深い教会でなくとも、他の聖女を遥かに凌駕する祈祷を行え
それが魔に侵された迷宮であろうと、関係無かった
それほど迄に、天才だったのだ
聖女は、肉を食べてはならない
常に神聖な白金の衣を纏い、純潔を持つ事が絶対条件である
郷に入れば郷に従え、その通りに 好きな肉も男性関係も全て見向きもしなかった
皆の為になるならばと
だが、彼女は不遇な理由で国外追放される事になる
神に教えられたのだ、天啓として『現国王が急病で床に伏せ暫時の後、死を迎える』と
それを、その不運な未来を変える為に王族達に伝えたのだ
だが彼らは、彼女を疑った
畏怖した、憤怒した、恨んだ
そして彼らは、彼女を追放する
彼らは知らない、祈祷の殆どは彼女が担っていると
魔神の封印も、来たる災害も、降り掛かる厄災も、全てを払っていた事に
彼女を無くした国は、神に見放されたも同然なのだ
彼女は、喜んでいた
もう、堅苦しい事はしなくて良いのだ
肉を喰らい、オシャレをし、男性とだって仲良くして良いのだ
彼女を追放した国は、破滅の一途を辿る事になる
床が光り輝く、その閃光は部屋中を飲み込む
眼を開ければそこは異世界、転移と言うやつだ
「またか」
普通ならば、戸惑い焦ることだろう
だが、1人そんな事を呟いた奴が居る
その声は焦燥の喧騒に掻き消されて行く
全員が落ち着きを取り戻し、事情の説明をされていく
少しずつ、現実を噛み締め悲しむ者から喜ぶ者まで三者三様
各々の能力を確認し、王が願いを申し込む
リーダーシップを発揮する善人が、それを受け
感化されてか、他も受けて行く
1人を除いて
「俺は抜けさせてもらう、命を危険に晒すなど面倒な事は御免だ
あぁ、王宮を出れば暗殺者共が押し寄せて どうせ危険だろうが俺は抜ける」
そう言い放って、消えた
文字通り、その場から
その行方を知るものは居ない
そして、同時期
似たり寄ったりの彼女が、異世界に来た
転生者である
一部、界隈で転生装置とも言われた大型車両
後方に荷物を大量に積んだ為、バランスを崩したトラック
それに轢かれた少女である
何故か神に能力を授けられ、世界の説明をされていく
幸い、彼女は そういった物語 を多く読んでいる
驚きも薄い、そして適応能力も高かった
膨大な能力を授けられ、野原に放たれた彼女は新しい生活に心を踊らせていた
重い石製の蓋が持ち上がる それは棺桶、死者を祀る物
その蓋を開ける者は見えない、照明の無い洞窟の奥深く確かに見えない
居ないと言った方が適当だろうか、中から開けられているのだから
轟音を立て蓋は落下する、中から出て来るは少年
否、青年か そこは表現し難い大人びた彼
「ここが、2000年後か」
彼は2000年前、魔物達を操り世界を混沌へ陥れた厄災
神をも手を出せぬ力を有した彼は暴虐の限りを尽くした
莫大な戦闘能力を保有する魔族、その王 魔王であった
彼は2000年前、周囲のレベルの低さに酷く落胆した
ならば、未来に行けば発達した者達と戦えるのでは無いか
そうして彼は、棺に籠り自身に魔法をかけ2000年の後に目を覚ました
各国が総出を上げて討伐しようと試みるは、魔王であり魔王では無かった
目の覚ました彼は、言わば寝ていただけ
魔王が死ななければ、次の魔王は生まれない
今人類が魔王と謳い争うのは、人々の負の感情 怨念が集まり自我を持った一種の魔物
アンデッドエネミー、最下級に属する『レイス』であった
強欲で醜い人類が、生み出した物なのだ
確かに、そのレイスは強力だ
だが、今目覚めた彼には到底及ぶはずがない
所詮は神の力を借りた程度の聖女に抑え込まれる程しかないのだから
この魔王は、並大抵の聖属性では効きもしないのだ
彼は唯、強者との戦闘に飢えていた
求め追求め欲めた、その結果が暴虐限りとなろうとも
強者が尽きぬ限り彼は暴れた、だが居なくなってしまえば止まるも当然
2000年前とは遥かに衰退した現状で暴れるほど、阿呆では無かった
世界を丸々飲み込み探知魔法で3人だけ、自身と渡り合える奴らを見付け
歩みを進めるのであった
同時に神を信仰し、人々へ恵みを齎す
そんな彼らを、人々は教会と読んだ
その教会の中枢を担う、祈祷
神々に頼み、力を与えてもらうのだ
それを行うものを、聖者と聖女と呼ぶ
聖者は世界に1人だけ、同時に教会を統べる教皇となる
聖女は何人といる、適性が有るならば誰でもなれてしまうのだ
だが、そんな聖女の中で1人異質な彼女が居た
魔神とは人々の憎しみ恨み悔しみ、それら全ての怨念
それが集まって意志を持ったのが、魔神なのだ
幾ら神頼みで力を与えて貰い、封印を強めるだけでも
唯ならぬ怨念が、魔神の抵抗として祈祷する彼女らに降り注ぐ
数十分も祈祷をすれば忽ち人として壊れてしまうだろう
だが、彼女は数十分?
否、数十時間もの時間を祈祷し続けたのだ
疲弊した様子も無い、至って健康
唯ならぬ精神力と自己犠牲で他人を救おうとする、それは正に聖女
神でさえも、彼女を好いていた
かの神々の住まう神界と関係の深い教会でなくとも、他の聖女を遥かに凌駕する祈祷を行え
それが魔に侵された迷宮であろうと、関係無かった
それほど迄に、天才だったのだ
聖女は、肉を食べてはならない
常に神聖な白金の衣を纏い、純潔を持つ事が絶対条件である
郷に入れば郷に従え、その通りに 好きな肉も男性関係も全て見向きもしなかった
皆の為になるならばと
だが、彼女は不遇な理由で国外追放される事になる
神に教えられたのだ、天啓として『現国王が急病で床に伏せ暫時の後、死を迎える』と
それを、その不運な未来を変える為に王族達に伝えたのだ
だが彼らは、彼女を疑った
畏怖した、憤怒した、恨んだ
そして彼らは、彼女を追放する
彼らは知らない、祈祷の殆どは彼女が担っていると
魔神の封印も、来たる災害も、降り掛かる厄災も、全てを払っていた事に
彼女を無くした国は、神に見放されたも同然なのだ
彼女は、喜んでいた
もう、堅苦しい事はしなくて良いのだ
肉を喰らい、オシャレをし、男性とだって仲良くして良いのだ
彼女を追放した国は、破滅の一途を辿る事になる
床が光り輝く、その閃光は部屋中を飲み込む
眼を開ければそこは異世界、転移と言うやつだ
「またか」
普通ならば、戸惑い焦ることだろう
だが、1人そんな事を呟いた奴が居る
その声は焦燥の喧騒に掻き消されて行く
全員が落ち着きを取り戻し、事情の説明をされていく
少しずつ、現実を噛み締め悲しむ者から喜ぶ者まで三者三様
各々の能力を確認し、王が願いを申し込む
リーダーシップを発揮する善人が、それを受け
感化されてか、他も受けて行く
1人を除いて
「俺は抜けさせてもらう、命を危険に晒すなど面倒な事は御免だ
あぁ、王宮を出れば暗殺者共が押し寄せて どうせ危険だろうが俺は抜ける」
そう言い放って、消えた
文字通り、その場から
その行方を知るものは居ない
そして、同時期
似たり寄ったりの彼女が、異世界に来た
転生者である
一部、界隈で転生装置とも言われた大型車両
後方に荷物を大量に積んだ為、バランスを崩したトラック
それに轢かれた少女である
何故か神に能力を授けられ、世界の説明をされていく
幸い、彼女は そういった物語 を多く読んでいる
驚きも薄い、そして適応能力も高かった
膨大な能力を授けられ、野原に放たれた彼女は新しい生活に心を踊らせていた
重い石製の蓋が持ち上がる それは棺桶、死者を祀る物
その蓋を開ける者は見えない、照明の無い洞窟の奥深く確かに見えない
居ないと言った方が適当だろうか、中から開けられているのだから
轟音を立て蓋は落下する、中から出て来るは少年
否、青年か そこは表現し難い大人びた彼
「ここが、2000年後か」
彼は2000年前、魔物達を操り世界を混沌へ陥れた厄災
神をも手を出せぬ力を有した彼は暴虐の限りを尽くした
莫大な戦闘能力を保有する魔族、その王 魔王であった
彼は2000年前、周囲のレベルの低さに酷く落胆した
ならば、未来に行けば発達した者達と戦えるのでは無いか
そうして彼は、棺に籠り自身に魔法をかけ2000年の後に目を覚ました
各国が総出を上げて討伐しようと試みるは、魔王であり魔王では無かった
目の覚ました彼は、言わば寝ていただけ
魔王が死ななければ、次の魔王は生まれない
今人類が魔王と謳い争うのは、人々の負の感情 怨念が集まり自我を持った一種の魔物
アンデッドエネミー、最下級に属する『レイス』であった
強欲で醜い人類が、生み出した物なのだ
確かに、そのレイスは強力だ
だが、今目覚めた彼には到底及ぶはずがない
所詮は神の力を借りた程度の聖女に抑え込まれる程しかないのだから
この魔王は、並大抵の聖属性では効きもしないのだ
彼は唯、強者との戦闘に飢えていた
求め追求め欲めた、その結果が暴虐限りとなろうとも
強者が尽きぬ限り彼は暴れた、だが居なくなってしまえば止まるも当然
2000年前とは遥かに衰退した現状で暴れるほど、阿呆では無かった
世界を丸々飲み込み探知魔法で3人だけ、自身と渡り合える奴らを見付け
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