暗殺者、時空間の神になる?

レクス

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あれから時は大いに飛ぶ、5年
5歳はこの世界【アストレアル】で言う、神礼の儀
神から授かった能力を解放する儀式、同時に成長の時でもある

5歳未満の身体に能力を授けるのは異様な負荷が掛かり成長に異常を起こす
だから、何者かの存在によって抑制されているのだ
だが稀に与えられる能力が強力過ぎると、抑制するを超過して発現する

これは本来の能力とは数段劣る効能となるが、十分な程の力が出る
神礼の儀で制限を外せば、あまりにも強力過ぎる能力が発現するのは必至
それは通常の能力を遥かに凌駕する、否 先ず比べる物でも無い

現に、元 無次
いや今は、アビス·マークィス·アルブレッド と言った方が正しいだろう
彼に授けられる能力は【時空神】その力
当然、抑制が効くはずもなく八割方の能力が発現する

人智を超えた神々の力、いくら八割と言え能力は絶大
逆に2割も抑圧できた制限力を褒め称えたい程だ
取り敢えず、彼は赤子の状態から能力を行使した

能力に慣れるのが使命なのだ、当然と言えよう
常人なら、まだ意識も無いような赤子
そんな矮小な存在が自身を遥かに超越した能力を連発する姿
神童、そう呼ばれる

力関係の崩壊を恐れた他の貴族の暗殺者さえ赤子が直々に手を下す
情けないと失敗した暗殺者達を罵る事は出来ない、全員 死体で帰ってくるのだから
依頼した貴族の館に、死んだ状態で転移してくるのだ
訓練された大人を赤子が殺戮する姿は異様も異様
全ての作戦は失敗に終わり彼、アビスは儀式を迎える

「本当に無事に成長して良かったわ」

「そうだな、一時期は心配した物だ」

5歳は1つの成長の区切り
衛生環境の十分に整わない文明での赤子の死亡率は高い
3人に1人が生きるかどうか、それほど迄に
それに制限下で異様な程に強力に発現した能力からの副作用の懸念
5歳になれば、ある程度の免疫や武芸も出来てくる
これからは安泰、そう言ってもいい

「制限は解除されました、貴方の能力は【瞬駆】です 清き未来があらん事を」

儀式は最も神に近しい教会で牧師が【神頼】を用い行う
文字通り、神に制限を解除するように頼む

「制限は解除されました、貴方の能力は…確認出来ません 清き未来があらん事を」

神は基本的に下界へ干渉は不可能、その為 儀式では牧師を介して制限を取り除く
過程で神は牧師の許容範囲内なら能力を教える
確認出来ない、それは『容量超過』『神の意図』そのどちらかなのだから
どちらにせよ確認出来ないという現象は能力の強力さを意味する

アビスは制限が解除された途端に姿を消す
能力に早々に慣れる為だ、慣れると一概に言っても現状は可能なこと全ての発見
既に5次元から0次元までは習得済み、完全に扱える

「おかえりアビス、父さんが呼んでたわよ?書斎に居るって」

「分かった」

侯爵、現国王の親族が担う公爵
簡単に言えば王族を除けば権力最上位に至る、そんな彼らの屋敷は巨大
当然だが、大規模な書庫や食堂を除けば後は大なり小なり部屋で埋まる
無数に存在するのだ、部屋が

書斎と一概に言っても何十とある訳で
その中から父親を探すのは骨が折れる作業なのは必然
でも時空を自在に操作するアビスからすれば辿り着くなど簡単な事

 「入ります」

「あぁ」

ソファに座る父親の向かい、机を挟むようにして座る
その行動は、どんな英才教育を受けようと齢5の少年が行うものでは無い

「単刀直入だが、君は何者だ?」

我が子にするような質問では、無い
まるで潜入者を見定める眼で貫くか如くの視線を刺し
対峙した者が忽ち萎縮するような威圧を放つ

彼の父親は、類稀なる武力で侯爵に上り詰めた
『能力』は儀式で授かる強力な物と、努力で手に入れる方法がある
授かり物と努力で得た物は、当然のように後者が劣るが それも才能次第

近接戦闘用の殆どの能力を習得
更に『武術強化』という授かり物が天性の才能を昇華
他者の追随を許さぬ剣豪となった

約20年前、隣国 スレイド帝国との戦争で大きな功績を残し
戦後の対応も迅速で丁寧に、その行いが当時の国王を感心させる
賢明だった第3王女、アビスの母を娶る事を条件に領地と侯爵位を叙された

そんな彼の人を見る目は、慧眼と褒め称えられよう
特に、相手の動作と実力を見抜く『戦士の眼』に関しては

「転生者、と言っておこう」

「転生と言うと、前世では何を?」

「殺し屋だ、暗殺者と言うべきだろう」

「だから、その身の熟しか」

「当然だ」

「何人くらい殺してきた」

「数えていない、雑念を残すから数えるなという教育だ」

「じゃあ、感覚的なので良い」

「知らんな、殺した奴など逐一覚える価値も無い」

「徹底してるな」

「一族で経営してるからな、信用は絶対 失敗は許されぬ」

「君は今、その体で戦えるかい?」

「赤子から教育を受ける、その勘は体が変わった程度で失われない」

「まぁ、一旦 その事は棚に上げておいて 話があるんだ」

「傍付き人の話だろう、依頼なら受けてやる」

アビスの産まれたアルブレッド侯爵家は、代々 とある家に仕えている
エメラルド公爵家 もしくはエルド王家、そのどちらかだ
どちらも前王の血族に中る、王族の血を持つ国家の最上位

その傍付き人として、幼き頃から教育を受け育て上げる
年の差を最大でも5歳に抑えるように出来るだけ同年代の子供を就かせる
子供の産まれる時期を合わせる為に逢瀬さえも指定される

今も父は現国王に仕え日々支援に明け暮れている
会ったことがない兄も第1王子に住み込みで仕えているらしい
王子が死ぬか、自分が死ぬか それまで永遠に仕えるのだ

王族からは手厚い援助を受けれ、他の貴族を遥かに超える権力を保有するのも事実
だが、その協力関係に見える『それ』は言わば奴隷契約にも似ている
その一生涯、自分が仕える王族に忠義を誓い従う事
産まれてくる子供にも、それは強制される

何なら、生まれた瞬間から洗脳に近い教育を施される
『自身の主人に忠義を尽くせ、王族に逆らうのは禁忌だ』と
主人を守り導く為に先進的な英才教育を行う

恋人が出来ようと、主人に殺せと言われれば殺さなくてはならない
そもそも、主人に性的行為を迫られても断る事は許されない
どんな不条理であろうと受け入れなくてはならないのだ、絶対に

「大丈夫か? ちゃんと忠義を尽くせるのか?」

「依頼に従うのは得意だ、だが主人を導くのも依頼の内 間違っているのなら矯正する」

「まぁ、相手が良いから大丈夫か 君の主人は」

「エメラルド公爵家 26代目 次女 アリス·デューク·エメラルド 5歳
好奇心旺盛で怖いもの知らず、儀式では稀な能力を授かり将来有望とされる
儀式前から能力が発現しており闇ギルドの暗殺対象になっている
礼儀作法の教育は行き届いているが彼女自身は厳しくなく、主に優しい性格を持つ
容姿端麗な為、多くの貴族から婚姻の申し出を受けている
オーディヌス学園の試験を受ける予定、だな」

「待て、暗殺対象だと?」

「3年前からだ、何度も退けてやった 今は依頼でも何でもなく恨みで狙われている」

「それを向こうの家は?」

「一応、書は置いたが信じては無いだろうな」

「依頼した貴族は、誰だ?」

「死んだ奴だ」

「っ!? まさか『貴族狩り』は、お前 だったのか!?」

「さぁな、『貴族狩り』ではない 相手を屠ったまでだ」

「流石、暗殺者と言うべきか…」

「試験は?」

「あぁ、3週間後だ お前なら3週間も有れば十分に受かれるだろう?」

「当然だ」

父親は、我が子との
いや、我が子と呼ぶのは忌避するべきか
それとも神との邂逅に歓喜すべきか
それは兎も角、話は終えた

それを見る影が1つ
遠い遠い天界からの目線である

「頑張るわね、良き良き!!」
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