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第3章【一途に想うからこそ】
17罪 身代わり③
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「……真兄、大丈夫?」
「……何がだ?」
「いや……ちょっと寂しそうだから」
そんな表情を浮かべていた自覚がなかったのか真兄は驚いたように目を丸くさせていて、私は苦笑を浮かべるしかなかった。
そして真兄はすぐにバツの悪そうな表情を浮かべると、ガシガシと後頭部を掻いて眉をㇵの字に下げた。
「……情けないな」
「そんな事ないよ」
年上のはずなのに、と肩をすくめる真兄に私はブンブンと勢いよく首を左右に振った。
年齢なんて関係ないし、好きな人が他の人と親密にしていたら、そりゃ悲しくなるのは当たり前だ。胸が痛むのだって当たり前なんだ。
「それだけ、真兄は静のこと大切に思ってるってことでしょ」
「雪だってそうだろ?」
「ははは……」
いわゆるおなじ穴の狢だろう。
真兄はまだ二人が付き合っていることを知らない。だからまだ、真兄の心に救いはあるのかもしれない。知らないという事を羨ましいと思ったのは、もしかしたら初めてかもしれない。
私も、出来る事なら知りたくなかった。
「そういえば、子ノ国に行くことは決まったけど、どれくらいかかるんだろうね」
「確かにそうだな。あまり近いとも思えないしなぁ……」
「そうだね……ここからなら、だいたい七日くらいで辿り着くんじゃないかな」
私と真兄の会話を聞いていたらしいヴェル君が、一瞬こちらを振り返って首を傾げながら大体の日にちを教えてくれた。
私達の世界だったら車や電車があるからあっという間に辿り着けてしまうけれど、この世界にはそんなものは存在しない。あったとしても馬車とかそういうものだろうし、馬車なんて乗ったら追手に即見つかってしまうだろうから案としては却下だろう。
(馬だって乗れないし……というか、馬ないし)
だから、私達には徒歩という選択肢しかなくて、そうなれば七日くらい掛かるのは仕方のない事だろうというのがさすがに分かる。
(七日……かぁ)
少しだけ気分が重いな、と思いながら私は大きくため息を吐いて肩をすくめた。
(寝るときはテントの外は気にしないように気を付けよう……)
ヴェル君が防音魔法で音を遮断してくれるのだから、テントの外を見たり聞こえてくる声を気にして余計な事を考えたりしてしまわないようにしないと、たぶん私自身の心がもたないと思った。
むしろ、防音魔法で外からの音も遮断してもらえばよいのではないか? とも思った。そうすれば、テントの中に入ってしまえば音に気を取られることもない。
(まあ、その場合、朝になって外から声をかけてもらっても気付けないんだけど……)
「とりあえず、もう少し進んで暗くなる前にどこかでテントを張ろう」
「ええ。そうね。広い場所があればいいのだけれど……」
あたりをキョロキョロと見渡しながら呟く静に、ヴェルは「そうだね」と小さく言葉を返していた。
「……何がだ?」
「いや……ちょっと寂しそうだから」
そんな表情を浮かべていた自覚がなかったのか真兄は驚いたように目を丸くさせていて、私は苦笑を浮かべるしかなかった。
そして真兄はすぐにバツの悪そうな表情を浮かべると、ガシガシと後頭部を掻いて眉をㇵの字に下げた。
「……情けないな」
「そんな事ないよ」
年上のはずなのに、と肩をすくめる真兄に私はブンブンと勢いよく首を左右に振った。
年齢なんて関係ないし、好きな人が他の人と親密にしていたら、そりゃ悲しくなるのは当たり前だ。胸が痛むのだって当たり前なんだ。
「それだけ、真兄は静のこと大切に思ってるってことでしょ」
「雪だってそうだろ?」
「ははは……」
いわゆるおなじ穴の狢だろう。
真兄はまだ二人が付き合っていることを知らない。だからまだ、真兄の心に救いはあるのかもしれない。知らないという事を羨ましいと思ったのは、もしかしたら初めてかもしれない。
私も、出来る事なら知りたくなかった。
「そういえば、子ノ国に行くことは決まったけど、どれくらいかかるんだろうね」
「確かにそうだな。あまり近いとも思えないしなぁ……」
「そうだね……ここからなら、だいたい七日くらいで辿り着くんじゃないかな」
私と真兄の会話を聞いていたらしいヴェル君が、一瞬こちらを振り返って首を傾げながら大体の日にちを教えてくれた。
私達の世界だったら車や電車があるからあっという間に辿り着けてしまうけれど、この世界にはそんなものは存在しない。あったとしても馬車とかそういうものだろうし、馬車なんて乗ったら追手に即見つかってしまうだろうから案としては却下だろう。
(馬だって乗れないし……というか、馬ないし)
だから、私達には徒歩という選択肢しかなくて、そうなれば七日くらい掛かるのは仕方のない事だろうというのがさすがに分かる。
(七日……かぁ)
少しだけ気分が重いな、と思いながら私は大きくため息を吐いて肩をすくめた。
(寝るときはテントの外は気にしないように気を付けよう……)
ヴェル君が防音魔法で音を遮断してくれるのだから、テントの外を見たり聞こえてくる声を気にして余計な事を考えたりしてしまわないようにしないと、たぶん私自身の心がもたないと思った。
むしろ、防音魔法で外からの音も遮断してもらえばよいのではないか? とも思った。そうすれば、テントの中に入ってしまえば音に気を取られることもない。
(まあ、その場合、朝になって外から声をかけてもらっても気付けないんだけど……)
「とりあえず、もう少し進んで暗くなる前にどこかでテントを張ろう」
「ええ。そうね。広い場所があればいいのだけれど……」
あたりをキョロキョロと見渡しながら呟く静に、ヴェルは「そうだね」と小さく言葉を返していた。
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