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第3章【一途に想うからこそ】
17罪 身代わり⑧
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私は魔法をかけてくれているヴェル君から視線を逸らし、泉で水浴びしているレインボースワンに視線を向けた。ヴェル君の言うとおり手を出さなければ何もしてこないレインボースワンは、ただひたすらバシャバシャと水音をたてながら水浴びする姿はなんだか楽しそうに見えた。
(私も水浴びしたいな……)
そうは思うものの、レインボースワンが水浴びしているところに参入する勇気もなければ、まだみんながウロウロとしている時間に服を脱ぐ気にもならなかった。
もう少し遅い時間――暗くなってきてから水浴びでもしようかな、と考えを新たにして私は視線をもう一度ヴェル君に戻した。
「よし。これで終わり……っと」
「お疲れさま、ヴェルくん」
パンパンと両手の埃をはたく様にして手を叩くヴェル君のそばに、静がねぎらいの言葉を呟きながらゆったりとした歩調で近寄って行った。にっこりと微笑みかける静にヴェルくんは少しだけ戸惑ったような表情を浮かべたあと、同じような笑顔を浮かべて「ありがとう」と返事を返していた。だけど、それが私には作り笑いのようにも見えたしぎこちなくも思えた。
(……なんだろ、この違和感)
違和感の正体がわからなくて、私はただジッと二人を見つめるだけだった。作り笑いのように見えたのも、もしかしたら私の気のせいかもしれないし、ぎこちなく思えたのも付き合い始めたばかりだからと思えば違和感を覚えながらも納得してしまうような気がした。そして、付き合い始めたばかりだからこそ作る笑顔が偽物っぽくも見えてしまう気もして、なんとも言えないモヤモヤした感覚に陥った。
「どうした?」
「あ、真兄」
「なにか気になったのか?」
「……ううん、私の気のせいだから大丈夫だよ」
この違和感を真兄に打ち明けていいのだろうかと悩みもしたが、違和感は違和感に過ぎないし確たる証拠もないために私は打ち明けることをやめた。変な心配をかけてしまうのもよくないし。
「そうか?」
「うん。変に心配かけちゃってごめんね、真兄」
「いや、そんなこと気にするな」
「……ありがとう。優しいね、真兄は」
「俺だけじゃない。みんな優しいだろ」
「確かにそうだね」
そんな真兄とのやり取りが私の心を少しだけ落ち着かせてくれた。
へにゃ、と笑うように表情を緩めるのを見た真兄は“仕方ないやつだな”と言わんばかりに肩をすくめて苦虫を噛み潰したように笑った。
(私も水浴びしたいな……)
そうは思うものの、レインボースワンが水浴びしているところに参入する勇気もなければ、まだみんながウロウロとしている時間に服を脱ぐ気にもならなかった。
もう少し遅い時間――暗くなってきてから水浴びでもしようかな、と考えを新たにして私は視線をもう一度ヴェル君に戻した。
「よし。これで終わり……っと」
「お疲れさま、ヴェルくん」
パンパンと両手の埃をはたく様にして手を叩くヴェル君のそばに、静がねぎらいの言葉を呟きながらゆったりとした歩調で近寄って行った。にっこりと微笑みかける静にヴェルくんは少しだけ戸惑ったような表情を浮かべたあと、同じような笑顔を浮かべて「ありがとう」と返事を返していた。だけど、それが私には作り笑いのようにも見えたしぎこちなくも思えた。
(……なんだろ、この違和感)
違和感の正体がわからなくて、私はただジッと二人を見つめるだけだった。作り笑いのように見えたのも、もしかしたら私の気のせいかもしれないし、ぎこちなく思えたのも付き合い始めたばかりだからと思えば違和感を覚えながらも納得してしまうような気がした。そして、付き合い始めたばかりだからこそ作る笑顔が偽物っぽくも見えてしまう気もして、なんとも言えないモヤモヤした感覚に陥った。
「どうした?」
「あ、真兄」
「なにか気になったのか?」
「……ううん、私の気のせいだから大丈夫だよ」
この違和感を真兄に打ち明けていいのだろうかと悩みもしたが、違和感は違和感に過ぎないし確たる証拠もないために私は打ち明けることをやめた。変な心配をかけてしまうのもよくないし。
「そうか?」
「うん。変に心配かけちゃってごめんね、真兄」
「いや、そんなこと気にするな」
「……ありがとう。優しいね、真兄は」
「俺だけじゃない。みんな優しいだろ」
「確かにそうだね」
そんな真兄とのやり取りが私の心を少しだけ落ち着かせてくれた。
へにゃ、と笑うように表情を緩めるのを見た真兄は“仕方ないやつだな”と言わんばかりに肩をすくめて苦虫を噛み潰したように笑った。
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