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第7章【愛の言葉】
52罪 在りし日の過去を垣間見よ・3 (2)②
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その瞳は少しだけ悲しそうで。だけど、少しだけ期待もしているようだった。
それだけゑレ妃は白卯の事が大好きだった。何よりもそばに居たい。誰よりも一緒にいて欲しい。
幼いゑレ妃には単純なそういった想いしか今はない。大人になればもしかしたらそれは変わってしまうかもしれない。でも、それはそれで子供の頃の良き思い出になる。
未来は誰にも分らないのだ。どう転がるかは、その時になってみないと分からない。だからこそ、大人である白卯は足踏みをしてしまうのかもしれない。
「姫、様……」
「白卯、ほら」
眉をハの字にして、情けない表情を浮かべながらゑレ妃を見つめる白卯にゑン姫は苦笑を浮かべながら彼の背中を軽く押した。
ゑレ妃の母からの承諾は得ているこの状況。あとは白卯が歩み寄れれば、ゑレ妃の気持ちは浮かばれる。
「わたくしは……」
「はーく?」
「……姫様……わたくしは…………」
そう呟きながらも、ゆっくりと一歩、また一歩と白卯はゑレ妃に向かって近付いて行った。そして、彼女の前に膝まづくと――――ぎゅ、と力強くゑレ妃を抱きしめた。
「わたくしは、姫様をとても大切に思っております。愛しく…………思っております」
あんなにも幼かったゑレ妃。無邪気に白卯を困らせる事をしてきた。耳を甘噛みしたり、雪兎姿の白卯の耳を掴んだり……本当に、破天荒な姫だった。
そんなゑレ妃のそばに、白卯はずっと居続けた。九年も、ずっとずっと彼女の姿を目で追い続けてきた。そして、家族に向けるような愛情が少しずつ異性に向けるソレに変わっていっていることに気付いた頃、白卯も少しずつ自分の気持ちの変化に気付いた。
あれだけ全身で愛情を向けられて、ほだされない者などいない。ましてや愛でて育ててきたゑレ妃からの愛情に、心が揺れないはずがない。
白卯はただ、自分と少なからず血の繋がりがあるゑレ妃にそういった感情を向けないように必死になって『見ないフリ』をしていただけだ。理解してしまえば、気付いてしまえば、心が振り切れるのはいとも簡単だ。
「白、わたし、うれしい!」
「ひ、姫様っ⁉」
「白、だいすきよ!」
抱きしめていた腕の力を弛めた瞬間、ゑレ妃はすかさず白卯の唇に口付けた。
真っ赤な唇と、うっすらと桃色がかった唇が触れ合った。照れ臭そうに顔を見合わせてから、ゑレ妃は今度は自分から白卯をギュッと抱きしめた。
小さな体で、一生懸命に大きな白卯を抱きしめる。そのぬくもりに、優しさに、可愛らしさに、白卯はふわりと笑みを浮かべてしまった。
「わたくしも、ですよ……姫様」
そんな二人を生暖かい瞳で見つめているゑン姫の姿になど、白卯もゑレ妃も気付く余地もなかった。
そして、二人が相思相愛になった事を知ったゐ吹が頭を抱えて大粒の涙を流したのは言うまでもない事実である。ただの親ばかだとゑン姫は肩を竦めながらも、気持ちは分かると夫であるゐ吹を慰めたのは、また別の話である。もちろん、その事実をゑレ妃も白卯も知ることはなかった。
それだけゑレ妃は白卯の事が大好きだった。何よりもそばに居たい。誰よりも一緒にいて欲しい。
幼いゑレ妃には単純なそういった想いしか今はない。大人になればもしかしたらそれは変わってしまうかもしれない。でも、それはそれで子供の頃の良き思い出になる。
未来は誰にも分らないのだ。どう転がるかは、その時になってみないと分からない。だからこそ、大人である白卯は足踏みをしてしまうのかもしれない。
「姫、様……」
「白卯、ほら」
眉をハの字にして、情けない表情を浮かべながらゑレ妃を見つめる白卯にゑン姫は苦笑を浮かべながら彼の背中を軽く押した。
ゑレ妃の母からの承諾は得ているこの状況。あとは白卯が歩み寄れれば、ゑレ妃の気持ちは浮かばれる。
「わたくしは……」
「はーく?」
「……姫様……わたくしは…………」
そう呟きながらも、ゆっくりと一歩、また一歩と白卯はゑレ妃に向かって近付いて行った。そして、彼女の前に膝まづくと――――ぎゅ、と力強くゑレ妃を抱きしめた。
「わたくしは、姫様をとても大切に思っております。愛しく…………思っております」
あんなにも幼かったゑレ妃。無邪気に白卯を困らせる事をしてきた。耳を甘噛みしたり、雪兎姿の白卯の耳を掴んだり……本当に、破天荒な姫だった。
そんなゑレ妃のそばに、白卯はずっと居続けた。九年も、ずっとずっと彼女の姿を目で追い続けてきた。そして、家族に向けるような愛情が少しずつ異性に向けるソレに変わっていっていることに気付いた頃、白卯も少しずつ自分の気持ちの変化に気付いた。
あれだけ全身で愛情を向けられて、ほだされない者などいない。ましてや愛でて育ててきたゑレ妃からの愛情に、心が揺れないはずがない。
白卯はただ、自分と少なからず血の繋がりがあるゑレ妃にそういった感情を向けないように必死になって『見ないフリ』をしていただけだ。理解してしまえば、気付いてしまえば、心が振り切れるのはいとも簡単だ。
「白、わたし、うれしい!」
「ひ、姫様っ⁉」
「白、だいすきよ!」
抱きしめていた腕の力を弛めた瞬間、ゑレ妃はすかさず白卯の唇に口付けた。
真っ赤な唇と、うっすらと桃色がかった唇が触れ合った。照れ臭そうに顔を見合わせてから、ゑレ妃は今度は自分から白卯をギュッと抱きしめた。
小さな体で、一生懸命に大きな白卯を抱きしめる。そのぬくもりに、優しさに、可愛らしさに、白卯はふわりと笑みを浮かべてしまった。
「わたくしも、ですよ……姫様」
そんな二人を生暖かい瞳で見つめているゑン姫の姿になど、白卯もゑレ妃も気付く余地もなかった。
そして、二人が相思相愛になった事を知ったゐ吹が頭を抱えて大粒の涙を流したのは言うまでもない事実である。ただの親ばかだとゑン姫は肩を竦めながらも、気持ちは分かると夫であるゐ吹を慰めたのは、また別の話である。もちろん、その事実をゑレ妃も白卯も知ることはなかった。
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