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ディアストリーナ
職がない
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売名行為は…….成功したはずだった。
「ダメだ、どこのパーティーも出禁かよ。」
奥からギルド長がやって来る。
「派手にやったみたいだねアスィール君。」
「仕方ないじゃないですか、向こうは、やる気満々だったし、フォ…何者かによってそれも仕組まれていたみたいですしね。」
俺は危うく神父の名前を出してしまうところだった。
しかし、彼らは明らかにヤバい集団だ。
彼らを巻き込むわけにはいかない。
「それなら尚更困るねぇ。君を働かせたくない理由があると。」
ギルド長は腕を組んで考えている。
こうなれば、回収任務に赴くしかないか……
「教会で職を受けて来る。」
この際、運び屋のルールだとか、みみっちいことは言ってられない。
リリィとギルド長は眉をハの字に曲げながら俺を見送ってくれた。
俺を散々な目に合わせてきたアイツらの手を借りることは、不服ではあるが……
背に腹は変えられない。
それにこっちの仕事の方が報酬は良いしな。
俺は両開きの大きな扉を押しのけながら、教会の中へと入った。
今、まさに修道服を着たナースが、シスターに葡萄酒をかけられているところだった。
そうだ、彼女は就職先を見つけられた。
ヒーラーだったことが幸いし、教会に匿ってもらえたのだろう。
「新しい神の使いに乾杯🍷」
神父が俺の後ろで葡萄酒を飲んでいる。
「パン? 食うか? 」
「食うかよ!! 」
小声でキレてみる。
今は神聖な儀式。それぐらいの自重はできる。新たな使いの誕生。おめでとうナース。そしてごめんなさいナース。
「俺ん時とは偉い違いだな。俺も職を無くしたってんのに。」
神父は指の代わりにグラスを振る。
「サードは君に言ったはずだ。『君に仕事を依頼するつもり』だとな。」
「まざかそのつもりで最初から俺を貶めたわけじゃなかろうな。」
「言っただろう? 君の力を試したとな。」
「ついて来い青年。」
神父は踵を返すと、聖堂の右手の赤い扉へと歩いて行った。
俺も、その声に連れられて、神父の元へと向かう。
「おい、勝手に入って良かったのかよ。」
「構わない。聖職者の私が許可したからな。」
薄暗い部屋の中、彼が電気をつけると、部屋の壁に無数の写真が出現した。
俺の写真ッ……だけで無く、ツノを生やし、八重歯を出しながら不敵に笑う魔族の姿。
俺はこの男のことを知らないはずなのに、この男のが誰であるかを知っていた。
咄嗟に神父へと掴み掛かり、彼が自分を尾行していたことへの怒りや懐疑心も忘れて、ただ一点、この魔族への怒りを彼にぶつけた。
「何であの時、兄さんのことを何も答えてくれなかったんだ。」
「この男はもう、君の知っているエシールではない。」
「そんなもん見ればわかるだろう。なぜだ。なぜ俺にそのことを伝えなかった。」
「君のことも疑っていたからだ。それに君が真実に気づけば、君は彼に戦いを挑みに行く。師匠の仇を取りに行くであろう。」
俺はそこで衝撃の事実を目の当たりにした。
「おい……ちょっと待てよ。じゃあホントにエシール兄さんが師匠を?? 」
神父は唇を噛みながら、細々と話し始める。
「ああ、そうだ。その術は人を惑わせる。惑わされた人間は自我を失う。自我を失った者は、凶暴性が増し、あのような魔物の姿に変貌してしまう。君にも暗殺指令が出ている。」
「俺を……殺す? 」
俺は神父の足元に、両膝から崩れ落ちると、地面にひれ伏した。
「だが……教会には君に協力するようにとの指令も出ている。この言葉の意味……分かるかね? 」
「分かりたくもないね…… 」
俺の心の奥底に溜まっていた感情が溢れ始める。
「なぁ、教えてくれよ。俺たちは王宮でモルモットにされて、何のためにこんなことを。」
「君の師匠のやったことは意味のあることだ。だが『エシールを倒すまで、君の使命は伝えるな』というのが、彼の遺言だからな。まだ君に伝えることは出来ない。」
この力を使えば、自分がどうなってしまうかは分からない。
だが俺は師匠の遺言が聞きたかった。
「知りたい。師匠の遺言を。」
「正直、君はここで止まってしまうと思っていた。だが、君にはまだ進む意思があるらしい。」
「教会としてもできる限り君を援助しよう。裏切り者のエシールを倒すために……またその先の目的のために。教会は君の力になる義務がある。」
「だが……今のままでは、私と君とでも、あの怪物には勝てないであろう。」
「そのためにまずしなければならないことは、君を戦えるように鍛えることだ。」
「鍛えるって何をだ? 奴と戦う時に、魔法を発動すれば良い。」
神父は人を食ったような態度で言葉を返して来る。
「それで君が暴走する可能性だって大いにある。相手が暴走した魔法使いなら、自分も彼と互角に並ぶために、同じタイプの自分を模写してしまうというわけだ。」
それは一理あった。
俺はいつも、この魔法を想像力で抜き出している。
彼を前にして、俺は正気を保った自分を引き当てることができるだろうか?
「行くぞ少年。君に足りないのは戦うための知識や経験だ。私がレクチャーしてやる。」
こうして俺と彼との特訓が始まった。
「ダメだ、どこのパーティーも出禁かよ。」
奥からギルド長がやって来る。
「派手にやったみたいだねアスィール君。」
「仕方ないじゃないですか、向こうは、やる気満々だったし、フォ…何者かによってそれも仕組まれていたみたいですしね。」
俺は危うく神父の名前を出してしまうところだった。
しかし、彼らは明らかにヤバい集団だ。
彼らを巻き込むわけにはいかない。
「それなら尚更困るねぇ。君を働かせたくない理由があると。」
ギルド長は腕を組んで考えている。
こうなれば、回収任務に赴くしかないか……
「教会で職を受けて来る。」
この際、運び屋のルールだとか、みみっちいことは言ってられない。
リリィとギルド長は眉をハの字に曲げながら俺を見送ってくれた。
俺を散々な目に合わせてきたアイツらの手を借りることは、不服ではあるが……
背に腹は変えられない。
それにこっちの仕事の方が報酬は良いしな。
俺は両開きの大きな扉を押しのけながら、教会の中へと入った。
今、まさに修道服を着たナースが、シスターに葡萄酒をかけられているところだった。
そうだ、彼女は就職先を見つけられた。
ヒーラーだったことが幸いし、教会に匿ってもらえたのだろう。
「新しい神の使いに乾杯🍷」
神父が俺の後ろで葡萄酒を飲んでいる。
「パン? 食うか? 」
「食うかよ!! 」
小声でキレてみる。
今は神聖な儀式。それぐらいの自重はできる。新たな使いの誕生。おめでとうナース。そしてごめんなさいナース。
「俺ん時とは偉い違いだな。俺も職を無くしたってんのに。」
神父は指の代わりにグラスを振る。
「サードは君に言ったはずだ。『君に仕事を依頼するつもり』だとな。」
「まざかそのつもりで最初から俺を貶めたわけじゃなかろうな。」
「言っただろう? 君の力を試したとな。」
「ついて来い青年。」
神父は踵を返すと、聖堂の右手の赤い扉へと歩いて行った。
俺も、その声に連れられて、神父の元へと向かう。
「おい、勝手に入って良かったのかよ。」
「構わない。聖職者の私が許可したからな。」
薄暗い部屋の中、彼が電気をつけると、部屋の壁に無数の写真が出現した。
俺の写真ッ……だけで無く、ツノを生やし、八重歯を出しながら不敵に笑う魔族の姿。
俺はこの男のことを知らないはずなのに、この男のが誰であるかを知っていた。
咄嗟に神父へと掴み掛かり、彼が自分を尾行していたことへの怒りや懐疑心も忘れて、ただ一点、この魔族への怒りを彼にぶつけた。
「何であの時、兄さんのことを何も答えてくれなかったんだ。」
「この男はもう、君の知っているエシールではない。」
「そんなもん見ればわかるだろう。なぜだ。なぜ俺にそのことを伝えなかった。」
「君のことも疑っていたからだ。それに君が真実に気づけば、君は彼に戦いを挑みに行く。師匠の仇を取りに行くであろう。」
俺はそこで衝撃の事実を目の当たりにした。
「おい……ちょっと待てよ。じゃあホントにエシール兄さんが師匠を?? 」
神父は唇を噛みながら、細々と話し始める。
「ああ、そうだ。その術は人を惑わせる。惑わされた人間は自我を失う。自我を失った者は、凶暴性が増し、あのような魔物の姿に変貌してしまう。君にも暗殺指令が出ている。」
「俺を……殺す? 」
俺は神父の足元に、両膝から崩れ落ちると、地面にひれ伏した。
「だが……教会には君に協力するようにとの指令も出ている。この言葉の意味……分かるかね? 」
「分かりたくもないね…… 」
俺の心の奥底に溜まっていた感情が溢れ始める。
「なぁ、教えてくれよ。俺たちは王宮でモルモットにされて、何のためにこんなことを。」
「君の師匠のやったことは意味のあることだ。だが『エシールを倒すまで、君の使命は伝えるな』というのが、彼の遺言だからな。まだ君に伝えることは出来ない。」
この力を使えば、自分がどうなってしまうかは分からない。
だが俺は師匠の遺言が聞きたかった。
「知りたい。師匠の遺言を。」
「正直、君はここで止まってしまうと思っていた。だが、君にはまだ進む意思があるらしい。」
「教会としてもできる限り君を援助しよう。裏切り者のエシールを倒すために……またその先の目的のために。教会は君の力になる義務がある。」
「だが……今のままでは、私と君とでも、あの怪物には勝てないであろう。」
「そのためにまずしなければならないことは、君を戦えるように鍛えることだ。」
「鍛えるって何をだ? 奴と戦う時に、魔法を発動すれば良い。」
神父は人を食ったような態度で言葉を返して来る。
「それで君が暴走する可能性だって大いにある。相手が暴走した魔法使いなら、自分も彼と互角に並ぶために、同じタイプの自分を模写してしまうというわけだ。」
それは一理あった。
俺はいつも、この魔法を想像力で抜き出している。
彼を前にして、俺は正気を保った自分を引き当てることができるだろうか?
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こうして俺と彼との特訓が始まった。
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