闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

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サウスランドへ

久しぶりの仕事

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 僕は山賊の討伐の依頼の張り紙を破り取ると、ギルド嬢へと渡した。
 彼女は気まずそうな顔をする。
「ごめん。今お金に困っているから。」
「いえ、その件については良いんです。元々ここの古参の方が引き受けて、命からがら逃げてきたクエストなので。」
 ギルド嬢は眉をハの字に曲げて、上目遣いでコチラを見てくる。
「大丈夫です。僕たちに任せて下さい。」
 フォースが割って入ってくる。
「行方不明者は? 帰って来なかった冒険者のリストも教えて欲しい。」
 山賊たちも冒険者がどのような存在であるかは知っているはず。
 多分殺した死体を、自分たちで匿っているのだ。
「すみません、下手に運び屋さんの要請も出せなくて。」
 冒険者と運び屋の判別は前述あって、出来ないように身なりを整える。
 そういう習慣が運び屋にはある。
 山賊も、いちいちそんなことは確認しないし、無差別に殺し回っている可能性が高い。
 というか、そこまで律儀なら山賊なんてやっていないだろう。
「大丈夫。私たちに任せて、みんな助けるから。」
「ごめんなさい。だからシャワー貸して。」
 
      * * *

 ギルド嬢は快くお風呂を貸してくれた。
 さっぱりした僕たちは露店で魔力ポーションやらの必需品を揃えてから、陽が落ちる頃、ポートロワイヤルを出て、山賊のアジトへ出発した。
「薬草は良かったのか? 」
「仕方ないよ。こんなハシた金じゃ。」
「私たちは回復魔術が使えるけど、アンタは治癒魔術しか使えないでしょ? 」
「いや、私たちも他人事ではないぞアスピ。」
「魔術を封じられれば、私たちも薬草の類に頼らざる追えなくなる。出来るだけ被弾は避けよう。」
「……ったわ。アンタも気をつけなさいよアスィール。」
「分かった。行こう。」

     * * *

 二、三回、魔物たちと戦闘をしてから…… アジトの位置は、すぐ分かった。
 隠れる気が無いのか、余程自分たちの腕に自信があるのか。
 洞窟からは光が漏れており、漢たちが談笑する声がここまで聞こえてくる。
「油断している今がチャンスか? 」
「どう思う? フォース。僕には、『いつでも来いよ。』って誘われているように見えるけど。」
「私も同感ね。とりあえず、洞窟の周りを偵察しましょう。」
 フォースがコックリ頷いた。
「それが一番良いな。私たちが偵察をしている間に、奴らが酒で伸びたり眠り始めるかもしれない。」
   
       * * *

 一通り調べたが、罠の類も抜け穴の類も見当たらなかった。
 そうしているうちに、ふもとのアジトの入り口からは談笑が消え、イビキが聞こえ始める。
「洞窟を壊して、生き埋めにするのは? 」
「捕まった運び屋たちが生け取りにされている可能性もゼロでは無い。それに瓦礫から、山賊たちと、冒険者を掘り出す作業の方が非効率だ。」
「フォースなら、効率よりも倫理を優先すると思ったけど。」
「私はもう神父じゃ無いからな。冒険者は生き返る。山賊は首を差し出せば金が手に入る。それで良いじゃ無いか。」
 アスピが僕たちに魔術をかける。
[トヘステ]
 僕たちに隠密魔術がかかる。
「つまりこういうことでしょ。さっさと親玉をお縄にかけちゃうわよ。」
 僕たちは、山を降りて平原に戻ると洞窟の入り口へと入る。
 看板には『山賊ドレイク団のアジト。』と大きく墨で殴り書きされている。
[ったくここの主は飛んだらしい。]
 見張りの鼻提灯はなちょうちんを割らないように忍足で
「カチャッ。」
「ん? 」
 しまった。伝説の武具が擦れて、金属音が鳴る。
「んだよネズミか? ホント物好きだよな。船長は。急に山賊なんて始めてさ。」
「まぁ食っていけるならなんでも良いんだけどさzzzz…… 」
[ちょっと気をつけなさいよ。バカ。]
 アスピに頭を軽く叩かれる。
[ちょっと。ヘトステが解けちゃうよ。]
 中は意外と広かった。
 宝物庫に厨房と井戸。書斎までが完備されている。
[どうやら既存のダンジョンを、そのまま自分たちのアジトに作り変えているようだな。」
 フォースは、クンクンと鼻を効かせると、一つの部屋へと入っていった。
[心配するな。ここに罠は無い。おそらく酒樽だ。]
[盗んだものかしら? ]
[いや、自分たちで作っているものだろう。なるほど。洞窟は確かに酒造に適した環境かもしれん。どっちにしろ密造は重罪だが。]
 僕たちは、さらに奥地へと進んだ。
[シッ。奴らだ。皆酒でぶっ倒れている。]
 奥には棺桶らしき物と……
[運び屋たちだ。まだ生きている。]
[壁際を歩こう。]
[バレないように。さっきみたいにガチャガチャ鳴らすんじゃ無いわよ。]
 僕は乙姫とドゥルガを地面に置いた。
[では私はコイツらに縄をかける。]
 フォースは法衣の下から縄を取り出すと、ギシギシと引っ張った。
 ホント、フォースの法衣の下はどうなっているのだろうか?
 僕はアスピと一緒に、奥の棺桶へと向かう。
 衰弱している運び屋たちがこちらに気付き、牢の隙間から手を伸ばしている。
[シッ、今助けるから大人しくしてて。]
 枷と牢が擦れて、キイキイと音を立てる。
 その音を親玉様は見逃さなかった。
 フォースが危ない。
「ヒュンッ」
 山賊の主が出した刀風が、こちらまで飛んでくる。
 僕たちの隠密魔術は一瞬にして解除された。
 まずい!!
「「あっ!! 」」
 僕との目があった。
「なんでお前がここにおるんや!! 」
 ドレイク……
 偶然と思ったけど。
 まざかこんな形で再開するなんて。
 数カ月前、ノースランドへ行く途中に、僕たちの魔導船を奪おうとした海賊だった。
 僕は慌てて乙姫を引き抜こうとする。
「エモノを手放すなんて、ちょっと危機感が足りんのちゃうか? 」
「痛い。とりあえず離してくれ。」
 フォースがドレイクの手を振り払う。
 騒ぎを聞きつけた下っ端たちが、目を『3』にしながらこちらに駆けつけてくる。
「どうしました、船……リーダー。ネズミならしょっちゅう。さっきもこんなにデカいのが居ましてね。」
「ネズミ一匹通すなって言ったやろアホ。」
 脳天を叩かれて、頭から地面に激突する。
 そして、フォースとドレイクの目があった。
「あっ…… 」
「ああっ…… 」
 ジワジワと赤面するドレイク。
 下っ端に回復魔術をかけるフォース。
「これは…… その…… 」
「そう、漫才ですよ漫才。私の故郷で流行ってて。」
「そうか……物騒な故郷だな。」
「勇者様っ!! 」
 ドレイクがフォースに抱きつく。
 どうやらフォースを勇者と勘違いしているらしい。
「酔って? いるのか? 」
 フォースはそれを必死に追い払おうとする。
「私は勇者では無い。あっちが勇者。」
「ハァ? お前みたいなモヤシ野郎が勇者なわけ無いやろ。」
「ホントだよ。僕が勇者。」
「散れ、イネ、死ね。邪魔じゃ。」
「ねえ旦那様。」
「私は聖職者だ。配偶者などいない。」
「大丈夫よ。コイツ、最近破門にされたから。」
 アスピは……話をややこしくしないでほしい。
 フォースもフォースで、都合よく自分の立場を取り繕わないでほしい。
 さっきまで「私はもう神父じゃ無い。」なんて言ってたし。
「おいお前ら、酒を持ってこーい。三々九度、三々九度!! 」
 

 

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