闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

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二人の過去

下山して

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 俺たちは、後を付けてきた刺客たちを運び屋に引き渡し、彼らと共に下山すると、師匠……マスター・リーの手記を手に取り、もう一度情報を整理した。
 「やはり、私の理論は間違ってなかった。」
「あの融合魔術には、リワン姉さんの固有魔術が必要だったって。」
 彼女は、もう何度も、俺たちをいる。
 王宮に集められた時、実験の最中に暴走した孤児たちを、暴走した俺を止めようとして、そして、別世界から、現在のアポカリプスの成れの果てを取り込んだアスィールを。
 今度、またこの魔術を使えば、彼女の身体が保つとは限らない。
 彼女も、アレから、また成長した。
 代償としての年齢は再び取り戻しつつあるが……
「反対だ。リワンはもう何度も、この魔術を使っている。次に使えばどうなるかは保証できない。」
「アンタのせいでね。」
 コイツは嫌な女だ。
 いつもいつも、俺の痛いところを的確に突いてくる。
 だからそこ、話がよく分かる奴なんだけど。
「心配しないでエシール。そのために私がいるんだから。」
「実はもう、魔法陣の構築は八割以上まで進んでいるの。」
「後は、私たちの理論に誤りな無いか、こうやって、アーちゃんと、勇者くんの過去を探って答え合わせをしているの。」
 と、リワン。
「勝負は一回。だけど予行演習もシミレーションも出来ない。」
「そんな状態で失敗しましたってなったら、私たちが積み上げてきたモノが全部無駄になってしまう。」
 実際、彼女たちの推測と、師匠が書いていた次元の腕に対する記述には嘘誤りがなかった。
「アスィールの魂は、勇者に近づくたびに、ディアストに近付いていた。だからこそ、次元の腕で吸えたんだろう。」
「そこに、魔王エスカリーナの融合魔術も干渉して、今の状況が出来上がったんだろうな。」
 アスピは、人差し指と親指で、顎を掴んで首を傾げた。
「だとすれば、やっぱり私とリワン姉さんで、ディアスト兄さんと、アスィールを魔王因子から引き剥がす、やり方が一番良さそうね。」
「私、故郷に戻る。」
「ディアストについて調べるのか。」
「そう、私は確かに兄さんの妹だった。だけど、知っているようで、兄さんのことは全然知らない。この数年間も、それまで一緒に生きてきた11年間も。」
 なら
「俺はリワンと一緒にアスィールについて調べる。」
 神父と海賊は、アスピの方へと歩いて行った。
「アイツの過去を丸裸にしてやりたい気分は山々なんだが、アスピを一人にするわけには行かない。」
「何だかんだ言って、アタイに出来た初めての妹やからな、放っておくわけには、いかん。」
 俺たちは二手に分かれて、彼らの過去を洗うことにした。
 俺はまず、アスィールの両親が匿われているノースランドに行こうと思う。
 俺が何やら考え事をしていると、アスピが、俺に手を差し出してくる。
「ホレ、アンタの時空間魔術で、バロア城中腹の書庫まで飛ばしてよ。」
 コイツは俺をなんだと思っているのか。
「行きの船賃だけでも浮けば……ね。」
 大人しくポータルを使っておけば良い物を。
「俺のハイヤーは高くつくぞ。」
「いくら? 」
 ああもう面倒くさい。
「分かった。三人とも捕まっていろ。」
 俺は、心の中で奴を呼ぶ。
[ふぁー、なんだい? 雑用なら聞かないよ。君の話はね。]
[お前の相棒、アスィールの仲間たちの願いだ。聞いてやってくれ。]


    * * *


「本当に、お母様と、お父様に会いにいくの? 」
 リワンが不安そうな顔をしている。
 彼女にとって、彼らの存在が複雑なソレであることは理解している。
 だけど、彼女自身、アイツアスィールの両親に会わなくてはいけないことに対しても、理解している筈だ。
 だから俺は彼女を彼らに合わせにいく。
「俺だって気が引ける。お前は、アイツらを加害者として嫌厭したいかもしれないけど、俺もまた彼らにとって加害者だから。」
「奴の親、お前の親同然のマスター・リーを殺したんだから。」
「私こそ、あの時、一歩踏み出せば、エッちゃんに魔術を掛けていれば。」
「……やめよう。過去を悔いたところで未来は変わらねえ。」
「俺も、お前も前に進まなきゃ行けないってこった。」
 そんなカッコいい事を言っているけど、俺の原動力は、過去への悔恨から来ている。
 俺は許されたいのだ。アイツの居場所も、存在意義もメチャクチャにして、なお弟弟子に救われた悔恨から。
 劣等感から衝動的に走ってしまった自分の罪から。
「エッちゃん? 」
「シッ。」
 二度は通用しねえぞビギニア王。
 誰かが俺をつけてきている。
「隠密とかいうセコイ真似はやめておけよ。殺意でバレバレなんだからさ。」
 両手を上げながら出てきたのは、マスター・リーの後釜、ペンタゴン。
「いやいや、君には礼をしても仕切れないぐらいでね。」
「そうだよ。アンタの目の上のタンコブを払い除けたのは俺だからな。感謝して欲しいぐらいだぜ。で? なんだ? 口封じか? 」
 ペンタゴンは首を横にブンブンと振って、大袈裟に否定してみせた。
「支援で動けるほど王宮魔導師は、フットワークが軽く無いさ。」
「なるほど、俺たちを消すつもりだな。」
「バロア王は、霊山の件で、君たちが信用にたる人物か見極めようとしていた。」
「結局処分することにしたけど、街中じゃ悪いから、人気の無いところで、こっそりやっちまおうって話か。」
「……お見通しというわけか。彼とは違い、君はキレるんだね。」
「まぁ、だからなんだって話だよ。私の仕事はここでお前らを捉えて、情報を吐かせて、殺して、死体を処分してビギニア王に報告するだけ。」
「なんと簡単な仕事だろうか? 」
 出来るだけ人間同士での争い事は起こしたく無い。
 人類共通の敵が魔族であることは、依然として変わらないから。
「ここで俺たちを殺してどうする? 俺たちは、彼らに対抗できる唯一無二の存在だぞ。」
「いや、あるさ。君たちが今から会いにいく彼らだよ。」
「下衆だな。」
「御託はもう沢山だ。すぐに死んでくれるなよ。ビギニア王からは、彼らの両親の居場所を聞き出すように言われてるからな。」
「だったら手加減して欲しいモノだね。」

 
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