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復讐鬼
俺、契約者になれました。
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試験に合格した俺たちは、都に戻り、内裏へと連れて行かれた。
坂上は、蔵人所の扉を開けると、そのまま用具室へと入っていった。
俺たちが彼に続いて中に入ると、坂上は
「ここのことは他言無用だ。」
とだけ言って、床の敷物を蹴飛ばすと、階段が現れた。
「入れ。」
階段は螺旋状に続いており、ライトで最深部を確認ししようとしても、そこは見えなかった。
俺たちは生唾を呑み、坂上に言われるがままに、無言で階段を降り始めた。
……五時間ぐらい経ったであろうか。
俺たちは最深部にたどり着いた。試験のこともあって、みんなクタクタだった。
坂上が主電源をONにすると、最深部の全容が明らかになる。
十の端末が円を描くように設置されており、端末が繋ぐ先には、カプセルに収められた魔具が収められている。
契約者の適合者には、それぞれ魔具の鍵穴がある。
だが、俺たちは坂上から指示を貰うまでなく、自分の本能に従うがままに魔具へと引き寄せられていた。
俺は端末の前で手をかざす。
俺が手を出すと、モニターには『electronic』と表示された。
意識が落ちていく。
疲れたのかな。
でも不思議と不快では無かった。
懐かしさすら感じる。
気がつくと俺は、荒野の中で佇んでいた。
周りには何も無い。低木一本すら見つけられない。あるのは青空と……白い服を着た少女だ。
「お前は誰だ? 」
少女はこちらに振り向く。
「そっくりだね。びっくりしたよ。」
彼女はトコトコこちらに歩いて来た。
「私の名前はリンゲツ。」
「リンちゃんでも凛月でも好きに呼んでね。」
俺は彼女の手を振り払った。
「そういうのはいい。」
「力を貸せ。俺には力が必要だ。全てを殺すほどの。」
彼女は首を振る。
「違う。違うよ。キミのお父さんは……キミのお父さんはキミの復讐を望んでいないかもしれない。」
「お前に何が分かる。」
俺は彼女の腕を強引に取った。
「契約だ。俺とお前の関係はそれ以上でもそれ以下でも無い。」
「慎二……いつか君も真実に気が付いてくれると思う。」
「もちろん。私の罪も。」
俺は気がつくと、蔵人所の地下最深部で魔具を握っていた。
チャクラムと、それに鎖で繋がれた小太刀。
「コレか。」
そうだ。コレが父さんが使っていた魔具。凛月。
すると、誰かが後ろから抱きつい出来たので、思わず警戒してしまった。
「慎二っ。」
振り返ると、そこには美奈がいた。なんだか馴れ馴れしい。槍馬と美奈の付き合いは、半年ほどではあるが、俺はもっと少ない。
彼女が村にやって来た、その日に俺は、村から出ていってしまったから。
「慎二!! コレで私たち三人揃って契約者だね。」
俺は銃鬼の代償のことを思い出して、頭で何かが繋がったような気がした。
そうだ剣城さんは彼女が記憶喪失だと言っていた。
ということは……そういうことなんだろう。
---桐生慎二、ちょっと良いか? ---
そう俺に話しかけて来たのは……彼女の呪具だろう。
---美奈、彼と話がしたい。あと、そこの、お調子モノも一緒にな---
お調子モノというのは、言うまでもなく彼女の魔具だろう。
偽者の記憶、偽物の感情
ニセモノ、それは契約者の宿命だ。
俺たちは、悲田院の屋上へとやって来た。
支援を終え、往復十時間の旅を終えた俺たちが地上に出た頃には、夜空に星が出ていた。
「で? 話ってなんだよ。」
---お主はもう、あの子の異変に気がついているだろう---
「ああ、おおよそな。美奈は自分が丹楓村で生まれ、俺たちと共に育ったと、そう思い込んでいるのだろう。」
---オイオイ、慎二。思い込んでるってのは、少々聞き捨てられないなぁ---
「どちらも同じことだろう。」
すると魔具は急に真剣になった。
---嘘? 嘘じゃ無いさ。彼女にとっては本当の記憶。美奈を幸せにするための本当の記憶だ---
「傷つけないために嘘をつき続ける。それがお前たち魔術具の答えか。」
「で? お前らは俺に何をしろって言うんだ? 彼女のことなんて何一つ知らない俺に。」
呪具が答える。
---美奈が……せめて彼女が父親の死を受け入れるようになるまで彼女の幼馴染としていてやってくれ---
槍馬なら返事二つで受け入れるだろう。それに彼なら、ボロを出さずにやれる。
だが、俺にそれが出来るだろうか?
俺の頭の中は、彼女を騙すことへの不安と、罪悪感でぐるぐるしていた。
だが
「おい、呪具。最終試験の時、助けてくれたことは感謝している。お前だろ。最終試験の時に時間を止めてくれたのは。」
---そうだ。アレは私の能力。記憶を代償にした美奈の能力だ---
「今日から俺は、美奈の幼馴染だ。よろしくな。」
坂上は、蔵人所の扉を開けると、そのまま用具室へと入っていった。
俺たちが彼に続いて中に入ると、坂上は
「ここのことは他言無用だ。」
とだけ言って、床の敷物を蹴飛ばすと、階段が現れた。
「入れ。」
階段は螺旋状に続いており、ライトで最深部を確認ししようとしても、そこは見えなかった。
俺たちは生唾を呑み、坂上に言われるがままに、無言で階段を降り始めた。
……五時間ぐらい経ったであろうか。
俺たちは最深部にたどり着いた。試験のこともあって、みんなクタクタだった。
坂上が主電源をONにすると、最深部の全容が明らかになる。
十の端末が円を描くように設置されており、端末が繋ぐ先には、カプセルに収められた魔具が収められている。
契約者の適合者には、それぞれ魔具の鍵穴がある。
だが、俺たちは坂上から指示を貰うまでなく、自分の本能に従うがままに魔具へと引き寄せられていた。
俺は端末の前で手をかざす。
俺が手を出すと、モニターには『electronic』と表示された。
意識が落ちていく。
疲れたのかな。
でも不思議と不快では無かった。
懐かしさすら感じる。
気がつくと俺は、荒野の中で佇んでいた。
周りには何も無い。低木一本すら見つけられない。あるのは青空と……白い服を着た少女だ。
「お前は誰だ? 」
少女はこちらに振り向く。
「そっくりだね。びっくりしたよ。」
彼女はトコトコこちらに歩いて来た。
「私の名前はリンゲツ。」
「リンちゃんでも凛月でも好きに呼んでね。」
俺は彼女の手を振り払った。
「そういうのはいい。」
「力を貸せ。俺には力が必要だ。全てを殺すほどの。」
彼女は首を振る。
「違う。違うよ。キミのお父さんは……キミのお父さんはキミの復讐を望んでいないかもしれない。」
「お前に何が分かる。」
俺は彼女の腕を強引に取った。
「契約だ。俺とお前の関係はそれ以上でもそれ以下でも無い。」
「慎二……いつか君も真実に気が付いてくれると思う。」
「もちろん。私の罪も。」
俺は気がつくと、蔵人所の地下最深部で魔具を握っていた。
チャクラムと、それに鎖で繋がれた小太刀。
「コレか。」
そうだ。コレが父さんが使っていた魔具。凛月。
すると、誰かが後ろから抱きつい出来たので、思わず警戒してしまった。
「慎二っ。」
振り返ると、そこには美奈がいた。なんだか馴れ馴れしい。槍馬と美奈の付き合いは、半年ほどではあるが、俺はもっと少ない。
彼女が村にやって来た、その日に俺は、村から出ていってしまったから。
「慎二!! コレで私たち三人揃って契約者だね。」
俺は銃鬼の代償のことを思い出して、頭で何かが繋がったような気がした。
そうだ剣城さんは彼女が記憶喪失だと言っていた。
ということは……そういうことなんだろう。
---桐生慎二、ちょっと良いか? ---
そう俺に話しかけて来たのは……彼女の呪具だろう。
---美奈、彼と話がしたい。あと、そこの、お調子モノも一緒にな---
お調子モノというのは、言うまでもなく彼女の魔具だろう。
偽者の記憶、偽物の感情
ニセモノ、それは契約者の宿命だ。
俺たちは、悲田院の屋上へとやって来た。
支援を終え、往復十時間の旅を終えた俺たちが地上に出た頃には、夜空に星が出ていた。
「で? 話ってなんだよ。」
---お主はもう、あの子の異変に気がついているだろう---
「ああ、おおよそな。美奈は自分が丹楓村で生まれ、俺たちと共に育ったと、そう思い込んでいるのだろう。」
---オイオイ、慎二。思い込んでるってのは、少々聞き捨てられないなぁ---
「どちらも同じことだろう。」
すると魔具は急に真剣になった。
---嘘? 嘘じゃ無いさ。彼女にとっては本当の記憶。美奈を幸せにするための本当の記憶だ---
「傷つけないために嘘をつき続ける。それがお前たち魔術具の答えか。」
「で? お前らは俺に何をしろって言うんだ? 彼女のことなんて何一つ知らない俺に。」
呪具が答える。
---美奈が……せめて彼女が父親の死を受け入れるようになるまで彼女の幼馴染としていてやってくれ---
槍馬なら返事二つで受け入れるだろう。それに彼なら、ボロを出さずにやれる。
だが、俺にそれが出来るだろうか?
俺の頭の中は、彼女を騙すことへの不安と、罪悪感でぐるぐるしていた。
だが
「おい、呪具。最終試験の時、助けてくれたことは感謝している。お前だろ。最終試験の時に時間を止めてくれたのは。」
---そうだ。アレは私の能力。記憶を代償にした美奈の能力だ---
「今日から俺は、美奈の幼馴染だ。よろしくな。」
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