神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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極東

会議

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 ここは極東の中枢。大内裏の極東太政院。
 つまり伴光の館だ。
 極東には珍しい密閉された空間に、巨大な円卓が配置され、それを囲むように側近たちが椅子に腰を掛けている。
 光源は足元から照らされているライトのみ。
 それゆえに部屋はほんのり薄暗かった。
 民部の大藤、武家筆頭の新潟、そして桐生家と坂田家の席には新しく、黒澄家と羽々斬家が居座っていた。
 そして隣で大きな欠伸をしているのが、兵部省、極長の坂上頼次だ。
 伴光が咳払いをして口を開いた。
「挨拶は省きます。そういう関係でも無いですし。」
「さて今回の議題ですが、極東の人口問題と資源について。」
「極東はここ五年で人口を25%も増やし、資源消費量は200%、つまり五年前の2倍にまで膨れ上がりました。」
「ゆえに私は徴兵、遠征で口減らしをおこなっておりましたが、極長。あなたたちのが活躍されたことにより、それを行うことが難しくなりました。」
 私は思わず口を挟んだ。
「伴殿、発言よろしいでしょうか。新潟、黒澄、羽々斬家の前でその発言は、いささか倫理観にかける発言なのでは? 」
 それを新潟が遮る。
「まぁまぁ落ち着きたまえ七宝殿。私たちは気にしていない。伴殿続けてくれ。」
 伴は極長の元へと振り返る。
「このままでは中流階級をコントロールすることすら危うい。力で抑え込むというのにも限度がありますが。」
 彼は大きく伸びると、立ち上がり、ケースから書類を取り出すと、円卓に搭載されている端末にメモリーを接続させ、真ん中のモニターに資料を映し出す。
「伴総統。私だって何も考えずに、十三部隊を戦場に登用した訳ではないよ。君の非生産的なマニュフェストに正直うんざりしたっていうのはあるけどね。」
 伴は眉を顰め、すかさず言い返した。
「そもそも、天様が禍々しい力を手にしなければ、こうなることもなかった。」
「同時に私たちもグランディルに隷属していたことだろう。」
「君が奴隷として彼らの貴族たちに飼われていた未来だって存在するんだよ。いや、君じゃ絶対無理でしょ。そのプライドじゃ。」
 伴の顔が紅葉のように染まる。頭に血が昇っているのが分かる。
「ならその責任、全部取ってもらうぞ。」
「言われなくてもそのつもりです。だからこうやって資料を用意して、貴方のような頑固モノにでも分かるように、デジタル資料も作ってきたんですよ。」
 今度は極長が咳払いをした。
「ゴホン。それでは改めて始めさせて頂きますか。」
「皆さん、ご存知の通り、極東の鉄鋼の九割以上はウボクからの輸入品であります。
コレは問題だ。」
 伴がまた口を挟む。
「それが極東の人口問題となんの関係があるんだ? 」
 極長は愉快に手を叩いている。
「よくぞ聞いて下さいました。」
「まず鉄グスの輸入には莫大なコストがかかっていること、コレが極東の財政を圧迫していることは確かです。そのせいで極東の建築物のほとんどは木造、家具にも金属が使われることは必要最低限しかない。」
「こちらをご覧ください。極東の暴徒や、聖の襲撃で火がつけられた場合、極東の建造物の八割が焼失するというデータが出ています。もちろん大内裏もね。おお?伴殿、赤くなったり青くなったりお忙しいですね。」
 伴の顔はさっきとは対照的に血の気が引いて真っ青になっていた。
「ならどうすれば良いか? 答えは簡単ですよ。取りに行くんです。どこの利権も無いところから。」
 興味を持った大藤が口を挟んだ。
「どこの権力も及んでいない場所? そんな場所はない。ほとんどはグランディルが平定してしまったが、一体どこにそんな都合のいい場所があるというのだね坂上くん。」
 坂上は両手を掲げる。
「あるじゃないですか。はるか東に巨大な大陸が。」
 大藤は絶句した。
「メリゴ…大陸……そんなところまで兵が派遣できるわけが……」
「いますよ、とっておきの部隊が。契約者なら十五人いれば、メリゴ大陸とポータルを繋ぐことが可能だというデータが出ています。そうすれば、メリゴ大陸は極東の領土であるも当然。初めて極東が進軍するんですよ世界に。これまでの耐え凌ぐ政策はもう終わりだ。これからはグランディル、セルという強国と肩を並べるのです。」
 メリゴ大陸への遠征……
 あまりにも大きな彼の野望に、私は震え上がった。
 周りの側近からの反応から、他の人間たちも同じように震え上がった事だろう。
「もちろん何人かは極東に残します。暴徒、他国からの侵略、得美士がまた攻めてこないとも限らない。国内の問題は山積みです。」
「遠征にまで一ヶ月ほど猶予も頂きたい、この計画は完璧に成功させたいですから。機械の整備やら、備品補充、契約者たちが遠征できるように訓練させる必要もある。
 こんなこと過去に無い前例ですからね。」
 黒澄が立ち上がった。
「必要なら私の娘も使ってくれ。」
 コイツに黒澄の親を名乗る権利があるのかは分からなかった。
 が私は、この上ない違和感を飲み込む。
「もちろん作戦の指揮は七宝君、君だよ。君が部隊を編成したまえ。」
 私はその言葉でハッと我に帰った。
「はい、極東の未来のために。」
 





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