神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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大陸遠征

メリゴ大陸

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「どうしてあの時、私に頼ってくれなかったの? 」
 少女は悲しそうな目で俺をみている。
「別に信用していなかったわけじゃ無い。ただ、ドミニクとお前の能力は相性が悪かった。だから銃鬼を選んだ。」
 少女は俺を睨んだ。
「でも銃鬼お姉ちゃんのことは信じていたんだ。お姉ちゃんの能力を使えば、あの男に勝てるって。私ね、慎二が信じてくれれば、あんな男コテンパンに出来たんだよ。」
 俺は首を振る。
「いや、違う。お前もいなければ奴には勝てなかった。」
「そうだよね。私よりお姉ちゃんが先に慎二と契約したし、お姉ちゃんは包容力があるし大きいし。」
「包容力」と言うのには少し語弊があった。あれは全てを飲み込む闇、虚無だ。
「待ってくれ!! 凛月!! 行くな!! 」
「私を必要としてくれない慎二なんていらないから。」
______________夢だ。
 俺は天井に向かって手を伸ばしていたことに気がつく。
 すぐさま凄まじい衝撃が俺を襲う。
 突然の出来事だったので、一瞬何が起こったか分からなかった。
「おい、お前、なんか僕に言うことあるよな。」
 新潟が血相を変えて俺を睨んでいる。
 そこへ椅子に座り、梁にもたれかかっていた七宝がために入る。
「落ち着け新潟。お前の気持ちもよく分かるが、あの状況では第三者からの介入を阻止することなんて出来なかった。誰のせいでも無い。」
「いや、俺たちは慎二がいなければ、生きていたかも怪しい。あのドミニク・ブレイクという男の力は強大だ。」
 左腕の侵食は少しだけ治まっていた。
「侵食は時の剣で止めた。だが、俺の力では止まるのが精一杯だ。しかし…その代償、美奈の能力でも治せるかどうか……」
 俺は窓の外を見た。
「んなもんどうでも良いですよ。」

「慎二。」
      「本当にすまなかった。」

「やめてくださいよ。上官が土下座なんて。」
 俺は話を切り替えた。
「ところで俺は何日ぐらい寝てたんですか? 」
 七宝は新潟と顔を合わせると答えた。
「一週間だ。」
「一週間も? 」
「そりゃご迷惑をおかけしました。」
「コンコン。」
 ノックの音が聞こえる。
 俺は極東の訓練のことも忘れて、つい「どうぞ。」と言ってしまった。
 七宝から喝が飛んでくることを恐れて、耳を塞ごうとしたその時……
 入ってきたのは、ワーメリゴンだった。
 歳は四、五十ぐらいで、首や手に装飾があり、何より印象的なのは、独特な冠を頭に下げていることだ。
 俺は一目見て、この男がワーメリゴンのトップであることを理解した。
「この度は聖から我々を救っていただきありがとうございます。」
 窓の外を見ると、ワーメリゴンたちが綺麗に並び、頭を地面につけているでは無いか!!
「救ったなんて……アンタらにとったら煩わしい支配者の首が入れ替わっただけでしょうに。」
 ワーメリゴンの長は首を振った。
「支配者だなんてとんでもない。あなたたちには、伝説にある東から来た神の使いです。」
「あの忌々しきグランディルから私たちを解放して下さっただけでなく、神器を授けてくださるなんて。」
 今の言葉で理解した。
「隊長のやっていることは、文化の破壊です。よく思わない人間だっているかもしれない。」
 七宝は指を振る。
「チッチッチ。まだ慎二は状況を理解できていないようだな。」
「コレは取引だ。ワーメリゴンとの間に結ばれた対等なな。」
 ワーメリゴンが七宝向けてお辞儀をする。
「この方が金を掘る技術を、私たちに無償で提供して下さると。」
 七宝は長と肩を組んだ。
「その代わり、鉄鉱や軍事資源を安く提供してくれとな。ちなみに、俺たちが提供している文明技術は、申請がある部族のみに提供している。同時に文明技術を持っている部族が持っていない部族を虐げるなという協定も設けた。」
「まだまだ問題は山積みです。ムッシュ桐生。」
 俺は隊長のこういう部分も尊敬していた。
 しかし……
 ここまでやる男だったとは。
「しっかし良いんですか? 極東のモノをこんなに横流しにして、上層部に怒られても知りませんよ。」
「そうか、そのことなら。坂上極長は、二つ返事でおkしてくれたよ。」
「『力で民族を抑えるのは、我々のやり方らしくないからね。キミの自慢のオツムを生かして上手くやってくれよ。なぁムッシュ七宝。』ってな。」
 七宝の演技だけで、あの狡猾な顔が浮かぶ。
 七宝は真剣な顔になってこちらを見る。
「凛月を追う許可も出たんですね。」
「極東の兵器が外に流出したと知られれば、国内外合わせて騒がしくなるからな。」
「俺たちは、ここの事務作業や治安維持で忙しい。あまり人員はさけないが……」
「で、凛月の居場所は分かったんですか? 」
「ああ、お前を砂浜に叩きつけた少女の身元もな。夜花伊桜里よばな いおり元々極東の人間で、志築の村出身の少女で、既に死亡されていたとされていたが、どういうわけか、セル帝国の近衛親衛隊の隠密課に配属されていた。」
「ってことはセル帝国に行けば凛月は取り返せるんですね。」
「ああ、おそらく、皇帝アスィールが持っているだろう。」
 俺は一つ気になることがある。
「俺、隠密なんて出来ませんよ。成績見たでしょ。」
「それなら、極長から指示が出ている。新潟鋏子を同行させろと。」
"ゲッよりにもよってコイツかよ。"
「なるほど、コレも上の圧力って奴ですか。どーせ新潟のお父上がなんか言ったんでしょ。」
 七宝は首を振った。
「だが、コレは彼女の意志でもある。」
 新潟は身体をくねらせながら、ほっぺをスリスリしている。
「待っててね凛ちゃん。僕が迎えに行ってあげるから。」
「コンナリンチャンノコトモシンヨウデキナクテオマエニウワキモスルクズオトコノコトナンテスグニワスレサセテアゲル。」
 彼女は呪文のように俺の悪口を並べると、魔具である鎌鋏を腰に携え、俺を催促する。
「行くぞクズ男。今から今から大陸横断、西洋海を渡ってカタルゴ大陸越え、少なく見積もっても一ヶ月はかかる。」
「ハァ、それが病み上がりの人間にかける言葉かよ。」
 俺はベットから飛び起きると、腰に銃鬼を携えて、新潟の後を追った。



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