29 / 145
大陸遠征
メリゴ大陸
しおりを挟む
「どうしてあの時、私に頼ってくれなかったの? 」
少女は悲しそうな目で俺をみている。
「別に信用していなかったわけじゃ無い。ただ、ドミニクとお前の能力は相性が悪かった。だから銃鬼を選んだ。」
少女は俺を睨んだ。
「でも銃鬼お姉ちゃんのことは信じていたんだ。お姉ちゃんの能力を使えば、あの男に勝てるって。私ね、慎二が信じてくれれば、あんな男コテンパンに出来たんだよ。」
俺は首を振る。
「いや、違う。お前もいなければ奴には勝てなかった。」
「そうだよね。私よりお姉ちゃんが先に慎二と契約したし、お姉ちゃんは包容力があるし大きいし。」
「包容力」と言うのには少し語弊があった。あれは全てを飲み込む闇、虚無だ。
「待ってくれ!! 凛月!! 行くな!! 」
「私を必要としてくれない慎二なんていらないから。」
______________夢だ。
俺は天井に向かって手を伸ばしていたことに気がつく。
すぐさま凄まじい衝撃が俺を襲う。
突然の出来事だったので、一瞬何が起こったか分からなかった。
「おい、お前、なんか僕に言うことあるよな。」
新潟が血相を変えて俺を睨んでいる。
そこへ椅子に座り、梁にもたれかかっていた七宝がために入る。
「落ち着け新潟。お前の気持ちもよく分かるが、あの状況では第三者からの介入を阻止することなんて出来なかった。誰のせいでも無い。」
「いや、俺たちは慎二がいなければ、生きていたかも怪しい。あのドミニク・ブレイクという男の力は強大だ。」
左腕の侵食は少しだけ治まっていた。
「侵食は時の剣で止めた。だが、俺の力では止まるのが精一杯だ。しかし…その代償、美奈の能力でも治せるかどうか……」
俺は窓の外を見た。
「んなもんどうでも良いですよ。」
「慎二。」
「本当にすまなかった。」
「やめてくださいよ。上官が土下座なんて。」
俺は話を切り替えた。
「ところで俺は何日ぐらい寝てたんですか? 」
七宝は新潟と顔を合わせると答えた。
「一週間だ。」
「一週間も? 」
「そりゃご迷惑をおかけしました。」
「コンコン。」
ノックの音が聞こえる。
俺は極東の訓練のことも忘れて、つい「どうぞ。」と言ってしまった。
七宝から喝が飛んでくることを恐れて、耳を塞ごうとしたその時……
入ってきたのは、ワーメリゴンだった。
歳は四、五十ぐらいで、首や手に装飾があり、何より印象的なのは、独特な冠を頭に下げていることだ。
俺は一目見て、この男がワーメリゴンのトップであることを理解した。
「この度は聖から我々を救っていただきありがとうございます。」
窓の外を見ると、ワーメリゴンたちが綺麗に並び、頭を地面につけているでは無いか!!
「救ったなんて……アンタらにとったら煩わしい支配者の首が入れ替わっただけでしょうに。」
ワーメリゴンの長は首を振った。
「支配者だなんてとんでもない。あなたたちには、伝説にある東から来た神の使いです。」
「あの忌々しきグランディルから私たちを解放して下さっただけでなく、神器を授けてくださるなんて。」
今の言葉で理解した。
「隊長のやっていることは、文化の破壊です。よく思わない人間だっているかもしれない。」
七宝は指を振る。
「チッチッチ。まだ慎二は状況を理解できていないようだな。」
「コレは取引だ。ワーメリゴンとの間に結ばれた対等なな。」
ワーメリゴンが七宝向けてお辞儀をする。
「この方が金を掘る技術を、私たちに無償で提供して下さると。」
七宝は長と肩を組んだ。
「その代わり、鉄鉱や軍事資源を安く提供してくれとな。ちなみに、俺たちが提供している文明技術は、申請がある部族のみに提供している。同時に文明技術を持っている部族が持っていない部族を虐げるなという協定も設けた。」
「まだまだ問題は山積みです。ムッシュ桐生。」
俺は隊長のこういう部分も尊敬していた。
しかし……
ここまでやる男だったとは。
「しっかし良いんですか? 極東のモノをこんなに横流しにして、上層部に怒られても知りませんよ。」
「そうか、そのことなら。坂上極長は、二つ返事でおkしてくれたよ。」
「『力で民族を抑えるのは、我々のやり方らしくないからね。キミの自慢のオツムを生かして上手くやってくれよ。なぁムッシュ七宝。』ってな。」
七宝の演技だけで、あの狡猾な顔が浮かぶ。
七宝は真剣な顔になってこちらを見る。
「凛月を追う許可も出たんですね。」
「極東の兵器が外に流出したと知られれば、国内外合わせて騒がしくなるからな。」
「俺たちは、ここの事務作業や治安維持で忙しい。あまり人員はさけないが……」
「で、凛月の居場所は分かったんですか? 」
「ああ、お前を砂浜に叩きつけた少女の身元もな。夜花伊桜里元々極東の人間で、志築の村出身の少女で、既に死亡されていたとされていたが、どういうわけか、セル帝国の近衛親衛隊の隠密課に配属されていた。」
「ってことはセル帝国に行けば凛月は取り返せるんですね。」
「ああ、おそらく、皇帝アスィールが持っているだろう。」
俺は一つ気になることがある。
「俺、隠密なんて出来ませんよ。成績見たでしょ。」
「それなら、極長から指示が出ている。新潟鋏子を同行させろと。」
"ゲッよりにもよってコイツかよ。"
「なるほど、コレも上の圧力って奴ですか。どーせ新潟のお父上がなんか言ったんでしょ。」
七宝は首を振った。
「だが、コレは彼女の意志でもある。」
新潟は身体をくねらせながら、ほっぺをスリスリしている。
「待っててね凛ちゃん。僕が迎えに行ってあげるから。」
「コンナリンチャンノコトモシンヨウデキナクテオマエニウワキモスルクズオトコノコトナンテスグニワスレサセテアゲル。」
彼女は呪文のように俺の悪口を並べると、魔具である鎌鋏を腰に携え、俺を催促する。
「行くぞクズ男。今から今から大陸横断、西洋海を渡ってカタルゴ大陸越え、少なく見積もっても一ヶ月はかかる。」
「ハァ、それが病み上がりの人間にかける言葉かよ。」
俺はベットから飛び起きると、腰に銃鬼を携えて、新潟の後を追った。
少女は悲しそうな目で俺をみている。
「別に信用していなかったわけじゃ無い。ただ、ドミニクとお前の能力は相性が悪かった。だから銃鬼を選んだ。」
少女は俺を睨んだ。
「でも銃鬼お姉ちゃんのことは信じていたんだ。お姉ちゃんの能力を使えば、あの男に勝てるって。私ね、慎二が信じてくれれば、あんな男コテンパンに出来たんだよ。」
俺は首を振る。
「いや、違う。お前もいなければ奴には勝てなかった。」
「そうだよね。私よりお姉ちゃんが先に慎二と契約したし、お姉ちゃんは包容力があるし大きいし。」
「包容力」と言うのには少し語弊があった。あれは全てを飲み込む闇、虚無だ。
「待ってくれ!! 凛月!! 行くな!! 」
「私を必要としてくれない慎二なんていらないから。」
______________夢だ。
俺は天井に向かって手を伸ばしていたことに気がつく。
すぐさま凄まじい衝撃が俺を襲う。
突然の出来事だったので、一瞬何が起こったか分からなかった。
「おい、お前、なんか僕に言うことあるよな。」
新潟が血相を変えて俺を睨んでいる。
そこへ椅子に座り、梁にもたれかかっていた七宝がために入る。
「落ち着け新潟。お前の気持ちもよく分かるが、あの状況では第三者からの介入を阻止することなんて出来なかった。誰のせいでも無い。」
「いや、俺たちは慎二がいなければ、生きていたかも怪しい。あのドミニク・ブレイクという男の力は強大だ。」
左腕の侵食は少しだけ治まっていた。
「侵食は時の剣で止めた。だが、俺の力では止まるのが精一杯だ。しかし…その代償、美奈の能力でも治せるかどうか……」
俺は窓の外を見た。
「んなもんどうでも良いですよ。」
「慎二。」
「本当にすまなかった。」
「やめてくださいよ。上官が土下座なんて。」
俺は話を切り替えた。
「ところで俺は何日ぐらい寝てたんですか? 」
七宝は新潟と顔を合わせると答えた。
「一週間だ。」
「一週間も? 」
「そりゃご迷惑をおかけしました。」
「コンコン。」
ノックの音が聞こえる。
俺は極東の訓練のことも忘れて、つい「どうぞ。」と言ってしまった。
七宝から喝が飛んでくることを恐れて、耳を塞ごうとしたその時……
入ってきたのは、ワーメリゴンだった。
歳は四、五十ぐらいで、首や手に装飾があり、何より印象的なのは、独特な冠を頭に下げていることだ。
俺は一目見て、この男がワーメリゴンのトップであることを理解した。
「この度は聖から我々を救っていただきありがとうございます。」
窓の外を見ると、ワーメリゴンたちが綺麗に並び、頭を地面につけているでは無いか!!
「救ったなんて……アンタらにとったら煩わしい支配者の首が入れ替わっただけでしょうに。」
ワーメリゴンの長は首を振った。
「支配者だなんてとんでもない。あなたたちには、伝説にある東から来た神の使いです。」
「あの忌々しきグランディルから私たちを解放して下さっただけでなく、神器を授けてくださるなんて。」
今の言葉で理解した。
「隊長のやっていることは、文化の破壊です。よく思わない人間だっているかもしれない。」
七宝は指を振る。
「チッチッチ。まだ慎二は状況を理解できていないようだな。」
「コレは取引だ。ワーメリゴンとの間に結ばれた対等なな。」
ワーメリゴンが七宝向けてお辞儀をする。
「この方が金を掘る技術を、私たちに無償で提供して下さると。」
七宝は長と肩を組んだ。
「その代わり、鉄鉱や軍事資源を安く提供してくれとな。ちなみに、俺たちが提供している文明技術は、申請がある部族のみに提供している。同時に文明技術を持っている部族が持っていない部族を虐げるなという協定も設けた。」
「まだまだ問題は山積みです。ムッシュ桐生。」
俺は隊長のこういう部分も尊敬していた。
しかし……
ここまでやる男だったとは。
「しっかし良いんですか? 極東のモノをこんなに横流しにして、上層部に怒られても知りませんよ。」
「そうか、そのことなら。坂上極長は、二つ返事でおkしてくれたよ。」
「『力で民族を抑えるのは、我々のやり方らしくないからね。キミの自慢のオツムを生かして上手くやってくれよ。なぁムッシュ七宝。』ってな。」
七宝の演技だけで、あの狡猾な顔が浮かぶ。
七宝は真剣な顔になってこちらを見る。
「凛月を追う許可も出たんですね。」
「極東の兵器が外に流出したと知られれば、国内外合わせて騒がしくなるからな。」
「俺たちは、ここの事務作業や治安維持で忙しい。あまり人員はさけないが……」
「で、凛月の居場所は分かったんですか? 」
「ああ、お前を砂浜に叩きつけた少女の身元もな。夜花伊桜里元々極東の人間で、志築の村出身の少女で、既に死亡されていたとされていたが、どういうわけか、セル帝国の近衛親衛隊の隠密課に配属されていた。」
「ってことはセル帝国に行けば凛月は取り返せるんですね。」
「ああ、おそらく、皇帝アスィールが持っているだろう。」
俺は一つ気になることがある。
「俺、隠密なんて出来ませんよ。成績見たでしょ。」
「それなら、極長から指示が出ている。新潟鋏子を同行させろと。」
"ゲッよりにもよってコイツかよ。"
「なるほど、コレも上の圧力って奴ですか。どーせ新潟のお父上がなんか言ったんでしょ。」
七宝は首を振った。
「だが、コレは彼女の意志でもある。」
新潟は身体をくねらせながら、ほっぺをスリスリしている。
「待っててね凛ちゃん。僕が迎えに行ってあげるから。」
「コンナリンチャンノコトモシンヨウデキナクテオマエニウワキモスルクズオトコノコトナンテスグニワスレサセテアゲル。」
彼女は呪文のように俺の悪口を並べると、魔具である鎌鋏を腰に携え、俺を催促する。
「行くぞクズ男。今から今から大陸横断、西洋海を渡ってカタルゴ大陸越え、少なく見積もっても一ヶ月はかかる。」
「ハァ、それが病み上がりの人間にかける言葉かよ。」
俺はベットから飛び起きると、腰に銃鬼を携えて、新潟の後を追った。
0
あなたにおすすめの小説
クロワッサン物語
コダーマ
歴史・時代
1683年、城塞都市ウィーンはオスマン帝国の大軍に包囲されていた。
第二次ウィーン包囲である。
戦況厳しいウィーンからは皇帝も逃げ出し、市壁の中には守備隊の兵士と市民軍、避難できなかった市民ら一万人弱が立て籠もった。
彼らをまとめ、指揮するウィーン防衛司令官、その名をシュターレンベルクという。
敵の数は三十万。
戦況は絶望的に想えるものの、シュターレンベルクには策があった。
ドナウ河の水運に恵まれたウィーンは、ドナウ艦隊を蔵している。
内陸に位置するオーストリア唯一の海軍だ。
彼らをウィーンの切り札とするのだ。
戦闘には参加させず、外界との唯一の道として、連絡も補給も彼等に依る。
そのうち、ウィーンには厳しい冬が訪れる。
オスマン帝国軍は野営には耐えられまい。
そんなシュターレンベルクの元に届いた報は『ドナウ艦隊の全滅』であった。
もはや、市壁の中にこもって救援を待つしかないウィーンだが、敵軍のシャーヒー砲は、連日、市に降り注いだ。
戦闘、策略、裏切り、絶望──。
シュターレンベルクはウィーンを守り抜けるのか。
第二次ウィーン包囲の二か月間を描いた歴史小説です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる