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悪魔の国

破局

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 俺は彼の足元から出された武器、凛月に驚愕して、それから隣で足を震わせている新潟に語りかけた。
「戦いたくないなら、お前はあのメイジの相手をしろ。アスィールは俺が倒す。」
「凛ちゃんは……」
「俺が必ず連れ戻してくる。」
---時空壊クロックアウト---
 心拍数が急激に上昇する。それに伴って、世界が減速していく。
---雷神砲ライジンホウ---
 アスィールの放ってくる未知術を事前に察知した俺は、カーミラの前に無理やり割り込むと、銃鬼を放り投げ、両手で前に翳した。
---反転ベクトルリバース---
 術式を逆転写させ、電流を逆転させる。
 力の向きが変わったことにより、雷神砲は、アスィールの元に帰ってしまう。
 俺は彼が防御姿勢を取ろうとしたことを見逃さなかった。
 地面を蹴り、走り出し、彼の持つ凛月へと触れる。
「戻ってこい凛月!! 」
 電極に電気を流し彼女ともう一度繋がろうとする。
 しかし、それはの電流によって弾かれた。
「なんで…… 」
---慎二が必要としてくれなかったから。今でもそうでしょ。銃鬼姉さんの力を使ってアスィールと戦っている。私がいなくても戦えるんだ---
---慎二は電極を通じてでしか私を使ってくれなかったよね。なんか他人行儀だよね。私たち、心で繋がっていたのに---
---銃鬼姉さんなんかに身体まで捧げちゃってさ。そんなに姉さんが好きなら、私なんていらないよね邪魔しちゃうだけだし---
「そんな事ない!! 」
 凛月が俺から離れていくとこで、どんどん銃鬼の侵食が進んでいく。
 鬼の細胞が暴れ出し、俺の人間の部分を徐々に蝕み始める。
「……そこまで言うなら。」
「俺がどれだけお前を必要としているか教えてやる。」
 俺は身体から電極をつまみ出して引きちぎった。
 アスィールがわざとらしく凛月に語りかける。
「なぁ凛月? アイツはお前との最後の繋がりすら、身体から抜き去ったみたいだ。」
「なぁ凛月? 偽りの関係はおしまいだ。俺がこの身でお前を受け止める。」
 カーミラが耐えきれず、片膝をつく。大分消耗しているようだ。
「お前、何しに来た。死にに来たのか? 」
「すまない……」
 俺は銃鬼の銃口から引き抜くように虚数電子を引き出した。
---妄劔ー紅モウトウ・紅---
 そしてそれをアスィールに向ける。代償で、さらに侵食が進んだ。
---そうやって関係を見せびらかしているんでしょ!! ---
 脳波ハブで身体能力を向上させたアスィールが右手の凛月の小太刀で上段からの斬り下ろしを放ってくる。
 俺が後ろに避けると、彼は次に、踏み込み、左手のチャクラムで水平斬を放ってくる。
 声帯を斬られた。
 術式が使えなくなる。
 距離を取る俺に、鎖付きの小太刀が飛んでくる。
 空中で方向転換するのは難しい。
---D.Dディメーション・ディビジョン---
 凛月の小太刀がパックリ開かれた虚空に消えていく。
 カーミラが、自分の剣を地面に突き立てて、術式を発動していた。
「やれやれ、余計な真似を……」
 アスィールは鎖を引き戻すと、小太刀を右手に引きつけて、俺の元まで飛び上がってくる。
---どう慎二すごいでしょ。わたしなら代償なしでこんなことも出来たのよ!! ---
 俺はアスィールの攻撃を弾き返すと、急降下し、地上に降りる。
 降りた先で、妄劔へと力を込めた。
---虚喰斬ホロウ・スラッシュ---
 アスィールは、俺の刀に鎖を巻き付けると、俺ごとムチのように振るってくる。
 地面に強く叩きつけられて、身体が軋む。
 代償で鬼化が進む。
 天井で後頭部を痛めて視界が霞む。
 壁に大きく叩きつけられて、城壁に穴が開き、そのまま外に放り出されてる。
 俺は立ち上がると、すぐさま走り出し、アスィールと距離を取った。
 追ってくるアスィールを銃鬼で牽制する。
 やがて中庭の広間で俺は立ち止まり振り返った。
「お前に嫌な思いをさせたならすまなかった。でも、俺は『お前が必要ない』、『邪魔だ』なんて思ったことなんて一度もない。」
 ---嘘つき!! ---
「嘘つき……か。」
 俺は覚悟を決めた。
「お前が宿主を信用できないダメな魔具なことは分かった。」
 右手に持っていた妄劔を空に放り投げる。
 刀は、宙を舞い、月桂樹へと突き刺さり、消えた。
 続いて銃鬼を投げ捨てる。
 呪いが身体を蝕んでいく。
---なにそれ……私が悪いみたいじゃない---
 俺はこんな時どうすれば良いか分からなかった。
 だからこれが俺が彼女に出来る最大の信頼表現なのだ。
---アンタなんか大っ嫌いよ!! ---
 凛月の小太刀が俺の心臓を貫いた。
 次の瞬間。俺の左胸から、ドス黒く刺々しい蔓が溢れ出し、凛月の鎖をガッチリ掴んだ。
---やっと出てこられたぜ。久しぶりだな慎二郎のガキ!! ---


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