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拾弍ノ劔
弟子入り
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食堂にて。
「俺に呪術を教えてくれ。」
「出直して。」
書斎にて。
「何か助けになれることはないか? 」
「ウザい、気が散る。今すぐ失せて。」
菜園にて。
「今日はなにを収穫するんだ? 」
「もう!! 近寄らないで。」
商店にて。
「荷物持ち、やるぞ。」
「もう!! 鬱陶しいのよ。私に近づかないで。さもなければ祖国に突き出すわよ。」
「どしたの伊桜里タン? 」
亜星は書斎で書類関係のしごとをしていた。
そして私に気がつき、振り返ったわけだ。
「もう!! なんなのよアレ、人の領域に土足で踏み込んで来て!! もうこーりごり。アンタでしょ。アイツを焚き付けたのは。」
「ん? 良い傾向じゃない。アリョーシャの時も、まずお互いを知ることから始めたでしょ。師弟関係はまず相手を信頼することが大事。」
「信頼なんて……もう。」
「どうしたの? 慎二のことが信用できない? 」
私に他人から信用してもらう権利なんてない。
私は私のことを信じてくれていた弟子を殺してしまったのだ。
「アイツも同じよ。アリョーシャのように、一人じゃ何にも出来なくて、要領悪いし、料理もまともに出来ない。そのくせして、責任感は人一倍ある自意識過剰野郎だし。アレも……アレも……」
「慎二は死なない。絶対に。」
「なんでそんなことわかるのよ。」
「私の勘って奴かな。もうもう、そんな顔しないで伊桜里ちゃん。私の勘はよく当たるのよ。彼は鬼と英雄の子供よ。」
「今は問題ないかもしれない。でも、神が死んで、世界から呪力と鬼や吸血鬼が消えたら……」
「知ってるよ。彼自身もそれは。でも彼は私に吐露したわ。全部受け入れた上で前に進むって。」
「分かった。ちょっとだけ見てみる。でも彼に、本当にその意志がないなら、この話はおしまい。」
「ありがとう伊桜里。」
* * *
「…きなさい。」
「んっ。」
確か昨日は薪割りをして、米を炊いてから……
「起きなさい。」
そうだ疲れて寝たんだっけ。
そうだ修行をしなくては。
「起きろポンコツ。」
パチン。
目を覚まして早々、視界が反転する。
「いや、手加減してくれよ。こっちは昨日働きっぱなしで。」
「敵にもそうやって言い訳をするの? 貴方今、四回死んでるわよ。」
冷たく鋭い目線。
間違いない。
彼女は俺を本気で殺そうとしている。
「わ、悪かった。ここじゃまずい。朝食を取ってから。」
俺は慌てて両手を上げた。
伊桜里がなぜ急にこうなったのかは知らないが、こっちに取ったら好都合だ。
「分かった。四十秒で支度しなさい。森の奥地に開けた場所がある。そこに来ること。今日からみっちり鍛えるから。モノにするかしないかは貴方次第よ。」
俺はリビングにあったサンドウィッチを加えると、伊桜里の跡を追った。
"早すぎる。音もねえ。見失う。"
銃鬼を側頭に当てて、脳天をぶち抜いた。
---時空壊---
---燠見---
"時空壊でも追いつけねえ。"
俺は薄れていく赤い点を、必死に追いかける。
根を蹴り上げ枝を右手で掴み、前に振り出す。
葉をかいくぐり、開けた場所にでた。
彼女は樹木の枝に尻をつき、足をぶらぶらさせている。
「やるじゃない。アリョーシャは一日かかっても見つけられなかったわ。」
「舐めてもらっちゃー困るな先生。俺は人間じゃねえ。いくら身体強化に優れてようと俺に勝てるわけがねえ。」
「……試してみる? 」
俺は地面を蹴った。
と同時に地面に接吻した。
「遅すぎるわよ。」
"嘘だろ。"
彼女はさっきと同じように、木の枝に座っている。
身体強化している俺でも、その動きは見えなかった。
"さっき逃げた時は、手加減していたっていうのか。"
俺は顔を左手で払うと、右の銃鬼で彼女をロックオンする。
彼女は動いていない。
だが、彼女に魔弾が当たることは無かった。
不意に俺の目の前に現れる。
「飛び道具に頼るのはやめなさい。この攻撃が有効なのは、生身の人間までよ。こんなオモチャより、早く動ける能力者は山ほどいる。」
俺は右手首を掴まれて、背中から投げ飛ばされる。
ひっくり返って、俺の顔の前に、伊桜里の顔がくる。
「なに赤面してるの? そんなやましい気持ちで私に稽古をつけてもらうつもりだったの? 恥を知りなさいこの俗物。」
俺の腹にボディーブローが飛んでくる。
「がぁ。」
腹の中のサンドウィッチが上がってくる。
「男なんだよ。仕方ねえだろ。」
彼女は俺がぶっ飛ぶよりも早く移動し、首を掴むと、地面にはたき落とした。
「男だから、女だからとか、そういう考え方は捨てなさい。戦場で生き残るのは、強者だけよ。弱者は蹂躙されるだけ、そこにはどんなモラルも存在しないわ。」
地面が割れる。周りの木々や、土壌動物が驚きふためいているのが分かる。
そうだ。この化け物は、俺を地面に叩きつけ、その衝撃で、地割れを起こしているのだ。
<ありゃありゃこりゃー派手にやってんなぁ。(ズズズ。)>
その後も俺は、体が動けなくなるまで、じっくり扱かれた。
「俺に呪術を教えてくれ。」
「出直して。」
書斎にて。
「何か助けになれることはないか? 」
「ウザい、気が散る。今すぐ失せて。」
菜園にて。
「今日はなにを収穫するんだ? 」
「もう!! 近寄らないで。」
商店にて。
「荷物持ち、やるぞ。」
「もう!! 鬱陶しいのよ。私に近づかないで。さもなければ祖国に突き出すわよ。」
「どしたの伊桜里タン? 」
亜星は書斎で書類関係のしごとをしていた。
そして私に気がつき、振り返ったわけだ。
「もう!! なんなのよアレ、人の領域に土足で踏み込んで来て!! もうこーりごり。アンタでしょ。アイツを焚き付けたのは。」
「ん? 良い傾向じゃない。アリョーシャの時も、まずお互いを知ることから始めたでしょ。師弟関係はまず相手を信頼することが大事。」
「信頼なんて……もう。」
「どうしたの? 慎二のことが信用できない? 」
私に他人から信用してもらう権利なんてない。
私は私のことを信じてくれていた弟子を殺してしまったのだ。
「アイツも同じよ。アリョーシャのように、一人じゃ何にも出来なくて、要領悪いし、料理もまともに出来ない。そのくせして、責任感は人一倍ある自意識過剰野郎だし。アレも……アレも……」
「慎二は死なない。絶対に。」
「なんでそんなことわかるのよ。」
「私の勘って奴かな。もうもう、そんな顔しないで伊桜里ちゃん。私の勘はよく当たるのよ。彼は鬼と英雄の子供よ。」
「今は問題ないかもしれない。でも、神が死んで、世界から呪力と鬼や吸血鬼が消えたら……」
「知ってるよ。彼自身もそれは。でも彼は私に吐露したわ。全部受け入れた上で前に進むって。」
「分かった。ちょっとだけ見てみる。でも彼に、本当にその意志がないなら、この話はおしまい。」
「ありがとう伊桜里。」
* * *
「…きなさい。」
「んっ。」
確か昨日は薪割りをして、米を炊いてから……
「起きなさい。」
そうだ疲れて寝たんだっけ。
そうだ修行をしなくては。
「起きろポンコツ。」
パチン。
目を覚まして早々、視界が反転する。
「いや、手加減してくれよ。こっちは昨日働きっぱなしで。」
「敵にもそうやって言い訳をするの? 貴方今、四回死んでるわよ。」
冷たく鋭い目線。
間違いない。
彼女は俺を本気で殺そうとしている。
「わ、悪かった。ここじゃまずい。朝食を取ってから。」
俺は慌てて両手を上げた。
伊桜里がなぜ急にこうなったのかは知らないが、こっちに取ったら好都合だ。
「分かった。四十秒で支度しなさい。森の奥地に開けた場所がある。そこに来ること。今日からみっちり鍛えるから。モノにするかしないかは貴方次第よ。」
俺はリビングにあったサンドウィッチを加えると、伊桜里の跡を追った。
"早すぎる。音もねえ。見失う。"
銃鬼を側頭に当てて、脳天をぶち抜いた。
---時空壊---
---燠見---
"時空壊でも追いつけねえ。"
俺は薄れていく赤い点を、必死に追いかける。
根を蹴り上げ枝を右手で掴み、前に振り出す。
葉をかいくぐり、開けた場所にでた。
彼女は樹木の枝に尻をつき、足をぶらぶらさせている。
「やるじゃない。アリョーシャは一日かかっても見つけられなかったわ。」
「舐めてもらっちゃー困るな先生。俺は人間じゃねえ。いくら身体強化に優れてようと俺に勝てるわけがねえ。」
「……試してみる? 」
俺は地面を蹴った。
と同時に地面に接吻した。
「遅すぎるわよ。」
"嘘だろ。"
彼女はさっきと同じように、木の枝に座っている。
身体強化している俺でも、その動きは見えなかった。
"さっき逃げた時は、手加減していたっていうのか。"
俺は顔を左手で払うと、右の銃鬼で彼女をロックオンする。
彼女は動いていない。
だが、彼女に魔弾が当たることは無かった。
不意に俺の目の前に現れる。
「飛び道具に頼るのはやめなさい。この攻撃が有効なのは、生身の人間までよ。こんなオモチャより、早く動ける能力者は山ほどいる。」
俺は右手首を掴まれて、背中から投げ飛ばされる。
ひっくり返って、俺の顔の前に、伊桜里の顔がくる。
「なに赤面してるの? そんなやましい気持ちで私に稽古をつけてもらうつもりだったの? 恥を知りなさいこの俗物。」
俺の腹にボディーブローが飛んでくる。
「がぁ。」
腹の中のサンドウィッチが上がってくる。
「男なんだよ。仕方ねえだろ。」
彼女は俺がぶっ飛ぶよりも早く移動し、首を掴むと、地面にはたき落とした。
「男だから、女だからとか、そういう考え方は捨てなさい。戦場で生き残るのは、強者だけよ。弱者は蹂躙されるだけ、そこにはどんなモラルも存在しないわ。」
地面が割れる。周りの木々や、土壌動物が驚きふためいているのが分かる。
そうだ。この化け物は、俺を地面に叩きつけ、その衝撃で、地割れを起こしているのだ。
<ありゃありゃこりゃー派手にやってんなぁ。(ズズズ。)>
その後も俺は、体が動けなくなるまで、じっくり扱かれた。
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