68 / 145
拾弍ノ劔
啓示は…何回目だったかな
しおりを挟む
「おはよう。よく眠れたかな? 」
僕は……ここは……空? そう夜空だ。僕の足元に、無数の星が散りばめられている。
普段見ることのできない南斗六星や、三等星や四等星の星……
それに水星や木星も。
「浮かれない顔だね。君は王様なんだよ? 君がそんなんじゃ君の同志たちも報われないなぁ。」
僕は彼(彼女)を疑い始めていた。神だというのなら、なぜドミニクを救ってくれなかったのだろう。
「失礼ですが……貴方は本当に神ですか? 」
しばしの沈黙。
僕は生唾を飲んだ。
「……もちろん。そうだよ。」
「僕が君に力を与えて、」
「君が僕の代わりに人間たちを支配する。」
「それが古くから伝わる王と神の関係じゃないか。」
古くから伝わる? なら神族より前の時代はどうなっていたのだろうか?
神族が神の使いであったのなら、なぜ父はその力を譲り受け、神族に成り代わったのだろう。
「古くって言うのはいつの話ですか? 」
流石に神も顔を顰めた。
が、それは気のせいだったのだろう。
「まあまあ、それは後々話すとしてさぁ。僕が今日、君を呼んだ理由、分かるかい? 」
そうだ、なぜ僕は呼ばれたのだろう。
「神界を汚そうとする不届きモノを僕は雲の上から見つけてしまってね。僕としては見過ごすわけにはいけないのよ。」
僕は我を忘れて取り乱した。
「誰なんですかそれは、僕たちの神域を侵犯しようとしているのは? 」
彼女は抑えきれんとばかりに吹き出した。
「ムフフフフ興味津々じゃないか。僕たちの。そうかそうだね。僕が死ぬと君も困るわ・け・だ。」
「桐生慎二、台与鬼子だよ。」
僕は戦慄した。
そして戦慄は、徐々に憎しみへと変わっていく。
「奴が……奴がッなぜここに。また僕たちから大切なものを……父の力までも。」
抑えろ。冷静になれ。そうだ。なぜ彼はここに来るんだ。なんの目的もなく、神域までやってくるはずがない。復讐?
「なぜ? 」
「おうおう、聞いてくれ聞いてくれ? 」
「彼はね。母を生きかえそうとしているんだよ。」
「そんなこと……出来るんですか? 」
「もちろん。僕は神だからね。」
僕は彼女に縋った。
「なら…なら兄を生き返らせてください。僕の大切なドミニク・ブレイクを。」
彼女は人差し指を振った。
「僕たちの関係はギブ、アンドテイクじゃーないか。もちろん高くつくよ。神への頼みだし。ね? 」
「台与鬼子を止めて見せます。必ず。」
「ほうほう、飲み込みが早くて助かるなぁ。ところで、こっちに来る方法、君も知ってる? 」
僕は首を横に振った。
「君たち兄弟の剣五本と、極東の七宝という隊長を知っているだろ? あれは元々シドに上げたモノだから。」
「父に? 」
「そうそう元々十二本の剣は一本の剣だったんだ。でも生身の人間じゃ、代償が大きすぎたから、アイシャタンが十二本に力を分けちゃったんだけどね。」
「エクスカリバー。それをローランド大陸奥地の石碑に差し込んでくれ。そうすればまた僕に会えるよ。」
「ありがとうございます。」
「ああ、それと。セル帝国も何やら不穏な動きを見せているみたいだ。僕、ころされちゃうカモ。とりあえず七宝のクズのことは置いといて……極東と和平を結んで、セル帝国を叩いてくれないかな? 」
「……分かりました。約束します。」
「君に台与鬼子の居場所を教えておこう。南メリゴ大陸。そこに彼はいる。和平が終わったら彼らと一緒に探すと良い。彼を殺すことは、極東にとっても悲願だろう。」
「すみません何から何まで、なんとお礼をしたら良いか。」
「お礼? 」
彼女はまたクススと笑った。
「良いんだよ、そんなことぉ。言っただろ? 僕たちはギブ、アンドテイクだって。」
そこで僕の意識は途切れた。
________ _ _ _ _ _ _ _ _
「ミラ様。」
「カーミラ様。」
起きると、ああ、従者のエイレネが必死に僕を揺すり起こしていた。
エイレネには寝室に入らないでくれと口酸っぱく言っていたはずだが、よほどのことらしい。
僕は落ち着いて話を聞くことにした。
「どうしたのエイレネ? 」
エイレネは深呼吸、それからゆっくりと口を開き始めた。
「カインズ様が何も言わずに城を出ていかれました。兵もつけずに。」
「兄さんが? 」
あれ以来、僕は兄たちとの距離が分からなくなっていた。
「謀反かも知れません。」
「コラ、大きな声を出すな。宮内で変な噂が立つだろう? 考えすぎだエイレネ。兄がそんなことするわけないだろ? 」
「でも……プラウド様もブレイブ様も『アイツは止めても聞かないから』と。」
「その通りだよエイレネ。カインズ兄さんはそういう人だから。見つけて止めても無駄。それより、極東と和平を結んでほしいんだ。」
「台与鬼子の引き渡しの件ですが……」
「知ってる。逃げたんだろアイツ。極東と協力して、彼を追わなきゃ。」
「なぜそれを。それより極東より先に彼を見つけ出さないと。」
「南メリゴ大陸。でもこれは誰にも言うな。極東に先を越されるとまずい。」
「分かりました。」
僕は話を切り替える。
「セル帝国に不穏な動きがある。極東と組んで、彼らを牽制しなきゃ。メリゴ大陸大陸を警戒していてくれ。何かあったら僕に連絡。僕は直接極東に行ってくるから。」
「分かりました。お気をつけて。特に向こうの坂上様には十二分に。」
「ああ、分かっているよエイレネ。心配性だね君は。」
「ええ、なんだかカーミラ様がどんどん離れていくようで。」
「もう行くよ。」
僕は寝室のドアを開けると、空間転移した。
僕は……ここは……空? そう夜空だ。僕の足元に、無数の星が散りばめられている。
普段見ることのできない南斗六星や、三等星や四等星の星……
それに水星や木星も。
「浮かれない顔だね。君は王様なんだよ? 君がそんなんじゃ君の同志たちも報われないなぁ。」
僕は彼(彼女)を疑い始めていた。神だというのなら、なぜドミニクを救ってくれなかったのだろう。
「失礼ですが……貴方は本当に神ですか? 」
しばしの沈黙。
僕は生唾を飲んだ。
「……もちろん。そうだよ。」
「僕が君に力を与えて、」
「君が僕の代わりに人間たちを支配する。」
「それが古くから伝わる王と神の関係じゃないか。」
古くから伝わる? なら神族より前の時代はどうなっていたのだろうか?
神族が神の使いであったのなら、なぜ父はその力を譲り受け、神族に成り代わったのだろう。
「古くって言うのはいつの話ですか? 」
流石に神も顔を顰めた。
が、それは気のせいだったのだろう。
「まあまあ、それは後々話すとしてさぁ。僕が今日、君を呼んだ理由、分かるかい? 」
そうだ、なぜ僕は呼ばれたのだろう。
「神界を汚そうとする不届きモノを僕は雲の上から見つけてしまってね。僕としては見過ごすわけにはいけないのよ。」
僕は我を忘れて取り乱した。
「誰なんですかそれは、僕たちの神域を侵犯しようとしているのは? 」
彼女は抑えきれんとばかりに吹き出した。
「ムフフフフ興味津々じゃないか。僕たちの。そうかそうだね。僕が死ぬと君も困るわ・け・だ。」
「桐生慎二、台与鬼子だよ。」
僕は戦慄した。
そして戦慄は、徐々に憎しみへと変わっていく。
「奴が……奴がッなぜここに。また僕たちから大切なものを……父の力までも。」
抑えろ。冷静になれ。そうだ。なぜ彼はここに来るんだ。なんの目的もなく、神域までやってくるはずがない。復讐?
「なぜ? 」
「おうおう、聞いてくれ聞いてくれ? 」
「彼はね。母を生きかえそうとしているんだよ。」
「そんなこと……出来るんですか? 」
「もちろん。僕は神だからね。」
僕は彼女に縋った。
「なら…なら兄を生き返らせてください。僕の大切なドミニク・ブレイクを。」
彼女は人差し指を振った。
「僕たちの関係はギブ、アンドテイクじゃーないか。もちろん高くつくよ。神への頼みだし。ね? 」
「台与鬼子を止めて見せます。必ず。」
「ほうほう、飲み込みが早くて助かるなぁ。ところで、こっちに来る方法、君も知ってる? 」
僕は首を横に振った。
「君たち兄弟の剣五本と、極東の七宝という隊長を知っているだろ? あれは元々シドに上げたモノだから。」
「父に? 」
「そうそう元々十二本の剣は一本の剣だったんだ。でも生身の人間じゃ、代償が大きすぎたから、アイシャタンが十二本に力を分けちゃったんだけどね。」
「エクスカリバー。それをローランド大陸奥地の石碑に差し込んでくれ。そうすればまた僕に会えるよ。」
「ありがとうございます。」
「ああ、それと。セル帝国も何やら不穏な動きを見せているみたいだ。僕、ころされちゃうカモ。とりあえず七宝のクズのことは置いといて……極東と和平を結んで、セル帝国を叩いてくれないかな? 」
「……分かりました。約束します。」
「君に台与鬼子の居場所を教えておこう。南メリゴ大陸。そこに彼はいる。和平が終わったら彼らと一緒に探すと良い。彼を殺すことは、極東にとっても悲願だろう。」
「すみません何から何まで、なんとお礼をしたら良いか。」
「お礼? 」
彼女はまたクススと笑った。
「良いんだよ、そんなことぉ。言っただろ? 僕たちはギブ、アンドテイクだって。」
そこで僕の意識は途切れた。
________ _ _ _ _ _ _ _ _
「ミラ様。」
「カーミラ様。」
起きると、ああ、従者のエイレネが必死に僕を揺すり起こしていた。
エイレネには寝室に入らないでくれと口酸っぱく言っていたはずだが、よほどのことらしい。
僕は落ち着いて話を聞くことにした。
「どうしたのエイレネ? 」
エイレネは深呼吸、それからゆっくりと口を開き始めた。
「カインズ様が何も言わずに城を出ていかれました。兵もつけずに。」
「兄さんが? 」
あれ以来、僕は兄たちとの距離が分からなくなっていた。
「謀反かも知れません。」
「コラ、大きな声を出すな。宮内で変な噂が立つだろう? 考えすぎだエイレネ。兄がそんなことするわけないだろ? 」
「でも……プラウド様もブレイブ様も『アイツは止めても聞かないから』と。」
「その通りだよエイレネ。カインズ兄さんはそういう人だから。見つけて止めても無駄。それより、極東と和平を結んでほしいんだ。」
「台与鬼子の引き渡しの件ですが……」
「知ってる。逃げたんだろアイツ。極東と協力して、彼を追わなきゃ。」
「なぜそれを。それより極東より先に彼を見つけ出さないと。」
「南メリゴ大陸。でもこれは誰にも言うな。極東に先を越されるとまずい。」
「分かりました。」
僕は話を切り替える。
「セル帝国に不穏な動きがある。極東と組んで、彼らを牽制しなきゃ。メリゴ大陸大陸を警戒していてくれ。何かあったら僕に連絡。僕は直接極東に行ってくるから。」
「分かりました。お気をつけて。特に向こうの坂上様には十二分に。」
「ああ、分かっているよエイレネ。心配性だね君は。」
「ええ、なんだかカーミラ様がどんどん離れていくようで。」
「もう行くよ。」
僕は寝室のドアを開けると、空間転移した。
0
あなたにおすすめの小説
クロワッサン物語
コダーマ
歴史・時代
1683年、城塞都市ウィーンはオスマン帝国の大軍に包囲されていた。
第二次ウィーン包囲である。
戦況厳しいウィーンからは皇帝も逃げ出し、市壁の中には守備隊の兵士と市民軍、避難できなかった市民ら一万人弱が立て籠もった。
彼らをまとめ、指揮するウィーン防衛司令官、その名をシュターレンベルクという。
敵の数は三十万。
戦況は絶望的に想えるものの、シュターレンベルクには策があった。
ドナウ河の水運に恵まれたウィーンは、ドナウ艦隊を蔵している。
内陸に位置するオーストリア唯一の海軍だ。
彼らをウィーンの切り札とするのだ。
戦闘には参加させず、外界との唯一の道として、連絡も補給も彼等に依る。
そのうち、ウィーンには厳しい冬が訪れる。
オスマン帝国軍は野営には耐えられまい。
そんなシュターレンベルクの元に届いた報は『ドナウ艦隊の全滅』であった。
もはや、市壁の中にこもって救援を待つしかないウィーンだが、敵軍のシャーヒー砲は、連日、市に降り注いだ。
戦闘、策略、裏切り、絶望──。
シュターレンベルクはウィーンを守り抜けるのか。
第二次ウィーン包囲の二か月間を描いた歴史小説です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる