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拾弍ノ劔
風の剣アウラ
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あれから数日後、俺は徐々にクロック・ブレイクのコツを掴み始めていた。
「そうそう、心臓に意識を集中して、体に血液を回すの。」
心拍数が徐々に増加していき、鼓動が時間を追い越す。
彼女の動きを目で捉えることに成功する。
彼女は絶えず動いている。
止まると身体を痛めるからだ。
俺も彼女を追いかける。
まだだ。
まだいける。
秒針は徐々に遠ざかっていく、それと同時に俺は、世界の法則へと近づいた。
もう少しで彼女に触れることが出来る。
あと、もう少し手を伸ばせば、彼女に追いつく。
「止まって。」
師匠の喝が飛ぶと同時に、胸が破裂しそうになる。
俺は血が溜まって破裂した内臓から血を吐き出す。
「ガバッ。」
「やはりむりか。」
膝をつき、倒れ込む俺にビンタが飛ぶ。
「また命を捨てたわね。」
「許してくれよ。こればかりは、もう俺の癖だ。身体を代償に差し出して、この再生する身体に慣れちまった。」
伊桜里が急に俺を持ち上げる。
「わー、ごめんなさい。ちゃんとやるから。」
「しっ、静かにしなさい。誰かがこっちに来てる。結界を破って。私たちのアジトに。」
「君を殺しに来たんだわ。」
「再生が終わった。降ろしてくれ。自分で走る。」
「気をつけて、私たちは加速している筈なのに、距離を詰められている。」
---洞房外し---
俺も銃鬼を側頭に押し当てた。
---時空壊---
背筋の冷ややかな感覚は徐々に大きくなっていく。
森を抜けた平野で、俺たちは闖入者に追いつかれた。
「よぉ。はじめまして……ではねえか。地下空洞の時以来だな台与鬼子。」
コイツは、俺を殺しに来たんだ。
俺は一歩後ずさる。
今は凛月を持っていない。
凛月の能力もそうだが、近接武器を持っていないと言うことは、敵が接近してきた時に、即座に対応できないと言うこと。
俺は慌てて腰を探り、あるはずもないチャクラムを手で探った。
それに気づいた鬼影が裏斬を俺の右手に出現させる。
「カーミラの仇をとりに来たんだな。」
冷や汗をかく俺を見て、彼は不敵に笑った。
「フフフ……フハハハ。そんなんじゃねえよ。今日お前に会いに来たのは。」
「どうやら、その様子じゃ本当にクソアニキを殺したみたいだな。」
俺は刃を構える。
「まぁまぁそう硬くなんなって。俺が今日ここに来たのはなぁ。復讐とかそう言う薄寒いことのためじゃねえんだよ。」
裏斬がカタカタと鳴っている。
鋒がブレているのが分かる。
「俺にお前の呪具をよこせ。」
「その呪具は、人間を消せるんだろ? 神族様の魔法でも生き返らねんだろ。」
「俺がソイツでカーミラを刺して、俺が代行者になる。その力で神族を無理矢理封印すれば、また力が使える。」
「!? 」
俺は驚きを隠せなかった。
「これはお前に扱える代物じゃない。諦めろ。」
「んならよ。」
彼は嗜虐的な笑みを浮かべた。
「殺してでも奪い取るしかねえよなぁ。」
俺の頬を疾風が走る。
伊桜里だ。
今の俺でも捉えることの出来ない速さ。
「遅えよッ。」
カインズがアウラの柄で伊桜里の腹を突く。
「逃げ…なさい…慎二。」
俺より強い人間が目の前でやられた。
恐怖で足が竦む。
「へへへへへへッよええな女って言うのはよう。お前も逃げるなら今のうちだぜ。十秒待ってやる。」
「いくぜ拾ぅ、玖ゥゥゥゥゥゥゥゥ、」
俺が腰抜けだから伊桜里があんな目にあった。
もしかしたら、あの時立っていなかったら、千代はもっと酷いことをされていたかもしれない。
「なに震えてんだよ俺。」
再び銃鬼を側頭に当てる。
何者かに心臓を握られているような恐怖。
俺はそれを振り切り、トリガーを引いた。
---時空壊---
世界が停まる。
音が遅れてやってくる。
視覚も嗅覚も触角も置いていく。
止まっている世界でカインズの右頬を殴った。
「伊桜里は弱く無い。訂正しろ。」
「ったく……すぐに熱くなっちゃってよ。電化製品かってんの。」
俺の左腕が飛んでいく。
即座に燠見を発動して、彼がアウラから風を刃にして飛ばしているのだと言うことを視る。
---wind step---
彼の足元に風が集まり、俺の世界に追いついてきた。
「楽に痛ぶって、楽に呪具を貰っちまう計画だったけどよぉ。」
「やっぱ予定変更だわ。」
即座に腕を再生し、奴から距離を取る。
そして斬撃を裏斬でさばく。
「おいおい、やれるもんなら俺も殺してみろよなぁ。」
"片手じゃ捌ききれねえ。少なくとも刃が二本いる。一本じゃ無理だ。"
一撃目、二撃目……しまっ。
衝撃波をさばく俺の右腕が死角になって、奴が強引に割り込んでくる。
「ヘッヘッヘ。とらえたぜ。台与鬼子さんよ。」
首を掴まれる。
振動で頭が揺れる。
そして何度もアウラで心臓を貫かれた。
「ぐぁぁぁ。」
「おいおい、そう喚くなよ。死なねえんだろ化け物。大丈夫だよ。お前が呪具の契約権を破棄するまで何度でも続けてやるからよ。」
鬼影は俺の呪具じゃ無い。俺の一部だ。
だから俺には破棄する権限すらない。
もちろんこの男は、そのようなことも知らない。
だからおれを刺し続けている。
「ホラホラホラ、早く破棄しねえと本当に死んじまうぞ。」
俺は奴に首を掴まれたまま何度も死に、失神した。
「そうそう、心臓に意識を集中して、体に血液を回すの。」
心拍数が徐々に増加していき、鼓動が時間を追い越す。
彼女の動きを目で捉えることに成功する。
彼女は絶えず動いている。
止まると身体を痛めるからだ。
俺も彼女を追いかける。
まだだ。
まだいける。
秒針は徐々に遠ざかっていく、それと同時に俺は、世界の法則へと近づいた。
もう少しで彼女に触れることが出来る。
あと、もう少し手を伸ばせば、彼女に追いつく。
「止まって。」
師匠の喝が飛ぶと同時に、胸が破裂しそうになる。
俺は血が溜まって破裂した内臓から血を吐き出す。
「ガバッ。」
「やはりむりか。」
膝をつき、倒れ込む俺にビンタが飛ぶ。
「また命を捨てたわね。」
「許してくれよ。こればかりは、もう俺の癖だ。身体を代償に差し出して、この再生する身体に慣れちまった。」
伊桜里が急に俺を持ち上げる。
「わー、ごめんなさい。ちゃんとやるから。」
「しっ、静かにしなさい。誰かがこっちに来てる。結界を破って。私たちのアジトに。」
「君を殺しに来たんだわ。」
「再生が終わった。降ろしてくれ。自分で走る。」
「気をつけて、私たちは加速している筈なのに、距離を詰められている。」
---洞房外し---
俺も銃鬼を側頭に押し当てた。
---時空壊---
背筋の冷ややかな感覚は徐々に大きくなっていく。
森を抜けた平野で、俺たちは闖入者に追いつかれた。
「よぉ。はじめまして……ではねえか。地下空洞の時以来だな台与鬼子。」
コイツは、俺を殺しに来たんだ。
俺は一歩後ずさる。
今は凛月を持っていない。
凛月の能力もそうだが、近接武器を持っていないと言うことは、敵が接近してきた時に、即座に対応できないと言うこと。
俺は慌てて腰を探り、あるはずもないチャクラムを手で探った。
それに気づいた鬼影が裏斬を俺の右手に出現させる。
「カーミラの仇をとりに来たんだな。」
冷や汗をかく俺を見て、彼は不敵に笑った。
「フフフ……フハハハ。そんなんじゃねえよ。今日お前に会いに来たのは。」
「どうやら、その様子じゃ本当にクソアニキを殺したみたいだな。」
俺は刃を構える。
「まぁまぁそう硬くなんなって。俺が今日ここに来たのはなぁ。復讐とかそう言う薄寒いことのためじゃねえんだよ。」
裏斬がカタカタと鳴っている。
鋒がブレているのが分かる。
「俺にお前の呪具をよこせ。」
「その呪具は、人間を消せるんだろ? 神族様の魔法でも生き返らねんだろ。」
「俺がソイツでカーミラを刺して、俺が代行者になる。その力で神族を無理矢理封印すれば、また力が使える。」
「!? 」
俺は驚きを隠せなかった。
「これはお前に扱える代物じゃない。諦めろ。」
「んならよ。」
彼は嗜虐的な笑みを浮かべた。
「殺してでも奪い取るしかねえよなぁ。」
俺の頬を疾風が走る。
伊桜里だ。
今の俺でも捉えることの出来ない速さ。
「遅えよッ。」
カインズがアウラの柄で伊桜里の腹を突く。
「逃げ…なさい…慎二。」
俺より強い人間が目の前でやられた。
恐怖で足が竦む。
「へへへへへへッよええな女って言うのはよう。お前も逃げるなら今のうちだぜ。十秒待ってやる。」
「いくぜ拾ぅ、玖ゥゥゥゥゥゥゥゥ、」
俺が腰抜けだから伊桜里があんな目にあった。
もしかしたら、あの時立っていなかったら、千代はもっと酷いことをされていたかもしれない。
「なに震えてんだよ俺。」
再び銃鬼を側頭に当てる。
何者かに心臓を握られているような恐怖。
俺はそれを振り切り、トリガーを引いた。
---時空壊---
世界が停まる。
音が遅れてやってくる。
視覚も嗅覚も触角も置いていく。
止まっている世界でカインズの右頬を殴った。
「伊桜里は弱く無い。訂正しろ。」
「ったく……すぐに熱くなっちゃってよ。電化製品かってんの。」
俺の左腕が飛んでいく。
即座に燠見を発動して、彼がアウラから風を刃にして飛ばしているのだと言うことを視る。
---wind step---
彼の足元に風が集まり、俺の世界に追いついてきた。
「楽に痛ぶって、楽に呪具を貰っちまう計画だったけどよぉ。」
「やっぱ予定変更だわ。」
即座に腕を再生し、奴から距離を取る。
そして斬撃を裏斬でさばく。
「おいおい、やれるもんなら俺も殺してみろよなぁ。」
"片手じゃ捌ききれねえ。少なくとも刃が二本いる。一本じゃ無理だ。"
一撃目、二撃目……しまっ。
衝撃波をさばく俺の右腕が死角になって、奴が強引に割り込んでくる。
「ヘッヘッヘ。とらえたぜ。台与鬼子さんよ。」
首を掴まれる。
振動で頭が揺れる。
そして何度もアウラで心臓を貫かれた。
「ぐぁぁぁ。」
「おいおい、そう喚くなよ。死なねえんだろ化け物。大丈夫だよ。お前が呪具の契約権を破棄するまで何度でも続けてやるからよ。」
鬼影は俺の呪具じゃ無い。俺の一部だ。
だから俺には破棄する権限すらない。
もちろんこの男は、そのようなことも知らない。
だからおれを刺し続けている。
「ホラホラホラ、早く破棄しねえと本当に死んじまうぞ。」
俺は奴に首を掴まれたまま何度も死に、失神した。
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