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拾弍ノ劔
父の残骸
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「ピタッ。」
冷たい。
俺は目を覚ました。
どうやら天井の鍾乳石から降ってきたようだ。
「久しぶりだな慎二。」
目の前に父がいた。
俺は死んだのだろうか?
「オヤジ……どうしてここに。」
「俺は慎二郎じゃない。慎二郎から分裂した思念体にすぎない。オリジナルほどの強さは無いさ。出来るとしたら、神器による代償の老化を遅らせること。それだけのために俺は作られた。」
「肋骨だな。あの肋骨。」
「そうだ、お前が極東のポットで寝ていた俺を起こしたから。」
「なぁオヤジ。力がいるんだ。この世界じゃ弱い奴に権利なんてもんはないから。」
「もともとそうだ。この世界に権利と言うものは存在しない。ただそこにあるのは強者から与えられた慈悲のみ。」
「なら俺に慈悲をくれ。」
「………」
「慎二、お前は何のために剣を振るう? 」
「師を守るためだ。その先は分からない。世界の命運とか、外の世界だとか作られた世界だとか。」
「でももう絶望なんてしねえよ。もうなにが起こってもおかしくねえよ。」
「………」
思念はしばらく悩んだ。
そして答えた。
「約束しろ。俺と。この先、どのようなことが起きても、全て受け入れることを。」
俺は悩まなかった。悩む必要性すらなかった。
「ああ、全部受け入れるって決めたからな。亜星と約束した。」
「お前の契約、受け取った。さぁ使え。俺の力を。」
俺は世界に引き戻される。
「へっ気絶しやがって。」
俺は右腕に力を込める。
肋骨から溢れ出る聖エネルギーを右手に集め、迸る片刃の刀を作り出した。
---雷斬---
カインズの左腕に雷が走り、腱が切れる。
「そんな奥の手を隠していやがったのか。」
流石に彼の顔からは余裕の表情が消えていた。
左腕で銃鬼を取り出して、脳天を撃ち抜く。
---時空壊---
---燠見---
彼がバックステップで俺から下がるのを見て、地面を蹴り、密林に逃げようとする彼を追う。
---crescent hurricane---
三日月型の刃が回転しながらこちらに迫ってくる。
---裏斬---
俺は勢いを緩めることなく、そのまま懐に飛び込む。
竜巻を正面から受け止め、斬り裂く。
---雷斬---
疾風の刃を抜けた先に、剣先をこちらに向けて構えているカインズがいた。
---wing thrust---
避けきれない。
刀で弾くこともできない。
ならばどうするか。
「グキグキ。」
俺は関節を外して攻撃を避ける。そしてそのまま奴へと斬りかかった。
---紫電斬---
電子と虚数電子が混じり合い、紫色の光を放っている。
俺の雷斬と裏斬が、カインズの左肩から、右腰を切り裂いた。
「ちょっとばかし油断しすぎたかもなぁ。」
ドミニクの時と違う。血が出ている。
俺は彼の右手に握られているアウラを彼から引き抜こうとした。
「ギュイン。」
凄まじい機械音。
極東にいた頃、何度か聞いたことがある竜機兵の音だ。
火の龍が俺を弾き飛ばす。
神聖魔術……では無い。
詠唱が聞こえなかった。
仰向けに倒される。
俺は動けなくなった体で、必死にもがき、その全容を確認しようとする。
「七宝ッ。」
「バレていないと思ったか? お前らのアジト。」
「さぁ闇の剣を返してもらおうか。契約は切れているが、わかるんだよ。それはもう俺の一部だ。」
化け物か? 消えた剣を転移先で察知したと言うのか。
となると……
奴から逃げながら、残り六本の剣を奪い取るのは隊長を殺す以外に不可能だと言うことだ。
「しょうがない。」
七宝はゆっくり歩いてくると、俺の横に立ち……
アウラに触れた。
「やめろ!! 生気を吸い取られるぞ。」
「まざか指名手配班に身を案じられるとは思っていなかったが。」
彼は涼しい顔をしてアウラを持っている。
「俺は慣れている。長い間、この剣たちに触れていたからな。あとは時の剣でなんとかなる。」
「クッ。」
七宝は俺に手を伸ばした。
「さぁ極東に来てもらおうか。」
彼の瞳には哀れみも躊躇いもなかった。
コレが外から見た七宝剣、セブンスソードだ。
今は俺のことを部下ではなく、忌むべき犯罪者として見ている。
彼が俺に触れる瞬間、虚空から出た手に引っ張られる。
慎二!! こっち。
牡丹だ。
彼女が俺をバックドアでユグドラシルへと引き込んだ。
近くには意識を失っている伊桜里もいる。
「伊桜里!! 伊桜里!! 」
「大丈夫、気を失っているだけだ。」
アルブが足を組み、タバコを蒸している。
彼女の細かい心境の変化を読み取ることはまだ出来ないが、彼女が苛立っていることは確かだった。
「まざかこれをこんなに早く使うことになるとはね。」
人工移動型神獣ユグドラシル、おそらく俺は今、その中にいるのであろう。
「食料は十二分に確保してるから、五年は問題なく使える。それに梓帆手が育ててくれていた畑もある。ちゃんと手入れをしていれば、もう二年は持つ。」
「我々が餓死するのが先か、君が転界に上がるのが先か……」
遠くて牡丹の声がする。
「慎二、今すぐユグドラシル様のところに来て。君をユグ様が呼んでいる。」
身体はまだ動かない。
クロック・ブレイクの代償だ。クロック・アウトを連続で使った時も、こんなことにはならなかったのだが。
俺は足を引き摺りながら、大樹の麓を目指した。
冷たい。
俺は目を覚ました。
どうやら天井の鍾乳石から降ってきたようだ。
「久しぶりだな慎二。」
目の前に父がいた。
俺は死んだのだろうか?
「オヤジ……どうしてここに。」
「俺は慎二郎じゃない。慎二郎から分裂した思念体にすぎない。オリジナルほどの強さは無いさ。出来るとしたら、神器による代償の老化を遅らせること。それだけのために俺は作られた。」
「肋骨だな。あの肋骨。」
「そうだ、お前が極東のポットで寝ていた俺を起こしたから。」
「なぁオヤジ。力がいるんだ。この世界じゃ弱い奴に権利なんてもんはないから。」
「もともとそうだ。この世界に権利と言うものは存在しない。ただそこにあるのは強者から与えられた慈悲のみ。」
「なら俺に慈悲をくれ。」
「………」
「慎二、お前は何のために剣を振るう? 」
「師を守るためだ。その先は分からない。世界の命運とか、外の世界だとか作られた世界だとか。」
「でももう絶望なんてしねえよ。もうなにが起こってもおかしくねえよ。」
「………」
思念はしばらく悩んだ。
そして答えた。
「約束しろ。俺と。この先、どのようなことが起きても、全て受け入れることを。」
俺は悩まなかった。悩む必要性すらなかった。
「ああ、全部受け入れるって決めたからな。亜星と約束した。」
「お前の契約、受け取った。さぁ使え。俺の力を。」
俺は世界に引き戻される。
「へっ気絶しやがって。」
俺は右腕に力を込める。
肋骨から溢れ出る聖エネルギーを右手に集め、迸る片刃の刀を作り出した。
---雷斬---
カインズの左腕に雷が走り、腱が切れる。
「そんな奥の手を隠していやがったのか。」
流石に彼の顔からは余裕の表情が消えていた。
左腕で銃鬼を取り出して、脳天を撃ち抜く。
---時空壊---
---燠見---
彼がバックステップで俺から下がるのを見て、地面を蹴り、密林に逃げようとする彼を追う。
---crescent hurricane---
三日月型の刃が回転しながらこちらに迫ってくる。
---裏斬---
俺は勢いを緩めることなく、そのまま懐に飛び込む。
竜巻を正面から受け止め、斬り裂く。
---雷斬---
疾風の刃を抜けた先に、剣先をこちらに向けて構えているカインズがいた。
---wing thrust---
避けきれない。
刀で弾くこともできない。
ならばどうするか。
「グキグキ。」
俺は関節を外して攻撃を避ける。そしてそのまま奴へと斬りかかった。
---紫電斬---
電子と虚数電子が混じり合い、紫色の光を放っている。
俺の雷斬と裏斬が、カインズの左肩から、右腰を切り裂いた。
「ちょっとばかし油断しすぎたかもなぁ。」
ドミニクの時と違う。血が出ている。
俺は彼の右手に握られているアウラを彼から引き抜こうとした。
「ギュイン。」
凄まじい機械音。
極東にいた頃、何度か聞いたことがある竜機兵の音だ。
火の龍が俺を弾き飛ばす。
神聖魔術……では無い。
詠唱が聞こえなかった。
仰向けに倒される。
俺は動けなくなった体で、必死にもがき、その全容を確認しようとする。
「七宝ッ。」
「バレていないと思ったか? お前らのアジト。」
「さぁ闇の剣を返してもらおうか。契約は切れているが、わかるんだよ。それはもう俺の一部だ。」
化け物か? 消えた剣を転移先で察知したと言うのか。
となると……
奴から逃げながら、残り六本の剣を奪い取るのは隊長を殺す以外に不可能だと言うことだ。
「しょうがない。」
七宝はゆっくり歩いてくると、俺の横に立ち……
アウラに触れた。
「やめろ!! 生気を吸い取られるぞ。」
「まざか指名手配班に身を案じられるとは思っていなかったが。」
彼は涼しい顔をしてアウラを持っている。
「俺は慣れている。長い間、この剣たちに触れていたからな。あとは時の剣でなんとかなる。」
「クッ。」
七宝は俺に手を伸ばした。
「さぁ極東に来てもらおうか。」
彼の瞳には哀れみも躊躇いもなかった。
コレが外から見た七宝剣、セブンスソードだ。
今は俺のことを部下ではなく、忌むべき犯罪者として見ている。
彼が俺に触れる瞬間、虚空から出た手に引っ張られる。
慎二!! こっち。
牡丹だ。
彼女が俺をバックドアでユグドラシルへと引き込んだ。
近くには意識を失っている伊桜里もいる。
「伊桜里!! 伊桜里!! 」
「大丈夫、気を失っているだけだ。」
アルブが足を組み、タバコを蒸している。
彼女の細かい心境の変化を読み取ることはまだ出来ないが、彼女が苛立っていることは確かだった。
「まざかこれをこんなに早く使うことになるとはね。」
人工移動型神獣ユグドラシル、おそらく俺は今、その中にいるのであろう。
「食料は十二分に確保してるから、五年は問題なく使える。それに梓帆手が育ててくれていた畑もある。ちゃんと手入れをしていれば、もう二年は持つ。」
「我々が餓死するのが先か、君が転界に上がるのが先か……」
遠くて牡丹の声がする。
「慎二、今すぐユグドラシル様のところに来て。君をユグ様が呼んでいる。」
身体はまだ動かない。
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俺は足を引き摺りながら、大樹の麓を目指した。
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