神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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拾弍ノ劔

殿

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 剣置き場に二振の剣が立てかけてある。
 どうやら奴らに回収されずに済んだようだ。
「やはり来たな慎二。」
 聞き覚えのある声。
 いや父より聞いていたと言っても過言では無い。
 ある意味、俺の父親的存在であった。
 それも全部ごっこ遊びだったが。
 いや、彼にも罪の意識があるのかもしれない。
 どこかに。
 完全無欠で冷酷な彼にも人の情のようなものがあるのかもしれない。
「ようこそ。俺たちのアジトへ。」
「茶は……出ないか。そうだよな。」
 その言葉を聞いて俺は、トライドランから水を搾り出すと、それを電撃で沸騰させて、ポケットに入っていた茶葉の袋包みをあける。
 木彫りのコップにそれを注ぐと、彼へと投げつけた。
 彼は片手でそれを受け取ると、毒など入ってはいないか? 疑心暗鬼になりながら、首を傾げ。
 それから一気に飲み干した。
「熱い。」
「すみません。今は細かい電流調整が出来ないもので。」
「俺が憎いか? 」
「今は、よくわかりません。父のことも、俺を利用するためにわざと嘘をついていたことも。」
「善人ズラして俺の上官を気取っていたことも。」
「となるとアウラの件は許してもらえるみたいだな。」
「この剣も、その剣たちも、元々僕らのものじゃないじゃないですか? 僕に怒る道理なんてありませんよ。」
「そうだったな。それもそうだ。」
 七宝の背後から走って来るただならぬ殺気を感じ取り、無言で銃鬼を側頭へと当てる。
---時空壊クロック・ブレイク---
 発動と同時に、アルテマが俺のクラウソラスに触れた。
---こらっ。暴力はいけません---
 クラウソラスに叱られる。
「それはアイツに言ったらどうなんだ? 」
---ちゃんと話し合えば分かってくれるはずよ---
「それもアイツに言えば良いだろう? 」
---みんな仲良くね---
「テメェは俺のカーチャンかッ!! 」
「力を貸せ、お前らの力があっても足りない。渡り合うのに後聖剣が二、三本はいる。」
---『貸してくださいトライドラン様。』でしょ? ---
 トライドランから力が溢れて来る。
 俺の右手の甲に紋章が刻まれる。
 聖剣と契約を交わしたシルシ。
 俺がトライドランを強く握ると、彼女の中の水音を、全身で聞き取ることが出来る。
 青年はバックステップで俺から離れると、アルテマをしまいこみ、左手を差し出した。
「返してくれ。それはプラウド兄さんのものだ。」
「この聖剣たちだってお前らのものじゃ無いだろう? 創造主からお前らの父親が受け取ったものだ。」
「そうだ。神様から貰い受けた。僕らブレイク家が。だからそれは僕たちの物だ。」
「フン、神の代弁者気取りかよ。ごっこ遊びがしてえなら。」
「いつまでもそうしてろ。」
 そこにものすごいスピードで何かが走って来た。
 我が父だ。
 父の凛月と俺のトライドランが激突し、火花を散らす。
 父は俺から引き下がると、難しい顔で俺を見た。
「慎二郎さん。息子さんのことは任して下さい。僕がなんとかするので。ここにいるミシマッシュたちの処分をお願いします。」
「おいまてぇ!! 」
 俺は七宝と父を止める。
 彼ら三人を出来るだけ引きつけること、コレがオルの仕事だ。
「お前の相手は俺だッ!! 殺してやる。絶対に。お前だけは。」
 カーミラが俺の邪魔をする。
 正直カーミラのことなど眼中に無かった。
 俺は凛月を見た。
 じっと見た。
 彼女も俺を見た。
 だが彼女はなにも気づいていないふりをした。
 俺の聖剣たちを見ていたかもしれない。
 一瞬、そう、一瞬だ。
 今の俺の速さでは父を目で捉えることすらできない。
 しかし彼女は確かに俺を見ていた。
 絶対に。
「俺を見ろおォォォォォォォォ。」
 空間転移したカーミラがジゲンキリで斬り込んでくる。
 慌てて体勢を低くする。
 木の根が歪む。
 顔を上げると、向こうから見覚えのある顔が姿を現す。
 志築斥だ。
 俺のかつての親友。
 彼はカーミラを押し退けると、俺に伊桜里の居場所を聞いて来た。
「なぁ慎二!! 伊桜里はどこだ? 生きているのか? 」
 俺が国際指名手配されているテロリストだということなんて忘れたみたいに。
「……ここらから少し上だ。もう隊長たちが向かっている。」
「恩に着る……」
「やっぱり何か理由があるんだろ? そんなんだよな。」
「じゃなきゃこうも簡単に伊桜里の位置なんて……」
 俺は思わず叫んだ。
「早くしろ。お前も伊桜里も殺されるぞ。」
 すると斥は必死な顔で俺を見た。
「なぁ慎二!! 」
「たとえ、お前がテロリストでも。極東を裏切った反逆者だとしても。」
「俺はお前の味方だ。」
 カーミラが上段からジゲンキリを振り落として来る。
 俺は左手で斥を無理矢理押し出すと、右手のトライドランでカーミラのジゲンキリを受け止める。
---繧ィ繝ゥ繝シ?√お繝ゥ繝シ?∝━蜈亥コヲ繧定ィュ螳壹@縺ヲ荳九&縺---
 不穏なノイズと共に互いの聖剣の力が相殺される。
 だが、コレは俺にとって都合が良かった。
「どうやらお前の得意技は通用しないみたいだぜ。カーミラ。」
 ジゲンキリの能力を相殺できるのはありがたい。
 アレのせいで、防御がまるでままならなかった。
 が、聖剣たちが有れば、奴の刃を捉えることが出来る。
 俺は左手にクラウソラス逆手に、盾のように構えると、その刃でカーミラの攻撃をその刃で受け止める。
 そして隙があれば、トライドランで斬りかかる。
---繝斐?---
---繧ャ繧ャ---
 不快なノイズ。
 相変わらずクラウソラスは俺の声に答えてくれない。
 ジゲンキリを無効化出来るとは言え、トライドランだけではアルテマを抑えることが出来ない。
 俺はジャンプし、水を宿した刃で大上段斬り下ろしを放つ。
 彼はアルテマで、地面からシールドを出現させると、その攻撃を受け止める。
 そして死角から、シールドごと次元を切り裂いて来る。
 俺は事前にそれを読み取ると、シールドを足で蹴飛ばしてバックステップで後ろに下がる。
「力を貸せ。クラウソラス!! 」
---みんな!! どうして? どうしてこんなに争いあってるの? あんなに中が良かったのに---
 だが彼女たちは答えなかった。
 俺は紋章を使い、無理矢理クラウソラスの力を引き出す。
---ちょっと!!女の子をこんな道具みたいに!! いけません---
「いけませんじゃねえよ。クソアマ。お前らは武器だろ。少なくとも俺はにそれ以上の感情を抱いていない。」
「武器なら武器らしく俺に従え!! 」
---フン!!上等よ下僕---
---私がジゲンキリの残りカスじゃないってことを今ここで証明してやる---
 クラウソラスに光が宿る。
 溢れんばかりの光がカーミラを焼いた。



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