神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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侵略者

何度だって

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 俺は病院で目を覚ました。
「んん? 」
 美奈と槍馬だ。
「お前ら仕事は? 」
 美奈が俺の頬をビンタした。
「いつも勝手に無理して!! 」
「あいてて傷がぁ。」
 わざとらしく喚いてみる。
「大変!! 慎二!! 死んじゃダメ。ナースコールナースコール。」
 今度は俺が慌てた。
「おい、冗談だ。落ち着け。」
 槍馬が美奈を止める。
「お前はもう…鬼じゃ無いんだ。昔見たいに無理を続けていれば、いずれカタがくる。」
 彼は俺の安否を確認すると少し安心したようで、俺の部屋から出ようとした。
 麻川、羽々斬、美奈、槍馬……
「志築さんなら慎二の隣でイビキかいて寝てるよ。」
 クソ、肝心な奴のことを忘れていた。
「おい、黒澄はどこに行った? 」
「へ? 黒澄さん? ごめん、みんな慎二に夢中で。」
 俺は点滴を取ると、美奈にお願いした。
「傷を今すぐ治してくれ。頼む。」
「もうやってみたよ。慎二が重傷を負ったって言うから。でも無理だった。慎二が元鬼だってことが関係しているのかも知れない。」
「すまん迷惑かけた。」
 俺は左腕の点滴を引き剥がす。
「そんな、ってあれ? ちょっとどこ行くの? 」
バカ黒澄を止めに行くに決まってんだろ。」
 俺は自室から飛び出し、突き当たりの窓へと向かった。
 麻川が俺に何かを投げてくる。
「端末だ。それで黒澄の場所も分かる。」
 俺はそれを手に取ると、すぐさま麻川に繋いだ。
「なんで止めてくれなかったんだ。」
<止めたさ。でも黒澄は止まらなかった。>
「そりゃどーも、迷惑かけたな。」
<今更すぎんだろ。訓練兵の時から。教官殴ったり、組手で呪術使ったりよ。>
 窓を突き破る。
「凛月ッ。」
 俺の声に答え、俺のカイナに馴染みある武器が収まった。
 磁力操作を行い、屋上へと飛び移る。
 そして彼女を追った。
 フェンスを超え、室外機を蹴りつけ、シーツを振り払う。
 遠くで爆発が起こったのを見た。
「凛月行けるか? 」
---慎二まで!!---
「クソ親父に出来たなら、俺に出来ねえわけがねえだろ。」
 小太刀を後方へと放り投げる。
---ロンギヌスrail・gun---
 周りへの被害を最小限に抑えるために、エネルギーを搾り、体の重心一点に集中させる。
 感覚を取り戻しつつあるのが分かる。
 腰が抜け、顔を恐怖に歪ませている彼女と、闖入者の間に割って入った。
「慎二!! なんで? 怪我は? 」
「一人にするなって言ったのはお前だろ? 」
「お前は慎二って言うのか。」
 闖入者は鼻で笑った。
「なぁ慎二? 弱えな女ってのは。」
 俺の中で何かが燃え上がった。
「そんなに熱くなんなよ。」
「お前に仲間はいるか? 」
「んなもんいねえよ。人間っつうのは群れる必要があるからそーすんだよ。俺にはねえ。ビジネスパートナーってのはいるけどな。」
 俺は一呼吸置いた。
「プー。」
 あんなことがあったのに、下ではもう一般車両がクラクションを鳴らしている。
「ならお前には一生理解できない感情だな。可哀想にな。」
「あー? 死にてえなら最初からそう言えや。群れるしか能のない低脳どもがぁ。」 
 闖入者は右手で何かを飛ばしてくる。
 俺はそれを電流で弾き飛ばした。
 俺はその時確かに物質の電子を見た。
 そしてそれを激薬だと視認した。
 ここまで侮辱されれば、もう抑えておくことも出来ないなだろう。
 俺の中で何かが再び動き始める。
 腰の銃鬼の亡骸を取り出すと、側頭から電撃を撃ち込んだ。
---再空壊リ・ブースト---
 心拍数が急激に上昇する。
 世界が引き伸ばされる。
 懐かしくも、馴染みのあるこの感覚。
 世界を置いていく全能感。
---雷刃ライジン---
 凛月の刃が、闖入者の左腕を斬り落とした。
「あん? 痛えじゃねえか。」
 しかし彼が念じると、うっすらと出現した左腕が実体化する。
 再生したわけではない。
 俺の斬り落とした腕はまだそこにある。
【森羅万象流ッ。】
鬼燕キエン
 右腕が燕のようになり、滑空してくる。
「遅えよ。」
 左腕で受け止めると、背負い上げて、投げ飛ばした。
 反動で足場が崩壊する。
 二、三階下のフロアまで崩落した。
 俺は凛月を大上段に掲げると、落下の威力を利用して斬り下ろす。
---堕雷ラクライ---
白日昇天ハクジツショウテン
 跳躍した彼と、落下している俺が激突する。
 弾き返されて、壁を蹴飛ばすと、再び彼に迫った。
「なんだコレ? 速え速え速え速えぇッ。」
 対称的に俺は彼が止まって見えていた。
 回し蹴りで彼を吹っ飛ばす。
 壁に大穴が開く。
 一瞬で追いつき、凛月で斬りたくる。
 腹部に踵落とし、車道に大きな穴が空く。
 急降下し、追撃を試みるも、見えない壁に弾かれた。
「久しぶりの感覚だ。こんなに追いつめられるなんて。」
「達する。達するぅぅぅぅ。」
 俺はその透明な壁の正体を理解すると、凛月を操作し、破壊する。
「お前も見えるのか? 物質の構成が? 原子が? 」
 電子を加速させ、凛月が白く迸り始める。
---泡壊 Ionization---
 しばらく感情に任せて人を斬ることは無かったから、少し心が揺れた。
 俺は殺す気で彼を斬った。
 だが彼が死んでいないのも分かっていた。
 『物質を原子レベルで自由に操り、必要に応じて変換する。』それが彼の能力だろう。
「俺は金川練華……悪いな……お前のこと殺したくなっちまった。」
 俺は金川に訊いた。
「お前らはどこから来た? 」
「平等社会。何の面白味もない世界さ。」
 平等社会、それはどこにあるんだ? 確か蝠岡も。
 俺は新たな質問を投げかけようとしていた。
 しかし、彼の身体が徐々に消えていくのを見る。
 俺は凛月をピンのように刺して、彼が逃げないようにと試みた。
 しかし俺の小太刀は空を刺し、金川はその場からいなくなってしまった。


 
 
 
 

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