神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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報復

鎧袖一触

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「ズガン。」
 突然のことだったので、何が起こったか俺には分からなかった。
 術式は見えないし、コレは術の類では無いのだろう。
 港のコンクリードに大きなクレーターが出来るが、多少体が重くなったぐらいだ。
 何も問題なかった。
 勢いよく跳躍し、超重力から抜け出す。
よ。」
 九条が顔を青ざめている。
 当然だ。
 生身の人間なら跡形も無く砕け散っている力の大きさ。
 それを五体満足で、しかも脚力だけで抜け出してきたのだから。
<どうだね慎二郎くん。身体の調子は。>
「悪くない。いや、良すぎて。逆に扱いが難しい。」
「あちこち人の身体をいじくり回しやがって。」
「死ねえぇぇぇぇぇぇぇ。」
 金川がほど走る光を飛ばしてくる。
 左手で弾き飛ばす。
 飛んでいる彼をはたき落とす。
 彼が地面にめり込む前に、何か見えない力が彼にかかった。
「オイ、九条!! テメェは馬鹿か? 」
 二つの力が金川の身体全てにかかり、彼の胴体がソーセージのような音を立てて弾け飛ぶ。
 続いて焦りの色を見せる彼女へと疾走した。
「へぇ。どんな能力を使ってんだか知らねえが!! 」
 彼女が右手を翳すと身体が重くなる。
 俺の前後左右上下左右から、港にあったあらゆる凶器が飛んでくる。
 "あらゆる物理方式を操ってているように見えて、本質はただの強力な念動力。"
 俺はそれらを全て弾き返すと、地面を力強く蹴った。
 力の向きを変えているわけではない。
 操っているわけでもない。
 なら、それ以上の力量が有れば簡単に突破できる。
 俺は彼女を凝視した。
 力の波が薄らと見え始める。
 彼女の周りを能力が纏っている。
 それを貫通させて、即死させない程度に剣を穿つ。
 草薙剣を使い、演算した。
 した金川が飛んでくる。
【森羅万象流】
鷹狩ガンリョウ
 狩りを行う鷹のように滑り降りてきた彼を俺は体をそらして避ける。
 体勢が崩れたことにより、方程式が崩れる。
【天眼流】
蛇啌ジャックウ
 九条が右腕の毒牙を俺にかけようとしている。
 ブレーキをかけようとしているがもう遅い。
 俺の剣が彼女の右腕を斬り飛ばした。
彼女の右肩から多量の血が噴き出す。
 一瞬の動揺を彼女は見逃さなかった。
 凄まじい念動力が俺を襲う。
 一秒経つ間に、俺の体は五十メートルほど後退していた。
 そして雲の高さまで打ち上げされた後、そこからコンクリートに叩き落とさせる。
「ぐあっ。」
 コレまでも痛みを感じなかったわけではなかったが、今回のは規格外だ。
 そこへ腕を電動ドリルに変えた金川が襲い掛かってくる。
 もちろん九条の能力で釘を刺されていたので、反応が遅れる。
 無様に転がって避けたところを、彼女に思いっきり蹴飛ばされ、身体が宙に舞う。
 体を分解し、錬成し直した金川が俺の背後でエネルギーを放出させようとしている。
---ディメンション・リフト---
 思わず剣の能力を使ってしまう。
 物質が反発して放たれたエネルギー弾は金川を側面から焼き払った。
 次元に穴を開け、敵の攻撃をあさっての方向へと飛ばすトリッキーな術式。
 おそらくコレも未知術の一種なのだろう。
「うおおおおおお。」
 雄叫びを上げながら、九条が錬成された右拳で殴りかかってくる。
 彼女の顔を足で蹴飛ばしてから、回転を利用し、飛びかかってくる金川も巻き込む。
 着地し、姿勢を低くすると、九条へと距離を詰めた。
 北へ向けて走る九条。
 このまま逃すわけにはいかなかった。
 俺もそれに倣うように彼女を追う。
 彼女を目で追いながら、目の前に迫り来る鉄骨や煙突を回避した。
 後ろで金川が、高圧力で水を放出させたり、プラズマを飛ばしたり、炎で工場を焼き払ったりしている。
 俺のすぐ後ろを、彼の攻撃が散漫していた。
 工場にあった燃料が爆発し、金川が見えなくなる。
 攻撃が止んだ。
 俺はスピードを上げると、彼女を追った。
 そして彼女の方に手をかけ、ひっぺがえす。
 体制を崩した彼女が、教会に突っ込む。
 大きな両扉が衝撃で弾け飛び、講壇に倒れ込む彼女の姿が覗く。
 彼女は目を見開くと、
 全身の穴という穴から血を噴き出させる。
 体がパンプアップしていく。
 少女とか思えないような肉体になっていた。
【天眼流】
【零の拳】
【【牙竜滅殺拳ガリュウメッサツケン】】
 彼女の攻撃で、周囲の次元が歪んだ。
 彼女のスピードは遠に光の速度を超えていたからだ。
 俺も、彼女を止めるべく、最後の大技を放った。
---大蛇滅殺斬トツカハチレンゲキ---
 俺の剣が九条の右脛、左脛、腹部、胸、右腕、左腕、右肩、左肩を同時に斬り刻む。
 勝負は一瞬でついた。
 金川も気を失っており、起き上がるまでまだ時間がかかるだろう。
「終わったぞ坂上。コイツらはどうすれば良い? 」
<あー腰のあたりに、スリープバンドがあるだろう? それをつけてもらうしかないね。>
「じゃなきゃだめか? 」
<そりゃーそうだろう。君でも相手だ。能力を使えば脱獄は余裕だろうし、外で、まだ暴れられても困る。>
<しばらく眠ってもらうしかないね。>
「どれぐらい? 」
<コイツらの仲間、もしくはだ。政府機関に引き渡すまでだ。>
「まだ向こうがどのような世界かも知らずにか? 」
<その方が維持費もかからないし、向こうに借りを作れるわで色々と勝手が良いだろ? さぁとりあえず、気絶しているうちに彼らの腕にバンドを仕込んでくれ。>
「了解した。」
 俺は能力を使わないで彼らを無力化する気でいた。
 俺の負けだ。
 世界は俺の思っている以上に広がった。
 その壮大なスケールから言葉にできない虚無感が生まれる。
「どこまで行っても争いは避けられない…か。」
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