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報復
死に損ない
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俺は身体をビクつかせて、充血した目で辺りを見回す。
彼女に見つかった訳ではない。
そうだ。
父の肋骨。
俺の中に入った父の一部は、坂上たちに回収させることは無かった。
彼に再び思念が戻ったということは。
「生き返ったのか、しぶとい奴め。」
---うーん---
彼は俺の身体の中で唸った。
言いたいことがたくさんあるという物腰だ。
---しぶといのはお前の方だろ---
---なぜ敵に背中を見せた---
「あんなの、どうやって倒せば良いんだ? 」
無論、不意打ちさえ成功すれば、ロンギヌスで吹き飛ばすことも出来るであろう。
だが、ここは街中、沢山の人間の営みの中で俺たちは戦っている。
国際情勢的にも、倫理的にも、その方法は褒められるべきそれでは無かった。
となれば、白兵戦で決着をつけるしかない。
遠くで氷河と竜巻がぶつかる音がする。
ヤテンたちも苦戦しているのだ。
助けを呼ぶことも出来なさそうだし、何より、俺に白けたあの化け物が、奴らの元へ行って暴れるという可能性もゼロではない。
---何を悩むことがある? ---
「俺は…俺は…どうやってアイツと戦えば? 」
---お前は戦ってなどいない---
そうだ。奴にとって俺は獲物。だが、そういうことを言っているんじゃない。
俺が躍起になって息を吸い込んだその瞬間に、喝が飛んでくる。
---お前はやっと正面から向き合っていない---
---能力を行使し、その力に頼っているだけだ---
「ならどうしろっていうんだよ。アンタみたいに、超人的な身体能力で敵を圧倒しろというのか? 無茶言うな。」
---…無茶では無いさ---
---お前は誰だ? ---
---お前は何者だ? ---
---お前にはどんな力がある? ---
「…俺は…」
---お前は? ---
「俺はアンタの息子、英雄の息子、桐生慎二だ!! 」
その叫び声で、狩人が俺の居場所に気づく。
---上だ慎二。お前の真上---
---腓腹筋に力を込めろ。そして、一気に解き放て---
俺のいた場所に西郷がナタを振り下ろしている。
また新しい武術。
新しい武器。
---力の使い方にムラがある。跳躍をあと1.5メートル減らせ---
---奴の力を見極めろ。奴は本当に武人か? ---
そうだ。俺は彼女が武術の達人という定で考察を進めていた。
前提から考え直さなければいけない。
彼女は達人ではなくて、専門家かもしれないからだ。
---見えるはずだ。奴の能力の本質が---
「んなこと言われても。」
---違う。見えていないんじゃ無い。見ようとしていないんだ---
---目を凝らせ息子---
____そうだ。俺は身体強化に頼るあまり、全てを見通した気になっていた。
自分で見るということをしてこなかった。
術に頼るあまり、自分にこんな身体能力があることにも気がつかないでいた。
無意識のうちに自分の限界を自分で見定めていたのだ。
今ならやれる。
俺は眼を凝らした。
---黄見---
世界が黄昏に包まれる。
能力の本質が黄色く光る。
その光は、彼女の武器、今握られているナタから、じんわりと身体に向けて漂っていた。
「見えたぞ。お前の能力の本質が!! 」
コイルを操作して、小太刀を飛ばす。
「んヴァカね!! 何度も同じ手は通用しないわよ。」
彼女がナタを掲げた。
その瞬間を俺は見逃さない。
---雷閃---
銃鬼から放たれた雷の塊が、彼女の手元を狂わせる。
ナタが、宙を舞い、彼女の数メートル後ろに落ちる。
「ッ!! 」
初めて彼女に焦燥の色が浮かんだ。
俺の予測は正しい。
なら彼女が次にする行動も手に取るように分かった。
地上へと急降下し、彼女のロープの下へと潜り込む。
太もものガーターに仕込まれた無数の使い古された武器。
それらを全てばら撒く。
彼女がそれらの一つに手をかけようとした時、俺は彼女の手首を掴むと、背負い上げて投げ飛ばした。
「うおぉぉぉぉぉ。」
彼女からオーラが綺麗さっぱり消える。
やはり、彼女は専門家だったようだ。
腕を不恰好に振りながら逃げる彼女。
俺は地面を蹴り、一瞬で彼女に追いつくと、路地裏の行き止まりに彼女を追い詰めた。
「あら、強引なのね。」
「当たり前だ。罪人に人権があると思うなよ。」
「情婦に夢中になってるところ、悪いんだけど。」
「あなたの彼女さん。今、とっても危険な状態かもしれないわね。」
はっと千代のことを思い出した。
「女郎に夢中になって、女の子を危険に晒したちゃうなんて馬鹿な男。」
「ッ!! 」
「きゃっ。」
俺は怒りに任せて、彼女が身体を預けている壁にストレートをかました。
「クソ野郎めが。どこまで汚い手を使えば!! 」
俺は大通りに向けて走り出し、振り返っては、動けなくなっている彼女を睨んだ。
「覚えてろよ。いつかお前を必ず。」
「ッ!! 」
大通りに出てから、ハーキマの店へと急ぐ。
宿屋に飛び入ると、フロントが荒らされていて、そこに眼鏡を外したハーキマが倒れていた。
あちらこちらに刀傷がある。
俺は襲撃者の正体を予測した。
「玉鉄ぇっ!!! 」
彼は千代を抱き抱え、窓の外に立っていた。
「許せ慎二。某も本当はこんなことをしたくは無いのだ。」
俺は即座に銃鬼を取り出すと、自分の額に……
「動くな。動くとこの娘の命はない。賢いソナタならこの状況がどういう意味を成しているか分かるな。」
どうする?
千代を撃つか?
それはダメだ。
彼女を傷つける事なんて。
俺を撃つか?
撃ってどうする?
これは単なる脅しではないかもしれない。
俺が下手に動いたせいで、彼女の身に何か起こったとしたら俺は示しがつかない。
「某は、このような無粋な真似、出来ればしたくない。」
「ならなぜ!! 」
「いずれ分かる。」
「ソナタとは、一度、サシでやりたい。また会えるまで。」
「死ぬではないぞ。」
襲撃者はそうメッセージを残すと、常闇に消えていった。
彼女に見つかった訳ではない。
そうだ。
父の肋骨。
俺の中に入った父の一部は、坂上たちに回収させることは無かった。
彼に再び思念が戻ったということは。
「生き返ったのか、しぶとい奴め。」
---うーん---
彼は俺の身体の中で唸った。
言いたいことがたくさんあるという物腰だ。
---しぶといのはお前の方だろ---
---なぜ敵に背中を見せた---
「あんなの、どうやって倒せば良いんだ? 」
無論、不意打ちさえ成功すれば、ロンギヌスで吹き飛ばすことも出来るであろう。
だが、ここは街中、沢山の人間の営みの中で俺たちは戦っている。
国際情勢的にも、倫理的にも、その方法は褒められるべきそれでは無かった。
となれば、白兵戦で決着をつけるしかない。
遠くで氷河と竜巻がぶつかる音がする。
ヤテンたちも苦戦しているのだ。
助けを呼ぶことも出来なさそうだし、何より、俺に白けたあの化け物が、奴らの元へ行って暴れるという可能性もゼロではない。
---何を悩むことがある? ---
「俺は…俺は…どうやってアイツと戦えば? 」
---お前は戦ってなどいない---
そうだ。奴にとって俺は獲物。だが、そういうことを言っているんじゃない。
俺が躍起になって息を吸い込んだその瞬間に、喝が飛んでくる。
---お前はやっと正面から向き合っていない---
---能力を行使し、その力に頼っているだけだ---
「ならどうしろっていうんだよ。アンタみたいに、超人的な身体能力で敵を圧倒しろというのか? 無茶言うな。」
---…無茶では無いさ---
---お前は誰だ? ---
---お前は何者だ? ---
---お前にはどんな力がある? ---
「…俺は…」
---お前は? ---
「俺はアンタの息子、英雄の息子、桐生慎二だ!! 」
その叫び声で、狩人が俺の居場所に気づく。
---上だ慎二。お前の真上---
---腓腹筋に力を込めろ。そして、一気に解き放て---
俺のいた場所に西郷がナタを振り下ろしている。
また新しい武術。
新しい武器。
---力の使い方にムラがある。跳躍をあと1.5メートル減らせ---
---奴の力を見極めろ。奴は本当に武人か? ---
そうだ。俺は彼女が武術の達人という定で考察を進めていた。
前提から考え直さなければいけない。
彼女は達人ではなくて、専門家かもしれないからだ。
---見えるはずだ。奴の能力の本質が---
「んなこと言われても。」
---違う。見えていないんじゃ無い。見ようとしていないんだ---
---目を凝らせ息子---
____そうだ。俺は身体強化に頼るあまり、全てを見通した気になっていた。
自分で見るということをしてこなかった。
術に頼るあまり、自分にこんな身体能力があることにも気がつかないでいた。
無意識のうちに自分の限界を自分で見定めていたのだ。
今ならやれる。
俺は眼を凝らした。
---黄見---
世界が黄昏に包まれる。
能力の本質が黄色く光る。
その光は、彼女の武器、今握られているナタから、じんわりと身体に向けて漂っていた。
「見えたぞ。お前の能力の本質が!! 」
コイルを操作して、小太刀を飛ばす。
「んヴァカね!! 何度も同じ手は通用しないわよ。」
彼女がナタを掲げた。
その瞬間を俺は見逃さない。
---雷閃---
銃鬼から放たれた雷の塊が、彼女の手元を狂わせる。
ナタが、宙を舞い、彼女の数メートル後ろに落ちる。
「ッ!! 」
初めて彼女に焦燥の色が浮かんだ。
俺の予測は正しい。
なら彼女が次にする行動も手に取るように分かった。
地上へと急降下し、彼女のロープの下へと潜り込む。
太もものガーターに仕込まれた無数の使い古された武器。
それらを全てばら撒く。
彼女がそれらの一つに手をかけようとした時、俺は彼女の手首を掴むと、背負い上げて投げ飛ばした。
「うおぉぉぉぉぉ。」
彼女からオーラが綺麗さっぱり消える。
やはり、彼女は専門家だったようだ。
腕を不恰好に振りながら逃げる彼女。
俺は地面を蹴り、一瞬で彼女に追いつくと、路地裏の行き止まりに彼女を追い詰めた。
「あら、強引なのね。」
「当たり前だ。罪人に人権があると思うなよ。」
「情婦に夢中になってるところ、悪いんだけど。」
「あなたの彼女さん。今、とっても危険な状態かもしれないわね。」
はっと千代のことを思い出した。
「女郎に夢中になって、女の子を危険に晒したちゃうなんて馬鹿な男。」
「ッ!! 」
「きゃっ。」
俺は怒りに任せて、彼女が身体を預けている壁にストレートをかました。
「クソ野郎めが。どこまで汚い手を使えば!! 」
俺は大通りに向けて走り出し、振り返っては、動けなくなっている彼女を睨んだ。
「覚えてろよ。いつかお前を必ず。」
「ッ!! 」
大通りに出てから、ハーキマの店へと急ぐ。
宿屋に飛び入ると、フロントが荒らされていて、そこに眼鏡を外したハーキマが倒れていた。
あちらこちらに刀傷がある。
俺は襲撃者の正体を予測した。
「玉鉄ぇっ!!! 」
彼は千代を抱き抱え、窓の外に立っていた。
「許せ慎二。某も本当はこんなことをしたくは無いのだ。」
俺は即座に銃鬼を取り出すと、自分の額に……
「動くな。動くとこの娘の命はない。賢いソナタならこの状況がどういう意味を成しているか分かるな。」
どうする?
千代を撃つか?
それはダメだ。
彼女を傷つける事なんて。
俺を撃つか?
撃ってどうする?
これは単なる脅しではないかもしれない。
俺が下手に動いたせいで、彼女の身に何か起こったとしたら俺は示しがつかない。
「某は、このような無粋な真似、出来ればしたくない。」
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