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平等社会へ
鵞利場小子
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双薔皇后が金川練華を倒した後、転送されてきたのは枷もつけていない小さな少女だった。
カーミラ兄さんは多分手加減してしまうだろう。
それに四戦目の相手はどのような人物か分からない。
ここは私が勝って、民を守る。
そして、慎二もカーミラ兄さんも、千代さんも……
そう言った気持ちから、私は転送ボタンを押した。
コロシアムに転送される。
「貴方が私の相手? 」
「ごめんなさいね。こんなことに巻き込んでしまって。」
私がこういうと、彼女はため息をついた。
「何か勘違いしているみたいだけど。」
「私、二十三よ。多分貴方より年上。あなたまだ十代でしょ? 」
驚いた。
だって彼女の身長は百三十センチぐらいしかない。
「ええと、敬語使った方が良いのかしら。」
「ちっちゃいからって舐めんじゃ無いわよ。」
彼女は地団駄踏んで怒っている。
手錠はしていない。
能力者では無いのか?
でも。
手加減をするつもりは無い。
私はうちなる魂魄を解放して、神格化しようと……
「ザシュッ。」
私の首に手刀が突きつけられる。
後一歩動くのが遅ければ、私の首は飛ばされていた。
いや、彼女が手加減をしたのか。
いずれにせよ神格化には時間がかかる。
発動しなければ、時間操るどころか、停めることすらできない。
---wind pegasus---
身体に風の天馬を纏い、中に飛び上がる。
父の角を扱えないのなら、極東の魔具を使うより他ない。
彼女は地上で身体を縮めると、
「【天鵝流】拳闘術」
「【参ノ拳】」
【昇鴉】
バネのように飛び上がった。
鋭い鳥の嘴が、私の喉笛を狙っている。
翼を操作して、後ろに避ける。
が、腕の関節が伸び、私の左胸に直撃した。
それだけではない。
身体のベクトルを空中で変化させて、こちらに迫ってくる。
「【弐ノ拳】」
【啄木鳥】
「ぐがぁ。」
胃袋が潰れそうになる。
腹を発勁が襲った。
私はコロシアムの壁にぶち付けられる。
どこからあんな力を?
そうだ。
彼女は空中にいた。
押し出す力なんて無いはずなのに。
「すごいわね貴方。ホントに人間? 」
私は手をはらって立ち上がり、彼女を称賛する。
「殆どの人間は、身体の一割ほどしか能力を引き出せていないわ。」
「能力者でも。」
「私にも教えてもらえる? 」
彼女は呆れていた。
そうして、外れた関節を元に戻しながら答える。
「みんなそう言うのよ。でも身体本来の力を十割引き出すって言うのは、そう簡単なことじゃ無い。」
---braid of glacie---
彼女の背後で氷の刃が出現し、彼女に襲い掛かる。
彼女はそれを避けた。
私はその行動に違和感を覚える。
まるで外部から遠隔操作されたような動き。
脳から出た信号では無かった。
「不意打ち。そうよね。みんな、正面から私とやり合えないって分かったらこうするの。」
彼女が一歩踏み出した、その瞬間、一瞬だけ身体の周りで何かが光った。
生体電気。間違いない。
彼女の能力はそれだ。
私も何度か見たことがある。
慎二が凛月の力を使って脳を介さずに直接身体に信号を送っていたのが。
恐らく、攻撃が来ると、自動的に反応する様になっているのだろう。
ならばと私は考えた。
身体を左に大きくうねる。
彼女の体格からして、中段の攻撃が飛んでくるのは、私の腹部。
ジャンプして避けるのにも、屈んで避けるのにしても微妙な位置だ。
だから私は左に避けた。
攻撃を見る必要はない、一瞬彼女の隙をつくれば良い。
---carbon gum---
ゴム製の拘束具が彼女の左拳をがっちり捉える。
私はその一瞬の隙を見逃さなかった。
神格化する。
額に白毫が浮かび上がり、背中に強烈な光エネルギーを感じた。
私はすぐさま錫杖を取り出すと、それを彼女へ向けて放つ。
ゴムの拘束具の効果が切れるや否や、彼女は錫杖の雨を避けながら、それを足場にしてこちらに迫ってくる。
百メル…五十メル…
"ここだ。"
---クロック・フリーズ---
歯車が停止し、凍りついた。
時間が止まる。
彼女も泊まっているし、観客も口を開けて唖然としている。
瓦礫も、錫杖も、砂埃も、何もかもが静止していた。
卑怯だとは言わせない。
恐らくこの子も、負ければなんらかのペナルティを課せられるのであろう。
しかし、世界を彼らに譲る事はできない。
私は彼女を眠らせるべく、父の角を彼女へと突き刺そうとした。
「あれ? 」
私は目を疑った。
彼女は目の前にいるはずなのに触れられない?
なぜ?
なぜ?
焦燥している間にも、世界は色褪せていく。
光が途切れたためだ。世界の修正力によって、歯車の氷は溶けて、また動き出す。
引き戻されて早々、私は彼女が消えていることに気づく。
辺りを見回す、そして振り返る。
背後に回られたか?
「ホリヤァ。」
上だ。
気づいた時にはもう遅かった。
彼女の手が、私の身体に触れる。
私はそれを振り払おうとした。
が、身体が動かない。
そうか生体電気。
私と彼女は揚力を失い、地上に落ちる。
気がつくと私は自分の錫杖を自分の首に押し当てていた。
「降参して。私は貴方を殺したくないから。」
降参なんて。
私は皇后。
極東の。
みんなを売るような真似は……
「貴方が死んで悲しむ人がいるんでしょ。」
「なら泥水啜ってでも生きなさい。」
そうだ。
何考えているだろう私。
一人で背負い込んで。
カーミラ兄さんも、慎二もきっとやってくれる。
そう言う作戦だったじゃないか。
二人だけじゃない。
槍馬も双薔皇后も。
私は大きな声で叫んだ。
「こうさぁぉぁぉぁん。」
カーミラ兄さんは多分手加減してしまうだろう。
それに四戦目の相手はどのような人物か分からない。
ここは私が勝って、民を守る。
そして、慎二もカーミラ兄さんも、千代さんも……
そう言った気持ちから、私は転送ボタンを押した。
コロシアムに転送される。
「貴方が私の相手? 」
「ごめんなさいね。こんなことに巻き込んでしまって。」
私がこういうと、彼女はため息をついた。
「何か勘違いしているみたいだけど。」
「私、二十三よ。多分貴方より年上。あなたまだ十代でしょ? 」
驚いた。
だって彼女の身長は百三十センチぐらいしかない。
「ええと、敬語使った方が良いのかしら。」
「ちっちゃいからって舐めんじゃ無いわよ。」
彼女は地団駄踏んで怒っている。
手錠はしていない。
能力者では無いのか?
でも。
手加減をするつもりは無い。
私はうちなる魂魄を解放して、神格化しようと……
「ザシュッ。」
私の首に手刀が突きつけられる。
後一歩動くのが遅ければ、私の首は飛ばされていた。
いや、彼女が手加減をしたのか。
いずれにせよ神格化には時間がかかる。
発動しなければ、時間操るどころか、停めることすらできない。
---wind pegasus---
身体に風の天馬を纏い、中に飛び上がる。
父の角を扱えないのなら、極東の魔具を使うより他ない。
彼女は地上で身体を縮めると、
「【天鵝流】拳闘術」
「【参ノ拳】」
【昇鴉】
バネのように飛び上がった。
鋭い鳥の嘴が、私の喉笛を狙っている。
翼を操作して、後ろに避ける。
が、腕の関節が伸び、私の左胸に直撃した。
それだけではない。
身体のベクトルを空中で変化させて、こちらに迫ってくる。
「【弐ノ拳】」
【啄木鳥】
「ぐがぁ。」
胃袋が潰れそうになる。
腹を発勁が襲った。
私はコロシアムの壁にぶち付けられる。
どこからあんな力を?
そうだ。
彼女は空中にいた。
押し出す力なんて無いはずなのに。
「すごいわね貴方。ホントに人間? 」
私は手をはらって立ち上がり、彼女を称賛する。
「殆どの人間は、身体の一割ほどしか能力を引き出せていないわ。」
「能力者でも。」
「私にも教えてもらえる? 」
彼女は呆れていた。
そうして、外れた関節を元に戻しながら答える。
「みんなそう言うのよ。でも身体本来の力を十割引き出すって言うのは、そう簡単なことじゃ無い。」
---braid of glacie---
彼女の背後で氷の刃が出現し、彼女に襲い掛かる。
彼女はそれを避けた。
私はその行動に違和感を覚える。
まるで外部から遠隔操作されたような動き。
脳から出た信号では無かった。
「不意打ち。そうよね。みんな、正面から私とやり合えないって分かったらこうするの。」
彼女が一歩踏み出した、その瞬間、一瞬だけ身体の周りで何かが光った。
生体電気。間違いない。
彼女の能力はそれだ。
私も何度か見たことがある。
慎二が凛月の力を使って脳を介さずに直接身体に信号を送っていたのが。
恐らく、攻撃が来ると、自動的に反応する様になっているのだろう。
ならばと私は考えた。
身体を左に大きくうねる。
彼女の体格からして、中段の攻撃が飛んでくるのは、私の腹部。
ジャンプして避けるのにも、屈んで避けるのにしても微妙な位置だ。
だから私は左に避けた。
攻撃を見る必要はない、一瞬彼女の隙をつくれば良い。
---carbon gum---
ゴム製の拘束具が彼女の左拳をがっちり捉える。
私はその一瞬の隙を見逃さなかった。
神格化する。
額に白毫が浮かび上がり、背中に強烈な光エネルギーを感じた。
私はすぐさま錫杖を取り出すと、それを彼女へ向けて放つ。
ゴムの拘束具の効果が切れるや否や、彼女は錫杖の雨を避けながら、それを足場にしてこちらに迫ってくる。
百メル…五十メル…
"ここだ。"
---クロック・フリーズ---
歯車が停止し、凍りついた。
時間が止まる。
彼女も泊まっているし、観客も口を開けて唖然としている。
瓦礫も、錫杖も、砂埃も、何もかもが静止していた。
卑怯だとは言わせない。
恐らくこの子も、負ければなんらかのペナルティを課せられるのであろう。
しかし、世界を彼らに譲る事はできない。
私は彼女を眠らせるべく、父の角を彼女へと突き刺そうとした。
「あれ? 」
私は目を疑った。
彼女は目の前にいるはずなのに触れられない?
なぜ?
なぜ?
焦燥している間にも、世界は色褪せていく。
光が途切れたためだ。世界の修正力によって、歯車の氷は溶けて、また動き出す。
引き戻されて早々、私は彼女が消えていることに気づく。
辺りを見回す、そして振り返る。
背後に回られたか?
「ホリヤァ。」
上だ。
気づいた時にはもう遅かった。
彼女の手が、私の身体に触れる。
私はそれを振り払おうとした。
が、身体が動かない。
そうか生体電気。
私と彼女は揚力を失い、地上に落ちる。
気がつくと私は自分の錫杖を自分の首に押し当てていた。
「降参して。私は貴方を殺したくないから。」
降参なんて。
私は皇后。
極東の。
みんなを売るような真似は……
「貴方が死んで悲しむ人がいるんでしょ。」
「なら泥水啜ってでも生きなさい。」
そうだ。
何考えているだろう私。
一人で背負い込んで。
カーミラ兄さんも、慎二もきっとやってくれる。
そう言う作戦だったじゃないか。
二人だけじゃない。
槍馬も双薔皇后も。
私は大きな声で叫んだ。
「こうさぁぉぁぉぁん。」
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