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平等社会へ
北条力
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女の子の後に出てきたのは、身長が180センチぐらいはある巨大の男だ。
男は観客のしけ具合にため息を吐きながら、対戦相手の登場を待っている。
やはりあの男は一番最後に来るらしい。
となると、後は僕たちしか残っていない。
「セイ、出れるかい? 」
彼女に迷いは無かった。
「ええ、早く行きましょう。」
転送ボタンを押して、コロシアムに出る。
僕が来ると彼は申し訳なさそうな顔をしながら頭を掻いた。
「相手はお前か。そのなんだ? アンタらにもアンタらの大義名分があるだろうけど。その。すまんな。」
男は手錠すらされているが、ほかに武器は見当たらない。
素手の相手が神器と対峙できるとは思わなかった。
というか、勝つ? 神器持ちの僕たちに?
「その言葉、そっくりそのまま返すよ。」
腰のエクスカリバーを引き抜く。
観客席から、どわッと笑いが起きた。
「見ろよあのカッコ。」
「それになんだあの無駄に凝った剣は。」
「チャンパラでも始めるつもりかぁ。アチョー。」
「こっち向いて叫んでみろよ。ジャスティースってなw 」
「ハハハ、それってよぉ。サンセット川埼じゃねえかw 」
セイがそれを見て歯軋りしている。
僕はそれを優しく制すると、彼女に語りかける。
「また力を貸してくれるかい? セイ? 」
「僕は昔みたいに代行者の力を使えないからさ。」
そうだ。身体に変化が現れたのは、彼が神を倒してから。それから僕の身体は成長のスピードが早くなった。
結果、彼女に代償を肩代わりしてもらわなければ、この力を維持できなくなったのだ。
彼女は笑顔で頷くと、僕の手を取った。
彼女が僕の中に入り込んでくる。
観客への感情と、僕への思い。
僕たちの世界への愛が伝わってくる。
「よし、準備は終わったみたいだな。そろそろ始めるぜ。」
この姿を見ても彼は微動だにしなかった。
ハッタリか、それとも。
彼は左手を前に突き出して、右手は腰の辺りで引き絞っている。
おかしな格好だが、どこかサマになっている。
隙がない。相当な手練れだろう。
「試してみるか。」
エクスカリバーを前に突き出す。
神器は僕の意志に反応し、地面を隆起させた。
突き出された無数の石柱が彼を襲う。
彼はそれを防ぐことも、避けることもしなかった。
正面から攻撃を受け止めたようだ。
「やべ、やりすぎたか? 」
砂煙が止み……
彼は無傷で立っていた。
「そんな遠慮はいらねえよ。俺は別に構わんがよ。そういうの嫌いな奴もいるから気をつけろよ。」
僕の神器の地形操作は、彼の足元にだけ及んでおらず、キレにくっきり円が残っていた。
彼は右手をパンパン払うと、体勢を低くする。
「んなら、今度は俺のばんだな。」
接近戦が来る!!
神器を強く握る。
体液操作を行い、身体を強化する。
充血させた眼で、ようやく彼の動きを捉えることが出来た。
右ストレートに左のボディーブロ
右膝、左回し蹴り。
彼の攻撃を交わすことで精一杯だ。
接近させれては能力を使うことすらできない。
風を起し、彼を吹き飛ばそうとする。
しかし両腕をクロスさせると、それを弾き飛ばしてきた。
「【裏天岩流】」
「【壱ノ岩】」
【 石火】
どっさに剣を構えて腹部を守った。
が、威力を抑えきれず、剣ごと吹き飛ばされてしまう。
「なるほど、感が良いのか。」
右に回り込まれている。
回し蹴りが飛んでくるが、今度は反応できない。
「ホラよ。」
今度は僕の脇腹に彼の足が直撃した。
「グハッ。」
視界が回転し、無様に倒れ込む。
脇腹がズキズキと痛む。
多分骨までイッている。
---カーミラ。まっててすぐに治療するから---
「心配ないよセイ。とりあえず骨を繋いで? 痛覚遮断も頼む。」
---無理…しないでね---
さっきの感覚はどこか違和感があった。
足で蹴られたというよりも、鈍器で殴られたような感覚。
最初に僕の地形変動を防いだというところからも、おおよそ理解することができた。
「ジゲンキリ……そこにいるんだろう? 」
---なぁにアドナイ? ---
神器が分裂し、その間に生まれた人格。
僕は一番馴染みのある彼女へと話しかけた。
「斬ってくれ。奴を。」
---ここはアドナイの知っている世界じゃない。どうなっても知らないよ---
相変わらず声に抑揚がない。
だが、少し困っている。
それだけは感じ取れた。
幸い、彼との距離は少し離れている。
---crack---
エクスカリバーの刃から色彩が消え、全てを吸い込む常闇にへと変化した。
地面の摩擦定数を操作する。
身体に風を纏う。
体液操作で、筋肉を肥大化させる。
身体に光を纏い、彼の懐に潜り込む。
「クッ!! 」
流石に反応できなかったらしい。
彼は肘でギリギリ自分の腹部を守っている。
だが、斬れない
やはり僕の予測通り、彼にも何か特殊能力があった。
ジゲンキリの力が拮抗しているのは、能力がこの世界に順応していないのか、それとも。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
僕の渾身の一撃は弾き返されたが、彼の右手に切り傷を負わせることは出来た。
間違いない。
彼の能力はシールドを貼ることでは無く、次元を分けることだ。
そうやって最初の攻撃も防いだ。
ならアルテマの能力で無傷だった彼にも、ジゲンキリの能力で傷をつけられたことも納得がいく。
いや、そもそも、ジゲンキリに斬れないものなど無いのだ。
そうと来れば、もうそれは次元に関する能力でしか無い。
「やってくれるじゃねえか。」
「君の能力は次元を隔てるシールドを作ること。違うかい? 」
「へ? そうなの? 」
どうやら彼は能力の本質を理解せずに行使しているらしい。
「これは生まれつきだからな。よくわからんのよ。」
再び彼が視界から消える。
今度は光の反射、風の動きから、彼の位置を特定する。
---Flood---
エクスカリバーから溢れんばかりのみずが放出される。
彼はブレーキをかけると、右腕を引き絞った。
「【天岩流】」
【シールド・オブ・ラウンド】
勢いよく発勁を繰り出す。
彼の右腕が大洪水を二分した。
攻撃が終わり、再び彼が前進し始める。
---solus integration---
身体に陽の力を帯びる。
そのまま剣先から無数のビームを放った。
だが、彼は止まらない。
ビームを防ぐことなく、回避しながら、こちらに接近してくる。
「separator!! 」「【裏天岩流】」
「分裂しろエクスカリバー!! 」「【拾ノ岩】」
---nights of the round---【ショック・オブ・ラウンド】
彼は円形のシールドを発動させたまま、その盾で殴りかかってくる。
ほぼ同時に繰り出される十三連撃と、何者もを通さない絶対要塞が衝突した。
あまりの光に目を瞑った。
目が眩み、光が止む頃に……
僕は彼の足元で倒れていた。
「いらぬ気遣いだったな。悪い。」
彼が僕に手を差し出す。
気遣いというのは、もちろん、腕を差し出していることについてではない。
「そんなこと無いですよ。生身で神器とやりあうなんて。」
「貴方はとても強い。」
「この世界じゃ、なんの役にも立たないけどな。」
《勝負あり》
その言葉と共に、僕と彼は転送された。
男は観客のしけ具合にため息を吐きながら、対戦相手の登場を待っている。
やはりあの男は一番最後に来るらしい。
となると、後は僕たちしか残っていない。
「セイ、出れるかい? 」
彼女に迷いは無かった。
「ええ、早く行きましょう。」
転送ボタンを押して、コロシアムに出る。
僕が来ると彼は申し訳なさそうな顔をしながら頭を掻いた。
「相手はお前か。そのなんだ? アンタらにもアンタらの大義名分があるだろうけど。その。すまんな。」
男は手錠すらされているが、ほかに武器は見当たらない。
素手の相手が神器と対峙できるとは思わなかった。
というか、勝つ? 神器持ちの僕たちに?
「その言葉、そっくりそのまま返すよ。」
腰のエクスカリバーを引き抜く。
観客席から、どわッと笑いが起きた。
「見ろよあのカッコ。」
「それになんだあの無駄に凝った剣は。」
「チャンパラでも始めるつもりかぁ。アチョー。」
「こっち向いて叫んでみろよ。ジャスティースってなw 」
「ハハハ、それってよぉ。サンセット川埼じゃねえかw 」
セイがそれを見て歯軋りしている。
僕はそれを優しく制すると、彼女に語りかける。
「また力を貸してくれるかい? セイ? 」
「僕は昔みたいに代行者の力を使えないからさ。」
そうだ。身体に変化が現れたのは、彼が神を倒してから。それから僕の身体は成長のスピードが早くなった。
結果、彼女に代償を肩代わりしてもらわなければ、この力を維持できなくなったのだ。
彼女は笑顔で頷くと、僕の手を取った。
彼女が僕の中に入り込んでくる。
観客への感情と、僕への思い。
僕たちの世界への愛が伝わってくる。
「よし、準備は終わったみたいだな。そろそろ始めるぜ。」
この姿を見ても彼は微動だにしなかった。
ハッタリか、それとも。
彼は左手を前に突き出して、右手は腰の辺りで引き絞っている。
おかしな格好だが、どこかサマになっている。
隙がない。相当な手練れだろう。
「試してみるか。」
エクスカリバーを前に突き出す。
神器は僕の意志に反応し、地面を隆起させた。
突き出された無数の石柱が彼を襲う。
彼はそれを防ぐことも、避けることもしなかった。
正面から攻撃を受け止めたようだ。
「やべ、やりすぎたか? 」
砂煙が止み……
彼は無傷で立っていた。
「そんな遠慮はいらねえよ。俺は別に構わんがよ。そういうの嫌いな奴もいるから気をつけろよ。」
僕の神器の地形操作は、彼の足元にだけ及んでおらず、キレにくっきり円が残っていた。
彼は右手をパンパン払うと、体勢を低くする。
「んなら、今度は俺のばんだな。」
接近戦が来る!!
神器を強く握る。
体液操作を行い、身体を強化する。
充血させた眼で、ようやく彼の動きを捉えることが出来た。
右ストレートに左のボディーブロ
右膝、左回し蹴り。
彼の攻撃を交わすことで精一杯だ。
接近させれては能力を使うことすらできない。
風を起し、彼を吹き飛ばそうとする。
しかし両腕をクロスさせると、それを弾き飛ばしてきた。
「【裏天岩流】」
「【壱ノ岩】」
【 石火】
どっさに剣を構えて腹部を守った。
が、威力を抑えきれず、剣ごと吹き飛ばされてしまう。
「なるほど、感が良いのか。」
右に回り込まれている。
回し蹴りが飛んでくるが、今度は反応できない。
「ホラよ。」
今度は僕の脇腹に彼の足が直撃した。
「グハッ。」
視界が回転し、無様に倒れ込む。
脇腹がズキズキと痛む。
多分骨までイッている。
---カーミラ。まっててすぐに治療するから---
「心配ないよセイ。とりあえず骨を繋いで? 痛覚遮断も頼む。」
---無理…しないでね---
さっきの感覚はどこか違和感があった。
足で蹴られたというよりも、鈍器で殴られたような感覚。
最初に僕の地形変動を防いだというところからも、おおよそ理解することができた。
「ジゲンキリ……そこにいるんだろう? 」
---なぁにアドナイ? ---
神器が分裂し、その間に生まれた人格。
僕は一番馴染みのある彼女へと話しかけた。
「斬ってくれ。奴を。」
---ここはアドナイの知っている世界じゃない。どうなっても知らないよ---
相変わらず声に抑揚がない。
だが、少し困っている。
それだけは感じ取れた。
幸い、彼との距離は少し離れている。
---crack---
エクスカリバーの刃から色彩が消え、全てを吸い込む常闇にへと変化した。
地面の摩擦定数を操作する。
身体に風を纏う。
体液操作で、筋肉を肥大化させる。
身体に光を纏い、彼の懐に潜り込む。
「クッ!! 」
流石に反応できなかったらしい。
彼は肘でギリギリ自分の腹部を守っている。
だが、斬れない
やはり僕の予測通り、彼にも何か特殊能力があった。
ジゲンキリの力が拮抗しているのは、能力がこの世界に順応していないのか、それとも。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
僕の渾身の一撃は弾き返されたが、彼の右手に切り傷を負わせることは出来た。
間違いない。
彼の能力はシールドを貼ることでは無く、次元を分けることだ。
そうやって最初の攻撃も防いだ。
ならアルテマの能力で無傷だった彼にも、ジゲンキリの能力で傷をつけられたことも納得がいく。
いや、そもそも、ジゲンキリに斬れないものなど無いのだ。
そうと来れば、もうそれは次元に関する能力でしか無い。
「やってくれるじゃねえか。」
「君の能力は次元を隔てるシールドを作ること。違うかい? 」
「へ? そうなの? 」
どうやら彼は能力の本質を理解せずに行使しているらしい。
「これは生まれつきだからな。よくわからんのよ。」
再び彼が視界から消える。
今度は光の反射、風の動きから、彼の位置を特定する。
---Flood---
エクスカリバーから溢れんばかりのみずが放出される。
彼はブレーキをかけると、右腕を引き絞った。
「【天岩流】」
【シールド・オブ・ラウンド】
勢いよく発勁を繰り出す。
彼の右腕が大洪水を二分した。
攻撃が終わり、再び彼が前進し始める。
---solus integration---
身体に陽の力を帯びる。
そのまま剣先から無数のビームを放った。
だが、彼は止まらない。
ビームを防ぐことなく、回避しながら、こちらに接近してくる。
「separator!! 」「【裏天岩流】」
「分裂しろエクスカリバー!! 」「【拾ノ岩】」
---nights of the round---【ショック・オブ・ラウンド】
彼は円形のシールドを発動させたまま、その盾で殴りかかってくる。
ほぼ同時に繰り出される十三連撃と、何者もを通さない絶対要塞が衝突した。
あまりの光に目を瞑った。
目が眩み、光が止む頃に……
僕は彼の足元で倒れていた。
「いらぬ気遣いだったな。悪い。」
彼が僕に手を差し出す。
気遣いというのは、もちろん、腕を差し出していることについてではない。
「そんなこと無いですよ。生身で神器とやりあうなんて。」
「貴方はとても強い。」
「この世界じゃ、なんの役にも立たないけどな。」
《勝負あり》
その言葉と共に、僕と彼は転送された。
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