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ローランド大戦
バックドア
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俺は七条の裏路地に入ると、そこで扉が開くのを待つ。
そこに扉なんて無い。
だが、彼が扉を開けてくれる。
だからここで待っている。
時間よりも10分ばかり早い。
俺は時間を守る方では無かった。
多分罪悪感を感じているのだ。
人間、罪悪感を感じる時、自然と足取りが早くなるものだ。
早くしないと誰かに見つかるかもしれない。
できるだけ不審な動きは早く終わらせておきたい。
そして……
ドアが開いた。
彼女は俺のことを最後まで気にかけてくれていた彼女は
俺はまたアイツを裏切ることになるのか。
* * *
ドアがゆっくりと開かれる。
中から中性的な顔立ちの好青年が俺を、向こう側の世界をのぞいていた。
俺はその青年のデコに指を弾く。
「クリアリングを忘れてんぞ。向こうで刺客が待ち構えていたらどうする? 」
青年はデコを抑えて、倒れ込んだ。
「ごめんよ慎二。そのなんかさ。不安じゃないか。」
気持ちは分かる。
バックドアの仕様上、物体の上にめり込んで扉が開くこともあるし、なんせ向こう側の様子は分からない。
扉で人を弾き飛ばすこともあるだろう。
「慎二が本当に来ているか不安だったんだ。極東でうまくやっているって言ってたからさ。」
どこ情報なんだソレ。
「心配すんな。公務じゃ役に立たなすぎて、とっくにクビになったからよ。」
「でも凛月はちゃんとここにある。銃鬼もな。」
酔っ払いが五階から俺たちを見下ろしている。
「なんだテメェうっへえぞ。」
「慎二、早く。」
俺は牡丹に手招きをされて中
へと入った。
ユグドラシル。
ここは呪具残骸の中だ。
人口呪具、極東の黒い部分が生み出した人間兵器。
それが檜牡丹。
俺はユグドラシルに会うために、木の根元を目指した。
「おーい。お姉さん。久しぶりぃ。」
返事は来ない。
当然だ。
「彼女はもういない。それは当人である君が一番よく分かっていることだろうよ。」
黒服の男がゆっくりとこちらに歩いてくる。
アレから少したりとも変わっていない。
厳格なシワから、白髪の数までそっくりそのままだった。
「Mさん。お久しぶりです。」
「久しぶり。台与鬼子。いや、今は鬼神様と呼ばれているんだってね君は。」
「ええ、おかげさまで。俺が今祭り上げれているのも、アナタたちの協力があってこそですからね。」
「今回は如何様で? 」
Mが手招くと、二人の人影が現れた。
一人はセルの皇帝様アスィールで、もう一人は碧野双薔。
俺は思わず身構えてしまう。
俺はコイツらの計画を無茶苦茶にした張本人であり、彼らの国で祀られている悪魔、ハムサを殺した極悪人であるからだ。
「桐生慎二、そんなに身構えなくても良い。この人たちは、私たちの協力者だよ。昔からね。」
アスィールはその白々しい言葉に呆れたらしく、力のない言葉で彼を問いただす。
「よく言いますよMさん。我々にミシュマッシュのパトロンを募ったかと思えば、都合が悪くなるとすぐに裏切ってくるのだから。」
俺は思わずアスィールに訊いた。
「アンタはどうなんだ? 俺が憎くないのか? 」
「お互い様だろ台与鬼子。お前から魔具、凛月を奪い取る命令を彼らにしたのは私だ。」
「だがなハムサを殺す命令を君に下したのは、この男だ。」
アスィールはMを睨む
そこに碧野が割って入る。
「まぁまぁ、落ち着いてアスィールさま。今日、僕たちがここに来たのは、憎み口を叩きに来たわけじゃないでしょ。」
「そうそう、貴方たちセル帝国には、私たちに協力してもらわないと。」
聞き覚えのある声。
亜星だ。
彼女はテレパシーを使っていない。
「声」が戻ったから当然だ。
「んで? 俺たちは何をすれば良い? 戦争を止めるために俺たちを呼んだんだろ? 」
亜星はその言葉を聞くと、俺から目を背けた。
Mも、牡丹も、伊桜里も、ドミートリィーも、アルブさんも、そして碧野までも。
そして唯一、アスィールだけが俺をまっすぐ見つめている。
しばらくの沈黙が続いたのち、亜星が口を開いた。
「みんなで話し合った結果。アスィールさんが、戦争を止めるための『魔法術式。』を編んでくれたんだ。」
「発動は神族だった僕がやる。」
『だった。」というのは、彼女が過去にハムサを体に宿していたからだ。
彼女も、ボイド姉妹たちも、同じく神族の力を持っている。
なら彼女が魔法を発動できる可能性もゼロでは無い、試してみる価値はある。
「だがな。この魔法には核がいる。それが無ければ発動できない。」
アスィールは自作の魔法について、スラスラと話し始めた。
「アスィールさん!! 」
亜星がそれを止めに入る。
「もう時間がない。私たちに有用など残されていない。」
「術式の核には英雄の血が必要なんだ。桐生慎二。世界の未来のために、この術式の核になってくれ。」
そこに扉なんて無い。
だが、彼が扉を開けてくれる。
だからここで待っている。
時間よりも10分ばかり早い。
俺は時間を守る方では無かった。
多分罪悪感を感じているのだ。
人間、罪悪感を感じる時、自然と足取りが早くなるものだ。
早くしないと誰かに見つかるかもしれない。
できるだけ不審な動きは早く終わらせておきたい。
そして……
ドアが開いた。
彼女は俺のことを最後まで気にかけてくれていた彼女は
俺はまたアイツを裏切ることになるのか。
* * *
ドアがゆっくりと開かれる。
中から中性的な顔立ちの好青年が俺を、向こう側の世界をのぞいていた。
俺はその青年のデコに指を弾く。
「クリアリングを忘れてんぞ。向こうで刺客が待ち構えていたらどうする? 」
青年はデコを抑えて、倒れ込んだ。
「ごめんよ慎二。そのなんかさ。不安じゃないか。」
気持ちは分かる。
バックドアの仕様上、物体の上にめり込んで扉が開くこともあるし、なんせ向こう側の様子は分からない。
扉で人を弾き飛ばすこともあるだろう。
「慎二が本当に来ているか不安だったんだ。極東でうまくやっているって言ってたからさ。」
どこ情報なんだソレ。
「心配すんな。公務じゃ役に立たなすぎて、とっくにクビになったからよ。」
「でも凛月はちゃんとここにある。銃鬼もな。」
酔っ払いが五階から俺たちを見下ろしている。
「なんだテメェうっへえぞ。」
「慎二、早く。」
俺は牡丹に手招きをされて中
へと入った。
ユグドラシル。
ここは呪具残骸の中だ。
人口呪具、極東の黒い部分が生み出した人間兵器。
それが檜牡丹。
俺はユグドラシルに会うために、木の根元を目指した。
「おーい。お姉さん。久しぶりぃ。」
返事は来ない。
当然だ。
「彼女はもういない。それは当人である君が一番よく分かっていることだろうよ。」
黒服の男がゆっくりとこちらに歩いてくる。
アレから少したりとも変わっていない。
厳格なシワから、白髪の数までそっくりそのままだった。
「Mさん。お久しぶりです。」
「久しぶり。台与鬼子。いや、今は鬼神様と呼ばれているんだってね君は。」
「ええ、おかげさまで。俺が今祭り上げれているのも、アナタたちの協力があってこそですからね。」
「今回は如何様で? 」
Mが手招くと、二人の人影が現れた。
一人はセルの皇帝様アスィールで、もう一人は碧野双薔。
俺は思わず身構えてしまう。
俺はコイツらの計画を無茶苦茶にした張本人であり、彼らの国で祀られている悪魔、ハムサを殺した極悪人であるからだ。
「桐生慎二、そんなに身構えなくても良い。この人たちは、私たちの協力者だよ。昔からね。」
アスィールはその白々しい言葉に呆れたらしく、力のない言葉で彼を問いただす。
「よく言いますよMさん。我々にミシュマッシュのパトロンを募ったかと思えば、都合が悪くなるとすぐに裏切ってくるのだから。」
俺は思わずアスィールに訊いた。
「アンタはどうなんだ? 俺が憎くないのか? 」
「お互い様だろ台与鬼子。お前から魔具、凛月を奪い取る命令を彼らにしたのは私だ。」
「だがなハムサを殺す命令を君に下したのは、この男だ。」
アスィールはMを睨む
そこに碧野が割って入る。
「まぁまぁ、落ち着いてアスィールさま。今日、僕たちがここに来たのは、憎み口を叩きに来たわけじゃないでしょ。」
「そうそう、貴方たちセル帝国には、私たちに協力してもらわないと。」
聞き覚えのある声。
亜星だ。
彼女はテレパシーを使っていない。
「声」が戻ったから当然だ。
「んで? 俺たちは何をすれば良い? 戦争を止めるために俺たちを呼んだんだろ? 」
亜星はその言葉を聞くと、俺から目を背けた。
Mも、牡丹も、伊桜里も、ドミートリィーも、アルブさんも、そして碧野までも。
そして唯一、アスィールだけが俺をまっすぐ見つめている。
しばらくの沈黙が続いたのち、亜星が口を開いた。
「みんなで話し合った結果。アスィールさんが、戦争を止めるための『魔法術式。』を編んでくれたんだ。」
「発動は神族だった僕がやる。」
『だった。」というのは、彼女が過去にハムサを体に宿していたからだ。
彼女も、ボイド姉妹たちも、同じく神族の力を持っている。
なら彼女が魔法を発動できる可能性もゼロでは無い、試してみる価値はある。
「だがな。この魔法には核がいる。それが無ければ発動できない。」
アスィールは自作の魔法について、スラスラと話し始めた。
「アスィールさん!! 」
亜星がそれを止めに入る。
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