平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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ファイル:1 リべレイター・リベリオン

ネズミの尻尾

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 模様柄の大理石。
 起き上がる
 この部屋のテーマは白か。
 鼻を刺す薬品? の刺激臭。
 壁の梁に触れる。
 ここが病院という奴か。
 寝床から起き上がる。
 これがベットというやつか。
 両親が頑丈に産んでくれたこともあって、病院というものとは家族揃って無縁だった。
 それに蝠岡に手錠を解いてもらった後は、能力で擦り傷すらつくことが無かったので、とても新鮮な気持ちだ。
 まぁ今の時代、入院する人間人間自体が少ない。
 交通事故は起こらないし、凶器や銃はユートピアに必要ないとして、ビックファーザーが取り上げてしまった。
 負傷する人間がいるとすれば、裏社会の闘争に巻き込まれて、流れ弾が被弾するか、能力者同士の闘争に巻き込まれるかのどっちかだ。
 俺は立ち上がり、履き物に足を滑らせると、ドアを開けようとした。
「ひいても押しても開かない。」
 スライド式か。
 流石の俺でも、それぐらいの知識はある。
「開かない。」
 俺はドアをドンドン叩いた。
「誰かぁ。誰かいませんかぁ。」

 勢いよくドアが開く、反動で吹っ飛ぶ。
「あいた。」
 尻餅をつく。
 そして、俺の体には再び能力抑制がかかっていることに気づく。
 まぁドアを開けられないところで、大体見当はついていたが。
「おはよう執行者。何かいうことはないかしら。」
 俺は記憶をたどり、何がダメだったのか振り返った。
 そして。
「ああ、蔑ろにしていたのは悪かったよ。ビルに突っ込んだ時点で助けに行くべきだった。」
「そうじゃないでしょ。」
 彼女はそこで一呼吸。
「任務は、失敗したわ。」
 そこで彼女は飛び上がる。
 本能的に危険を感じたい俺は、バックステップで鵞利場を避ける。
 が、彼女の方が一枚上手だった。
 俺の肩に飛び乗ると、両手のゲンコツで頭をグリグリ。
「アガガガががぁ。いや、俺の問題? 流石に一人でリベリオン相手するなんて無理だよ。新入りに求めるもんじゃあない。」
「そうよ。ビックファーザー様は貴方の能力を高く見ていた。だから貴方は死刑にされずに恩赦されたの。」
 ビックファーザー。
 平等社会国際政府中枢大家族同盟 ビック・ファミリア・アライアンスのトップ。
 つまり、この世界の支配者だ。
 噂によれば、身体を機械化し、何百年も生きながらえているらしい。
「煮るなり焼くなり好きにしろよ。」
「貴方は良くても、私は嫌よ。必ず機材は取り返さなきゃ。」
 そうだ、それがビックファーザーの意向でもあったはず。
 だから俺たちは、アソコに派遣されて、骨の折れる難題を押しつけられたわけだ。
「本堂はどこだ? もう、リベリオンを追っているのか? 」
「……ついて来て。」
 彼女にそう言われて、彼女の後ろを追う。
 大男は、隣の部屋で、片足を吊られ、両手を包帯でぐるぐる巻きにされていた!!
 一人奴がいたらしい。
 彼の能力は能力を無効にするだけ。
 ただそれだけで、多少筋力があるだけの、生身の人間である。
 あの速さでビルに突っ込めば、ひとたまりも無いであろう。
「いやー!! してやられた。まざか超音波で私の絶対領域を無効化してくるとはねぇ。」
「困った困った。これじゃ書類の業務もこなせないではないか。」
 そこで鵞利場は上司を気遣うことなく、本題を投げかけた。
「長官。執行者が目を覚ましたので、早速聞き取り調査に向かいます。」
 本堂は俺の方を見た。
「北条クン大丈夫? 一応検査は受けた方が良いんじゃない? 外傷が無かったから、看護ロボットは何もしなかったわけだけど。後遺症ってのは歳を取ってから急に来るから辛いよ? 」
「いえ、お気遣いありがとうございます。慣れてますから。んじゃ行ってくるわ。」
 焦りの見える彼女の後を早足で追う。
 どうやら彼女にも何かアテがあるのだろう。
 知り合いのアウトローやら。
 刑事ドラマで良く見るアレだ。
 病院を出ると、彼女は振り返って、両手を腰に当てると、じっと俺を睨んだ。
「あの、鵞利場さん? 」
 俺は何かしただろうか? 
 ん? これはどういう意図で。
「とぼけんじゃないわよ。あんた裏社会でバットマンに雇われていたんでしょ? 」
 バットマンとは蝠岡の蔑称だ。
 蝙蝠男で悪い男。
 多分そこから来ているんだと思う。
 さて、上司の質問に対する答えだか、俺はリベリオンのことを全くと言って良いほど知らない。
 それは蝠岡の意図的なもので、同業者同士での協定のようなものだ。
 こっちも、あちらのことを詮索しない代わりに、こっちの仕事の邪魔をしないこと。
 んま、俺たちには国際政府という共通の敵がいるので、無駄な争いは避けようっていう魂胆だ。
 故に俺は、リベリオンのトップで、初恋の相手である九条姉さんしか知らなかったわけだ。
「ごめんなさい。全く、期待に応えられなくてすみません。」
 すると彼女はみるみるうちに顔が赤くなり、鬼の形相に変わっていった。
「嘘ついたら手錠しめるけど。良いわね? 」
 あの時の激痛がやってくる。
「アガガガガッ。嘘はついていません。おい、いい加減にしろ、労働監督署に訴えるぞ。」
「果たして能力者の貴方の言葉を、労働監督署の人間が聞き入れてくれるかしらね。」
 俺は流れゆく走馬灯の中で、その場凌ぎの言い訳を思いついた。
「蝠岡とよく通っていた情報屋のバーがある。そこでリベリオンの情報を聞き出せるはずだ。」
「へぇ。」
 手錠の拘束が緩くなる。
 手錠の跡は、前よりも薄くなっていた。
 身体が慣れたのか、それとも彼女が手加減をしてくれていたのか。
「ただし、嘘だったらまた閉めるからね。案内して。」
 俺は記憶をもとに、裏社会のバーを目指した。


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