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ファイル:1 リべレイター・リベリオン
罪人
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「パシャー。」
冷水を頭からかぶり、俺は瞼を上げた。
まだ視界がはっきりしない。
次第に意識が覚醒し、思考を巡らせて、自分が刑事課の人間に捕らえられたことを思い出した。
俺に水をかけた男、もう一人は……腕輪持ち。
スキルホルダーだ。
「おはよう。」
恵比寿のような笑みを浮かべ、俺を見下ろしている真ん中の男。
大麻好大だ。
俺は牢に囚われていた。
そして、入口の鉄格子側に、三人の刑事課の人間が。
俺を見下ろすように並んで立っている。
「モーニングコールです。」
「びっくりですよ。ちょっと尋問を行っただけで、こんなにも早く伸びてしまうなんて。」
左の男が、ペンチを持ち、右のスキルホルダーは、炙った鉄の棒を嗜虐的な笑みを浮かべて、俺に突き立てている。
「次は簡単に気を失わせたりしませんよ。」
そもそも、この男は、なぜ俺を捕らえようと考えたのだろうか?
確かに、あそこで金川たちをほったらかしたのは悪手だったのかも知れないが、地下鉄から彼らを逃したのは刑事課の失態だし、マスターを脅し、俺たちを待つことなく、一人でリベリオンのアジトまで向かい、九条姉さんたちを逃したのは彼らだ。
逆恨みも良いところだろう。
「罪人はみんなそういう顔をするんだよ。『自分は悪くない。』そう言って、他人や、社会、世界に責任転嫁して、自身の正当性を主張する。胸糞悪い奴らだよ。」
「グッ。」
無防備な俺の顔に、大麻の蹴りが飛んでくる。
俺は本能的に両手でそれを守ろうとしたが、両腕は背中で縛られて、身動きが取れない。
「なら、俺は何をしたっていうんだ? 」
彼は俺に書類の束を投げてきた。
<犯罪課の北条力、リベリオンのスパイの疑い。>
一緒に写真も添付されている。
転移装置の端末を弄っている俺が、はっきり映っていた。
「無ければ作れば良い。この社会の国技か…… 」
大麻が左腕を上げると、ペンチを持った部下が、俺の左親指の爪を剥がす。
「ぐっ。」
悲鳴は上げない。
声を上げれば、彼らの思う壺だ。
「君の弁解は聞き飽きたよ。」
「弁明だ。訂正願う。」
彼の眉間に皺が寄る。
この理不尽な状況。俺も黙っているわけにはいかなかった。
「いつまで俺をこうしているつもりだ。俺が憎いか? アンタの許嫁と行動を共にしている俺が? 」
歯軋りが聞こえる。
彼は笑顔を崩さず、必死に堪えているのが見てとれた。
「北条力さん。君にはスパイ容疑がかかっているんだ。君が口を固く閉ざすというのなら、こちらも非人道的な方法に訴えるしか無くなる。」
俺の顔に鉄の棒が押しつけられる。
「ジュッ。」
タンパク質が変異する音だ。
右頬が文字通り焼けるような痛みを発している。
「この質問には無視か。図星だったようだな。」
大麻が豹変する。
「尋問しているのは私なんだよ北条さん。貴方の質問に答える義理は私にはない。」
「私は嫌いなんだよ。ガキ以下の低俗な言葉で他人を煽り、勝手に勝利宣言するゴミどもが。」
刑事課の偉いさんの言葉とはとても思えない。
「オープンチャットのやりすぎじゃないのか? 落ち着けよ。」
「一回目。俺がこの手錠をつけられた時、俺の尋問を担当した奴は……そうだ。笑っていた。楽しそうに俺をなぶっていた。だが今のアンタはどうだ? 怒りを露わにして、尋問っていうモノは愉しむモノなんじゃないのか? なぁそうだろう? 」
「もっと愉しもうぜ。尋問官さんよ。」
彼の顔がひきつく。
「ハハハ、そうだね。君のような能力者に制裁を下せる。またとない機会だ。愉しまなくては。そうだ。その通りだ。」
彼は右隣の熱した鉄棒を持った男を下がらせると、彼に耳元で命を下した。
奥から椅子らしきモノを取ってくる。
恐らく腕輪の力を使い、筋力を上昇させているのだ。
それを俺の隣に落とすと、複数人で俺を囲み、両腕の拘束を解く。
そして、椅子に両手両足を縛り付けた。
「ケツが痛かったんだ。ありがとよ。」
「そう言っていられるのも今のうちだ。」
この椅子は……電気椅子か?
というものの、椅子に電極らしきモノは見つからなかった。
「角度を一気に240°まで上げろ。」
彼がそう指示すると、俺の身体が、反り返る。
なるほど、この拷問器具は人間分度器というわけか。
昔、蝠岡がそんなことを言っていたような気がする。
「さぁ。吐け。お前はリベリオンのスパイだろう。全部話せば楽になる。」
「悪魔の証明だな。俺と奴らが繋がっている証拠なんて一つもない。刑事課ならもっと論理的な立証方法ができるはずだろう? 」
大麻が左腕を上げる。
ペンチを持った部下が、左手の爪を全部剥ぎ取る。
「ぐがぁぁぁぁぁぁ。」
俺は痛みに声を抑えきれなかった。
「おいお前、例のレコーダーをもってこい。」
[自由になりたかったんだ。]
俺と鵞利場との会話、どうやら盗聴されていたらしい。
[自由になりたかったんだ。]
[自由になりたかったんだ。]
[自由になりたかったんだ。]
[自由になりたかったんだ。]
[自由になりたかったんだ。]
「リバティー。リベリオン。これはお前がリベリオンと繋がっている証拠。」
当てつけにも程がある。
「自由になりたい。人間なら誰もが思う、ごく一般的な考え方じゃないのか? 」
彼は首を振って否定する。
「ったく。学のないガキは。『明日は君のためではなく、社会の為にある。』だ。小学校で習うだろう。自由を求めることこそ。未開人である証。犯罪者予備軍だ。」
俺はため息をついた。
「俺は犯罪者だ。」
手を上げることができないので、右手で椅子の肘掛けをトントンと叩く。
手錠。俺が犯罪者である証。
「260°!! 」
大麻の言葉で、俺の身体はさらに反り返る。
背骨がキシキシと音を鳴らし始めた。
もう声を出すことすら難しい。
「なら刑事課という権利を濫用して、俺に拷問を行なっているアンタはどうなんだ? 」
「この拷問は、社会の為じゃない。アンタのための拷問だろう? 」
大麻は目をパチパチさせ、口をパクパク。
それから怒に任せて叫んだ。
「360°!! 奴を半身不随にしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
その刹那、ドアが勢いよく開く。
現れたのは本堂長官と…… 鵞利場だった。
「犯罪者予備軍め。私は悲しいくてしょうがないよ。公安にそのような人間がいることがねえ。」
冷水を頭からかぶり、俺は瞼を上げた。
まだ視界がはっきりしない。
次第に意識が覚醒し、思考を巡らせて、自分が刑事課の人間に捕らえられたことを思い出した。
俺に水をかけた男、もう一人は……腕輪持ち。
スキルホルダーだ。
「おはよう。」
恵比寿のような笑みを浮かべ、俺を見下ろしている真ん中の男。
大麻好大だ。
俺は牢に囚われていた。
そして、入口の鉄格子側に、三人の刑事課の人間が。
俺を見下ろすように並んで立っている。
「モーニングコールです。」
「びっくりですよ。ちょっと尋問を行っただけで、こんなにも早く伸びてしまうなんて。」
左の男が、ペンチを持ち、右のスキルホルダーは、炙った鉄の棒を嗜虐的な笑みを浮かべて、俺に突き立てている。
「次は簡単に気を失わせたりしませんよ。」
そもそも、この男は、なぜ俺を捕らえようと考えたのだろうか?
確かに、あそこで金川たちをほったらかしたのは悪手だったのかも知れないが、地下鉄から彼らを逃したのは刑事課の失態だし、マスターを脅し、俺たちを待つことなく、一人でリベリオンのアジトまで向かい、九条姉さんたちを逃したのは彼らだ。
逆恨みも良いところだろう。
「罪人はみんなそういう顔をするんだよ。『自分は悪くない。』そう言って、他人や、社会、世界に責任転嫁して、自身の正当性を主張する。胸糞悪い奴らだよ。」
「グッ。」
無防備な俺の顔に、大麻の蹴りが飛んでくる。
俺は本能的に両手でそれを守ろうとしたが、両腕は背中で縛られて、身動きが取れない。
「なら、俺は何をしたっていうんだ? 」
彼は俺に書類の束を投げてきた。
<犯罪課の北条力、リベリオンのスパイの疑い。>
一緒に写真も添付されている。
転移装置の端末を弄っている俺が、はっきり映っていた。
「無ければ作れば良い。この社会の国技か…… 」
大麻が左腕を上げると、ペンチを持った部下が、俺の左親指の爪を剥がす。
「ぐっ。」
悲鳴は上げない。
声を上げれば、彼らの思う壺だ。
「君の弁解は聞き飽きたよ。」
「弁明だ。訂正願う。」
彼の眉間に皺が寄る。
この理不尽な状況。俺も黙っているわけにはいかなかった。
「いつまで俺をこうしているつもりだ。俺が憎いか? アンタの許嫁と行動を共にしている俺が? 」
歯軋りが聞こえる。
彼は笑顔を崩さず、必死に堪えているのが見てとれた。
「北条力さん。君にはスパイ容疑がかかっているんだ。君が口を固く閉ざすというのなら、こちらも非人道的な方法に訴えるしか無くなる。」
俺の顔に鉄の棒が押しつけられる。
「ジュッ。」
タンパク質が変異する音だ。
右頬が文字通り焼けるような痛みを発している。
「この質問には無視か。図星だったようだな。」
大麻が豹変する。
「尋問しているのは私なんだよ北条さん。貴方の質問に答える義理は私にはない。」
「私は嫌いなんだよ。ガキ以下の低俗な言葉で他人を煽り、勝手に勝利宣言するゴミどもが。」
刑事課の偉いさんの言葉とはとても思えない。
「オープンチャットのやりすぎじゃないのか? 落ち着けよ。」
「一回目。俺がこの手錠をつけられた時、俺の尋問を担当した奴は……そうだ。笑っていた。楽しそうに俺をなぶっていた。だが今のアンタはどうだ? 怒りを露わにして、尋問っていうモノは愉しむモノなんじゃないのか? なぁそうだろう? 」
「もっと愉しもうぜ。尋問官さんよ。」
彼の顔がひきつく。
「ハハハ、そうだね。君のような能力者に制裁を下せる。またとない機会だ。愉しまなくては。そうだ。その通りだ。」
彼は右隣の熱した鉄棒を持った男を下がらせると、彼に耳元で命を下した。
奥から椅子らしきモノを取ってくる。
恐らく腕輪の力を使い、筋力を上昇させているのだ。
それを俺の隣に落とすと、複数人で俺を囲み、両腕の拘束を解く。
そして、椅子に両手両足を縛り付けた。
「ケツが痛かったんだ。ありがとよ。」
「そう言っていられるのも今のうちだ。」
この椅子は……電気椅子か?
というものの、椅子に電極らしきモノは見つからなかった。
「角度を一気に240°まで上げろ。」
彼がそう指示すると、俺の身体が、反り返る。
なるほど、この拷問器具は人間分度器というわけか。
昔、蝠岡がそんなことを言っていたような気がする。
「さぁ。吐け。お前はリベリオンのスパイだろう。全部話せば楽になる。」
「悪魔の証明だな。俺と奴らが繋がっている証拠なんて一つもない。刑事課ならもっと論理的な立証方法ができるはずだろう? 」
大麻が左腕を上げる。
ペンチを持った部下が、左手の爪を全部剥ぎ取る。
「ぐがぁぁぁぁぁぁ。」
俺は痛みに声を抑えきれなかった。
「おいお前、例のレコーダーをもってこい。」
[自由になりたかったんだ。]
俺と鵞利場との会話、どうやら盗聴されていたらしい。
[自由になりたかったんだ。]
[自由になりたかったんだ。]
[自由になりたかったんだ。]
[自由になりたかったんだ。]
[自由になりたかったんだ。]
「リバティー。リベリオン。これはお前がリベリオンと繋がっている証拠。」
当てつけにも程がある。
「自由になりたい。人間なら誰もが思う、ごく一般的な考え方じゃないのか? 」
彼は首を振って否定する。
「ったく。学のないガキは。『明日は君のためではなく、社会の為にある。』だ。小学校で習うだろう。自由を求めることこそ。未開人である証。犯罪者予備軍だ。」
俺はため息をついた。
「俺は犯罪者だ。」
手を上げることができないので、右手で椅子の肘掛けをトントンと叩く。
手錠。俺が犯罪者である証。
「260°!! 」
大麻の言葉で、俺の身体はさらに反り返る。
背骨がキシキシと音を鳴らし始めた。
もう声を出すことすら難しい。
「なら刑事課という権利を濫用して、俺に拷問を行なっているアンタはどうなんだ? 」
「この拷問は、社会の為じゃない。アンタのための拷問だろう? 」
大麻は目をパチパチさせ、口をパクパク。
それから怒に任せて叫んだ。
「360°!! 奴を半身不随にしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
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