平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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ファイル:1 リべレイター・リベリオン

救援

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「本堂さん。ここは私にお任せを。」
「私に合うのならアポぐらい取って頂かないと。」
 本堂は、大麻たちの部下を殴り飛ばしながら答えた。
「水臭いなぁ。大麻くん。ご近所さんなんだからさ。そういう堅苦しい奴は無しにしようじゃないか。」
 大麻が腕を上げる。
 が、本堂がその前に能力を発動させた。
「《エクステンド》」
絶対領域パーフェクト・レギオン
 スキルホルダーたちの腕輪がスパークする。
 痺れを切らした部下たちが、本堂たちに襲い掛かる。
「好大さん。今回ばかりは、私も許諾しかねますよ。」
「小子、今まで私は、どれだけの事件で君の不祥事を隠蔽し、取り繕ったと思っているんだい? 」
 彼女は嫌悪感を露わにした。
 彼女が彼の前でその表情を見せたのは初めてなのだろう。
 その証拠に、大麻は物凄い剣幕で彼女を睨んでいた。
「自分の許嫁の顔に傷がつくと、自分の評価も下がるからでですよね。」
 彼はそこでハッと我に帰った。
「そんなことないさ。私は君が大事。君のことが好きだから、今まで君を守ってきた。今までも、これからもね。」
 彼女はというと、寒気をおも通り越して、呆れていた。
「よくもまぁ……次から次へと出まかせを。貴方の特技ですね。」
 部下の最後の一人が倒れる。
 大麻はポケットから腕輪を取り出す。
 が、本堂がそれを弾き飛ばした。
「本堂さん。今、私を殴ればどうなるか分かっていますか? 」
「それが能力行使しようとしていた人間の言うことかね? 」
 彼は本堂から一発喰らわされると、そのまま動かなくなった。
「ったく一発で伸びてしまうとは、情けない男だ。そう思うだろ鵞利場くん。」
「仮にでもそのクズは私の許嫁なんです。許嫁を侮辱されて喜ぶ人間がいますか? 」
 本堂は人間分度器を120°まで戻すと、俺の手足の拘束を解いた。
「ありがとうございます。長官。」
「部下の安全を守るのが私の仕事だ。何度も言わせないでくれたまえ。」
「それより、あの、怪我の方は。」
 彼は腕をブンブン回して、快調をアピールした。
「もう治った。鵞利場くんの怪我もね。そりゃそうだ。アレから一週間経ったんだから、骨折だって綺麗にさっぱりこの通りだよ。」
 アレから一週間も?
 せいぜい二日ぐらいだと思っていた。
 俺が思っているより、時間は流れていたらしい。
「なぜここがわかったんですか? 」
 長官は俺の手錠を指差した。
「一瞬だけ、その腕輪がオンラインになったことがあった。奴の無能な部下のお陰で、ここに辿り着くことができたよ。」
 それよりも重要なことがある。
 リベリオンがこの世界を旅立ってから一週間。
 それだけ彼らに猶予を与えてしまった。
 彼らが準備をしているだけならまだいい。
 他所の世界で殺しをやっているかもしれない。
 いや、必ずしている筈だ。彼らなら。
 その世界の軍事力がどれほどのものかは知らないが、それはさほど問題ではない。
 藪蛇というやつだ。
 異世界人が、報復にコチラへとやって来るかもしれない。
 それは何としてでも食い止めたかった。
「長官。リベリオンの方は? 」
「事情は鵞利場くんから聞いている。しかしだね。なかなか賞金稼ぎを動員する許可が降りなかった。」
 そりゃそうだ。
 下手に他世界へと能力者を送り込めば、帰って混乱を招きかねない。
「北条くん? 今からすぐ行けるかね? 」
 爪は剥がれたし、顔はヒリヒリする。
「もちろんです。行きましょう。」
「リベリオンを捕まえに。」
 彼は人差し指と親指で顎を撫でた。
「ほう。様になってきたじゃないか北条クン。これで昇進確定だね。」
 執行者に昇進システムなどない。
 これは彼なりのジョークだろう。
 俺はヨロヨロと立ち上がると、出口を目指した。
 鵞利場が俺に手を伸ばす。
「行きますよ二人とも。善は急げだ。」

 俺たちは地下鉄に乗り、五駅ほどで、例の廃墟へとたどり着いた。
 錆びついた化学工場は変わらずそこに存在している。
 変わったことといえば、入り口に、「keep out」のバリケードテープが追加されたぐらいだ。
 俺たちはそれを潜ると、建物の中に入り、ロフトの機材を見つめる。
 機材は当たり前のようにそこにあった。
「機材は持ち出さなかったんですね。」
 本堂が相槌を打つ。
「運び出せば、またリベリオンみたいな奴らが出かねないからね。それに機材の電源を一度落として、またつければ、どのようなことが起こるかも分からない。二度と彼らの逃げた世界へと辿り着けないかもしれない。だから機材は毅然としてここにあり、今もゲートを開いている。」
 空間にパックリと空いた虚空。
 間違いない。
 彼は俺たちを呼んでいる。
 だから俺はあの時、この狭間に吸い込まれるようにロフトの階段を登ったんだ。
「二人とも、準備はいいかね? 」
「いつでもいいっすよ。」
「大丈夫です長官。」
 俺たちは、せーので裂け目へと入った。
 

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