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ファイル:1 リべレイター・リベリオン
世話係
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ここはカビ臭い地下牢……ではなく、来賓客室だ。
そこで異世界人の人質を匿っているわけである。
鵞利場と宜野座は職務で忙しいので「暇人。」であろう俺が監視役兼、世話係となっているわけだが……
「おい、朝食だ。食え。」
「いらない!! 」
彼女はそっぽを向いた。
手錠が閉まる。
「アガガガ、頼む。朝食食べてくれ。いや、食べて下さい。アンタの健康状態が悪くなると、俺が殺されちまう。」
「死ねば良いでしょアンタなんかッ!! 」
女ってなんでこんな奴ばっかりなんだ。
まぁ敵意を持つのも無理は無い。
なんの前触れもなく俺たちに拉致されて、この狭い小部屋に押し込まれた訳なんだから。
「私をここから出して!! 」
俺が彼女を逃しても、ここのセキュリティがそれを許さない。
いや、そういう意味では無いのだと思う。
「悪い。上層部の人間はまだしも、本堂長官も鵞利場も、悪気があってアンタにこんなことしているわけでは無いんだ。今もアンタのために最善を尽くしている。」
彼女は地団駄を踏んでプースカ怒っている。
「じゃあなんでこんなことするのよ!! 」
アンタを人質に取ることによって、平等社会による侵略と、戦争を未然に防ごうとしているなんて口が裂けても言えない。
彼女にも、盗聴器で俺たちの会話を盗み聞きしているキャツらにも。
「今は話せない。」
異世界人を、人質に取るということには未だに納得できないが、戦争を防ぎたいという気持ちは同じだった。
俺は両膝をつくと、彼女の目の前で額を擦り付けた。
「本当にすまない。こんなことをしてしまって。自分でもどうすれば良いか分からなかったんだ。」
すると彼女は慌てて手を振った。
「ちょっとやめてよ。分かった大人しくしているから。」
分からないことだらけだ。
異世界と平等社会の問題だけでは無い。
先の能力者についての問題にしても、一体問題、何が正解なのか、学のない俺には分からなかった。
本堂や鵞利場は俺より賢いし、教養がある。
だけど俺は、今のこの状況に納得できなかった。
彼女が俺の腕を指差す。
「なんでアンタ手錠をつけているのかしら? 見たところ悪人じゃ無いみたいだけど。」
能力者を縛る鎖。俺はその問いに答えた。
「『悪人』だからだ。俺は悪い奴だからこうなっているんだよ。」
彼女はその言葉にあまり興味を示さなかった。
「ふーん何をしたの? 」
予想外の問いだった。何をしたの? 確かに俺は裏社会で暗躍するアウトローではあったが、彼女は俺が能力者であるかそうで無いかを問う事はなく、ただ俺が犯した行為のみを純粋に、無意識に問いを投げかけてきた。」
俺が口を開けてフリーズしていると、彼女が申し訳なさそうな顔で
「ごめんなさい。無神経だったかしら。」
と答えた。
「いや、そういうわけじゃない。ちょっとびっくりしただけだよ。裏社会で悪いことをしていた。だから手錠をつけられているんだ。」
「私そういうの知っているわよ。ヤクザって言うんでしょ。」
この世界にも暴力団は存在する。
が、蝠岡も割田もそう言う人間ではなかった……と思う。
「いや、ちょっと違う…かな? 」
今度は俺が彼女に聞きたいことがあった。
「アンタは能力者なのか? 」
彼女はパンを手に取ると、ひと齧り、問いに答えた。
「能力者? ナニソレ? まぁ私は極東の契約者で炭素を操るカーボニックマスターなんだけどね。」
契ぃ約者?聞いたことが無い言葉だ。それも当然だ。
異世界の彼らは、平等社会で禁止されている武器を使っていたし、我々の理解できない能力を発現させていた。
だが長官の絶対領域に反応していたところ、彼女も能力者なのであろう。
「逆にアンタは契約者? なのに手錠をつけていないんだな。」
彼女は首を傾げた。
「面白いこと言うのね。悪いことしていないのに、なんで手錠をつけないといけないのよ。」
予想外の回答だった。
そこで俺は理解する。
この女の世界じゃ無能力者と能力者に隔たりが無いんだ。
蝠岡の思想が少し理解できた気がした。
彼は俺たちを救おうとしてくれていたんだ。
リベリオンとは違うやり方で。
能力者と無能力者の終わらない応酬を終わらせるために。
俺は異世界の人間たちをもっと知りたくなった。
俺たちを畏怖しない彼女たちを。
何を食べて、どのような能力があり、どのような人間たちが暮らしているのか?
[ブー!! ]
「えっ? ちょっと何? 」
俺を監視していた人間たちがブザーを押したのだろう。
手錠から高電圧の低電流が流れ、俺は気を失う。
理由は簡単だ。
「彼女と話すことで、俺に反抗心が芽生えた。」そう考えた監視員が俺を危険人物と見なし処分した。
彼女の悲鳴が遠のいていく。
恐らく黒服たちに取り押さえられているのだろう。
だが俺にはどうすることも出来なかった。
立てない、能力も使えない。
俺にできることは何もない。
後日、俺は異世界人の監視役から任を解かれた。
今は代わりに鵞利場が雇った侍女が身の回りの世話をしているらしい。
そこで異世界人の人質を匿っているわけである。
鵞利場と宜野座は職務で忙しいので「暇人。」であろう俺が監視役兼、世話係となっているわけだが……
「おい、朝食だ。食え。」
「いらない!! 」
彼女はそっぽを向いた。
手錠が閉まる。
「アガガガ、頼む。朝食食べてくれ。いや、食べて下さい。アンタの健康状態が悪くなると、俺が殺されちまう。」
「死ねば良いでしょアンタなんかッ!! 」
女ってなんでこんな奴ばっかりなんだ。
まぁ敵意を持つのも無理は無い。
なんの前触れもなく俺たちに拉致されて、この狭い小部屋に押し込まれた訳なんだから。
「私をここから出して!! 」
俺が彼女を逃しても、ここのセキュリティがそれを許さない。
いや、そういう意味では無いのだと思う。
「悪い。上層部の人間はまだしも、本堂長官も鵞利場も、悪気があってアンタにこんなことしているわけでは無いんだ。今もアンタのために最善を尽くしている。」
彼女は地団駄を踏んでプースカ怒っている。
「じゃあなんでこんなことするのよ!! 」
アンタを人質に取ることによって、平等社会による侵略と、戦争を未然に防ごうとしているなんて口が裂けても言えない。
彼女にも、盗聴器で俺たちの会話を盗み聞きしているキャツらにも。
「今は話せない。」
異世界人を、人質に取るということには未だに納得できないが、戦争を防ぎたいという気持ちは同じだった。
俺は両膝をつくと、彼女の目の前で額を擦り付けた。
「本当にすまない。こんなことをしてしまって。自分でもどうすれば良いか分からなかったんだ。」
すると彼女は慌てて手を振った。
「ちょっとやめてよ。分かった大人しくしているから。」
分からないことだらけだ。
異世界と平等社会の問題だけでは無い。
先の能力者についての問題にしても、一体問題、何が正解なのか、学のない俺には分からなかった。
本堂や鵞利場は俺より賢いし、教養がある。
だけど俺は、今のこの状況に納得できなかった。
彼女が俺の腕を指差す。
「なんでアンタ手錠をつけているのかしら? 見たところ悪人じゃ無いみたいだけど。」
能力者を縛る鎖。俺はその問いに答えた。
「『悪人』だからだ。俺は悪い奴だからこうなっているんだよ。」
彼女はその言葉にあまり興味を示さなかった。
「ふーん何をしたの? 」
予想外の問いだった。何をしたの? 確かに俺は裏社会で暗躍するアウトローではあったが、彼女は俺が能力者であるかそうで無いかを問う事はなく、ただ俺が犯した行為のみを純粋に、無意識に問いを投げかけてきた。」
俺が口を開けてフリーズしていると、彼女が申し訳なさそうな顔で
「ごめんなさい。無神経だったかしら。」
と答えた。
「いや、そういうわけじゃない。ちょっとびっくりしただけだよ。裏社会で悪いことをしていた。だから手錠をつけられているんだ。」
「私そういうの知っているわよ。ヤクザって言うんでしょ。」
この世界にも暴力団は存在する。
が、蝠岡も割田もそう言う人間ではなかった……と思う。
「いや、ちょっと違う…かな? 」
今度は俺が彼女に聞きたいことがあった。
「アンタは能力者なのか? 」
彼女はパンを手に取ると、ひと齧り、問いに答えた。
「能力者? ナニソレ? まぁ私は極東の契約者で炭素を操るカーボニックマスターなんだけどね。」
契ぃ約者?聞いたことが無い言葉だ。それも当然だ。
異世界の彼らは、平等社会で禁止されている武器を使っていたし、我々の理解できない能力を発現させていた。
だが長官の絶対領域に反応していたところ、彼女も能力者なのであろう。
「逆にアンタは契約者? なのに手錠をつけていないんだな。」
彼女は首を傾げた。
「面白いこと言うのね。悪いことしていないのに、なんで手錠をつけないといけないのよ。」
予想外の回答だった。
そこで俺は理解する。
この女の世界じゃ無能力者と能力者に隔たりが無いんだ。
蝠岡の思想が少し理解できた気がした。
彼は俺たちを救おうとしてくれていたんだ。
リベリオンとは違うやり方で。
能力者と無能力者の終わらない応酬を終わらせるために。
俺は異世界の人間たちをもっと知りたくなった。
俺たちを畏怖しない彼女たちを。
何を食べて、どのような能力があり、どのような人間たちが暮らしているのか?
[ブー!! ]
「えっ? ちょっと何? 」
俺を監視していた人間たちがブザーを押したのだろう。
手錠から高電圧の低電流が流れ、俺は気を失う。
理由は簡単だ。
「彼女と話すことで、俺に反抗心が芽生えた。」そう考えた監視員が俺を危険人物と見なし処分した。
彼女の悲鳴が遠のいていく。
恐らく黒服たちに取り押さえられているのだろう。
だが俺にはどうすることも出来なかった。
立てない、能力も使えない。
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後日、俺は異世界人の監視役から任を解かれた。
今は代わりに鵞利場が雇った侍女が身の回りの世話をしているらしい。
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