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ファイル:4火星の叛逆者
火星へ
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円錐状の鉄の塊が、地上から打ち出される。
凄まじいGが体にかかっているのが分かった。
立っているのも辛い。
しばしの間、さらば地球。
俺は初めて、自分の星から飛び立った。
鈍色に染まりつつあるアノ蒼い監獄を………
月を横切り、金星を超えていく。
「ところで、今回の仕事は? 」
「リベリオンが暗躍しているっていう噂。火星の犯罪者たちをまとめて、平等社会に反旗を翻そうとしているみたい。」
「そのためのテロを未然に防ぐのが私達の役目。」
「なんだって!! 」
そんな、おかしい。金川も玉鉄も、公安に捕まったんじゃ?
「二人とも脱錠したわ。オブザーバーが彼らのから一瞬目を離した隙にね。」
「なんでそれを早く言わないんだ!! 」
「聞かなかったのはアンタでしょ。」
「こうしちゃいられない。早く火星に行かないと。」
俺の右脚を、鵞利場がガッチリ捉える。
「ちょっと待ちなさい。アナタ、火星がどんなところか知っている? 」
「そんなことはどうでも良い。」
「これだから……ちょっと落ち着きなさい。火星に着くまであと五分あるわ。それまでに私の話を聞いて。」
俺は地面にあぐらをかいて座り込んだ。
「良い? 火星は監獄。無能力者や、能力の脅威が無いと認定された犯罪者たちが、あそこで共同生活しているの。」
そうだ。重罪を犯したモノは平等社会のラストプリズンに送られる。
つまり火星に送られてくるのは…….
つまり豚箱ならぬゴミ箱というわけか、あまり良い気がしない。
あの世界は人間の公平を歌っておきながら、能力者や犯罪者を選別しているのだ。
「そこに公安の人間が入ってきたとなったらどうなる? 」
それぐらい俺にも分かった。
なるほどなぁ。上の連中はコトを大きくしたく無いと。
「そうよ。だから私たちは、監獄内の協力者と面会するという名目で、火星に入ることになっている。」
「誰だ、その相手は? オマエの父ちゃんか? 」
「えーとね。私達の一番上のお兄さんってことになっている。」
「そんな上手くいくもんかね。」
そして彼女から一枚のデジタルデータが転送される。
「あまり周りに見られないように。」
「分かった。」
偽造パスポートだ。パスポートにはしっかり俺の偽造された名前と、家族構成が記入されていた。
「俺は……鵞利場のお兄さん!?」
「シーっ。勘づかれるでしょ。その方が自然なのよ。」
俺は演技派じゃ無いから、上手くいくか分からないな。
そう考えていると。
[まもなく火星。火星デス。衝撃に備えてクダサイ。]
船はどうやら火星についたようだった。
「行こう? 兄さん。」
鵞利場に手を引かれて、俺も船を降りる。
受付で身体チェックを受けてから、荷物にも、無事危険物がないことが確認されて、俺たちは入国管理官の元へと向かった。
「どうした? 若い男女が、こんなカビ臭え場所によ。土星はあっちだぞ。乗る船間違えたんじゃねえだろうな? 」
経歴のありそうな初老のおじさんが、俺たちに質問した。
「そう……見えますぅ? 」
鵞利場が頬に手を当てて赤らめている。
彼女は役に立ちそうにないので、代わりに俺が答えた。
「久しぶりに休暇が取れたので、ここにぶち込まれているアニキに会いにきたんですよ。ここの妹と一緒に。」
「そりゃそりゃ。よく来たな。オマエらの兄さんも喜ぶぞ。早く釈放されると良いな。」
ヨシ。掴みは良かった。
「ところでよ、あんちゃん。オマエの腕のそれ、能力者だろう? 妹は無能力者なのかい? 」
俺はそこでわざとタメを入れた。
「はい。複雑な家庭なんです。僕だけおかしな力が身体に宿っちゃったみたいで。」
「そうか、そりゃ悪かったな詮索しないでおくよ。」
入国管理官はそれから、屈むと、鵞利場の方を見た。
「なぁ可愛い嬢ちゃん。捕まっている兄さんの名前を教えてくれるかな? 」
「するぅめぇじゃこふ。」
彼は耳に手を当てる。
「最近、耳が遠くなってね。もう一度言ってくれるかな? 」
俺がそこに割って入った。
「彼女にはまだ発音するのが難しかったかもしれません。」
「スルメジャコフです。とても腕の立つ料理人でした。いつも僕達に美味しいご飯を作ってくれていたんですよ。」
入国管理官は首を傾げながら、さらに質問を続ける。
「なぁ。聞きにくいんだけどよ。」
「なんですか? 」
俺はもう彼に何を聞かれるか分かっていた。
隠す必要はない。
洗いざらい、その男に対するニセの情報を提供するだけだ。
「兄は……父を殺したことで火星に送られてしまったんです。」
なんか重くね?
「パパね。気に入らないことがあると、すぐに私やお兄ちゃんたちを殴っていたの。あの時も…… 」
入国管理官は慌てて手を振った。
「いやいや嬢ちゃん悪かったね。これ以上は聞かないでおくよ。」
やれやれ、なんとか切り抜けることが出来た。
心臓に悪いな。
「オマエら、行ってこい。兄弟思いのスルメジャコフの元へ。」
彼は涙ぐみながら俺たちを通してくれた。
空港を出たあと、俺は鵞利場に気になることがあって質問した。
「スルメジャコフは兄貴じゃなくて、使用人じゃないのか? 」
「長男が監獄にぶち込まれると、後味悪いでしょ? 」
それもそうだ。法は万人に対して平等であるべきだからな。
「さぁスルメジャコフさんの元へと向かいましょう。」
俺たちは監獄へと向かった。
凄まじいGが体にかかっているのが分かった。
立っているのも辛い。
しばしの間、さらば地球。
俺は初めて、自分の星から飛び立った。
鈍色に染まりつつあるアノ蒼い監獄を………
月を横切り、金星を超えていく。
「ところで、今回の仕事は? 」
「リベリオンが暗躍しているっていう噂。火星の犯罪者たちをまとめて、平等社会に反旗を翻そうとしているみたい。」
「そのためのテロを未然に防ぐのが私達の役目。」
「なんだって!! 」
そんな、おかしい。金川も玉鉄も、公安に捕まったんじゃ?
「二人とも脱錠したわ。オブザーバーが彼らのから一瞬目を離した隙にね。」
「なんでそれを早く言わないんだ!! 」
「聞かなかったのはアンタでしょ。」
「こうしちゃいられない。早く火星に行かないと。」
俺の右脚を、鵞利場がガッチリ捉える。
「ちょっと待ちなさい。アナタ、火星がどんなところか知っている? 」
「そんなことはどうでも良い。」
「これだから……ちょっと落ち着きなさい。火星に着くまであと五分あるわ。それまでに私の話を聞いて。」
俺は地面にあぐらをかいて座り込んだ。
「良い? 火星は監獄。無能力者や、能力の脅威が無いと認定された犯罪者たちが、あそこで共同生活しているの。」
そうだ。重罪を犯したモノは平等社会のラストプリズンに送られる。
つまり火星に送られてくるのは…….
つまり豚箱ならぬゴミ箱というわけか、あまり良い気がしない。
あの世界は人間の公平を歌っておきながら、能力者や犯罪者を選別しているのだ。
「そこに公安の人間が入ってきたとなったらどうなる? 」
それぐらい俺にも分かった。
なるほどなぁ。上の連中はコトを大きくしたく無いと。
「そうよ。だから私たちは、監獄内の協力者と面会するという名目で、火星に入ることになっている。」
「誰だ、その相手は? オマエの父ちゃんか? 」
「えーとね。私達の一番上のお兄さんってことになっている。」
「そんな上手くいくもんかね。」
そして彼女から一枚のデジタルデータが転送される。
「あまり周りに見られないように。」
「分かった。」
偽造パスポートだ。パスポートにはしっかり俺の偽造された名前と、家族構成が記入されていた。
「俺は……鵞利場のお兄さん!?」
「シーっ。勘づかれるでしょ。その方が自然なのよ。」
俺は演技派じゃ無いから、上手くいくか分からないな。
そう考えていると。
[まもなく火星。火星デス。衝撃に備えてクダサイ。]
船はどうやら火星についたようだった。
「行こう? 兄さん。」
鵞利場に手を引かれて、俺も船を降りる。
受付で身体チェックを受けてから、荷物にも、無事危険物がないことが確認されて、俺たちは入国管理官の元へと向かった。
「どうした? 若い男女が、こんなカビ臭え場所によ。土星はあっちだぞ。乗る船間違えたんじゃねえだろうな? 」
経歴のありそうな初老のおじさんが、俺たちに質問した。
「そう……見えますぅ? 」
鵞利場が頬に手を当てて赤らめている。
彼女は役に立ちそうにないので、代わりに俺が答えた。
「久しぶりに休暇が取れたので、ここにぶち込まれているアニキに会いにきたんですよ。ここの妹と一緒に。」
「そりゃそりゃ。よく来たな。オマエらの兄さんも喜ぶぞ。早く釈放されると良いな。」
ヨシ。掴みは良かった。
「ところでよ、あんちゃん。オマエの腕のそれ、能力者だろう? 妹は無能力者なのかい? 」
俺はそこでわざとタメを入れた。
「はい。複雑な家庭なんです。僕だけおかしな力が身体に宿っちゃったみたいで。」
「そうか、そりゃ悪かったな詮索しないでおくよ。」
入国管理官はそれから、屈むと、鵞利場の方を見た。
「なぁ可愛い嬢ちゃん。捕まっている兄さんの名前を教えてくれるかな? 」
「するぅめぇじゃこふ。」
彼は耳に手を当てる。
「最近、耳が遠くなってね。もう一度言ってくれるかな? 」
俺がそこに割って入った。
「彼女にはまだ発音するのが難しかったかもしれません。」
「スルメジャコフです。とても腕の立つ料理人でした。いつも僕達に美味しいご飯を作ってくれていたんですよ。」
入国管理官は首を傾げながら、さらに質問を続ける。
「なぁ。聞きにくいんだけどよ。」
「なんですか? 」
俺はもう彼に何を聞かれるか分かっていた。
隠す必要はない。
洗いざらい、その男に対するニセの情報を提供するだけだ。
「兄は……父を殺したことで火星に送られてしまったんです。」
なんか重くね?
「パパね。気に入らないことがあると、すぐに私やお兄ちゃんたちを殴っていたの。あの時も…… 」
入国管理官は慌てて手を振った。
「いやいや嬢ちゃん悪かったね。これ以上は聞かないでおくよ。」
やれやれ、なんとか切り抜けることが出来た。
心臓に悪いな。
「オマエら、行ってこい。兄弟思いのスルメジャコフの元へ。」
彼は涙ぐみながら俺たちを通してくれた。
空港を出たあと、俺は鵞利場に気になることがあって質問した。
「スルメジャコフは兄貴じゃなくて、使用人じゃないのか? 」
「長男が監獄にぶち込まれると、後味悪いでしょ? 」
それもそうだ。法は万人に対して平等であるべきだからな。
「さぁスルメジャコフさんの元へと向かいましょう。」
俺たちは監獄へと向かった。
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