66 / 107
ファイル:4火星の叛逆者
九条念
しおりを挟む
彼女はそこに屹立していた。
俺を待っていたのだ。
俺は彼女の前で倒れている鵞利場を抱き抱えた。
大丈夫だ息はある。
「彼女を殺さないでいてくれたことは感謝する。」
そうだ。ねえやんほどの能力者になれば、鵞利場を一捻りするだけで、殺すにとどまらず、肉片に変えることだってできる。
彼女は不貞腐れた顔で明後日の方向を向いている。
「何度も言うように、私はオマエを苦しめるためにこんな事をしているわけじゃ無いんだぞ。」
能力者の解放。
それが彼女たちの目的だ。
「なぁ。北条。今はその女が気を失っているし、手首の枷も機能していない。」
「もう一度聞く。オマエもリベリオンにならないか? 」
「ごめんな。」
答えは決まっていた。
だがその先の言葉が出てこない。
「もういいよ。分かった。その先は言わなくて良い。」
「私はもう行くよ。そこをどいてくれ。」
「断る。」
俺は彼女の言葉を塞ぎ。
彼女の行くべき道を塞いだ。
「俺はねえやんにこれ以上罪を重ねて欲しくない。だからここで止める。今度こそ。」
彼女は漢の目になった。
「私は前に言ったな。たとえオマエであろうと、私の邪魔をするなら容赦はしないと。」
「どいてくれリベリオンが待っている。」
俺はその覇気に気押される。どうして? なぜ?
俺は心を抑えきれず彼女に当たるように言葉を吐き捨てた。
「なぜ!! なんでそんな事をするんだ? どうして戦争なんて起こさないと行けないんだ? もし……もし能力者たちがこの戦争に勝ってどうなる? 歴史が後退する……いや、繰り返すだけだ。今度もまた暴力が人間を支配する時代が来るだけだ。」
目の前の漢は不敵に笑った。
「オマエも気がついているだろう? 今の世界は間違っている。平等などと言う理想とはかけ離れた魅惑の言葉で、虐げられている人間たちがいる。」
「救世主が必…要だ。」
「彼らを救うための大罪人が。」
「なら、ねえやんがやる必要なんてないじゃ無いか!! なんでねえやんがそんな汚れ役を買わないといけないんだ。」
「オマエがやらないから!! だから私が代わりにやっている。オマエには、虐げられている哀れな人間たち……能力者を救えるほどの力がある。それなのに!! 」
それから彼女は鵞利場の方を見た。
「そうだ。この女だ。全部この女のせいなんだろ。オマエがそんなふうになってしまったのは。」
「私がこの女をなぜ生かしているのかは、分かるか? 」
「ねえやんが良い人なのは俺が一番よく知っているよ。だから彼女は殺さない。」
「いや、殺したいぐらいに憎いさ。この女が。オマエのことなんて何にも知らないくせに、何食わぬ顔でオマエの横を歩いているこの女が。オマエを好きに連れ回して振り回すこの女が。」
「オマエの隣にいるべきは私なんだ。」
激情して今にも彼女に手にかけようとしている。
俺は彼女の腕を掴んで能力で縛り上げる。
「やっと私の手を取ってくれたな。ああ、冗談さ。この女は殺さない。」
「だって。救うべき存在の中には……オマエも含まれているのだから。」
俺は理解した。この女もベルフェさんと同じだ。
勝手に俺を「救」おうとしている。
「今すぐにオマエをこの女から……世界から解放してやる。」
「そうすれば、また幼い頃見たいに笑ってくれるだろ? 」
俺は彼女の手を振り解いた。
「どうやら……『アンタ』も引けないみたいだな。」
「なら力ずくで止めるまでだ。」
彼女は身体を構えた。
この構えは、紛れもなく天眼流の構え。
俺も天岩流を放つために、姿勢を低くした。
「変わったなオマエも。まずは毒抜きからか。」
幼い頃……強い姉に従順だった都合の良い少年はもう居ない。
今ここに居るのは、公安の執行者として、テロリストの検挙に精を出す北条家の盾、北条力だ。
「俺は……俺は昔から何も変わっていないさ。むしろ変わったのはアンタの方だろ。昔の優しい姉さんに戻ってくれ。」
「そういや……私たち喧嘩なんてしたこと無かったな。」
「蝠岡の作った機械の時は、周りの幹部たちに邪魔をされたからな。コレで心置き無くアンタを殴り飛ばせるよ。」
俺たちは同時に火星の地を蹴った。
【天眼流】【天岩流】
【弐ノ拳ぃ】【弐ノ岩ぁ】
【翡翠】【穿石】
二つのエゴがぶつかり、その衝撃が地球に戦争の火蓋が切られた事を知らせる。
俺を待っていたのだ。
俺は彼女の前で倒れている鵞利場を抱き抱えた。
大丈夫だ息はある。
「彼女を殺さないでいてくれたことは感謝する。」
そうだ。ねえやんほどの能力者になれば、鵞利場を一捻りするだけで、殺すにとどまらず、肉片に変えることだってできる。
彼女は不貞腐れた顔で明後日の方向を向いている。
「何度も言うように、私はオマエを苦しめるためにこんな事をしているわけじゃ無いんだぞ。」
能力者の解放。
それが彼女たちの目的だ。
「なぁ。北条。今はその女が気を失っているし、手首の枷も機能していない。」
「もう一度聞く。オマエもリベリオンにならないか? 」
「ごめんな。」
答えは決まっていた。
だがその先の言葉が出てこない。
「もういいよ。分かった。その先は言わなくて良い。」
「私はもう行くよ。そこをどいてくれ。」
「断る。」
俺は彼女の言葉を塞ぎ。
彼女の行くべき道を塞いだ。
「俺はねえやんにこれ以上罪を重ねて欲しくない。だからここで止める。今度こそ。」
彼女は漢の目になった。
「私は前に言ったな。たとえオマエであろうと、私の邪魔をするなら容赦はしないと。」
「どいてくれリベリオンが待っている。」
俺はその覇気に気押される。どうして? なぜ?
俺は心を抑えきれず彼女に当たるように言葉を吐き捨てた。
「なぜ!! なんでそんな事をするんだ? どうして戦争なんて起こさないと行けないんだ? もし……もし能力者たちがこの戦争に勝ってどうなる? 歴史が後退する……いや、繰り返すだけだ。今度もまた暴力が人間を支配する時代が来るだけだ。」
目の前の漢は不敵に笑った。
「オマエも気がついているだろう? 今の世界は間違っている。平等などと言う理想とはかけ離れた魅惑の言葉で、虐げられている人間たちがいる。」
「救世主が必…要だ。」
「彼らを救うための大罪人が。」
「なら、ねえやんがやる必要なんてないじゃ無いか!! なんでねえやんがそんな汚れ役を買わないといけないんだ。」
「オマエがやらないから!! だから私が代わりにやっている。オマエには、虐げられている哀れな人間たち……能力者を救えるほどの力がある。それなのに!! 」
それから彼女は鵞利場の方を見た。
「そうだ。この女だ。全部この女のせいなんだろ。オマエがそんなふうになってしまったのは。」
「私がこの女をなぜ生かしているのかは、分かるか? 」
「ねえやんが良い人なのは俺が一番よく知っているよ。だから彼女は殺さない。」
「いや、殺したいぐらいに憎いさ。この女が。オマエのことなんて何にも知らないくせに、何食わぬ顔でオマエの横を歩いているこの女が。オマエを好きに連れ回して振り回すこの女が。」
「オマエの隣にいるべきは私なんだ。」
激情して今にも彼女に手にかけようとしている。
俺は彼女の腕を掴んで能力で縛り上げる。
「やっと私の手を取ってくれたな。ああ、冗談さ。この女は殺さない。」
「だって。救うべき存在の中には……オマエも含まれているのだから。」
俺は理解した。この女もベルフェさんと同じだ。
勝手に俺を「救」おうとしている。
「今すぐにオマエをこの女から……世界から解放してやる。」
「そうすれば、また幼い頃見たいに笑ってくれるだろ? 」
俺は彼女の手を振り解いた。
「どうやら……『アンタ』も引けないみたいだな。」
「なら力ずくで止めるまでだ。」
彼女は身体を構えた。
この構えは、紛れもなく天眼流の構え。
俺も天岩流を放つために、姿勢を低くした。
「変わったなオマエも。まずは毒抜きからか。」
幼い頃……強い姉に従順だった都合の良い少年はもう居ない。
今ここに居るのは、公安の執行者として、テロリストの検挙に精を出す北条家の盾、北条力だ。
「俺は……俺は昔から何も変わっていないさ。むしろ変わったのはアンタの方だろ。昔の優しい姉さんに戻ってくれ。」
「そういや……私たち喧嘩なんてしたこと無かったな。」
「蝠岡の作った機械の時は、周りの幹部たちに邪魔をされたからな。コレで心置き無くアンタを殴り飛ばせるよ。」
俺たちは同時に火星の地を蹴った。
【天眼流】【天岩流】
【弐ノ拳ぃ】【弐ノ岩ぁ】
【翡翠】【穿石】
二つのエゴがぶつかり、その衝撃が地球に戦争の火蓋が切られた事を知らせる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ガチャから始まる錬金ライフ
あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。
手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。
他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。
どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。
自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
四人の令嬢と公爵と
オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」
ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。
人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが……
「おはよう。よく眠れたかな」
「お前すごく可愛いな!!」
「花がよく似合うね」
「どうか今日も共に過ごしてほしい」
彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。
一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。
※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる