平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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ファイル:4火星の叛逆者

錬金術師

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「オイ、もう終わりかテメーら。」
 嗜虐的な声が、辺り一体に反響している。
 間違いなく奴だ。
 やっぱり宜野座さんは優秀だ、この状況で敵の位置を正確に把握するなんて。
『奴ら』の顔は見えない。
 彼らも俺たちが能力者のデータベースを持っていることに知っている。
 だからリベリオンの人間たちは、みんな頭にカボチャをかぶっていた。
 誰がどの能力者か分からないようにするために。
。」
 彼がジャコランタン越しに俺の方を見た。
「しねえや。」
 一人のパイロキネシストが俺の方へ向けて火の玉を放ってくる。
 俺はそれを能力で防ぎ、握り潰した。
「オイ、お前ら辞めろ。」
 彼は頭のジャコランタンを脱ぎ捨てて俺を見上げる。
 それから足元の公安手帳である端末を砕いた。
 それと同時に、俺の端末が圏外になる。
「別に構わない。続けてくれ。」
「ほう、何処やん時とはまるで覇気が違うな。別人みたいだ。」
 彼から放たれたその言葉はあまりにも滑稽だった。
「変わったのはお前の方だろう。」
「そんなに子分を引き連れて。」
「棟梁ってのはお前の柄じゃない気がするが。」
 彼はその言葉を聞くと、クククと笑い、俺を指差す。
「俺を理解したような気になってよ。ムカつくところは変わらねえな。」
 彼は自分のやり場のない怒りをどこかにぶつけるような、そんな奴だと思っていた。
 だから、こんなふうに子分を引き連れて、平等社会には向かおうとしていることが驚きだったのだ。
「俺みたいに強え奴は良いんだ。」
「でもな。コイツらは万城みたいな非力な奴は、自分で居場所を作ることすら出来ねえ。だからな俺は…… 」
「まぁ良いや。こんなセリフ俺の柄じゃねえしなぁ。」
 彼が目の前に瞬間移動する。
 物質の分解と再構築。
 彼の魂が一瞬で引っ張られるのを見た。
 身体が出来る前、一瞬の隙がある。
 ベルフェさんや九条よりも全然遅い。
 俺は彼の右手を左手で掴むと、払いのけ、はたき落とす。
流星一閃メテオ・ストライク
 そのまま彼を地上にはたき落とした。
「ところで九条は? 」
 俺に向けて無数の能力が撃ち付けられる。
 それをバリアーで防いでから、再び彼の顔を殴る。
「今、てめえとカチ合ってんのはこの俺だろうがぁ。」
 手が鋼材に変化し、俺の右肩を抉る。
 俺は抉れた部分を次元ごとくっつける。
「なるほど、こういう使い方も出来るのか。」
「お前の能力は、敵の攻撃を防ぐ能力だろうが!! なんでバケモンみたいなことをしてんだよ!! 」
 俺に向けて極太のレーザー砲が至近距離で打ち出される。
 俺は能力を使い、次元を自分の真っ二つに分けた。
 俺の半身から、漆黒の無が除いている。
 レイザー砲が、無に喰われる。
 やがて世界の修正力が働き、俺の身体は元通りになった。
「テメェも九条と同じだな。使っている内に能力を変幻させやがった。」
「俺が、九条姉さんみたいに、能力を発現させることなんて出来るはずが無いじゃないか。」
 俺は、取り巻きが飛ばしてきている能力を空間操作で一点に集める。
「オイ、お前ら、やめろ!! 」
「無駄だ。空間と一緒に可視光線も歪んでいる。俺の姿は彼らには見えないよ。」
「クソッタレぇ!! 」
 彼の背中から純白の翼が生えた。
「オメエらばっかり強くなりやがって!! 」
「俺様は摩天楼の錬金術師。金川練華だ!! 」
【ショック・オブ・ラウンド】
 俺の拳に込められた彼らのエネルギーが、奴の両翼へと直撃する。
 燃えるような熱さ。
 彼の翼から放たれる熱線は、この世の物質では無かった。
 どこか他の世界の未知なる物質。
 俺にまとわりつく純白のそれが、拳から肩に伝ってくる。
「このままじゃ周りの奴らも巻き込むぞ。」
「そうなって困るのは、アンタも同じはずだ。」
「チクショ!! 卑怯な奴め!! 」
 俺と彼とで、エネルギーが放出されるのを防いだ。
 視界が、溢れんばかりのエネルギーで、真っ白に染まる。
 目が眩み、やがで視界が回復する。
 奴は、俺の攻撃を受け止め、地面に叩きつけられている。
「うっぐ。」
 俺はゆっくり地面に足をつけると、端末が使えないので、再び安田の元に戻ろうとした。
「ま……て。」
 金川が俺の足を掴む。
 俺は振り返った。
「九条ならラストプリズンに向かった。」
 俺が無言で頷くと、彼は安心したように倒れ込む。
「昔から気に食わなかったんだ。アイツ九条は。」
「俺の親分気取って、公安のオブザーバーみたいに俺をコキ使ってよ。」
 取り巻きたちが、俺を弾き飛ばした。
「金川さんに指一本触れるな!! 」
 俺は服を手でパンパンと叩いた。
「お前らとやり合うつもりはない。」
「クッ!! 」
 こんなことをしていてなんだが、俺は彼らの誤解を解きたかった。
「俺は別に公安の犬になって、お前らを殺しに来たわけじゃない。」
「コイツと同じだ。俺も能力者と無能力者が共存する世界を作りたい。」
 子分の一人が、俺の後頭部を指差した。
「ヒッなんだよそれ。」
「俺には時間がもうない。ヤツ九条を殺さなきゃいけない。」
「早くソイツ金川を安全な場所に運んでやれ。」
 俺はそう言葉を残すと、ラストプリズンに向けて飛び立った。

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