平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

文字の大きさ
71 / 107
ファイル:4火星の叛逆者

錬金術師

しおりを挟む
「オイ、もう終わりかテメーら。」
 嗜虐的な声が、辺り一体に反響している。
 間違いなく奴だ。
 やっぱり宜野座さんは優秀だ、この状況で敵の位置を正確に把握するなんて。
『奴ら』の顔は見えない。
 彼らも俺たちが能力者のデータベースを持っていることに知っている。
 だからリベリオンの人間たちは、みんな頭にカボチャをかぶっていた。
 誰がどの能力者か分からないようにするために。
。」
 彼がジャコランタン越しに俺の方を見た。
「しねえや。」
 一人のパイロキネシストが俺の方へ向けて火の玉を放ってくる。
 俺はそれを能力で防ぎ、握り潰した。
「オイ、お前ら辞めろ。」
 彼は頭のジャコランタンを脱ぎ捨てて俺を見上げる。
 それから足元の公安手帳である端末を砕いた。
 それと同時に、俺の端末が圏外になる。
「別に構わない。続けてくれ。」
「ほう、何処やん時とはまるで覇気が違うな。別人みたいだ。」
 彼から放たれたその言葉はあまりにも滑稽だった。
「変わったのはお前の方だろう。」
「そんなに子分を引き連れて。」
「棟梁ってのはお前の柄じゃない気がするが。」
 彼はその言葉を聞くと、クククと笑い、俺を指差す。
「俺を理解したような気になってよ。ムカつくところは変わらねえな。」
 彼は自分のやり場のない怒りをどこかにぶつけるような、そんな奴だと思っていた。
 だから、こんなふうに子分を引き連れて、平等社会には向かおうとしていることが驚きだったのだ。
「俺みたいに強え奴は良いんだ。」
「でもな。コイツらは万城みたいな非力な奴は、自分で居場所を作ることすら出来ねえ。だからな俺は…… 」
「まぁ良いや。こんなセリフ俺の柄じゃねえしなぁ。」
 彼が目の前に瞬間移動する。
 物質の分解と再構築。
 彼の魂が一瞬で引っ張られるのを見た。
 身体が出来る前、一瞬の隙がある。
 ベルフェさんや九条よりも全然遅い。
 俺は彼の右手を左手で掴むと、払いのけ、はたき落とす。
流星一閃メテオ・ストライク
 そのまま彼を地上にはたき落とした。
「ところで九条は? 」
 俺に向けて無数の能力が撃ち付けられる。
 それをバリアーで防いでから、再び彼の顔を殴る。
「今、てめえとカチ合ってんのはこの俺だろうがぁ。」
 手が鋼材に変化し、俺の右肩を抉る。
 俺は抉れた部分を次元ごとくっつける。
「なるほど、こういう使い方も出来るのか。」
「お前の能力は、敵の攻撃を防ぐ能力だろうが!! なんでバケモンみたいなことをしてんだよ!! 」
 俺に向けて極太のレーザー砲が至近距離で打ち出される。
 俺は能力を使い、次元を自分の真っ二つに分けた。
 俺の半身から、漆黒の無が除いている。
 レイザー砲が、無に喰われる。
 やがて世界の修正力が働き、俺の身体は元通りになった。
「テメェも九条と同じだな。使っている内に能力を変幻させやがった。」
「俺が、九条姉さんみたいに、能力を発現させることなんて出来るはずが無いじゃないか。」
 俺は、取り巻きが飛ばしてきている能力を空間操作で一点に集める。
「オイ、お前ら、やめろ!! 」
「無駄だ。空間と一緒に可視光線も歪んでいる。俺の姿は彼らには見えないよ。」
「クソッタレぇ!! 」
 彼の背中から純白の翼が生えた。
「オメエらばっかり強くなりやがって!! 」
「俺様は摩天楼の錬金術師。金川練華だ!! 」
【ショック・オブ・ラウンド】
 俺の拳に込められた彼らのエネルギーが、奴の両翼へと直撃する。
 燃えるような熱さ。
 彼の翼から放たれる熱線は、この世の物質では無かった。
 どこか他の世界の未知なる物質。
 俺にまとわりつく純白のそれが、拳から肩に伝ってくる。
「このままじゃ周りの奴らも巻き込むぞ。」
「そうなって困るのは、アンタも同じはずだ。」
「チクショ!! 卑怯な奴め!! 」
 俺と彼とで、エネルギーが放出されるのを防いだ。
 視界が、溢れんばかりのエネルギーで、真っ白に染まる。
 目が眩み、やがで視界が回復する。
 奴は、俺の攻撃を受け止め、地面に叩きつけられている。
「うっぐ。」
 俺はゆっくり地面に足をつけると、端末が使えないので、再び安田の元に戻ろうとした。
「ま……て。」
 金川が俺の足を掴む。
 俺は振り返った。
「九条ならラストプリズンに向かった。」
 俺が無言で頷くと、彼は安心したように倒れ込む。
「昔から気に食わなかったんだ。アイツ九条は。」
「俺の親分気取って、公安のオブザーバーみたいに俺をコキ使ってよ。」
 取り巻きたちが、俺を弾き飛ばした。
「金川さんに指一本触れるな!! 」
 俺は服を手でパンパンと叩いた。
「お前らとやり合うつもりはない。」
「クッ!! 」
 こんなことをしていてなんだが、俺は彼らの誤解を解きたかった。
「俺は別に公安の犬になって、お前らを殺しに来たわけじゃない。」
「コイツと同じだ。俺も能力者と無能力者が共存する世界を作りたい。」
 子分の一人が、俺の後頭部を指差した。
「ヒッなんだよそれ。」
「俺には時間がもうない。ヤツ九条を殺さなきゃいけない。」
「早くソイツ金川を安全な場所に運んでやれ。」
 俺はそう言葉を残すと、ラストプリズンに向けて飛び立った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

草食系ヴァンパイアはどうしていいのか分からない!!

アキナヌカ
ファンタジー
ある時、ある場所、ある瞬間に、何故だか文字通りの草食系ヴァンパイアが誕生した。 思いつくのは草刈りとか、森林を枯らして開拓とか、それが実は俺の天職なのか!? 生まれてしまったものは仕方がない、俺が何をすればいいのかは分からない! なってしまった草食系とはいえヴァンパイア人生、楽しくいろいろやってみようか!! ◇以前に別名で連載していた『草食系ヴァンパイアは何をしていいのかわからない!!』の再連載となります。この度、完結いたしました!!ありがとうございます!!評価・感想などまだまだおまちしています。ピクシブ、カクヨム、小説家になろうにも投稿しています◇

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

四人の令嬢と公爵と

オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」  ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。  人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが…… 「おはよう。よく眠れたかな」 「お前すごく可愛いな!!」 「花がよく似合うね」 「どうか今日も共に過ごしてほしい」  彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。  一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。 ※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...