平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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終わりの始まり

元凶

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 目の前で俺を見下ろしているのは間違いなく、平等社会最悪の能力者、大兄弟助だ。
「こい、ゲイボルグ。」
 奴の手元から虚空へとクリムゾンレッドの紋章が浮かび上がり、真紅の槍がズルズルと伸びてくる。
「なんなんだ。その槍は。」
 彼はガキのように無邪気な笑みを見せると、その言葉を待っていましたとばかりに、手元の真紅のそれを転がして見せた。
「気になるか? まぁモノは試じゃ。って言うのは、説明してやるより、実際に見せてやった方が早い。」
「こういうふうにな!! 」
「えっ? 」
 俺の腹部から真紅の槍が現れた。
 奴の手元にあったモノだ。
 奴の手にあったものが、俺の腹から
 俺は驚いて、もう一度奴がいた場所を見上げた。
「力ぃ!! 」
 鵞利場の悲鳴と共に、俺は、彼に背中から貫かれたと言うことを知る。
「急所ははずしてやった。なぜだか分かるか? 」
 理由なら分かる。
 俺をじっくり痛ぶって殺すためだ。
「まぁ? 世はあんなことをもうしたが、実は魔法のことなんてどうでも良い。」
「世の配下に加わると言うのなら、そこの小娘は助けてやっても良い。」
 俺が奴に従おうが、従わなかろうが、決定権は奴にある。
 彼には俺を生かしておくメリットも、彼女を生かしておくメリットもない。
「断る。」
 俺は槍を無理やりに引き抜くと、自分の魔法で、無理矢理血管を繋ぎ止めた。
 大兄弟助は怒らない。
 スマシた余裕の表情で、九条を見上げる。
 黙り込んで、腕を組み、静かに俺を見下ろしている彼女を。
「ソチは? 良いのかコレを殺して。身内なんだろ? 」
「構わん。それに、殺さないと魔法を取れないんだろ? 」
 ククククク
(奴は俺の首根っこを掴んだ。)
「やっぱり面白いなお前は、コイツのことが好きだったんだろ? 」
 彼女は首を横に振ってから、俺を指差した。
「私が好きだったのはコイツの『魔法』であって、コイツではない。」
「今となってはどうでも良いがな。だって私にはコレがあるわけだし。」
 彼女はワームホールを開き、すぐさま俺の隣に降りてきた。
「だ、そうだ。汝も可哀想ではないか? 女に捨てられて。」
 俺は能力を発動させて、奴の右腕を振り払った。
 能力を外に回したことにより、ハラワタから真紅の液体が溢れ出し、槍を染める。
「別にどうってことねえよ。」
 本心から出た言葉だ。
 自分が殺そうとした相手に、好きなんて言われても気色が悪いだけだ。
 俺はそのまま槍を拾い上げると、大兄弟助に向けて振るった。
 昔、ちょっとだけ教えてもらったことがある。
 そりゃ武家だし当然だ。
 彼の顔に、切り傷がついた。
 切り口から、紅い液体が垂れてくる。
「お前の血も赤くて安心したぜ。」
「なんたって、血が出るなら殺せるってことだろ? 」
 彼は怒るわけでも無く、飼っていたペットに引っ掻かれたような優しい表情で、必死に激情を隠している。
「家畜はしっかり躾けてやらねばならぬなぁ!! 」
 彼に顔を鷲掴みされ、そのまま、地上目掛けて、吹っ飛ばされると、監獄の壁に、叩きつけられ、壁を破壊し、向かいのビルで止まった。
「どうだ? 世の力? 思い知ったか? 」
「さぁな。」
 再び、摘み出されて、今度はビルをも貫通する。
 柱を失ったそれが、バランスを崩して、パックリと真っ二つに割れた。
 と言うのが見えるのは、俺がもう数メートル吹っ飛ばされているからだ。
 強気なのは良いが、状況は絶望的だ。
 能力は腹部の血を止めるのが精一杯だし、あと一歩まで追い詰めた九条も全快状態。
 なんとかコイツの能力を使わせる…….
 なんて出来ないだろう。
 背中のタイマーがまた進む。
"コイツは爆弾でも死なないのかな? "
 地面に叩きつけられ、散々殴られて、今度は空に飛ばされる。
 意識が遠のくにつれて、体から痛みが消えていく。
 チャンスは今ここしかない。
---void erasureトル・ツメ---
 血は、不思議と、もうあまり出なかった。
 奴と俺とを隔てる空間全てを、能力で圧縮した。
 口を開け、唖然としている奴の顔を見て、それから能力に穴を開けてその一点から放出した。

---release spaceマテリアル・バースト---
 
 無理やり閉じ込めた空間が、彼へ向けて溢れ出す。
 多分、彼は何十パスカルのも圧力がかかっていることだろう。
 流石にコレなら
「素晴らしいな。コレは世の創った聖剣エクスカリバーの能力か。完璧とは言わないが、上手く再現できている。」
 この前、カーミラに教わったモノだ。
 奴は倒せなかったが。
 俺の元に、ゆっくりと彼が迫ってくる。
「世が世がって。ガキかよお前。」
「もお良いよ貴様。安らかに眠れ。」
 手元から金色に輝く剣を取り出すと、俺の心臓向けて突き刺し
 られなかった。
「よく頑張ったな。北条クン。」
 見覚えのある声だ。
 だけど、もう何も見えない。
 自分の上司だった気がする。
 もう、思考力すらなかった。
「本堂…守ッ!! 」
 聞き慣れたされる音と共に、脅威が俺から離れる。
「しっかりしたまえ!! 」
 背中を叩かれ、腹部から血は……
 出ない。
「コレを飲むんだ。」
 そして、腹に包帯を巻かれる。
 痛みが引いていき、意識が戻ってくる。
 あんなに遠かった俺の身体に俺自身が戻ってくることができた。
「キサマッ!! な。」
「ん、まぁね。あっちワールド221の生活も悪くなかった。なんたって毎日が新鮮だったからね。」
「さぁ、第二ラウンドと行こうじゃないか。」
 

 
 
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