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ファイル:EX オーバーロード
オーバーロード
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「ほんとに、アンタは。」
「しばらく見ないうちに、さらにメチャクチャになったわよね。」
鵞利場がため息をつく。
「めちゃくちゃなのは奴らの方だろ? 」
俺は両掌を返すと、たまげてみせた。
「もしかして、怒ってる? 」
「ちょっとな。」
「ちょっと、その気持ち分かります。」
倫が遠い目をして答えた。
「能力者と無能力者の溝は深い。その中で、一発触発の関係で、両者の調律に努めて来たのに…… こんな形で壊されてしまうなんて。」
俺は、一人でカビ臭い部屋にこもって、何かをやった気になっていた。
だが、実際に自分の理想のために勤めてくれていたのは、自分より年齢がずっと下の健気な少女であったのだ。
「倫、ありがとな。」
「嫌いです。近寄らないで。」
彼女は俺のことを無視して宇宙船の口を見上げた。
「どうやら中に入れてくれるみたいですよ。」
見上げると上空にホログラムが浮かび上がっていた。
『貴方たちを歓迎する。入れ。』
「まぁ、なんとも、こちらの言語で丁寧にな。」
俺たち三人は眩い光に包まれた。
* * *
気がつくと俺たちは、真っ黒な正六面体の部屋の中に閉じ込められていて。
フカフカのソファーと、目の前のテーブルには、完熟したブドウが置かれていた。
「うわー美味しそう。」
「これっ!! 」
慌てて小子の手を叩く。
見た目はブドウだ。
だが、素性も分からない宇宙人の出したモノを無闇に口にしようとするなど、あまりにも不用心では無いだろうか。
相手に悪意が無くても、だ。
「何すんのよ。」
「相手にとって無害なモノが、俺たちにとっても無害とは限らない。無闇に触るな。」
<安心したまえ。それはブドウというのだろう? 蝠岡氏に頼んで近くの青果店で買って来てもらった。>
目の前の暗い壁が、突如白く光り、人型のシルエットが浮かび上がる。
「何? 蝠岡もここに来ているのか? 」
<来ている……というか。すまない。眠らせて無理矢理連れ去った。>
彼は俺がラストプリズンに捕えられてから少し後、釈放されたらしかった。
「なぜだ? 」
俺は声を低くして彼らに問う。
「そうカリカリするな。コレからの人類について彼らの科学者と話をしていたんだ。別に悪いようにはされてないよ。パシりはさせられたケドね。」
突如現れた黒衣の科学者が、俺たちの左側に突如出現したソファーへと腰掛ける。
そこで彼はテーブルの上のブドウを一粒モグと、口の中に放り込んだ。
「無農薬だ。皮ごといける。」
そこで彼が静かになったことを確認すると、闖入者様は、再び語り始めた。
<そういうことだ。彼が直接出て来てくれて助かった。>
<ところで要件というのは? 君たちは私たちのやり方にケチをつけに来たのでは無いのか? >
俺はムスッとして立ちあがろうとする。
それを倫が手で制する。
「っかったよ。アンタらが行った声明のせいで、街の治安が悪化してよ。俺たちにも俺たちのやり方がある。勝手なことされたら困るんよ。」
<声明? 人類選別の話か? 君たちにとっても悪い話では無いとおもったのだが。>
<私たちの星では、人口が減少していて……能力者たちに私たちの星を託したいという思いで、遠路はるばるここまでやって来た訳だ。大丈夫。ダークマタの対消滅なら問題ない。蝠岡氏と共同で、反物質中和機を開発した。コレで、こちらの世界の人間も、我々の領域でも生活を送ることができる。>
「ざけんじゃねえぞ。」
俺は机に足を乗り上げた。
蝠岡が、俺の足を払うので、俺はバランスを崩して転げ落ちる。
「お言葉ですが、オーバーロード様? ならば今まで平等社会に貴方方が来なかったのはなぜですか? なぜ今の……大兄弟助が倒されたこのタイミングで平等社会にやって来たのでしょうか? どう見ても私には、目の上のタンコブが消えたから、好き勝手してやろうと。そういう魂胆にしか見えません。」
<ミス鵞利場。実際その通りだよ。私は過去、何度も平等社会に交信した。その度に、大兄弟助に、それを妨害された。彼が居なくなったから、ここに来たというのは正しい。ただ君たちに危害を加えるつもりは無かった。>
<少なくとも私はそのつもりでいる。>
「不躾な質問ですが、連れていくというのは、強制……ということでしょうか? 能力者の恋人がいるモノや、平等社会を愛している人たち、未開の地に足を赴きたくない人だっているはずなんです。」
小子が再び質問した。
<…….結論を言えば、そういうことになる。能力者と無能力者、二種類の人間がいる限り、二者の間に必ず争いは起こる。私たちの星がそうであったように。もちろん、君たちのような二者間の溝を埋めようとした人間もいた。>
<君たちの働きを無に返すようなやり方ですまないが、君たちの言い分は、私たちの主義思想とは相反するようだ。この前話を続けても平行線だろう。>
<二日後、平等社会人全体で、我々が多数決を行う。評議会にもこの旨を伝えてくれ。>
オーバーロードは思いのほか寛大だった。
小子の気持ちを汲んで。彼らの意思を少しでも尊重してくれようとしているのだ。
俺たちは、そのまま黒い箱から摘み出された。
「テテテ。」
気がつくと俺たちは、宇宙船の口の真下で尻餅を付いていた。
「コレからどうする? 」
「私は、倫子おばさんにオーバーロードたちの主張を伝えに行きます。お二人方は不審な動きをする能力者がいないか、パトロールをお願いします。」
俺は枷に繋がれた両手を振る。
「自体は思ったより深刻ね。」
そうだ。自体が上手く行き過ぎている。
だからこそ、俺や彼女のやって来たことが否定されて来たように思えるのだ。
でも冷静に考えれば、その方が、無能力者にとっても能力者にとっても良いのかもしれない。
「頭を冷やしに、ちょっと散歩しない? 」
「パトロールだろ? 行こうぜ。」
俺たちは繁華街へ向けて歩き出した。
「しばらく見ないうちに、さらにメチャクチャになったわよね。」
鵞利場がため息をつく。
「めちゃくちゃなのは奴らの方だろ? 」
俺は両掌を返すと、たまげてみせた。
「もしかして、怒ってる? 」
「ちょっとな。」
「ちょっと、その気持ち分かります。」
倫が遠い目をして答えた。
「能力者と無能力者の溝は深い。その中で、一発触発の関係で、両者の調律に努めて来たのに…… こんな形で壊されてしまうなんて。」
俺は、一人でカビ臭い部屋にこもって、何かをやった気になっていた。
だが、実際に自分の理想のために勤めてくれていたのは、自分より年齢がずっと下の健気な少女であったのだ。
「倫、ありがとな。」
「嫌いです。近寄らないで。」
彼女は俺のことを無視して宇宙船の口を見上げた。
「どうやら中に入れてくれるみたいですよ。」
見上げると上空にホログラムが浮かび上がっていた。
『貴方たちを歓迎する。入れ。』
「まぁ、なんとも、こちらの言語で丁寧にな。」
俺たち三人は眩い光に包まれた。
* * *
気がつくと俺たちは、真っ黒な正六面体の部屋の中に閉じ込められていて。
フカフカのソファーと、目の前のテーブルには、完熟したブドウが置かれていた。
「うわー美味しそう。」
「これっ!! 」
慌てて小子の手を叩く。
見た目はブドウだ。
だが、素性も分からない宇宙人の出したモノを無闇に口にしようとするなど、あまりにも不用心では無いだろうか。
相手に悪意が無くても、だ。
「何すんのよ。」
「相手にとって無害なモノが、俺たちにとっても無害とは限らない。無闇に触るな。」
<安心したまえ。それはブドウというのだろう? 蝠岡氏に頼んで近くの青果店で買って来てもらった。>
目の前の暗い壁が、突如白く光り、人型のシルエットが浮かび上がる。
「何? 蝠岡もここに来ているのか? 」
<来ている……というか。すまない。眠らせて無理矢理連れ去った。>
彼は俺がラストプリズンに捕えられてから少し後、釈放されたらしかった。
「なぜだ? 」
俺は声を低くして彼らに問う。
「そうカリカリするな。コレからの人類について彼らの科学者と話をしていたんだ。別に悪いようにはされてないよ。パシりはさせられたケドね。」
突如現れた黒衣の科学者が、俺たちの左側に突如出現したソファーへと腰掛ける。
そこで彼はテーブルの上のブドウを一粒モグと、口の中に放り込んだ。
「無農薬だ。皮ごといける。」
そこで彼が静かになったことを確認すると、闖入者様は、再び語り始めた。
<そういうことだ。彼が直接出て来てくれて助かった。>
<ところで要件というのは? 君たちは私たちのやり方にケチをつけに来たのでは無いのか? >
俺はムスッとして立ちあがろうとする。
それを倫が手で制する。
「っかったよ。アンタらが行った声明のせいで、街の治安が悪化してよ。俺たちにも俺たちのやり方がある。勝手なことされたら困るんよ。」
<声明? 人類選別の話か? 君たちにとっても悪い話では無いとおもったのだが。>
<私たちの星では、人口が減少していて……能力者たちに私たちの星を託したいという思いで、遠路はるばるここまでやって来た訳だ。大丈夫。ダークマタの対消滅なら問題ない。蝠岡氏と共同で、反物質中和機を開発した。コレで、こちらの世界の人間も、我々の領域でも生活を送ることができる。>
「ざけんじゃねえぞ。」
俺は机に足を乗り上げた。
蝠岡が、俺の足を払うので、俺はバランスを崩して転げ落ちる。
「お言葉ですが、オーバーロード様? ならば今まで平等社会に貴方方が来なかったのはなぜですか? なぜ今の……大兄弟助が倒されたこのタイミングで平等社会にやって来たのでしょうか? どう見ても私には、目の上のタンコブが消えたから、好き勝手してやろうと。そういう魂胆にしか見えません。」
<ミス鵞利場。実際その通りだよ。私は過去、何度も平等社会に交信した。その度に、大兄弟助に、それを妨害された。彼が居なくなったから、ここに来たというのは正しい。ただ君たちに危害を加えるつもりは無かった。>
<少なくとも私はそのつもりでいる。>
「不躾な質問ですが、連れていくというのは、強制……ということでしょうか? 能力者の恋人がいるモノや、平等社会を愛している人たち、未開の地に足を赴きたくない人だっているはずなんです。」
小子が再び質問した。
<…….結論を言えば、そういうことになる。能力者と無能力者、二種類の人間がいる限り、二者の間に必ず争いは起こる。私たちの星がそうであったように。もちろん、君たちのような二者間の溝を埋めようとした人間もいた。>
<君たちの働きを無に返すようなやり方ですまないが、君たちの言い分は、私たちの主義思想とは相反するようだ。この前話を続けても平行線だろう。>
<二日後、平等社会人全体で、我々が多数決を行う。評議会にもこの旨を伝えてくれ。>
オーバーロードは思いのほか寛大だった。
小子の気持ちを汲んで。彼らの意思を少しでも尊重してくれようとしているのだ。
俺たちは、そのまま黒い箱から摘み出された。
「テテテ。」
気がつくと俺たちは、宇宙船の口の真下で尻餅を付いていた。
「コレからどうする? 」
「私は、倫子おばさんにオーバーロードたちの主張を伝えに行きます。お二人方は不審な動きをする能力者がいないか、パトロールをお願いします。」
俺は枷に繋がれた両手を振る。
「自体は思ったより深刻ね。」
そうだ。自体が上手く行き過ぎている。
だからこそ、俺や彼女のやって来たことが否定されて来たように思えるのだ。
でも冷静に考えれば、その方が、無能力者にとっても能力者にとっても良いのかもしれない。
「頭を冷やしに、ちょっと散歩しない? 」
「パトロールだろ? 行こうぜ。」
俺たちは繁華街へ向けて歩き出した。
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