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クーデター
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「まぁこうも懲りずにこの男は…… 」
長官室で、本堂がため息をついた。
「ラストプリズンの防犯カメラを調べたところ、北条力が倫さんに連れ出されたあと、すぐに行動を起こしたみたいです。」
「厄介なのは…… 」
「大麻好大が共謀しているということだね。そして、看守をそのまま洗脳した訳だ。」
「あと、電波塔ハイジャックまで八時間か。」
今も奴は、ハイジャックに向けて着々と準備を進めている。
「そうですね。北条力さん。」
小子に本名で呼ばれて、少し距離が出来たような気がする。
「何で気づかなかったのかしら。このとんま。」
「しゃーねえだろ。魔法は万能じゃねえ。俺は戦闘特化型なんだよ。索敵は畑違いだ。」
「とにかく、二人もすぐに、電波塔へと向かってくれ。」
俺たちも……ということは、既にそこに来ている奴がいるということか?
「ほう? 北条君。その顔。現役時代の感は鈍ってないようだね。さっさと向かってくれ。孫のバックアップを頼んだよ。」
俺たちは長官室を後にした。
* * *
公安の車両を降りて、電波塔の麓からコントロールルームを見上げる。
奴は隠すつもりもなく、窓から俺たちに顔を晒している。
だが、一つも驚いた様子は見せなかった。
「随分と余裕じゃねえか。」
現場には、見慣れたスキルホルダーたちと……
「慎二!! 」
台与鬼子だ。隣には、黒澄さんもいる。
「蝠岡に呼ばれてな。来たらこの通りだよ。なぁ、221の奴らにはナイショな。平等社会を、近衛たちで騒がしくしたくないしさ。なにしろ、奴のオヤジさんにまた見つかったらどうなることやら。」
「たまには黒澄さんのお父様にも顔を合わせて下さいね。」
と小子。
「お前、彼女の父親と知り合いなのか? 」
「まぁね。家柄で、色々な家の人間と接点があるのよ。」
そして……
「金川…… 」
隣には、万城の姿もあった。
彼女は能力を制御するために、今はメガネを掛けている。
よく見ると、玉鉄と、ベルフェさん。西郷に炎道の姿もある。
「久しぶりだな。北条。」
「テッキリお前らも向こう側にいるのかと思ったよ。」
「リベリオンは解散した。形上はな。」
「今は、残った奴らで家電作って売ったりしてるよ。九条の帰る場所も必要だし。」
元リベリオンの面々がいれば、鬼に金棒だ。
「今日はいつにも増して、険しい顔をしているな金川。」
「あたりめえだ。俺たちは、一度アイツに虐げられた。無能力者の権利だってな。」
「今回の件で改めて確信したよ。アイツは人の権利、他人のことなんてどうでも良い。他人のポジションを、自分がのし上がるための武器としか扱っていない。」
「金川。変わったね。」
万城が上半身を下げて、上目遣いで金川を見る。
「変わりもするさ。コレこそ俺たちが目指した世界だからな。」
「突入許可はまだでござるか? 」
玉鉄が金川の後ろで、細い目をいつにも増して細めて、右足でアスファルトをコンコンと叩いている。
彼は俺に気がつくと、俺に指を刺してこう宣言した。
「我がライバル北条力よ。今回ばかりは共闘してやる。」
彼はいつもの調子であった。
「よう。侍野郎。今日も良い刃だな。」
「コレは我が拳だ。何度も言わせるな。」
リベリオンを辞めても、彼はいつもの玉鉄であった。
硬くなに自分の能力で作った鋼の刃を、自分の武器と認めない。
炎道と、西郷とベルフェさんは、仲良く三人でトークを交わしている。
駅前のパンがどうだとか、何屋のスイーツの話だとか。
「コラ!! 女の子のトークに聞き耳を立てない。」
小子が俺の奥襟を掴んだ。
あの三人が元テロリストだとは到底思えない。
楽しそうに話をする女の子たちだ。
そっとしておいてあげるのが良い。
「相変わらずですね。お二人さん。」
スニーカーに体操着。動きやすい姿に着替えて来た倫がリムジンで現場にやって来る。
「なんだよお前、その格好は。」
今回はテロリストの能力者との衝突は免れない。だから動きやすい服装だということは分かる。
ピンクのジャージだとか、紺のフリースだとか。
でもさ。
そりゃあねえだろお前。
白の体操服。
胸元にはしっかり『本堂』という刺繍入りだ。
こんなん本堂家の恥じゃん。
教育係押し付けられた俺がどうかするべきだろコレ。
「何ですか。まじまじと私のことを見て。恥ずかしいじゃないですか。」
刹那。
視界が真っ暗になる。
小子に、人差し指と中指で目を突かれた。
「目がぁぁぁぁあっ。」
「ホント最低っ。ロリコン。変態。クズ。」
俺は両目を押さえながら、倫に忠告する。
「倫、その格好はやめた方がいい。今度からはジャージにしなさい。こんなふうに失明しちゃう大人が出てくるだろ? 」
「えっ? コレはスキルホルダーのおじ様が、『こっちの方が動きやすいから、戦闘時はこうしなさい。』って。」
「ありがとね倫ちゃん。そのスキルホルダーのおじさんっていうのを今度詳しく聞いてあげるから。」
小子は、問題を起こした張本人を審問にかけるらしい。
南無。
「それと。公安から突入許可が出ました。」
「皆さん。電波塔を制圧しちゃって下さい。」
俺は絶対物質で、両目の視力を治すと、小子の方を見て、慎二たちの方を見て頷いた。
「「「「突入開始!! 」」」」
長官室で、本堂がため息をついた。
「ラストプリズンの防犯カメラを調べたところ、北条力が倫さんに連れ出されたあと、すぐに行動を起こしたみたいです。」
「厄介なのは…… 」
「大麻好大が共謀しているということだね。そして、看守をそのまま洗脳した訳だ。」
「あと、電波塔ハイジャックまで八時間か。」
今も奴は、ハイジャックに向けて着々と準備を進めている。
「そうですね。北条力さん。」
小子に本名で呼ばれて、少し距離が出来たような気がする。
「何で気づかなかったのかしら。このとんま。」
「しゃーねえだろ。魔法は万能じゃねえ。俺は戦闘特化型なんだよ。索敵は畑違いだ。」
「とにかく、二人もすぐに、電波塔へと向かってくれ。」
俺たちも……ということは、既にそこに来ている奴がいるということか?
「ほう? 北条君。その顔。現役時代の感は鈍ってないようだね。さっさと向かってくれ。孫のバックアップを頼んだよ。」
俺たちは長官室を後にした。
* * *
公安の車両を降りて、電波塔の麓からコントロールルームを見上げる。
奴は隠すつもりもなく、窓から俺たちに顔を晒している。
だが、一つも驚いた様子は見せなかった。
「随分と余裕じゃねえか。」
現場には、見慣れたスキルホルダーたちと……
「慎二!! 」
台与鬼子だ。隣には、黒澄さんもいる。
「蝠岡に呼ばれてな。来たらこの通りだよ。なぁ、221の奴らにはナイショな。平等社会を、近衛たちで騒がしくしたくないしさ。なにしろ、奴のオヤジさんにまた見つかったらどうなることやら。」
「たまには黒澄さんのお父様にも顔を合わせて下さいね。」
と小子。
「お前、彼女の父親と知り合いなのか? 」
「まぁね。家柄で、色々な家の人間と接点があるのよ。」
そして……
「金川…… 」
隣には、万城の姿もあった。
彼女は能力を制御するために、今はメガネを掛けている。
よく見ると、玉鉄と、ベルフェさん。西郷に炎道の姿もある。
「久しぶりだな。北条。」
「テッキリお前らも向こう側にいるのかと思ったよ。」
「リベリオンは解散した。形上はな。」
「今は、残った奴らで家電作って売ったりしてるよ。九条の帰る場所も必要だし。」
元リベリオンの面々がいれば、鬼に金棒だ。
「今日はいつにも増して、険しい顔をしているな金川。」
「あたりめえだ。俺たちは、一度アイツに虐げられた。無能力者の権利だってな。」
「今回の件で改めて確信したよ。アイツは人の権利、他人のことなんてどうでも良い。他人のポジションを、自分がのし上がるための武器としか扱っていない。」
「金川。変わったね。」
万城が上半身を下げて、上目遣いで金川を見る。
「変わりもするさ。コレこそ俺たちが目指した世界だからな。」
「突入許可はまだでござるか? 」
玉鉄が金川の後ろで、細い目をいつにも増して細めて、右足でアスファルトをコンコンと叩いている。
彼は俺に気がつくと、俺に指を刺してこう宣言した。
「我がライバル北条力よ。今回ばかりは共闘してやる。」
彼はいつもの調子であった。
「よう。侍野郎。今日も良い刃だな。」
「コレは我が拳だ。何度も言わせるな。」
リベリオンを辞めても、彼はいつもの玉鉄であった。
硬くなに自分の能力で作った鋼の刃を、自分の武器と認めない。
炎道と、西郷とベルフェさんは、仲良く三人でトークを交わしている。
駅前のパンがどうだとか、何屋のスイーツの話だとか。
「コラ!! 女の子のトークに聞き耳を立てない。」
小子が俺の奥襟を掴んだ。
あの三人が元テロリストだとは到底思えない。
楽しそうに話をする女の子たちだ。
そっとしておいてあげるのが良い。
「相変わらずですね。お二人さん。」
スニーカーに体操着。動きやすい姿に着替えて来た倫がリムジンで現場にやって来る。
「なんだよお前、その格好は。」
今回はテロリストの能力者との衝突は免れない。だから動きやすい服装だということは分かる。
ピンクのジャージだとか、紺のフリースだとか。
でもさ。
そりゃあねえだろお前。
白の体操服。
胸元にはしっかり『本堂』という刺繍入りだ。
こんなん本堂家の恥じゃん。
教育係押し付けられた俺がどうかするべきだろコレ。
「何ですか。まじまじと私のことを見て。恥ずかしいじゃないですか。」
刹那。
視界が真っ暗になる。
小子に、人差し指と中指で目を突かれた。
「目がぁぁぁぁあっ。」
「ホント最低っ。ロリコン。変態。クズ。」
俺は両目を押さえながら、倫に忠告する。
「倫、その格好はやめた方がいい。今度からはジャージにしなさい。こんなふうに失明しちゃう大人が出てくるだろ? 」
「えっ? コレはスキルホルダーのおじ様が、『こっちの方が動きやすいから、戦闘時はこうしなさい。』って。」
「ありがとね倫ちゃん。そのスキルホルダーのおじさんっていうのを今度詳しく聞いてあげるから。」
小子は、問題を起こした張本人を審問にかけるらしい。
南無。
「それと。公安から突入許可が出ました。」
「皆さん。電波塔を制圧しちゃって下さい。」
俺は絶対物質で、両目の視力を治すと、小子の方を見て、慎二たちの方を見て頷いた。
「「「「突入開始!! 」」」」
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