平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

文字の大きさ
103 / 107
ファイル:EX オーバーロード

カチコミ

しおりを挟む
 突入許可が出た途端、フリーランスの賞金稼ぎや、公安に雇われた能力者たちが、我先にと傾れ込む。
 後から、ソロソロとスキルホルダーが入っていく。
 俺たちもぼーっとしているわけには行かない。
 特に大麻好大はまだ殴り足りていないので。
「行きますよ、お二人とも。」
 倫が俺たちを急かす。
「言われなくとも。」
 意気込む小子の後を追い、電波塔の内部へと侵入する。
「【森羅万象流】」---時空壊クロック・ブレイク---
【陰陽太極双龍】---堕雷ラクライ---
 二つの大きなエネルギーが、フリーランス諸共テロリストを吹き飛ばす。
 どうやら別の闘いが始まっていたようだ。
「俺が勝ったら、テメェが俺に平等焼肉を奢れよな。」
「良いぜ。男に二言はないからな。さっさと財布用意しとけよ。」
 金川と慎二の小競り合いが起きている。
「【珪眼流】」
「炎よ!! 」
「【蛇腹流】」
 他の能力者たちも、日頃の鬱憤を晴らすかのような活躍ぶりだ。
「そりぁぁぁぁぁ。っグアっ。」
 能力者の頬に、傘を大き口振り上げたベルフェさんの右跳び膝蹴りがクリーンヒットする。
「二人とも、上に行って。ここは私たちが抑えるから。」
 抑える?
 既に壊滅状態にある惨状を背景に、涼しい顔で、ベルフェさんはお決まりの言葉を俺に吐いた。
「みんな。ありがとう。」
俺たちは奥の螺旋階段から頂上を目指した。
 そして、いつ終わるか分からないスパイラルの先に。
「ついた? 」
「いや、まだ中継地点だ。」
 物陰から、一つのシルエットがぬるりと出現する。
「大麻好大ッ!! 」
「いや、北条君。いつぞやの時は本当に世話になったね。」
 小子が彼の姿を見て縮こまる。
 倫は本能で、この男の本性を見破ると、俺の後ろに隠れた。
 俺は彼女が隠れられるように、出来るだけ身体を大きくする。
「ほう? 本堂の孫娘か。ソイツを洗脳して、社会を乗っ取っってやるのも良いが…… 」
 彼は舌舐めずをする。
「まだ君の答えを聞いていなかったね小子。誓いの言葉を。」
「ごめんなさい。私、力と婚約しているので。」
「チッ。」
 彼は顔を歪めて、地面に唾を吐く。
「まぁ良い。手に入らないのなら、弱らせて、また強引に薬を飲ませれば良い。」
「やれ!! 光明照輝!! 」
 物陰から、もう一人、無精髭の便りなさそうなおじさんが、頭をポリポリ掻きながら出てくる。
 彼のタダの能力者なら俺たちの敵ではない。
「またそのせこい能力で、他人を操っているのね。可哀想な人。」
「俺は操られてなんか居ねえぜ。」
 後ろから強烈な殺気を感じ、二人を脇に抱えて、その場を離れる。
 少し遅れて、正拳突きが俺たちの居た場所に叩きつけられる。
「おっ。俺の光速を躱すとは、流石、北条家の坊ちゃんだね。」
 俺は思わず彼に訊いた。
「アンタ…… 何もんだ? 」
「さっき、ご紹介に預かっただろう? 光明照輝。見ての通り、光の能力者だよ。」
「そんな。貴方の名前は、公安のデータベースにもありません。」
 速攻で、端末を操作してた倫が、データベースの表示する『NO DATA』に驚愕している。
「そりゃ。俺は何人にも観測出来ないし、誰も俺の正体を暴くことも出来ない。なんたっておりゃ『光』だからな。」
「ずっと見てたぜ。アンタの活躍を。」
「アンタの目指す理想を。」
「だけどなぁあんちゃん。甘くて薄っぺらいんだよ。アンタの理想は。」
「オーバーロードの言う能力者移住計画の方がよっぽど合理的だ。」
「俺たちは大兄弟助のせいで、こんな身体で生まれて来ちゃったわけだけどさ。この星にいるべきではないのよ。」
 見えなかった。
 倫がぶたれているのを見て、ようやく彼の攻撃を受けたのだと確信する。
 倫が触れられた途端に、能力を発動させたので、加速度はさほど乗っていない。
「どうした? 嬢ちゃん。絶対領域パーフェクト・レギオンは使わないのかい? そんで俺を無力化すれば良いだろ。」
「貴方に言われて使うまでもありません。」
 額に汗が滲み出ている。
 倫は感情が表に出やすい。
 俺でも彼女が絶対領域を使わない理由が分かる。
「使わないんじゃなくて、使んだろう? 」
「グガァ。」
 奴に脊髄を膝でどつかれて、背骨が明後日の方向に曲がる。
「まぁ良いけど。用があるのはテメェの方だ。なぜだか分かるな。」
「分からねえな。あいにく裏社会やら公安やらで敵を作りすぎちまったせいで、身に覚えがあることが多すぎんのよ。」
 絶対物質で、背中の損傷に備え、世界境界で次の攻撃に構える。
「お前の全てだ。その力を持っておきながら、北条家を動かす訳でもなく、能力者と無能力者の関係に一石投じる訳でもなく、奴隷根性の惰性でタラタラと生きて、お前の人生は至極つまらなかったよ。」
 馬乗りにされて、顔を何度も殴られる。
「大兄弟助がッ。言ったッ。通りだ。」
「お前がぁ。望めばッ。お前はッ。王の使いにすらなれた。その可能性がお前にはあった。だからお前のための席、世界境界は存在した。それがなんだ!! 新たに魔法使いを発現させてまで、未来決定の修正能力で、事象を捻じ曲げてまでッ。お前が公安の味方をした理由はなんだ? 」
 なんだ。
 黙ってりゃ厄介オタクみたいなこと言いやがって。
 ファンはファンでもこう言うのは、お断りだね。
「力ッ!! 」「北条さん!! 」
 彼は、小子の首に手を回すと、物凄い形相になり、俺に向けて叫んだ。
「お前は本当に面白くない。今回の移民の件だってそうだ。ここまでして、平等社会に執着する理由はなんだ。」
「お前が今、人質に取っているソイツだよ。」
「しっかり、捕まえとけよ。。」
 彼女は光明の整体電気を操作し、彼が能力を使えない状態にする。
 拳で、彼の頬を殴り返す。
 手応えがあった。
「ぐかぁ。」
「彼女のように、能力者であっても、缶のプルタブ一つすら開けられない非力な人間だっている。」
「倫は能力者であり、無能力でもある。」
 もう一度殴る。
「俺はアイツらの孤独なんて知らねえけどなぁ。」
「アイツらを苦しめる奴を俺は許さねえ。」
 最後にアッパーを喰らわせる。
「人間は0か100かじゃねえんだよ。」
 朦朧とした意識の中で、なんとか彼に勝利する。
「力っ!! 小子がこちらに走ってきて、俺を受け止めた。」
 魔法でまた身体を補完する。
「ククク。」
 コンマ一秒で、大麻好大の目論見を理解し、小子の身体を庇った。
 そこから俺の意識は無い。
 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...