新世界~光の中の少年~

Ray

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第二十四話

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 髪はしなやかに流れ、口元は穏やかに微笑む。その清純な眼差しは、心を浄化され、安らぎを齎す。潤いでキラキラと輝きの中にいたあの姿は、まるで天使を見ているようだった。
 雰囲気は本当にこの通りなんだけど。少し、擬態化してしまってるかな。
 薄れゆく記憶。それに印象と想像が混ざり合い、原型からどこまで離れているのかさえ、定かでない。スケッチブックを前に、描いては消しを繰り返していた。
 そしてその度に思い知らされる、きっとこのまま忘れていくのだ、ということを。
 ブルルル、と携帯が振動する。手に取り画面を開くと、笑みが零れる。
『忙しい><! ヘルプヘルプ!』
のメッセージ。
 瑞樹はすぐさま支度し、出掛けた。

 八月も後半に入り、セミの鳴き声もラストスパートと勢いが盛んである。アスファルトから湧き上がる熱で息が上がりそうだ。
 ただ『今向かっています』と返信する瑞樹の足取りは軽やかに、充実した夏を物語っていた。バイトにも慣れ、皆とはすっかり仲良しになった。念願叶わず、未だにあの子には会えないままだったが、得たものは、計り知れない。
「あぁ、ありがとう。来てくれたんだね」
「あっ瑞樹君だ、 ありがとう!」
「瑞樹君、ありがとう! カウンターお願いできるかなっ」
 慣れた手つきでささっと制服に着替え、接客に就く。人から求められるこの感じは悪いものではない。世に少しでも貢献している、という思い。それが自分を高め、自信となっていた。
「ちょっと落ち着いて来たかな」
「大繁盛ですね。有難いけど、びっくりしたぁ」
「近くでゲームのイベントをやってるらしいよ」
「ゲームって、スマホとかの?」
「そういえば皆さん、携帯ずっと見てたかも」
「携帯電話で、ゲームをやるのかい?」
「そうですよ、店長。結構面白いんです」
「あっ、瑞樹君、ありがとう! 交代するよっ!」
 大丈夫ですよ、と言ってトレーを拭きながら、皆の雑談に耳を傾ける。家族のようで、見ていて微笑ましいのだ。
「このパチンコを指でスライドし、離して球を飛ばす。うまくブロックに当てて崩すんです」
 シンプルだが、人気を博すそのゲーム。やらない瑞樹でさえ存在は知っていた。どうやらそれを店長に教えている様子。
「あ、行き過ぎですっ、店長」
と聞こえると思わずフフッと笑う。

 すると「あ、いいですか?」と声がした。
「あ、はい! いらっしゃいま……」
と言いかけた相手の顔に、凍りつく。
 クラスメートと真正面に向き合っていた。同様あっという顔をしている。どうしようと気が動転するが、それでも無骨な態度は取れない。勇気を振り絞り坦々と業務をこなした。
 うわっ、こいつこんなとこでバイトしてんの? 信じらんねぇ。
 という心の内が伝わるようで、震えた。
「お待たせしました、ありがとうございます」
と声も笑顔も引き攣る。
 相手はトレーに手を掛けるとこちらを一瞥した。
 そして、
「バイト、してんだな……頑張れよ」
 そう言って、去って行った。
 ドクドクドクと鼓動が収まらない。
 思いがけない言葉が、耳の奥で木霊していた。
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