女神同棲 〜転生に失敗しましたが、美人で清楚な”女神様を拾った”ので、甘々な新築生活を目指します!〜

杜田夕都

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第32話 女神様との別れ

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 部屋に入ると、祖父と月江さんが座って待っていた。
 俺たちは向かい合う形で座る。

 どんなに酷いことを言われても絶対に負けない。
 やってやるぞ。

 「あの、」

 俺が言葉を発しようとしたが、セラフィーラさんに止められた。
 ばっちこいと言っていたし、ここは一旦、セラフィーラさんに任せてみよう。

「セラフィーラと申します。よろしくお願いいたします」

 セラフィーラさんは礼儀正しく挨拶をした。

「父からセラフィーラさんにいくつか質問があるので、お答えしてもらえますか?」
「承知しました」

 月江さんの言葉に、セラフィーラさんは頷く。
 静かな質疑応答が始まった。

「颯人とはどういう関係だ?」
「同棲しています」
「職業は?」
「一ヶ月半前までは働いていましたが、現在は無職です」
「一ヶ月半前の職業は?」
「お答えできません」

 二ヶ月前の仕事は天界での転生だ。答えられるはずがない。
 なんだこれは? まるで取り調べみたいじゃないか。

「東京からわざわざ来た理由はなんだ?」
「はやとさんの戸籍を取得するためです。戸籍があれば、お仕事を続け、アパートをお借りできるのです」

「颯人のことはどう思っている?」
「どう、と言いますと?」
「大切に思っていますか?」

 月江さんが抽象的な質問に補足をする。

「はい。大切に思っております」

 恋愛感情はないと分かっていても、真っ直ぐな言葉に、俺は顔を熱くした。

「お前と颯人が別れたら、颯人をここに住まわせ、働かせてやる、と言ったらどうする?」
「ちょっと、待ってください! なんで俺たちが別れなきゃ行けないんだ!」

 俺は耐えかねて声を荒げた。
 家、仕事? そんなことどうでもいい。セラフィーラさんと一緒にいたい。

 セラフィーラさんの手が、俺に優しく触れた。
 そうだ、ビシッと言ってやれ。

「はやとさんのためになるのであれば、お別れいたします」
「え?」

 嘘だろ?
 血の気が引いていく。

「そうか。ならば、今すぐ出て行きなさい」
「承知しました」

 セラフィーラさんは俺から手を離して、立ち上がる。
 は? 意味不明すぎて体が動かなかった。
 急すぎるだろ。

「今までお世話になりました。短い間でしたが、はやとさんとお過ごしできて、とても楽しかったです」

 セラフィーラさんは、深く、深くおじぎをしてから後ろを向き、戸を開けようとした。
 本当に出ていくつもりだ。

「嫌です。セラフィーラさんと一緒にいたいです」

 セラフィーラさんは止まらない。
 俺は、手首を強く掴んだ。

「行かないでください!」
「引き留めないでください!」

 セラフィーラさんはか細い声でそう言った。
 嫌だ。こんな急展開、納得できるわけない。

「待ちなさい」

 祖父が場を止めた。

「二人の思いはよく分かった。俺が悪かった。すまない」

 祖父が頭を下げだした。
 理解が追いつかない。

「ごめんなさい。二人を試すようなことをしちゃって。こうでもしないと父が納得してなくて」

 月江さんからも謝罪された。
 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした俺は、月江さんの説明を聞いた。

 祖父はセラフィーラさんをどうしても信用できなかった。
 俺が利用されているのではないかと疑っていたのだ。
 だから、俺と別れろ、と命じたときに、素直に俺のために別れるのかを検証したという。
 他にもやり方があったんじゃないのか。少し腹が立った。

「ってことは俺たちは別れなくていいんですか?」
「そうね」

 ほっとした。肩の力が抜けた。

「あっすみません。セラフィーラさん」

 俺はセラフィーラさんから手を離した。ずっと力を入れて握りっぱなしだった。

「う゛ぐ……」

 うぐ?
 セラフィーラさんが振り返る。
 セラフィーラさんは目に涙をためていた。

「ごめんなさい! 痛かったですか!?」
「いえ……違います……」

 涙がこぼれ落ちた。
 
「涙を堪えて出て行こうとしたのですが、ほっとして溢れ出てしまいました……」

 セラフィーラさんも別れたくなかったんだ。

「ふえっ!?」

 俺はたまらず、セラフィーラさんを抱きしめた。

「ずっと一緒にいましょう」
「はい゛」

 祖父と祖母がいるのを忘れて抱きしめ合った。

「こほん」

 祖父の咳払いで、俺たちは体を離す。
 顔が真っ赤になった。

「改めて謝罪をさせてくれ。本当に申し訳なかった」
 
 今の俺たちを見て、何かを思ったのか、祖父は深く頭を下げた。

「戸籍の申請に協力しよう。引っ越し代も全額援助することを約束する」
「本当ですか!?」
「ああ」

 俺とセラフィーラさんは手を握って喜びを分かち合った。
 温泉に入ってから、心なしかスキンシップが多くなった気がする。
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