うっかり聖女を追放した王国は、滅びの道をまっしぐら! 今更戻れと言われても戻りません。~いつの間にか伝説の女王になっていました~

珠川あいる

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第2章『聖女王フローラ』

第33話「神聖王国アタナシア」

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「では、聖都の名はユハ、国名はアタナシアとします。フローラさま、それで宜しかったでしょうか?」

 フローラはこくりと頷いた。そしてひと呼吸置いた後にこう宣言した。

「今からこの地が聖都ユハであり、神聖王国アタナシアとなります。貴方たちの献身と信心が神々の御許へと届くように。この私も聖女王として国と民と、神々にお仕えしたいと思っています」

「聖女王フローラさまに!」

「女王陛下に!!」

「「「聖女王陛下フローラさまに、身を粉にしてお仕え致します!!!」」」


 この瞬間を以てもって、マイオ島に神聖王国アタナシアが生誕することとなった。

 王都の名は聖都ユハ、勿論、フローラの母親の名である。
 そして国名のアタナシアは、不滅を意味する神々の言葉だ。フローラはこの地から神々の不滅の恩恵と、恩寵を、あまねく大陸の全土にもたらすために、アタナシアと名付けたのだ。

 神聖王国アタナシア誕生の知らせは、大陸中を瞬く間に駆け巡り、諸国の間にさまざまな影響を与えていた。
 もともと絶大な名声を勝ち得ていたフローラなので、建国の知らせは市井の者たちにとっては、女神が降臨したとばかりに大陸のあちらこちらで大歓迎された。
 ただ、それらの事は事前に懸念していた、ある問題を助長する事にも繋がっていった。
 
「ヴァレンテさまに頂いた資金と、百余名の信徒たちのお陰で何とか国の体裁は取れていますが……」

 芳しいとは言えない報告書を片手に、ヴァージルが聖都の現状を説明しているが、差し当たった問題に言葉を詰まらせてしまった。

 マイオ島を差し出したルッカに追従して、トスカーナとリグリアからも物資が届く予定ではあるが、もともと望んで得ようとしたわけでもないし、催促するのも体裁が良くない。
 そう言った事情で自分たちで現状の問題に取り組む必要があった。

「まずは食糧問題ですね。食は国の基本ですから……ただ、今から種を植えても収穫はおよそ四か月後です」

 ヴァージルの言わんとする事を、自身の見解を踏まえてリコ司祭が補足を加えた。

 フローラは一瞬、『野菜の杖』が脳裏に過ぎるよぎるが、彼女はアレに手を触れると錯乱する謎の病に冒されている。最近では『ニラ』が食卓にのぼるだけで様子がおかしくなる。
 その為、神聖王国アタナシアでは、『ニラ』は悪魔の食材として忌避されていた。

「そうなると海か森に、当座の収穫物を求めるしかありませんね」

 剣聖クレールが女王のすぐそば侍りはべりながら意見を述べた。

 女王フローラの身辺は、すぐ隣をクレールが警護し、この簡易な謁見の間を総勢十名の女王の親衛隊が守護している。
 親衛隊は全て女性だけで編成されていた。栄えある初代の親衛隊隊長にはアナスタシアが選ばれた。

 当初はミランダが選出されたのだが、元オルビア王国の中核を担っていた事で、愚王に加担した自分が栄誉を与るあずかるわけにはいかないと固辞している。
 勿論そんな風に彼女を見ている者は誰一人として居ないのだが、それが彼女なりのプライドだったのだ。

「海か森なら、まずは森でしょうか?」

 フローラが感想を述べた。
 彼女にとって国政を担うのは、ほとんど初体験に近かった。

 しかし、彼女の元にはその道のエキスパートが揃っている。

 建国の噂を聞いてあの男からも帰参の願いが届けられ、フローラは二つ返事で了承している。
 オルビア王国の滅亡は切欠を作ったのはフローラだが、実際に滅ぼしたのは希代の軍師シバだ。

 そのシバがアタナシアにやってくる。
 しかも、ただやってくるわけではない。実に彼らしい手土産を携えてやってくる。

「そうですね。森林地帯の調査も兼ねて人を派遣しましょう」

「それならば私が行きましょう。これでも数年前までは領地経営していましたし。クレールさまのほうが経験豊富でしょうけど、女王陛下の警護の任がありますので」

 元男爵だったヴァージルが手を挙げた。彼には数年間の交易商人としての豊富な知識と経験もある。

「ならワシがヴァージル殿の警護を担おう。お爺ちゃん枠と言っても無駄飯を食らうつもりはないぞい」

 そう言ってユリウス将軍が『ハッハッハ』と笑った。

 四散していた将軍の配下の者たちも、およそ半数がアタナシアに集っている。
 今のこの国の主戦力は、彼ら元オルビア王国の王立騎士団だった。
 フローラが盟主を引き受けた代わりに解放された者たちだ。

 彼らはフローラの為ならどんな事でもするし、率先して死を厭わずいとわず戦うだろう。

「では、森林の調査をヴァージル卿に命じます。良い成果を期待していますよ」

 片膝をついて『拝命します』とヴァージルは、とても満ち足りた顔でそう言った。





*****

ベタな内政エピソードにはしないと思います(´ー+`)

*****

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