タイムクロノス

うえ野そら

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恋ってさ

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クリスマスに雪が降ったのはいつが最後だっただろう
手袋をしなくても歩ける夜道を
恋人たちが手をつないで通り過ぎていく
結局、男が手が冷たいから
ポケットに彼女の手を連れて行く

うれしそうに、愛おしむように
ずっと恋人を見上げながら歩いている
そうでなければ見下ろしている
背が近いとキスしながら歩いていそうだ

恋人という関係性は
なんて不安定なんだろうと思う

恋が始まりと同時に終わりを内包している事を、みんなきっと知っている

好きになれる人
結婚しようと想える人の違いは
道を歩いている時が一番わかりやすい気がする
もちろん
自分達ではわからない
夢中になっているわけだから
『夢中』
まさに夢の中
自分が夢の中にいる事は時々わかる
自分の自由に出来たり出来なかったり
場面展開が突然あったり
でも
自分では夢から抜け出せない
恋に夢中になっている人を
遠くから見ていると
よくわかる
どちらか一方だけが背伸びしていたり
見ないふりをしたり
一瞬の光の様な強い輝きでもって
自分達を焦がしていく
見ていて落ち着かないのだ
どこかに不安を内包している
実際には相手をみているようでいて
自分の事ばかり見ている
きれいに見えているか
格好良くいれているか
ちゃんとエスコート出来ているか
エトセトラ
テストの様なデートを繰り返す恋人たち


結婚するということは
恋のチャンスを永遠に放棄するという事だ
別に何も夫婦間の恋心を否定するわけではないけれど
そもそも、恋というものは状態であって常態ではない。
愛の様に安定していないので常に不安定。
だから、きっと毎日のドキドキだって毎日続けば日常になって、当たり前になって、刺激としては低くなる。
毎日愛をささやきあう外国人夫婦は
愛の囁きが無くなると離婚するとかいうらしい。
当然、変わりとなる新しいドキドキなんて、浮気するしか得られないではないか?!

大丈夫か?君たち。
そう思いながら、先へ急ぐ。
行き先はドイツクリスマスマーケット。
会う約束はしていない。
『会えたらいいね』と交わしたメールには日付を入れていない。
いつからだろう。
茉莉(まつり)という名前は、両親で良いと想う名前をプレゼンしあって、妊娠中にジャスミンの匂いに包まれて穏やかでいれた、って事から来ている、と言っていた。
なんかいいね、というと『でしょ』とはにかんでいた。
最後に会った時の話。
桜が宇宙一面を覆うように吹き舞っていた春の夜。
しっかり抱きしめ合って長い永いキスをした。
きっと最初で最後のキスだと、そう想う。
あれから3年。
それでも不定期に手紙の遣り取りがあって、茉莉の送ってくる文章にいつも力を貰う
負けてられないなぁ、と想うから、毎日を力強く生きている。
セカンドパートナーという話題がひとときあった。
でも、そうではないと想う。
キスは契約だった。
お互いこれ以上踏み込まないための。
特別な関係。そんな大層なものではなく、生きて行くにおいて、必要なものが、たったひとりの人で賄える、夫婦だけですべてを完結できる、妻を満足させられていると、言い切れるものが、どれほどいるという。

だから、桜の日から約束をしなくなった。
手紙には予定の予定を時々入れる。

クリスマスツリーは高く伸びてビルに連なるようだった。
双子ビルの間にあってビルの天井が見える。時々、天井に落ちそうになる錯覚を楽しんで、マーケットを回っていく。
かわいい屋台に並ぶクリスマスグッズを手に取る。茉莉に渡す事はない。それも毎年の事。

結婚するまでは恋人たちは別々の空間で生活し、自分たちの時間を過ごす。
夫婦になるということは、同じ空間で過ごし2人の時間を生きる。
本屋さんに寄りたい気持ちは自分のもの。その時間もわたしにください。
そう言われた時に、自分の時間の喪失を知る。
恋人同士でさえ、自分の時間は大切だというのに。
時間の奪い合い。これを愛というのか、相手を想って相手の時間も大切よね、という事が愛というのか。
どちらの愛が未来を育むのか。

悔しいけれど後者だということに気づくのに10年かかった。
茉莉は『女をやめる気はない』という。彩りのない人生なんて、と。
でも、強制はしない。そういうキスだった。

『墓場まで持っていく嘘』を僕は幾つか持っている。
より妻を愛することになる、というと偽善と言われる類の嘘。

 目の前を茉莉に似た女性が通り過ぎていく。本人かも知れない。
でも僕に気づかなかった。なら、それまでだ。
マーケットには殆どが家族や連れ合いと来ている。その中でひとり、屋台をぐるぐる回って、グッズを手にして帰路に着く。
 まだまだやって来る人も多い道をかきわけるように歩いて、高層ビルを見上げる。
降って来るようなイルミネーション。まだまだ続く道を歩いて帰ろうと思う。
 どうしたら、この景色を見せられるかな、とか考えながら。茉莉はきっと見てる。
見ようとしないひとに、どうしたら見せられる?

矛盾かな、裏切りというのかな。
すべてのすべてをひとりの人に捧げたとして受け容れて貰えなかった想いはどこへいくのかな。

恋において
好きになりすぎると、重たくなり過ぎるからとか、恋心にブレーキかけてみたり、自分を磨け!と自分にかけた時間をすべて捧げる。


仮想の好きを見つけて
届かない想いの分を納めていく。
そういうものなら許される?
よくはわからないから嘘をついて嘘をしまって、あなたの元へ帰る。


時計を見上げる
大きな時計には秒針はないから
タイムクロノスって
ちょっと違うけれど、そんなズルも状況によっては、いいよね、と想う。

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