my art story

エースパイロット

僕の名前は楽風直人。
今をときめく地球軍期待のエースパイロット。
今日の実戦テストも好成績で、お偉いさん方から絶賛された。
「いやー、まいったな。」
最後の最後までお褒めの言葉を頂いて、僕はニヤニヤしながら機体から降りた。
「お疲れ様です、楽風さん。」
そこへ女の子が駆けつけて来た。
僕と同じくらいの歳だろうか、ロングヘアの可愛らしい子だった。
「ありがとう。君、外から見て僕の動きはどうだった？」
僕はクールに言った。
「私、感動しました！あんなに動かせる人、初めて見ました。すごいすごい！」
女の子は、とても嬉しそうに言った。
「ありがとう。君、お名前は？」
僕は満面の笑みで聞いた。
「あっ、申し遅れました。私、今日から楽風くん専属の整備士をするようにと、命令されここに来ました。ユーコと申します。」
マジで！？こんな可愛い子が僕の！
僕は平然の顔で、
「そうなんだ。僕は聞いてないけど？」
確かに僕は、こんな子が来るなんて聞いてない。もしや、これが噂の！確かに周りは誰もいない、僕と彼女だけだ。あぁ、神様、仏様、地球軍様！
「くっ、ちょっと眠くなってきたな。」
僕は男らしく言い、僕の専属のユーコにウインクした。
するとユーコは照れた顔で、
「わ、わかりました。先に機体の方を整備して来ますね。」
と、急いで僕の機体の方へと向かった。
大丈夫だよユーコ。僕は、いつまでも待っているから。
僕は汗ばんだ服を脱ぎ始めた。
すると、
ドカーン！
ものすごい音がして警報が鳴り始めた。
「なんじゃー！？」
僕は、なんとも変な格好で周りを見た。
ガレージのシャッターが見事に穴があいていた。おまけに、僕の機体が穴の方へ向かって動いている。
「ユーコ？」
僕は戸惑った。
「バーカ！気持ち悪っ！この機体もらって行くわよ、エースパイロットさん！」
僕の機体と一緒にユーコは外へと飛び立った。
「何事だ！楽風！」
赤坂さんが来て怒鳴った。
「すみません！赤坂さん、何者かに機体を奪取されました。不覚にも自分が着替えている最中に銃を突きつけられ、反撃しようにもこんな格好でして、すみません！」
僕は必死に作り話をし、その事にも女に騙された事にも自分の情けなさにも、全部ひっくるめて泣いた。
「楽風、泣いても騒いでも何も戻ってこんぞ！さっさと行くぞ、出撃だ！」
赤坂さんは僕を揺さぶった。
「しかし、僕の機体は奪取されて。」
僕は嘆いた。
「じーさん！あの機体、楽風に渡すぞ。いいな？」
赤坂さんは叫んだ。
いつの間にか周りにはたくさんの人がいて、その中から老人が僕の前まで歩いて来た。その老人は今日、僕を褒めてくれた人達の1人だった。
「楽風、別に誰もお前を責めてなんぞおらん。侵入者を許した我々老ぼれじゃわい。だから気にするな楽風よ、お前には老ぼれには出来ん力がある。楽風よ、立ち上がれ！」
僕は立った。今はもう涙はでていない。過去は変えられない、だが未来は変えられる。
「お前にアナザーアースのパイロットとして任命する。楽風、出撃せよ！侵入者を捕獲、出来なければ排除せよ！」
じーさんは、周りがびっくりする程の声で僕に命令した。
「任務了解。これより楽風直人、直ちに向かいます！」