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聖騎士ロイ編
第6話 勇者、聖騎士に保護される(1/3)
しおりを挟む午後の光が斜めに差し込む、少し寂れた商業区の外れ。
人通りはほぼなく、どこか気だるい風が吹き抜ける通りの片隅で、俺は――会いたいような、でも今この瞬間には絶対会いたくなかった相手と鉢合わせしてしまった。
(わ、ワァァァ……最悪だぁ~~!!)
軽やかに揺れるスカート、フリル付きのブラウス、薄く化粧した顔。全部、ロイに見られた。
いや、理屈の上では問題ない。俺が“冒険の書”で巻き戻してしまえば、ロイの記憶は消える。俺が女装して酔っぱらいに尻穴突かれた件も、全部なかったことにできる。
――ただ、俺の記憶からは、消えない。
『えっ……ジーク、何をしてるんだ? じょ、女装? お前、そんな趣味が……?』
なんて、引き攣った顔でロイに言われた日には、俺の心も、ちんぽも、二度と立ち直れない。
「ええと、ジーク……」
ロイが、慎重な面持ちで近づいてくる。鎧は着ていないが、その姿勢には聖騎士としての律儀さが滲み出ていた。
「その……格好は……?」
ロイの目が、俺の姿を上から下までじっくりとなぞる。その視線に晒されて、俺の体温が一気に跳ね上がった。
「こ、これはっ、変装!……そう! 勇者って目立つから、街中歩くとすぐ人に囲まれるし! たまにはこうやって変装して……息抜きというか……変装というか……息抜きです!!!」
言いながら、スカーフをぎゅっと顔に寄せ、必死に視線を逸らす。あまりにテンパってて自分でも何言ってるか分からない。
いや、ウソじゃない。ウソじゃないけど、女装を選んでる時点で完全にアウト。しかも直前にやったことが“あれ”じゃなければ、まだ少しはマシだったかもしれないが――
「……そうか、そういう理由か」
ロイはほんの少し目を伏せ、困ったように口元を緩めた。その顔は、呆れと納得が半々で――けれど、どこか懐かしさすらにじませていた。
「ジークは昔から……いや、ほんと、変なところに手間かけるよな。お前らしいけど」
ちょっとだけ肩をすくめながら、淡く息を吐くように言うロイ。決して咎めるわけでも、称賛するわけでもない。まるで、慣れ親しんだ悪友の奇行を“またか”と受け流すような、それだけの言葉だった。
でも――
それでも、ロイのその目はまっすぐ俺を見ていて、逃げずに、揶揄もせず、真正面から“俺という存在”を捉えてくれていた。
あまりにも誠実なその眼差しに、俺は言葉を返せずにいた。
(わ、わ、わぁ~~~っっ♡♡♡)
……なんなんだよ!! その、全肯定でもなく全否定でもない、絶妙すぎる距離感!! 信頼の形が……! 信頼の形がッ!!! じわじわ脳に効くッ!!!
(しゅきっ♡♡♡ ロイだいしゅきぃ~~~♡♡♡)
もうほんと、理性がガバガバ。ちょっとした一言に、俺の脳内では超豪華イチャラブフラグが立ちまくってて、ほとんど幻覚と現実の境が分からない。
「……あ、ありがと……ロイ……」
なんとか声を絞り出して、顔を上げる。顔、熱すぎて溶けそうだったけど、どうにか平静を装う。
そう――こいつは、ずるいくらいに優しいんだよなあ。
だが、次の瞬間。
ロイの表情が、ふと曇る。視線が、俺の顔をじっと見つめる。
そして、その手が――頬へと添えられた。
「……これは……?」
指先が、俺の頬をなぞる。
目の下――そこには、うっすらと残る涙の痕。
「……泣いていた、のか?」
――やばい。
(そっ……それは……っ!
“先ほどおっさんに中出しされた時に出た、快楽のあまり溢れた涙の跡”ではないか!!!)
ロイの瞳がすっと細められる。次に彼の目は、俺の服装全体をなぞるように動く。
着崩れたままのブラウス。襟元に残る、わずかな乱れ。
ぐしゃぐしゃに皺が入ったスカートの裾、そこには明らかに“何か”がついた不自然な染み。
……完ッッッ全に、“何かされた後”の格好ですねっ……!!!
「……」
気まずい沈黙。焦る俺。何か言わなきゃ。
(ちんぽ遊びしてたなんて言いたくない……!!!
もう、ここはさっさと戻すか……?)
冒険の書を入れたポシェットに、手を伸ばそうとする。
でも、そこで俺は――ひとつの希望に気づいた。
(……ん? 待てよ。これ、逆にチャンスでは……?)
俺の脳裏に、下衆な電光が閃く。
(そうだ、俺は今……“傷ついた被害者”ムーブができる!)
我ながら、最低である。
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