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魔術師アッシュ編
第15話 勇者、村を救う(1/2)
しおりを挟む前夜、傭兵から得た情報を頼りに――俺たちは村近くの渓谷へと足を踏み入れた。そこには、噂通りの魔物の群れが待っていた。
渓谷の裂け目にこだまする、魔物の咆哮。
足元を滑らせぬように注意しながら、俺は剣を構えて走り込む。
残る敵は、二体。
片方が牙を剥き、低く唸りながらこちらに飛びかかってくる。だが、俺の視線はその奥。飛びかかってきたやつはどうでもいい。なぜなら――
ガキンッ!
鋼を打つような音とともに、ロイの盾が魔物の突進を受け止めた。
「こっちは任せろ!」
「よろしくっ」
短い言葉を交わし、俺はロイの脇をすり抜けて前へ。
奥の魔物が、今まさに踏み出した――その瞬間、視界の端で淡い光が爆ぜる。
「――<セイクリッド・チェイン>!」
イリアの詠唱とともに、魔物の足元から鎖のような魔力の帯が立ち上がり、動きを封じる。
一気に距離を詰める。
「ハッ!」
腰をひねり、剣を振るう――斬撃が魔物の首筋に深々と入り、血と体液が弾け飛ぶ。顔をしかめる間もなく、構えを切り替え――
「とどめだッ!」
喉元、急所を狙って、ひと突き。
魔物が断末魔の叫びをあげながら崩れ落ちた。
呼吸を整えながら身を引く。手にした剣から滴る魔物の血が、地面に染み込んでいった。
「お見事です、ジーク様!」
「イリアも、ナイスサポート! タイミング、完璧だったよ」
明るい声に振り返ると、イリアがローブの袖で額の汗を拭っていた。その表情は、いつになく嬉しそうだった。
「いえいえ、私の援護を信じて突撃してくださったのが嬉しいです!」
そんな彼女の言葉に、思わず頬がゆるむ。
……と、視界の隅で、ぱきんっという音がした。
そちらを向くと――
一体残っていた魔物が、見事な氷漬けになっていた。
「……アッシュ。それは何なんだよ」
氷を前にして立つアッシュは、どこか得意げに口元を緩めると、指先で氷の表面を軽くコンコンと叩いた。
その指には、細身の銀環や古びた魔石付きの指輪がいくつも光っている。装飾品というより、戦士の道具のような無骨さがあったが、それでも彼の長く整った指に嵌められると、不思議と絵になる。
「新しい魔法を試してみたんだ。どうよ、最ッ高にクールだろ?」
軽口を叩くその声とは裏腹に、彼の手つきは妙に滑らかで、繊細だった。そのくせ、どこか無造作で、男っぽくて――
(……その指で、乳首、捏ねられたい……)
昨日のクソ乳首抓り傭兵とは違う、あの器用そうな指で。ちょっと意地悪く摘まれて、ぐりぐり押し潰されて。
(俺の、いやらしく膨らんだ敏感乳首を笑われながら攻められてぇ~~~~っっ!!!)
ああもう、ダメだ。
戦闘後の興奮と汗のにおい。火照った体。ちょっと荒い呼吸。
その全部が、下半身に直結してる。
(戦闘直後なのに脳が完全にエロスイッチ入ってるの、やばくない?)
こめかみに手を当てて、やり場のない衝動を振り払う。
すると、横でイリアが半ば呆れた声を上げた。
「討伐報告には証拠が必要だと、何度も申し上げてますよね?
氷漬けだと、牙とか爪とか取り辛いじゃないですか……」
「おーけーおーけー、じゃあ燃やすから――」
「や、やめろよ! お前、爆散させた前科あるだろ!」
慌てて止めると、アッシュが肩をすくめる。
不意に、落ち着いた声が背中に届いた。
「……俺がやろう」
振り返ると、ロイが静かに前に出てきた。その左手には、いつもの大きな盾。
「ジーク、ちょっと預かっててくれ」
「……え、ああ……」
言われるがままに受け取った瞬間、ロイの背中がすっと伸びる。両手で剣を握り直すと、その姿がまるで別人のように凛として見えた。
陽の光が、彼の茶髪を柔らかく照らす。どこか神聖さすら感じさせる、その背中に一瞬、息を呑む。
一歩、また一歩。
呼吸を整え、剣を構え、集中を極限まで高めて――
「――はぁっ!!」
すぱぁんっ!
氷塊と魔物を、一閃。
空気が鳴り、氷の破片が陽光を受けてきらめく。
魔物の爪が含まれた氷の一片が落ち、ころりと足元に転がった。
――美しかった。
いやもう、戦闘技術とかじゃなくて、なんかね……存在自体が美しいんだよ、ロイってやつは。
剣を納めて、照れくさそうに微笑むその顔も、一段と輝いていて。
(あぁ……やっぱりカッコいい……)
さっきまで“アッシュの指で乳首捏ねられたい♡”とか思ってた脳みそが、一瞬で、“ロイちんぽ♡”に塗り替えられていくのが分かった。
ふざけんな、イケメン。
なんでそうやって、一言も口説かずに、こっちの心を攫っていくんだよ。
お前のそういうとこが、いちばんズルい。
(……くそ、完敗だわ)
ロイに盾を返しながら、俺は、静かに心の中で確信する。
――本日のおちんぽ、決定です。
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