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屋島
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その夜。義経に従っている兵も馬も、みな疲れてきっていた。あるものは兜を枕に、またあるものは箙を枕にして、泥のように眠っている。
義経は体を休めようとしたが、やはり頭が冴えていて、目を閉じていても眠れそうになかった。しかたがないので、地面に吸いついたまま離れなくなるのではないかというような足を引きずって、小高い山をひとり登った。
木々の葉が擦れる音が、波の音に混じって騒々しい。
頂上に近い場所は開けていて、沖にひしめく平家の舟がよく見える。篝火を灯した大きな舟には、主上らが乗っているのだろうか。まだ幼い主上である。かわいそうなことだと義経は思った。
いま夜襲をかけられたら、ひとたまりもないだろう――義経は自嘲気味に笑った。明日はどう動くだろうか。源氏勢が少数だということに、さすがに気がついているだろう。志度のほうから回りこんで背後を突かれるかもしれない。それとも数を頼みに一気に押してくるだろうか。
いずれにせよ、明日になれば援軍が来るはずである。しかし、あの嵐で援軍の出航が遅れているのではないか――よぎりそうになる不安を、義経はこめかみを叩いて追いやった。
河野四郎通信は、きっと来る。なぜか、そんな予感はあった。ほんの数回会っただけの男をよく信じているものだと、義経は我ながら呆れた。
「熱心ですねぇ」
ふいの声に、義経は振り向いた。いつのまにか、背後に伊勢三郎が立っていた。
「気配がなかったぞ」
「そっすか?」
気怠そうに首をかしげて、伊勢三郎が木の根元に腰をおろした。義経もそのとなりに腰をおろす。
「お前こそ熱心じゃないか」
「おれは、もともと山賊ですから。夜は得意っす」
「昨夜はいびきをかいて寝ていたくせに、よく言う」
「あっは。それもそうね」
伊勢三郎は懐から竹筒を取りだした。「ほかの連中には内緒っすよ」と口元に指を立てると、義経に飲むように勧めた。
酒だった。
「判官殿って、ほんと武士が嫌いですよねぇ」
唐突にもたらされた伊勢三郎の言葉に、義経は息をのんだ。おそらく寝ているふりをして、昨晩の忠信との会話を聞いていたのだろう。
「そんなことはない」
「隠したって無駄っすよ。おれみたいな素性の知れないもんを横に置くってことはそうなんでしょう」
「お見とおしか」
「おれは夜目がききますからねぇ」
「でも、おれは源氏の子だから」
竹筒の中身を一気に煽った。じんわりと鳩尾が熱くなる。
「判官殿はこの戦が終わったらどうするんです?」
「どうって、言われても」
「鎌倉殿のもとに帰るんですか」
「まあ、そうなるな」
「やめたほうがいいっすよ」
伊勢三郎が、義経の手から竹筒を奪い口をつけた。
「なんか、あそこ息が詰まりません」
「それにどう答えろと」
義経は竹筒を奪いかえして、甘露を口に含む。
「いっそ出家でもしたらいいんじゃないですか」
「おいおい、僧侶になるのがいやで鞍馬寺を飛びだしたのに?」
「ははは。そうだったっけか」
「おれが出家したら、お前はどうするんだ」
「そっすねぇ。また鈴鹿山で山賊でもやろうかな」
あまりにも軽々しい答えに、義経はおかしくなって笑った。
「そうしたらおれが討伐してやる」
「坊主が賊を討伐って、いろいろすげぇっすね」
伊勢三郎が手を叩いて笑う。笑いながら、義経が取り落としそうになった竹筒を、横からさっと奪った。さすがに山賊だ。手癖が悪い。義経は、ぼんやりとした頭で思った。
「ねむい」
「ま、眠ったほうがいいですよ。おれが見張ってますから」
そこから記憶がなかった。伊勢三郎に肩を揺すられるまで、眠りこけていたらしい。
「判官殿、見てくださいよ」
伊勢三郎の指さす方向を見る。朝靄のなか平家の舟団がゆるゆると移動している様子が見えた。
「平家のやつら、どこいくつもりですかね」
「志度寺のほうじゃない?」
「寺に行って、いまさら戦勝祈願でもするんすかねぇ」
「背後から攻めようって魂胆だろう」
「はあ、なるほどねぇ」
目を擦っている義経の横で、伊勢三郎がしきりにうなずいていた。しかしこの男も、ここ数日ろくに眠っていないのではないだろうか。まったく平気そうにしている伊勢三郎を、義経は見なおした。
平家が志度島に向かったのはむしろ好都合かもしれない。河野通信を攻めていた田口の軍勢は、屋島の御所に戻ってくるだろう。無残にも焼かれた御所を見て、田口はなにを思うだろうか。彼らが平家と合流をする前にこちらから干渉すれば、あわよくば調略できるかもしれない。義経は顎をしゃくった。
「お前に頼みがある」
「なんなりと」
「屋島の御所の焼け跡に、そろそろ河野を攻めに行っていた田口教能が帰ってくるころだ。ちょっと黙らせてこい」
「どうやって」
「任せる」
「三千騎でしょう?」
「だからお前に言ってるんだよ」
困惑した表情を浮かべていた伊勢三郎だったが、少し考えるように頭をかたむける。しばらくしてなにか思いついたのか、にやりと口の端をつりあげた。
「ふぅん……まあ、平家の本体と合流させなければいいってことっすね。じゃあ、二十騎ばかり貸してもらえます? 別に精強じゃないやつらでいいんで」
義経は山を駆けくだると、すぐに八十騎を率いて志度へと向かった。義経のかたわらには忠信がぴたりとついてくる。まるで兄継信のように振るまおうとしているかのようである。残りの二百騎は田代冠者と金子十郎に任せている。二人には、わざと遅れてくるようにあらかじめ言い含めていた。
義経の率いる兵の数を見て、この程度のものならばと思ったのだろう。平家方の舟から兵たちが浜におりて来た。義経は兵たちのなかに教経の姿を探したが、やはり見つけることはできなかった。
予定どおり遅れて馳せきた二百騎が、義経たちを取りかこもうとしている敵兵の背後を突いた。これに恐れをなした兵たちは我先にと退却をはじめ、しばらくするとみな舟の上へと戻ってしまった。
味方の水軍はまだか!
義経は内心焦っていた。もし、伊勢三郎が田口教能の説得に失敗したら。もし、水軍があらわれなかったら。今度こそ、義経たちは取りかこまれて討ち取られるだろう。
それはいい。だったら教経には一矢報いたい。だというのに、あれ以来教経は、まったく戦場に出てくる気配がない。もしや教経みずからが抱えあげて去った兵は、義経にとっての継信のような存在だったのだろうか。しかし、だとしたら仇を討ちに出てくるのものではないか。
そうこう思いを巡らせていると、ざっと、平家の舟団が乱れた。なにごとかと思い目を懲らすと、沖のほうで白旗を靡かせた舟が、赤旗を掲げる舟のあいだに割り入っていた。水夫に掻盾を持たせ、しきりに矢を射こんでいる。それらは平家の舟とは、遠目に見ても機動力が違った。
白波に鮮やかに映える赤地錦の鎧直垂の男が、浜に向かって手をあげている。
河野四郎通信だ。
予期せぬ源氏水軍の出現に、平家方の舟が次々と後退する。それを逃さじと、兵たちが熊手で舟を引きよせては敵の舟に飛び移り、散々に射たり斬ったりしている。手近なところに屠る舟がなくなると、通信を乗せた舟が浜に近づいてきた。
「あれ、かぶった」
砂浜に駆け寄るなり通信が目を丸くする。通信も義経と同じ赤地錦の鎧直垂姿だった。
「梶原殿の水軍は」
「今日は無理じゃないですかね」
「一部だけでも?」
「や、一部が来たところで、どうせ意味がないですから」
この平家の大舟団をかこみきれないと――とつけたして、通信が口を尖らせる。
「だったら来ないでしょ。梶原殿ってそういうひとではなかったでしたっけ?」
「普段から遅刻魔ですしね」
義経がため息をつくと、通信が朗らかに笑った。
「背後からの追撃がないところをみると、伊勢三郎が上手くやってくれたようです」
「というと?」
「河野殿と戦っていた田口の調略ですよ」
「あっ!」
通信がなるほどといった表情で頬をかいた。
「流石ですね。そこまで考えてなかったです」
くしゃりと、愛嬌のある目元に皺ができる。直垂の着崩れた胸元から、懸守がのぞいた。こんなものを着けそうにない男だと思っていたが――合戦の最中だというのに、酒をのんで遊んでいる時と、さほど変わらない雰囲気で、どこか抜けている。ようよう不思議な男だと義経は感じた。
「四郎!」
舟のほうから声がかかり、通信が振り向く。
「平家のほうに動き!」
「待って、そっち行く!」
義経も沖を見る。数艘の中型舟が河野の舟に対峙するように陣型を整えはじめていた。その堅牢さ、隙のなさに、ぴりぴりと戦場の空気が変わるのを義経は感じた。
「河野殿! おれも舟に乗せてくれ」
義経は忠信と弁慶に兵を任せると、通信の背を追った。
義経は体を休めようとしたが、やはり頭が冴えていて、目を閉じていても眠れそうになかった。しかたがないので、地面に吸いついたまま離れなくなるのではないかというような足を引きずって、小高い山をひとり登った。
木々の葉が擦れる音が、波の音に混じって騒々しい。
頂上に近い場所は開けていて、沖にひしめく平家の舟がよく見える。篝火を灯した大きな舟には、主上らが乗っているのだろうか。まだ幼い主上である。かわいそうなことだと義経は思った。
いま夜襲をかけられたら、ひとたまりもないだろう――義経は自嘲気味に笑った。明日はどう動くだろうか。源氏勢が少数だということに、さすがに気がついているだろう。志度のほうから回りこんで背後を突かれるかもしれない。それとも数を頼みに一気に押してくるだろうか。
いずれにせよ、明日になれば援軍が来るはずである。しかし、あの嵐で援軍の出航が遅れているのではないか――よぎりそうになる不安を、義経はこめかみを叩いて追いやった。
河野四郎通信は、きっと来る。なぜか、そんな予感はあった。ほんの数回会っただけの男をよく信じているものだと、義経は我ながら呆れた。
「熱心ですねぇ」
ふいの声に、義経は振り向いた。いつのまにか、背後に伊勢三郎が立っていた。
「気配がなかったぞ」
「そっすか?」
気怠そうに首をかしげて、伊勢三郎が木の根元に腰をおろした。義経もそのとなりに腰をおろす。
「お前こそ熱心じゃないか」
「おれは、もともと山賊ですから。夜は得意っす」
「昨夜はいびきをかいて寝ていたくせに、よく言う」
「あっは。それもそうね」
伊勢三郎は懐から竹筒を取りだした。「ほかの連中には内緒っすよ」と口元に指を立てると、義経に飲むように勧めた。
酒だった。
「判官殿って、ほんと武士が嫌いですよねぇ」
唐突にもたらされた伊勢三郎の言葉に、義経は息をのんだ。おそらく寝ているふりをして、昨晩の忠信との会話を聞いていたのだろう。
「そんなことはない」
「隠したって無駄っすよ。おれみたいな素性の知れないもんを横に置くってことはそうなんでしょう」
「お見とおしか」
「おれは夜目がききますからねぇ」
「でも、おれは源氏の子だから」
竹筒の中身を一気に煽った。じんわりと鳩尾が熱くなる。
「判官殿はこの戦が終わったらどうするんです?」
「どうって、言われても」
「鎌倉殿のもとに帰るんですか」
「まあ、そうなるな」
「やめたほうがいいっすよ」
伊勢三郎が、義経の手から竹筒を奪い口をつけた。
「なんか、あそこ息が詰まりません」
「それにどう答えろと」
義経は竹筒を奪いかえして、甘露を口に含む。
「いっそ出家でもしたらいいんじゃないですか」
「おいおい、僧侶になるのがいやで鞍馬寺を飛びだしたのに?」
「ははは。そうだったっけか」
「おれが出家したら、お前はどうするんだ」
「そっすねぇ。また鈴鹿山で山賊でもやろうかな」
あまりにも軽々しい答えに、義経はおかしくなって笑った。
「そうしたらおれが討伐してやる」
「坊主が賊を討伐って、いろいろすげぇっすね」
伊勢三郎が手を叩いて笑う。笑いながら、義経が取り落としそうになった竹筒を、横からさっと奪った。さすがに山賊だ。手癖が悪い。義経は、ぼんやりとした頭で思った。
「ねむい」
「ま、眠ったほうがいいですよ。おれが見張ってますから」
そこから記憶がなかった。伊勢三郎に肩を揺すられるまで、眠りこけていたらしい。
「判官殿、見てくださいよ」
伊勢三郎の指さす方向を見る。朝靄のなか平家の舟団がゆるゆると移動している様子が見えた。
「平家のやつら、どこいくつもりですかね」
「志度寺のほうじゃない?」
「寺に行って、いまさら戦勝祈願でもするんすかねぇ」
「背後から攻めようって魂胆だろう」
「はあ、なるほどねぇ」
目を擦っている義経の横で、伊勢三郎がしきりにうなずいていた。しかしこの男も、ここ数日ろくに眠っていないのではないだろうか。まったく平気そうにしている伊勢三郎を、義経は見なおした。
平家が志度島に向かったのはむしろ好都合かもしれない。河野通信を攻めていた田口の軍勢は、屋島の御所に戻ってくるだろう。無残にも焼かれた御所を見て、田口はなにを思うだろうか。彼らが平家と合流をする前にこちらから干渉すれば、あわよくば調略できるかもしれない。義経は顎をしゃくった。
「お前に頼みがある」
「なんなりと」
「屋島の御所の焼け跡に、そろそろ河野を攻めに行っていた田口教能が帰ってくるころだ。ちょっと黙らせてこい」
「どうやって」
「任せる」
「三千騎でしょう?」
「だからお前に言ってるんだよ」
困惑した表情を浮かべていた伊勢三郎だったが、少し考えるように頭をかたむける。しばらくしてなにか思いついたのか、にやりと口の端をつりあげた。
「ふぅん……まあ、平家の本体と合流させなければいいってことっすね。じゃあ、二十騎ばかり貸してもらえます? 別に精強じゃないやつらでいいんで」
義経は山を駆けくだると、すぐに八十騎を率いて志度へと向かった。義経のかたわらには忠信がぴたりとついてくる。まるで兄継信のように振るまおうとしているかのようである。残りの二百騎は田代冠者と金子十郎に任せている。二人には、わざと遅れてくるようにあらかじめ言い含めていた。
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予定どおり遅れて馳せきた二百騎が、義経たちを取りかこもうとしている敵兵の背後を突いた。これに恐れをなした兵たちは我先にと退却をはじめ、しばらくするとみな舟の上へと戻ってしまった。
味方の水軍はまだか!
義経は内心焦っていた。もし、伊勢三郎が田口教能の説得に失敗したら。もし、水軍があらわれなかったら。今度こそ、義経たちは取りかこまれて討ち取られるだろう。
それはいい。だったら教経には一矢報いたい。だというのに、あれ以来教経は、まったく戦場に出てくる気配がない。もしや教経みずからが抱えあげて去った兵は、義経にとっての継信のような存在だったのだろうか。しかし、だとしたら仇を討ちに出てくるのものではないか。
そうこう思いを巡らせていると、ざっと、平家の舟団が乱れた。なにごとかと思い目を懲らすと、沖のほうで白旗を靡かせた舟が、赤旗を掲げる舟のあいだに割り入っていた。水夫に掻盾を持たせ、しきりに矢を射こんでいる。それらは平家の舟とは、遠目に見ても機動力が違った。
白波に鮮やかに映える赤地錦の鎧直垂の男が、浜に向かって手をあげている。
河野四郎通信だ。
予期せぬ源氏水軍の出現に、平家方の舟が次々と後退する。それを逃さじと、兵たちが熊手で舟を引きよせては敵の舟に飛び移り、散々に射たり斬ったりしている。手近なところに屠る舟がなくなると、通信を乗せた舟が浜に近づいてきた。
「あれ、かぶった」
砂浜に駆け寄るなり通信が目を丸くする。通信も義経と同じ赤地錦の鎧直垂姿だった。
「梶原殿の水軍は」
「今日は無理じゃないですかね」
「一部だけでも?」
「や、一部が来たところで、どうせ意味がないですから」
この平家の大舟団をかこみきれないと――とつけたして、通信が口を尖らせる。
「だったら来ないでしょ。梶原殿ってそういうひとではなかったでしたっけ?」
「普段から遅刻魔ですしね」
義経がため息をつくと、通信が朗らかに笑った。
「背後からの追撃がないところをみると、伊勢三郎が上手くやってくれたようです」
「というと?」
「河野殿と戦っていた田口の調略ですよ」
「あっ!」
通信がなるほどといった表情で頬をかいた。
「流石ですね。そこまで考えてなかったです」
くしゃりと、愛嬌のある目元に皺ができる。直垂の着崩れた胸元から、懸守がのぞいた。こんなものを着けそうにない男だと思っていたが――合戦の最中だというのに、酒をのんで遊んでいる時と、さほど変わらない雰囲気で、どこか抜けている。ようよう不思議な男だと義経は感じた。
「四郎!」
舟のほうから声がかかり、通信が振り向く。
「平家のほうに動き!」
「待って、そっち行く!」
義経も沖を見る。数艘の中型舟が河野の舟に対峙するように陣型を整えはじめていた。その堅牢さ、隙のなさに、ぴりぴりと戦場の空気が変わるのを義経は感じた。
「河野殿! おれも舟に乗せてくれ」
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