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Ⅱ 君とオリンピックに行きたい
23 全力鬼ごっこ
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由佳とは毎日メールのやり取りをした。
「あなたが教えてくれたシェイクスピアやディケンズの本は面白かった。
でも日本史の本はすぐ眠くなる。数学の問題を解く方が楽しい。
今コンピュータでマラソン練習のプランを作っている。
怪我をしないでね。早くジュンに会いたい」
俺も君の顔が見たい。夜はずっと君のことばかり考えている。
東北に来て6日目。さすがにがれき処理の仕事は疲れてきたので、釜石市の小学校で行われる夏祭りの支援に行くことにした。
運動場に櫓を組み立て、長い電線に電球と笠を取り付けたらもう終わりだ。
まだ1時でバスは4時発。若い男は淳一だけで、他の人はそうめん流しの準備をしている。
そのグループに入りそびれ、朝会台の上でぼんやりとしていた。
「ねえ遊ぼう」
振り向くと5人の男の子がいた。
「いいよ。何をする?」
「鬼ごっこ」
朝会台を飛び下り、長靴を運動靴にはき替えた。
知らない間に人数が増え、鬼は全員で淳一だけを追いかけるルールに変わっていた。
必死に運動場を逃げまわり、捕まってもすぐに「もう一度」と言って追いかけてくる。
途中からシャツ一枚になって走り回った。
炎天下、さすがに子供たちも疲れたのか、一緒に木陰で座り込んだ。
ペットボトルを飲み干したら、子供たちがまたやろうと催促してきた。
子供のパワーは無敵だな。
また1時間子供たちと走り回ると、頭がくらくらしてきた。
薄暗くなり、祭りが始まったのでようやく運動場の遊びは終わり、やっと解放された。
そうめん流しの人たちが口々に淳一をほめてくれたが、返答もできないほど疲れ果てていた。
ボランティア最終日。
昨日行った小学校へ祭りの片付けに行った。どんよりとした天気で、真夏というのにうすら寒い。
午前中は祭りの電球や提灯を箱に入れ、地元の人とテントをたたんだ。
今日のバスは3時ごろ迎えに来る。明日、早朝発のバスで神戸に帰る予定だ。
子供たちがいないので、気落ちしながら運動場にブラシをかけていると、一人の男の子が近付いてきた。
「君、昨日いたかな。みんなはどこにいるの?」
何度も聞いたが、にこにこしているだけだ。彼が聞こえないことに気が付き、手話をした。
「手伝ってくれる?」
すごい速さで手話を返してきた。ゆっくりするように頼むと、少し会話が成立した。
津波で母親を亡くしたという。今まで別の学校に行っていたが、震災以来ここで父親と暮らしているらしい。後の指示を聞きに職員室へ行くと、年配の先生が教えてくれた。
「あの子は県の特別支援学校に行っていたが、今帰宅中だ。亡くなった母親も聴覚障害者でサイレンや警報が聞こえなかったらしい。釜石では子供の犠牲は少なかったんだがなあ。昼から仮設の子を呼ぶから、この子も入れて遊んでやってくれないか」
「あなたが教えてくれたシェイクスピアやディケンズの本は面白かった。
でも日本史の本はすぐ眠くなる。数学の問題を解く方が楽しい。
今コンピュータでマラソン練習のプランを作っている。
怪我をしないでね。早くジュンに会いたい」
俺も君の顔が見たい。夜はずっと君のことばかり考えている。
東北に来て6日目。さすがにがれき処理の仕事は疲れてきたので、釜石市の小学校で行われる夏祭りの支援に行くことにした。
運動場に櫓を組み立て、長い電線に電球と笠を取り付けたらもう終わりだ。
まだ1時でバスは4時発。若い男は淳一だけで、他の人はそうめん流しの準備をしている。
そのグループに入りそびれ、朝会台の上でぼんやりとしていた。
「ねえ遊ぼう」
振り向くと5人の男の子がいた。
「いいよ。何をする?」
「鬼ごっこ」
朝会台を飛び下り、長靴を運動靴にはき替えた。
知らない間に人数が増え、鬼は全員で淳一だけを追いかけるルールに変わっていた。
必死に運動場を逃げまわり、捕まってもすぐに「もう一度」と言って追いかけてくる。
途中からシャツ一枚になって走り回った。
炎天下、さすがに子供たちも疲れたのか、一緒に木陰で座り込んだ。
ペットボトルを飲み干したら、子供たちがまたやろうと催促してきた。
子供のパワーは無敵だな。
また1時間子供たちと走り回ると、頭がくらくらしてきた。
薄暗くなり、祭りが始まったのでようやく運動場の遊びは終わり、やっと解放された。
そうめん流しの人たちが口々に淳一をほめてくれたが、返答もできないほど疲れ果てていた。
ボランティア最終日。
昨日行った小学校へ祭りの片付けに行った。どんよりとした天気で、真夏というのにうすら寒い。
午前中は祭りの電球や提灯を箱に入れ、地元の人とテントをたたんだ。
今日のバスは3時ごろ迎えに来る。明日、早朝発のバスで神戸に帰る予定だ。
子供たちがいないので、気落ちしながら運動場にブラシをかけていると、一人の男の子が近付いてきた。
「君、昨日いたかな。みんなはどこにいるの?」
何度も聞いたが、にこにこしているだけだ。彼が聞こえないことに気が付き、手話をした。
「手伝ってくれる?」
すごい速さで手話を返してきた。ゆっくりするように頼むと、少し会話が成立した。
津波で母親を亡くしたという。今まで別の学校に行っていたが、震災以来ここで父親と暮らしているらしい。後の指示を聞きに職員室へ行くと、年配の先生が教えてくれた。
「あの子は県の特別支援学校に行っていたが、今帰宅中だ。亡くなった母親も聴覚障害者でサイレンや警報が聞こえなかったらしい。釜石では子供の犠牲は少なかったんだがなあ。昼から仮設の子を呼ぶから、この子も入れて遊んでやってくれないか」
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