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Ⅳ オリンピック代表
25 私は間違ってなかった
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もう出てやる。
由佳の手を取ると、逆に彼女に手を引っ張られた。
「落ち着いて。怒らないで」
全然落ち着かないままもう一度席に座らされた。
「私は、質問に答える。みなさんに伝えて」
本当に?本気でインタビューを受けるのか?
彼女の真剣な目を見て、ここを出て行くのはあきらめてマイクを取った。
「彼女が、質問を受けるそうです」
おおっという声が上がり、一斉に手が上げられた。今度は淳一が女性記者を指名した。
「三田島さんは、倉本選手のどこに魅かれたのですか?できるだけ具体的に」
最初から何という下らん質問だ。内容次第で打ち切ってやる。
「君にとって、僕のどこが良かったのか聞いている」
彼女は、ゆっくり手を動かしながら口話で話した。会場は静まり返った。
「私は・ろう者です。話すことが・苦手です・でも・彼は・無理に声を・出さなくても・いいと・言ってくれた・うれしかった。彼は・優しい」
そんなこと言ったかな。確かに口話は負担に感じていたようだったが。
次は男性記者を指名した。
「次の目標は何ですか。リオを目指して、またこのペアでやっていくのですか?」
答えは、淳一にとっても意外なものだった。
「次は・ないと・思います」
どうして?目で問い返した。
「彼は・勉強も・マラソンも・頑張って・すごい・私も・負けずに・勉強がしたい・今度は・私を・助けてほしい」
そういうことか。看護学校のサポートなら、いくらでもするよ。
年配の男性記者が、マイクを持った。
「なぜ倉本選手は、銀メダルを取れたのでしょう?もちろん彼の走る能力が高いのは当然ですが、それ以外の理由も知りたいのです。三田島さんは、なぜ彼がオリンピックに行き、メダルを取れたと思いますか?」
分かりづらい質問だ。手話で説明するのにも時間がかかった。
「彼は・パソコンも・スマホも・使うのが苦手です」
どっと笑い声が起こった。こんな大勢の前でバラすかな。
「テレビも・ほとんど見ない・けれど・たくさん・本を読んで・情報に・振り回されない・強い心を・持っています。だから・私は・彼ならオリンピックに・行けると・思いました。私は・間違って・いなかった」
記者会見場の雰囲気はずい分柔らかくなった。まだ多くが挙手しているが、もういいだろう。
「もう終わろう。君はよく頑張ったよ」
二人が立ち上がると、目を開けられないほどのフラッシュを浴びた。
ここでは彼女に助けられた。すぐ頭に来るのは、俺もまだガキの証拠だな。
大勢の前で話すたび自己嫌悪を感じる。
彼女が、あんなに上手に答えることができたのは、機内でしっかり準備していたからだな。
俺のようにその場しのぎでなく、周到に先を見通して行動する力が備わっている。
由佳には、何から何までサポートされてばかりだ。
これからも彼女と二人でいさえすれば、明るい未来が開けてくるだろう。
由佳の手を取ると、逆に彼女に手を引っ張られた。
「落ち着いて。怒らないで」
全然落ち着かないままもう一度席に座らされた。
「私は、質問に答える。みなさんに伝えて」
本当に?本気でインタビューを受けるのか?
彼女の真剣な目を見て、ここを出て行くのはあきらめてマイクを取った。
「彼女が、質問を受けるそうです」
おおっという声が上がり、一斉に手が上げられた。今度は淳一が女性記者を指名した。
「三田島さんは、倉本選手のどこに魅かれたのですか?できるだけ具体的に」
最初から何という下らん質問だ。内容次第で打ち切ってやる。
「君にとって、僕のどこが良かったのか聞いている」
彼女は、ゆっくり手を動かしながら口話で話した。会場は静まり返った。
「私は・ろう者です。話すことが・苦手です・でも・彼は・無理に声を・出さなくても・いいと・言ってくれた・うれしかった。彼は・優しい」
そんなこと言ったかな。確かに口話は負担に感じていたようだったが。
次は男性記者を指名した。
「次の目標は何ですか。リオを目指して、またこのペアでやっていくのですか?」
答えは、淳一にとっても意外なものだった。
「次は・ないと・思います」
どうして?目で問い返した。
「彼は・勉強も・マラソンも・頑張って・すごい・私も・負けずに・勉強がしたい・今度は・私を・助けてほしい」
そういうことか。看護学校のサポートなら、いくらでもするよ。
年配の男性記者が、マイクを持った。
「なぜ倉本選手は、銀メダルを取れたのでしょう?もちろん彼の走る能力が高いのは当然ですが、それ以外の理由も知りたいのです。三田島さんは、なぜ彼がオリンピックに行き、メダルを取れたと思いますか?」
分かりづらい質問だ。手話で説明するのにも時間がかかった。
「彼は・パソコンも・スマホも・使うのが苦手です」
どっと笑い声が起こった。こんな大勢の前でバラすかな。
「テレビも・ほとんど見ない・けれど・たくさん・本を読んで・情報に・振り回されない・強い心を・持っています。だから・私は・彼ならオリンピックに・行けると・思いました。私は・間違って・いなかった」
記者会見場の雰囲気はずい分柔らかくなった。まだ多くが挙手しているが、もういいだろう。
「もう終わろう。君はよく頑張ったよ」
二人が立ち上がると、目を開けられないほどのフラッシュを浴びた。
ここでは彼女に助けられた。すぐ頭に来るのは、俺もまだガキの証拠だな。
大勢の前で話すたび自己嫌悪を感じる。
彼女が、あんなに上手に答えることができたのは、機内でしっかり準備していたからだな。
俺のようにその場しのぎでなく、周到に先を見通して行動する力が備わっている。
由佳には、何から何までサポートされてばかりだ。
これからも彼女と二人でいさえすれば、明るい未来が開けてくるだろう。
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