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Ⅳ オリンピック代表
26 野路との再会
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今夜は三人共、成田空港近くのホテルを予約してもらっている。
一階の空港ロビーを出てシャトルバスに乗り、ホテルに着いた。やれやれだ。
野路と再開するのは1年ぶりだ。二人に彼を紹介し、部屋に荷物を置いてレストランで合流した。
やっとほっとできる。
「俺は盆休みで、昨日まで神戸にいたんだ。マラソンの応援は東高の体育館に行ったけど、あの時の卒業生は、ほとんど全部集まっていたよ。角谷や橘さんとかもいた。そこで聞いたけど麗奈は結婚したそうだ。けどみんなには倉本が本命だったと言っていたよ。それに水泳部の女子なんか、ものすごくでかい横断幕を持って来ていた」
「淳一さんは女の子からもてていたのね」
母親が手話をしながら言うと、由佳がちらっと睨んできた。
野路はあわてて言った。
「いやあ彼は高校時代超まじめで、告白されたことはあったけれど、付き合った女子はいなかったはずですよ。水泳部で片思いだった人はいたみたいだけど」
母親が由佳に伝えた。彼女は、また横目で淳一を見て手話をした。
「そんなこと聞いていなかった。後で教えてもらう」
「ともかく、すげー盛り上がりでさ。ラストにゴール前の接戦があったやろ?みんな総立ちで大声張り上げてな。邪魔されて3位になった時は、全員でブーイングしてたもんな。それでも最後は何回も万歳だ。水泳部の子も吉見先生も泣いていたよ」
「吉見先生か。あの先生には本当に世話になった。神戸に帰ったらお礼に行くつもりだ」
「それで次の日、つまり昨日な。テレビじゃ閉会式より、倉本が銀になったことばかりだ。それに二人が手話をしている様子が字幕付きで出て、うちのお袋なんてテレビを見て泣いていた。姉貴もお前を知っているから職場で自慢できるってさ」
彼の家族には何度もご馳走になり、助けてもらったことを二人に教えた。
「ここのロビーでテレビを見ていたけど、あの記者会見はライブで中継されていたよ。インタビューで、お前すごく頭に来ていたやろ。めちゃ顔に出ていたぞ。けど由佳さんが出てきてぐーんと雰囲気良くなった。彼女すごく堂々としていたからびっくりしたよ」
「俺はもうどこにも出たくないよ。騒がれるのは今のうちだけだろ。どうせすぐ忘れられる」
「どうかな?新聞では、由佳さんがパソコンでデータ管理をして、倉本をサポートしてるって書いてあった。彼女すごいな」
母親が野路に、関東技術大学を知っているか聞いた。
「知っていますよ。うちの大学の隣です。そういえば手話をしながら歩いている学生をよく見かけます」
「そこが日本では数少ない視覚と聴覚の障害者が通える大学なの。私、自分が看護師だし、由佳にも資格を取らせたいと思って看護学校に行かせたけど、ロンドンでパソコンを上手に使っているのを見て驚いたわ。専門学校に通うより、大学に行く方が向いているのかな。淳一さんはどう思う?」
「確かに理系のレベルはすごく高くて、僕なんか太刀打ちできません。大抵の大学は入れると思います。どこに行っても講義を聞き取るのは苦労するだろうけど」
「もし来年筑波に来たら、俺が由佳さんのボディーガードになって、サポートしますよ」
彼女は食事中、あまり話に入らず、他のことを考えている様子だった。
疲れているのかな。
一階の空港ロビーを出てシャトルバスに乗り、ホテルに着いた。やれやれだ。
野路と再開するのは1年ぶりだ。二人に彼を紹介し、部屋に荷物を置いてレストランで合流した。
やっとほっとできる。
「俺は盆休みで、昨日まで神戸にいたんだ。マラソンの応援は東高の体育館に行ったけど、あの時の卒業生は、ほとんど全部集まっていたよ。角谷や橘さんとかもいた。そこで聞いたけど麗奈は結婚したそうだ。けどみんなには倉本が本命だったと言っていたよ。それに水泳部の女子なんか、ものすごくでかい横断幕を持って来ていた」
「淳一さんは女の子からもてていたのね」
母親が手話をしながら言うと、由佳がちらっと睨んできた。
野路はあわてて言った。
「いやあ彼は高校時代超まじめで、告白されたことはあったけれど、付き合った女子はいなかったはずですよ。水泳部で片思いだった人はいたみたいだけど」
母親が由佳に伝えた。彼女は、また横目で淳一を見て手話をした。
「そんなこと聞いていなかった。後で教えてもらう」
「ともかく、すげー盛り上がりでさ。ラストにゴール前の接戦があったやろ?みんな総立ちで大声張り上げてな。邪魔されて3位になった時は、全員でブーイングしてたもんな。それでも最後は何回も万歳だ。水泳部の子も吉見先生も泣いていたよ」
「吉見先生か。あの先生には本当に世話になった。神戸に帰ったらお礼に行くつもりだ」
「それで次の日、つまり昨日な。テレビじゃ閉会式より、倉本が銀になったことばかりだ。それに二人が手話をしている様子が字幕付きで出て、うちのお袋なんてテレビを見て泣いていた。姉貴もお前を知っているから職場で自慢できるってさ」
彼の家族には何度もご馳走になり、助けてもらったことを二人に教えた。
「ここのロビーでテレビを見ていたけど、あの記者会見はライブで中継されていたよ。インタビューで、お前すごく頭に来ていたやろ。めちゃ顔に出ていたぞ。けど由佳さんが出てきてぐーんと雰囲気良くなった。彼女すごく堂々としていたからびっくりしたよ」
「俺はもうどこにも出たくないよ。騒がれるのは今のうちだけだろ。どうせすぐ忘れられる」
「どうかな?新聞では、由佳さんがパソコンでデータ管理をして、倉本をサポートしてるって書いてあった。彼女すごいな」
母親が野路に、関東技術大学を知っているか聞いた。
「知っていますよ。うちの大学の隣です。そういえば手話をしながら歩いている学生をよく見かけます」
「そこが日本では数少ない視覚と聴覚の障害者が通える大学なの。私、自分が看護師だし、由佳にも資格を取らせたいと思って看護学校に行かせたけど、ロンドンでパソコンを上手に使っているのを見て驚いたわ。専門学校に通うより、大学に行く方が向いているのかな。淳一さんはどう思う?」
「確かに理系のレベルはすごく高くて、僕なんか太刀打ちできません。大抵の大学は入れると思います。どこに行っても講義を聞き取るのは苦労するだろうけど」
「もし来年筑波に来たら、俺が由佳さんのボディーガードになって、サポートしますよ」
彼女は食事中、あまり話に入らず、他のことを考えている様子だった。
疲れているのかな。
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