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Ⅴ 由佳の選択
7 妊娠させとけば
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9月初め、久しぶりに三田島家を訪れた。
淳一と由佳は、彼女の両親と向かい合って座った。すでに二人で時間をかけて相談し、結論を出している。それで両親が納得してくれるかわからない。
淳一は彼女の決意を知らされてから、眠れない夜を過ごしていた。
手話なしで話し始めた。彼女は、じっと淳一の口元を見つめている。
「彼女は看護学校をやめて、アメリカの大学に行くことを望んでいます。アメリカではろう者に手厚くサポートをする大学がいくつもあるそうです。大学に行くなら筑波の大学にしてほしいと頼んだのですが、日本以外の大学で学びたいということです」
今日は、アルコールなしで話を聞いていた父親が言った。
「最近の由佳は何だか落ち着きがないし、何も教えてくれないから、どうしたのかなと思っていた。君たちが相談したいなんて言うから、ひょっとしてと母さんと別の想像をしていたんだが」
母親が、なぜかあわてて手を振って言った。
「そのことはもういいの。でもやっぱり看護師になるのは嫌だったのかしら?」
「いや、看護師資格はいつか取りたいと言っています。今の看護学校では、後期から講義保障をしてくれるそうですが全部じゃないし、意味のわからない講義を見るだけなのはつらいみたいです。僕も気持ちは分かります。二人で大学を検討して、カリフォルニア大学ノースリッジ校に目標を絞りました。そこでエクササイズサイエンス、運動科学というのかな?それを学びたいそうです。大学に入るのは、9月は間に合わないから来年の1月に入学予定ですが、それまでにできるだけ早く向うに行って、アメリカ手話と英語の勉強がしたい。これが彼女の希望です」
「淳一さんは、本当にそれでいいの?」
そんなわけない。口ごもってしまった。
「僕としたら、もちろん由佳さんと離れたくない。・・・・でも彼女のおかげでロンドンに行けたから、今度は、僕が彼女の夢をかなえる責任があると考え直しました」
心の中とは、全然違う答えを言ってしまった。
「私は由佳が幸せになるためなら、今までできるだけのことはしてきたし、これからもするつもりだ。それにしてもアメリカか・・・」
「費用の件は、何とかなりそうです。先日、僕をサポートしてくれていたスポーツシューズ会社と契約をしてきました。二年間の僕との選手契約とCM出演です。そこで彼女のことを話すと、CMに二人で出るなら彼女に出演料を相当額出すそうです。今彼女は未成年ですから、お二人の同意が必要になります。それにJOCから銀メダリストのコーチには200万円出ることになりました。それでも足りない分は、僕の報奨金で補います。CM出演については、今回一回限りという条件です」
「そこまで話が進んでいるのね。パパと淳一さんがいいなら私は何にも言わないわ」
夕食が始まり、注いでもらったビールを飲みながら聞いた。
「さっき言われた別の想像ってなんですか?」
三田島医師は、淳一の耳に口を近づけた。彼女は聞こえないのに。
「由佳が妊娠してしまって、君らが結婚させてくれと言いに来たと思っていたんだ」
その方が良かった。思い切り後悔をした。今からでは間に合わない。
彼女は、にこにこしながらビールを父親のグラスに注いでいる。
でも俺は胸がはりさけそうだよ。
淳一と由佳は、彼女の両親と向かい合って座った。すでに二人で時間をかけて相談し、結論を出している。それで両親が納得してくれるかわからない。
淳一は彼女の決意を知らされてから、眠れない夜を過ごしていた。
手話なしで話し始めた。彼女は、じっと淳一の口元を見つめている。
「彼女は看護学校をやめて、アメリカの大学に行くことを望んでいます。アメリカではろう者に手厚くサポートをする大学がいくつもあるそうです。大学に行くなら筑波の大学にしてほしいと頼んだのですが、日本以外の大学で学びたいということです」
今日は、アルコールなしで話を聞いていた父親が言った。
「最近の由佳は何だか落ち着きがないし、何も教えてくれないから、どうしたのかなと思っていた。君たちが相談したいなんて言うから、ひょっとしてと母さんと別の想像をしていたんだが」
母親が、なぜかあわてて手を振って言った。
「そのことはもういいの。でもやっぱり看護師になるのは嫌だったのかしら?」
「いや、看護師資格はいつか取りたいと言っています。今の看護学校では、後期から講義保障をしてくれるそうですが全部じゃないし、意味のわからない講義を見るだけなのはつらいみたいです。僕も気持ちは分かります。二人で大学を検討して、カリフォルニア大学ノースリッジ校に目標を絞りました。そこでエクササイズサイエンス、運動科学というのかな?それを学びたいそうです。大学に入るのは、9月は間に合わないから来年の1月に入学予定ですが、それまでにできるだけ早く向うに行って、アメリカ手話と英語の勉強がしたい。これが彼女の希望です」
「淳一さんは、本当にそれでいいの?」
そんなわけない。口ごもってしまった。
「僕としたら、もちろん由佳さんと離れたくない。・・・・でも彼女のおかげでロンドンに行けたから、今度は、僕が彼女の夢をかなえる責任があると考え直しました」
心の中とは、全然違う答えを言ってしまった。
「私は由佳が幸せになるためなら、今までできるだけのことはしてきたし、これからもするつもりだ。それにしてもアメリカか・・・」
「費用の件は、何とかなりそうです。先日、僕をサポートしてくれていたスポーツシューズ会社と契約をしてきました。二年間の僕との選手契約とCM出演です。そこで彼女のことを話すと、CMに二人で出るなら彼女に出演料を相当額出すそうです。今彼女は未成年ですから、お二人の同意が必要になります。それにJOCから銀メダリストのコーチには200万円出ることになりました。それでも足りない分は、僕の報奨金で補います。CM出演については、今回一回限りという条件です」
「そこまで話が進んでいるのね。パパと淳一さんがいいなら私は何にも言わないわ」
夕食が始まり、注いでもらったビールを飲みながら聞いた。
「さっき言われた別の想像ってなんですか?」
三田島医師は、淳一の耳に口を近づけた。彼女は聞こえないのに。
「由佳が妊娠してしまって、君らが結婚させてくれと言いに来たと思っていたんだ」
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彼女は、にこにこしながらビールを父親のグラスに注いでいる。
でも俺は胸がはりさけそうだよ。
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